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第2部 第一章 お転婆令嬢、海賊になる!
2-1-2.ローレライと白いガレオン船
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第二話
ローレライと白いガレオン船
「お嬢様、このままでは……」
「ミーナちゃん。ぶつかるぅ」
何故か、突如、舵が切れず、私達の船は流れの早いライン川に流されてしまった。
そして、その先には、商船を襲っている川の賊どもの船があったのだ。
駄目だ。
このままでは、賊にぶつかる。
迷う暇なく、私たちの船は賊の船に、“ボカーン”と、盛大にぶつかった。
舵輪を握っているアンナ以外は、まるで樽のように、船内を転がっていた。
だが、こちらは、ぶつかるのを想定していたが、あちらは、突如やられたので、大勢が川に投げ出されてしまった。
それも、流れの早いライン川にである。
たちまち、男達は見えなくなっていった。
「ひぃ、沈んだ? 沈んだかな? ミーナちゃん?」
「……」
それは、わからない。
私たちが人を殺したとは、思いたくないが、何人かは沈んだと思う……
だから、答えられないんだよ。
しかし、他の船にいた賊どもは、怒りをぶつけて来た。
「こいつら、何をしやがる」
『何を』って、こちらは、川の流れに流されているだけなんだけど。
こちらに、近付いてきたのだ!
「お嬢様ッ!」とアガーテが言うと、
「逃げますので、お嬢様とクリスティアーネ様は、手すりに捕まって下さいッ」と、舵輪を握っていたアンナが叫んだ。
カーチェイスならぬ、ボートチェイスが始まった。
ドンドンとライン川を下っていく船達。
***
その頃、私は先代キャプテンの願いで、ローレライの川底にいた。
難破船が宝石などのお宝を川底に落としていた。
「まあ、色んな物が溜まっているわね」
しかし、私の目的はお宝ではない。
先代キャプテンの依頼により、新しいキャプテンを迎えに来たのだ。
そう、ローレライの足元。
つまり、セイレーンのいる、この場所へと。
(セイレーン:船を難破させる妖精)
そして、今まさにセイレーンたちが、次の獲物を探している様だった。
***
「間もなくローレライに着きます。
曲がれるか、どうか、やってみないとわかりません。
しっかり、捕まっていて下さい」
「わかった。やってくれ」と、アンナに答えるも、クリスティアーネとアガーテは顔色が悪くなっていた。
まあ、船酔いだろう!
すると、クリスティアーネが、川に向かって、嘔吐し始めた。
「ううぅ、○○○○」と。
令嬢にあるまじき行為だから、音声は伏せておくことにしたよ。
「クリスちぃ。魚のエサを撒き散らさなくても良いよ」と、冗談を言ってやったが、クリスティアーネは返す余裕は無かった。
しかし、あれを食べる魚もいるだろうと思うとだな、漁師には悪いか?
悪食のウナギは食うだろうな。たぶん。
「ウゥゥ。○○○○○」
「……」
「お嬢様、ローレライです。捕まって下さい!
お願い、沈まずに曲って!」と、アンナは祈るような声で言った。
追ってきた賊の船のうち、一隻が曲がりきれず、打ち付けられて大破した。
あぁ、次は私たちなのか?
すると、水面下では巨大な生き物が泳いでいるでは!
「後ろには賊。水面下にはクジラか?」
「川にクジラなんているの?」
「少なくともライン川にはいませんわ。お嬢様」
“ボカーーーン”と、大砲の弾が爆裂したかのような爆音が水面に広がった。
「「「なんなの?」」」
私たちの船は乗り上げていたのだ。
クジラの背中に!
いや、クジラではない。
これは、大型船だ!
ガレオン船だ。
川にガレオン船?
そして、賊の船は、この船を避けるのに必死だ。
「回避ぃ、回避だ」
私は、ホッとした。『これで逃げれる』と思ったからだ。
ところが、
「この船の上に登るぞ」と言う声が聞こえてきた。
それは、マズい。
私たちの船は、この船に乗上げており、下ろすことが出来ない。ならば、この船を動かすしかないようだ。
「アンナ、舵輪を見て。動かせそう?」
「お嬢様、申し訳ございません。無理そうです」
なんですって!
賊がそこまで来ているのに、無理とは!
次回の女海賊団は、ネーデルラント連邦共和国で大暴れします。
ローレライと白いガレオン船
「お嬢様、このままでは……」
「ミーナちゃん。ぶつかるぅ」
何故か、突如、舵が切れず、私達の船は流れの早いライン川に流されてしまった。
そして、その先には、商船を襲っている川の賊どもの船があったのだ。
駄目だ。
このままでは、賊にぶつかる。
迷う暇なく、私たちの船は賊の船に、“ボカーン”と、盛大にぶつかった。
舵輪を握っているアンナ以外は、まるで樽のように、船内を転がっていた。
だが、こちらは、ぶつかるのを想定していたが、あちらは、突如やられたので、大勢が川に投げ出されてしまった。
それも、流れの早いライン川にである。
たちまち、男達は見えなくなっていった。
「ひぃ、沈んだ? 沈んだかな? ミーナちゃん?」
「……」
それは、わからない。
私たちが人を殺したとは、思いたくないが、何人かは沈んだと思う……
だから、答えられないんだよ。
しかし、他の船にいた賊どもは、怒りをぶつけて来た。
「こいつら、何をしやがる」
『何を』って、こちらは、川の流れに流されているだけなんだけど。
こちらに、近付いてきたのだ!
「お嬢様ッ!」とアガーテが言うと、
「逃げますので、お嬢様とクリスティアーネ様は、手すりに捕まって下さいッ」と、舵輪を握っていたアンナが叫んだ。
カーチェイスならぬ、ボートチェイスが始まった。
ドンドンとライン川を下っていく船達。
***
その頃、私は先代キャプテンの願いで、ローレライの川底にいた。
難破船が宝石などのお宝を川底に落としていた。
「まあ、色んな物が溜まっているわね」
しかし、私の目的はお宝ではない。
先代キャプテンの依頼により、新しいキャプテンを迎えに来たのだ。
そう、ローレライの足元。
つまり、セイレーンのいる、この場所へと。
(セイレーン:船を難破させる妖精)
そして、今まさにセイレーンたちが、次の獲物を探している様だった。
***
「間もなくローレライに着きます。
曲がれるか、どうか、やってみないとわかりません。
しっかり、捕まっていて下さい」
「わかった。やってくれ」と、アンナに答えるも、クリスティアーネとアガーテは顔色が悪くなっていた。
まあ、船酔いだろう!
すると、クリスティアーネが、川に向かって、嘔吐し始めた。
「ううぅ、○○○○」と。
令嬢にあるまじき行為だから、音声は伏せておくことにしたよ。
「クリスちぃ。魚のエサを撒き散らさなくても良いよ」と、冗談を言ってやったが、クリスティアーネは返す余裕は無かった。
しかし、あれを食べる魚もいるだろうと思うとだな、漁師には悪いか?
悪食のウナギは食うだろうな。たぶん。
「ウゥゥ。○○○○○」
「……」
「お嬢様、ローレライです。捕まって下さい!
お願い、沈まずに曲って!」と、アンナは祈るような声で言った。
追ってきた賊の船のうち、一隻が曲がりきれず、打ち付けられて大破した。
あぁ、次は私たちなのか?
すると、水面下では巨大な生き物が泳いでいるでは!
「後ろには賊。水面下にはクジラか?」
「川にクジラなんているの?」
「少なくともライン川にはいませんわ。お嬢様」
“ボカーーーン”と、大砲の弾が爆裂したかのような爆音が水面に広がった。
「「「なんなの?」」」
私たちの船は乗り上げていたのだ。
クジラの背中に!
いや、クジラではない。
これは、大型船だ!
ガレオン船だ。
川にガレオン船?
そして、賊の船は、この船を避けるのに必死だ。
「回避ぃ、回避だ」
私は、ホッとした。『これで逃げれる』と思ったからだ。
ところが、
「この船の上に登るぞ」と言う声が聞こえてきた。
それは、マズい。
私たちの船は、この船に乗上げており、下ろすことが出来ない。ならば、この船を動かすしかないようだ。
「アンナ、舵輪を見て。動かせそう?」
「お嬢様、申し訳ございません。無理そうです」
なんですって!
賊がそこまで来ているのに、無理とは!
次回の女海賊団は、ネーデルラント連邦共和国で大暴れします。
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