幽現学園S

たけこゆき

文字の大きさ
上 下
2 / 13
第1章 小さな体で

第2話 猫との戦い

しおりを挟む
ライチちゃんが叫ぶ。
そうだよな。私たちは不用意に外に出て、それでいて猫に追い込まれてんだから。
これは自業自得ということなのだろうか。
それでも――――――――――――

一方、レモンちゃん。
死にたくはない。
けれどもどうしようもない。
同じように頭を抱えているなかで。

私はとあるものを見つけた。

「あれってねこじゃらしじゃない?」
「はぁ?キウイ、あんたついに頭バグっちゃったの?この期に及んでねこじゃらしの話をするとか」
「何かに使えないのかなと」
「ねこじゃらしで戦おうとでも?」
「それも一つの考えとしてさぁ」
「無理よ。あれは猫と遊ぶために使うものなんだから!」

その時、レモンちゃんが閃いた顔をした。
レモンちゃんはこう考えた。

猫と遊ぶ。
つまりは猫の気を引くことができる、、。
もしかしたら、使えるかも!

「ねえ二人とも、ねこじゃらし取りにいけないかな~?」
「ついにあんたまでおかしくなっちゃたの?」
「ねこじゃらしを使って、猫を足止めできるかも」
「仮に足止めできたとして、あんたはどうすんのよ」
「それはまだ考えてないけど、三人ともやられるよりはましと思うの」
「いくらあたしでもそれは気が引けるわ。助かるなら三人で助かりたいし」
「レモンちゃん、ライチちゃん。あんまり考えてる時間はなさそうだよ」
「くぅ……。レモンには悪いけどとりあえずさっきのあんたの話に合わせるわ。その間にあんたを助ける方法考えるから!」
「ごめん!絶対なんとかするから!」

作戦は概ねレモンちゃんの考え通りに動き、私とライチを避難させることはできた。
ごめんねレモンちゃん。
それはいいけれども。
猫がねこじゃらしにかまってくれているけど、それを持ってるレモンちゃんは動きをとることが出来ません。
どうしよう……。

そこへ、ライチの声が。
「あんたの持ってるねこじゃらしでねこはあそんでいるのよね。だったらそれを手から離せば逃げれるわ!」

私は反論する。

「それ離したら、興味を失った猫がまたレモンを追うでしょ」
「ならどうしたらいいのよ!」
「手を放すだけならすぐに猫に気づかれる。でも、遠くへ飛ばすことができれば…!」
「投げるってことね!!」

ここで、ライチちゃんはレモンちゃんに話を振る。
「ねえレモン、あたしたちの話聞こえてた?」
「聞こえたよっ!」
「それなら話は早いわね。すぐ行動に移すのよ!あたしとキウイが助けにいくわ!」
「マジかだよ。私もかよ」
「元々はあんたらが勝手に出ていったからこういうことになったのよ」
「それはそうだけど、悪気はなかったんだぜ…」

話は決まった。
レモンちゃんも覚悟を決めたようだ。

「早くしなさい!あんたはおっとりしすぎだから急ぐことを覚えなさい!」

ライチちゃんが急かす。
レモンちゃんはねこじゃらしを猫に見せつけるように二三回降った。
それを遠くに思いっきり投げる。

ヒュー――ン。ストン。

ねこじゃらしが地面へ落ち、猫がそこへと駆けていく。
それを見てレモンちゃんは、一目散に私たちの方へと走ってきた。

「助かったぁ~」
「一時はどうなるかと思ったわ。」
「まったくだぜー」
「ちょっとキウイ、あんたにも責任があるのよ」
「ライチちゃんは厳しいなぁ」
「あんたらがテキトーすぎるのよ」
「それはごめんなさいです~」
「今度からは気を付けることね!それとさ」
「それと~?」
「ちゃん付けめんどくさいからやめない?」
「それは私も思ってた」
「同意です~」

そんなわけで、私たちは少しだけ仲良くなることができた。
でも外の世界は気をつけなくちゃ。
危険がいっぱいだから。

「ところでレモン、あんた動物に好かれる能力あるわよね」
「そうかな~」
「普段もそうだし、動物に好かれてなければ気をずっと引くことは無理だったわけだし」
「確かにだな」
「あはは、ありがとう」

私たちスモールズには、一人一人に何かしらの能力があるといわれているのだけど、もしかしたらわたしの能力は動物に好かれる能力なのかもしれない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

『別れても好きな人』 

設樂理沙
ライト文芸
 大好きな夫から好きな女性ができたから別れて欲しいと言われ、離婚した。  夫の想い人はとても美しく、自分など到底敵わないと思ったから。  ほんとうは別れたくなどなかった。  この先もずっと夫と一緒にいたかった……だけど世の中には  どうしようもないことがあるのだ。  自分で選択できないことがある。  悲しいけれど……。   ―――――――――――――――――――――――――――――――――  登場人物紹介 戸田貴理子   40才 戸田正義    44才 青木誠二    28才 嘉島優子    33才  小田聖也    35才 2024.4.11 ―― プロット作成日 💛イラストはAI生成自作画像

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

思い出を売った女

志波 連
ライト文芸
結婚して三年、あれほど愛していると言っていた夫の浮気を知った裕子。 それでもいつかは戻って来ることを信じて耐えることを決意するも、浮気相手からの執拗な嫌がらせに心が折れてしまい、離婚届を置いて姿を消した。 浮気を後悔した孝志は裕子を探すが、痕跡さえ見つけられない。 浮気相手が妊娠し、子供のために再婚したが上手くいくはずもなかった。 全てに疲弊した孝志は故郷に戻る。 ある日、子供を連れて出掛けた海辺の公園でかつての妻に再会する。 あの頃のように明るい笑顔を浮かべる裕子に、孝志は二度目の一目惚れをした。 R15は保険です 他サイトでも公開しています 表紙は写真ACより引用しました

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

どうぞご勝手になさってくださいまし

志波 連
恋愛
政略結婚とはいえ12歳の時から婚約関係にあるローレンティア王国皇太子アマデウスと、ルルーシア・メリディアン侯爵令嬢の仲はいたって上手くいっていた。 辛い教育にもよく耐え、あまり学園にも通学できないルルーシアだったが、幼馴染で親友の侯爵令嬢アリア・ロックスの励まされながら、なんとか最終学年を迎えた。 やっと皇太子妃教育にも目途が立ち、学園に通えるようになったある日、婚約者であるアマデウス皇太子とフロレンシア伯爵家の次女であるサマンサが恋仲であるという噂を耳にする。 アリアに付き添ってもらい、学園の裏庭に向かったルルーシアは二人が仲よくベンチに腰掛け、肩を寄せ合って一冊の本を仲よく見ている姿を目撃する。 風が運んできた「じゃあ今夜、いつものところで」という二人の会話にショックを受けたルルーシアは、早退して父親に訴えた。 しかし元々が政略結婚であるため、婚約の取り消しはできないという言葉に絶望する。 ルルーシアの邸を訪れた皇太子はサマンサを側妃として迎えると告げた。 ショックを受けたルルーシアだったが、家のために耐えることを決意し、皇太子妃となることを受け入れる。 ルルーシアだけを愛しているが、友人であるサマンサを助けたいアマデウスと、アマデウスに愛されていないと思い込んでいるルルーシアは盛大にすれ違っていく。 果たして不器用な二人に幸せな未来は訪れるのだろうか…… 他サイトでも公開しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACより転載しています。

処理中です...