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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!

2-1-18.11月7日

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第十八話
11月7日


 すっかり、船乗りとなった私たちは、いつでも遠洋航海に出れる自信を付けていた。
 つまり外洋だ!

 この時代、遠洋航海をするとは、他の海賊を退けるということも含まれるのだ。
 大西洋を始め、あらゆるところに海賊の巣があるのだから。

 例えば、ブリテン島の北西にあるアイスランドは、元々、ヴァイキング海賊の基地だ。

 ここに入植者を募って、一儲けしようぜ!
と、募集を募ったが、思ったほど集まらず、さらに奥のグリーンランドまで、開拓したが、次第に中世温暖期が終わり、ミニ氷河期が来てしまって、これまた儲けそこねたようだ。

 あと、大西洋ではカリブ海が海賊の巣だ!
 小型船しか入れない遠浅の海が良かったようだ。
 どの国の海軍も大型船を建造して破壊力の向上を目指しているのだから、皮肉なものだな。

 そして、我々はアインス商会の護衛船として、活動をしていた頃、ついに、イングランドがやったのだ!
 スペイン侵攻!

 11月7日に、イングランドとネーデルラントの軍がスペインのカディス湾へ侵攻したのだ!
 これで、ロンドン条約は破棄だ!

 早速、私掠船制度の復活だ。
 スペイン商船を襲いまくるぞ!


 とは言え、英西戦争が再開されたのだ。
 海賊も戦力と、この国は考えているのだろう。
 おそらく!

 長々と戦争に付き合って、やりたい事が出来ないのは困るよな。
 フランシス・ドレイクのようにはなりたくない。※1
 実際、今回のカディス遠征は失敗のようだし。

 となると、戦争には付き合わず、したい事する。

 そうだ、インドへ行こう!
 シュベルツの子孫に会いに行こう。そして、お祖母様の出来なかった。自由恋愛をですね……

 いやいや、共に黄金郷を目指そうじゃないか!
 先祖の出来なかった夢を!
 我々でですね……
 なんか、照れるな。


 いずれにせよ、戦争が始まったのだ。
 ブリテン島にいると戦争に駆り出される可能性がある。

「イリーゼ支店長!」と、私は“さん”でなく、“支店長”と呼んだ。
 それ対し、イリーゼは少し目を細めてから、「なんだい?」と返答してた。

 しかし、私は、それにたじろぐ事なく言った。
「遠洋に出たい」と。
 イリーゼは、軽く頷いているように、私には見えた。

「随分と自信を付けたもんだね」と、イリーゼは皮肉の様に言ったが、「ダメでしょうか?」と聞き直すと、「いいや、そんな訳あるまいさ」と返した。

 いや、本当に良いのだろうか?

「どこへ行くのさ?」
「インドへ行きたいです。一度、シュベルツさんにお会いしたいですし、黄金郷へも行きたいです」

 イリーゼは、二度三度ほど頷き、
「エルハルト殿とは、手紙のやり取りだけで、もう何十年と合ってないね。ミーナが会いに行くのも良いと思うよ。インドには、イングランドもネーデルラントも東インド会社があって、問題も少ない」※2

 東インド会社というと、イングランド、ネーデルラント、フランスの三国が、それぞれ設立したが、列強のアジア進出の拠点というイメージがあるかもしれない。

 しかし、それは1852年のムガル帝国の崩壊からイギリス領となった19世紀の話で、この時代は先進国であったムガル帝国に、世界の片田舎のヨーロッパ各国が、アジアの貴重品を取り寄せるための拠点だった。

 実際、ヨーロッパはローマ帝国崩壊から、小国乱立で大帝国などあらず、細々と戦争ばかりして、発展などしていない事は、オスマントルコ帝国やムガル帝国と比較すると、文化、国力の差は一目瞭然だった。

 また、インド航路は、イングランドやネーデルラントが押さえているわけだから、私としては、比較的楽な航路ではある。
 喜望峰を除いては!

 何故、喜望峰を除くのか?
 あの一体は、まだ、ポルトガルの影響が濃いいのだ。
 特に、マダガスカル島など。

「ボンベイに行くなら、陸路でエルハルト殿に手紙を書いておくことにするよ」
「た、助かります。ありがとうございます」

 こうやって、インドへ私は行くことにした。
 いやぁ、未来のお婿さんがいるかもしれないインドへ行ける。
 ガハハ!

 そして、ついに遠洋へ出る!
 ヤホー!

 次回の女海賊団は、スペイン海軍を蹴散らして、ヨーロッパから出ます。
 

 
※1 ここはエリザベス女王がドレイクのことを、「私の海賊」と言ったことを指している、

※2 エルハルト・シュベルツ シュベルツ海賊団のキャプテンの息子。インドのボンベイ(現在のムンバイ)で、海事会社の経営をしている。
 
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