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【第1部】―真珠の白を薔薇色に染上げて―
2.黒ずくめの正体は?
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2.黒ずくめの正体は?
「女将さん!」と、注文をするついでに、黒ずくめの正体を、それとなく聞いてみた。
「個室に入ったのは、どちらさんで?」
すると、うちの船員達が飲みながらだが、聞き耳を立てていた。
「あら、知らないの! 有名人よ。シュベルツ海賊団のシュベルツ キャプテンよ」
思わず吹き出すところだった。
だって、そうだろう!?
今は私掠船のシステムがあるんだ、自分で海賊とは言わんよ。
いや、単に女将さんが、私掠船のシステムを知らないだけだ。そうに違いない。
そして、シュベルツとは、ドイツの姓で“黒い人”という意味だ。
それで黒ずくめなんだな。あいつらは!
しかし、タイミングが悪かった。
注文をしにシュベルツの船員が、女将さんのところに来ていたのだ。
いつの間に?
一度、トイレによって来たので、気づかなかったのだ。
まっすぐ個室から来たら、見えていたのだが……
「うん、何か、うちの船が気になるのかな?」
餅は餅屋だ。
同じニオイのする連中だ。揉め事は商売に響く、今回の略奪で、購入するものもある。売りたいものもある。
すると、
「いやぁ、ご婦人! お綺麗ですね。ご一緒させてください」
「はあ? えっ?」
「こんな別嬪さん、はじめて見ましたよ。オレは、カールハインツと言います」
「私はヴィルヘルミーナですわ」とお貴族口調で答えた。
「皆、喚んできます! キャプテン!」
「ええぇー」
カールハインツという男は、二階の個室へ駆け上がっていった。
「お頭、どうするんだよ」
「男と飲んだことなんてないよ」
「なんて話せばいいんだ?」と、船員達があたふたし始めだした!?
「お前ら、落ち着け!
我々がモテない喪女集団だからといって、諦めるな。
何時かは、報われる時が来る。そして、これをキッカケにだ。その、なんだ、まあ、あれだ」
「お頭、何言ってんだよ。わかんねえ。分かるように言ってよ」
「そう、そうか。
分かるようにだな。
当たって砕けろ! チャンスは掴めだ。以上だ」
すると、
「私、頑張りますぅ」
「おう、イリーゼ、その調子だ」と、船員達は、何かやる気になってきた。
えっ?
これで、良いのか???
***
その頃、二階の個室では!?
「キャプテン! 下で我々のことを嗅ぎ回っている女を見つけました。『今から、仲間を喚んでくるよ』と言って待たせてます。どうしますか?」
「嗅ぎ回っている? まさか、我々の見つけた新ルートを嗅ぎ回っているのか?」
個室の船員達は、皆、考え込んでいる。
「オレ達が見つけたルートを容易く、商人に知られる訳には行かない。
長年の夢のワークワーク島への航海ルートだ。相手が何者か突き止めるぞ!」
「ラジャー」
そして、黒ずくめの集団は、愛想良く下に降りてきた。
「お姉さん方、キレイなドレスだね」と、若いヨーゼフが言った。
男達にとっては、社交辞令だろう。
だが!?
喪女集団に取っては、これはサプライ~ズッ!?
「それ、わ、私のことですよね? 今の?」と、立ち上がったのはイリーゼだ!
「えっ?」と、ヨーゼフは驚いた。
「落ち着いてよ、イリーゼ!」
「何ですか、ローズマリーさん! ひがんでますね? 私がキレイだと言われて、ひがんでいますねぇ」
「言われたのは、ドレスだよ。イリーゼじゃないもーーん」
「な、な、何ですって、ドレスだけではないです。私も込みです。しっかり誉めて頂きましたから、ねぇ?」と、ヨーゼフに振ると、ヨーゼフは、
「ええ、皆さん、素敵すぎて、困ってしまいます」
『ナイスだ、ヨーゼフ。上手く切り返したな』と、両海賊団員達が思ったのだが、イリーゼは許さなかった。
「さっきから、すっきりしないです。困る必要なんてありません。この私が一番素敵ですよね? ね?」
「だから、言ってるじゃない。イリーゼはドレスだけだって」
男達は、あたふたし始めだした。
なんか、ダンディーだった集団が、困った顔をしているような!
これは、イカンのでは!
副キャプテンのエマリーが、
「静かにしなさい。そんなんだから、いつまで立っても喪女なのよ。反省なさい」
「お姉さま、従姉妹の私の方が!」
そう、エマリーとイリーゼは従姉妹なのだ。なので、イリーゼはエマリーのことを“お姉さま”と喚んでいる。
「お姉さまは、この大きなおっぱいがあるから、大丈夫ですよね?」
『何が、どう大丈夫なのか?』と、突っ込みたかったが、突っ込んだら、負けってヤツか?
知らん顔しておこう。
そう、実はエマリーは、ボインなのだ。
90センチは軽くあるだろう。
尻も胸もデカい、背も高い。
“ボン、キュ、ボン”でなく、“ボボン、キュ、ボボン”なグラマラスな体型だ!
エマリーがイリーゼに何か言っているようだが、もう放置だ。
兎に角、我ら喪女軍団は、酒も回り、男達に囲まれて、“最高にハイってヤツだぜ”状態になっていた。
その時、ナンバー2的な男が、
「皆さんは、ご商売は何をしている方なのですか?」と、聞いてきた。
なんと、速球か?
解答の打ち合わせをしていなかったな。
海賊だとばれると何かと、ややこしい。
しかも、ダブルスタンダードが知れて、垂れ込まれるのも、厄介だ。
『実は漁村組合の……』なんてどうだ?
この連中の腕の太さやら、潮臭さなどは、誤魔化せるかもしれん。
では、
「実は、ドイツのぎょそん……」
「はい、海賊でぇす。お前ら、お金を出しやがれです!」と、言ったのは、イリーゼだ!
アホか!?
海賊相手に『海賊だから、お金を出せ!』って、何を言ってんだよ。
こいつ!?
ひぃー!
さて、次回の女海賊たちは、ボインの力で何とかします
「女将さん!」と、注文をするついでに、黒ずくめの正体を、それとなく聞いてみた。
「個室に入ったのは、どちらさんで?」
すると、うちの船員達が飲みながらだが、聞き耳を立てていた。
「あら、知らないの! 有名人よ。シュベルツ海賊団のシュベルツ キャプテンよ」
思わず吹き出すところだった。
だって、そうだろう!?
今は私掠船のシステムがあるんだ、自分で海賊とは言わんよ。
いや、単に女将さんが、私掠船のシステムを知らないだけだ。そうに違いない。
そして、シュベルツとは、ドイツの姓で“黒い人”という意味だ。
それで黒ずくめなんだな。あいつらは!
しかし、タイミングが悪かった。
注文をしにシュベルツの船員が、女将さんのところに来ていたのだ。
いつの間に?
一度、トイレによって来たので、気づかなかったのだ。
まっすぐ個室から来たら、見えていたのだが……
「うん、何か、うちの船が気になるのかな?」
餅は餅屋だ。
同じニオイのする連中だ。揉め事は商売に響く、今回の略奪で、購入するものもある。売りたいものもある。
すると、
「いやぁ、ご婦人! お綺麗ですね。ご一緒させてください」
「はあ? えっ?」
「こんな別嬪さん、はじめて見ましたよ。オレは、カールハインツと言います」
「私はヴィルヘルミーナですわ」とお貴族口調で答えた。
「皆、喚んできます! キャプテン!」
「ええぇー」
カールハインツという男は、二階の個室へ駆け上がっていった。
「お頭、どうするんだよ」
「男と飲んだことなんてないよ」
「なんて話せばいいんだ?」と、船員達があたふたし始めだした!?
「お前ら、落ち着け!
我々がモテない喪女集団だからといって、諦めるな。
何時かは、報われる時が来る。そして、これをキッカケにだ。その、なんだ、まあ、あれだ」
「お頭、何言ってんだよ。わかんねえ。分かるように言ってよ」
「そう、そうか。
分かるようにだな。
当たって砕けろ! チャンスは掴めだ。以上だ」
すると、
「私、頑張りますぅ」
「おう、イリーゼ、その調子だ」と、船員達は、何かやる気になってきた。
えっ?
これで、良いのか???
***
その頃、二階の個室では!?
「キャプテン! 下で我々のことを嗅ぎ回っている女を見つけました。『今から、仲間を喚んでくるよ』と言って待たせてます。どうしますか?」
「嗅ぎ回っている? まさか、我々の見つけた新ルートを嗅ぎ回っているのか?」
個室の船員達は、皆、考え込んでいる。
「オレ達が見つけたルートを容易く、商人に知られる訳には行かない。
長年の夢のワークワーク島への航海ルートだ。相手が何者か突き止めるぞ!」
「ラジャー」
そして、黒ずくめの集団は、愛想良く下に降りてきた。
「お姉さん方、キレイなドレスだね」と、若いヨーゼフが言った。
男達にとっては、社交辞令だろう。
だが!?
喪女集団に取っては、これはサプライ~ズッ!?
「それ、わ、私のことですよね? 今の?」と、立ち上がったのはイリーゼだ!
「えっ?」と、ヨーゼフは驚いた。
「落ち着いてよ、イリーゼ!」
「何ですか、ローズマリーさん! ひがんでますね? 私がキレイだと言われて、ひがんでいますねぇ」
「言われたのは、ドレスだよ。イリーゼじゃないもーーん」
「な、な、何ですって、ドレスだけではないです。私も込みです。しっかり誉めて頂きましたから、ねぇ?」と、ヨーゼフに振ると、ヨーゼフは、
「ええ、皆さん、素敵すぎて、困ってしまいます」
『ナイスだ、ヨーゼフ。上手く切り返したな』と、両海賊団員達が思ったのだが、イリーゼは許さなかった。
「さっきから、すっきりしないです。困る必要なんてありません。この私が一番素敵ですよね? ね?」
「だから、言ってるじゃない。イリーゼはドレスだけだって」
男達は、あたふたし始めだした。
なんか、ダンディーだった集団が、困った顔をしているような!
これは、イカンのでは!
副キャプテンのエマリーが、
「静かにしなさい。そんなんだから、いつまで立っても喪女なのよ。反省なさい」
「お姉さま、従姉妹の私の方が!」
そう、エマリーとイリーゼは従姉妹なのだ。なので、イリーゼはエマリーのことを“お姉さま”と喚んでいる。
「お姉さまは、この大きなおっぱいがあるから、大丈夫ですよね?」
『何が、どう大丈夫なのか?』と、突っ込みたかったが、突っ込んだら、負けってヤツか?
知らん顔しておこう。
そう、実はエマリーは、ボインなのだ。
90センチは軽くあるだろう。
尻も胸もデカい、背も高い。
“ボン、キュ、ボン”でなく、“ボボン、キュ、ボボン”なグラマラスな体型だ!
エマリーがイリーゼに何か言っているようだが、もう放置だ。
兎に角、我ら喪女軍団は、酒も回り、男達に囲まれて、“最高にハイってヤツだぜ”状態になっていた。
その時、ナンバー2的な男が、
「皆さんは、ご商売は何をしている方なのですか?」と、聞いてきた。
なんと、速球か?
解答の打ち合わせをしていなかったな。
海賊だとばれると何かと、ややこしい。
しかも、ダブルスタンダードが知れて、垂れ込まれるのも、厄介だ。
『実は漁村組合の……』なんてどうだ?
この連中の腕の太さやら、潮臭さなどは、誤魔化せるかもしれん。
では、
「実は、ドイツのぎょそん……」
「はい、海賊でぇす。お前ら、お金を出しやがれです!」と、言ったのは、イリーゼだ!
アホか!?
海賊相手に『海賊だから、お金を出せ!』って、何を言ってんだよ。
こいつ!?
ひぃー!
さて、次回の女海賊たちは、ボインの力で何とかします
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