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『抱かれたい男』は『癒されたい男』に翻弄されています
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凪の笑顔特集と題しても間違いではない映像に、ただただ可愛いなという感想を抱く。
けれど、俺の言葉に照れくさそうにはにかむ凪は、今流れた映像のどれよりも可愛くて、思わず口元を緩めた。
顔を見合わせて笑い合っていると、テレビの映像はスタジオへと切り替わっていった。
『九重さんは昨年放映された映画で、藤堂さんとベッドシーンを演じていましたが、実際に藤堂さんの演技はいかがでしたか?』
『ザ・抱かれたい男No1って感じでしたよ!ベッドシーンは私の独擅場だって思ってるんで、引っ張っていかなきゃって結構グイグイ演技させてもらってたんですけど、気付いたらあっちに主導権握られている時もあって。ベッドシーン慣れしてる私でさえ、ちょっとクラってきちゃいました』
『3年連続首位は伊達じゃないってことですね』
『実際にあのシーン見てた女性スタッフも「抱かれたいって思った」って口を揃えて言ってましたから』
『いや~僕も藤堂さんみたいな色男やったら、「抱いて」っていう女性の声が後を絶たなかったんやろな~』
『そうなりたいんなら、お前はもう生まれ変わるしかないな』
ゲストのお笑い芸人が会話に混じり、会場が大笑いに包まれる。
「…………」
「………凪?」
考え込むように黙り込んだ凪を、後ろめたい気持ちで見遣る。
お互い俳優という職業に就いているため、ラブシーンは致し方ないとお互いに割り切っている。
割り切ってはいるが、感情がついて来るかと言えば別だ。
俺も凪のラブシーンを見てしまった時は、モヤモヤとした気持ちを抱えてしまう。
もしかしたら凪も何とも言えない気持ちを抱いているのかもしれない。
「テレビ、切ろっか」
マグカップを置いて、テレビのリモコンを取ろうとしたとき、突然腕を引っ張られる。
凪はじっとこちらを見上げていた
「…どうした?」
凪の行動の意図が読めず、キョトンとしたまま相手の行動を待つ。
凪は俺の肩に両手を置いたかと思えば、耳元に口を寄せた。
「抱いて」
秘密ごとのように、小さな声で囁かれる。
途端に、ドクンと心臓が鳴った。
「って、颯に言ったことないなって思って」
凪は俺から体を離し、元々座っていた位置に戻る。
おそらく真っ赤になっている俺の顔を見ながら、凪は満足げに笑っていた。
「あんた、今夜覚えてろよ」
俺の言葉に一瞬だけキョトンとして、目を細めて笑う。
抱かれたい男No.1である俺はその色気満載の笑い顔に、一生勝てないなと頭の中で敗北宣言を唱えるのだった。
けれど、俺の言葉に照れくさそうにはにかむ凪は、今流れた映像のどれよりも可愛くて、思わず口元を緩めた。
顔を見合わせて笑い合っていると、テレビの映像はスタジオへと切り替わっていった。
『九重さんは昨年放映された映画で、藤堂さんとベッドシーンを演じていましたが、実際に藤堂さんの演技はいかがでしたか?』
『ザ・抱かれたい男No1って感じでしたよ!ベッドシーンは私の独擅場だって思ってるんで、引っ張っていかなきゃって結構グイグイ演技させてもらってたんですけど、気付いたらあっちに主導権握られている時もあって。ベッドシーン慣れしてる私でさえ、ちょっとクラってきちゃいました』
『3年連続首位は伊達じゃないってことですね』
『実際にあのシーン見てた女性スタッフも「抱かれたいって思った」って口を揃えて言ってましたから』
『いや~僕も藤堂さんみたいな色男やったら、「抱いて」っていう女性の声が後を絶たなかったんやろな~』
『そうなりたいんなら、お前はもう生まれ変わるしかないな』
ゲストのお笑い芸人が会話に混じり、会場が大笑いに包まれる。
「…………」
「………凪?」
考え込むように黙り込んだ凪を、後ろめたい気持ちで見遣る。
お互い俳優という職業に就いているため、ラブシーンは致し方ないとお互いに割り切っている。
割り切ってはいるが、感情がついて来るかと言えば別だ。
俺も凪のラブシーンを見てしまった時は、モヤモヤとした気持ちを抱えてしまう。
もしかしたら凪も何とも言えない気持ちを抱いているのかもしれない。
「テレビ、切ろっか」
マグカップを置いて、テレビのリモコンを取ろうとしたとき、突然腕を引っ張られる。
凪はじっとこちらを見上げていた
「…どうした?」
凪の行動の意図が読めず、キョトンとしたまま相手の行動を待つ。
凪は俺の肩に両手を置いたかと思えば、耳元に口を寄せた。
「抱いて」
秘密ごとのように、小さな声で囁かれる。
途端に、ドクンと心臓が鳴った。
「って、颯に言ったことないなって思って」
凪は俺から体を離し、元々座っていた位置に戻る。
おそらく真っ赤になっている俺の顔を見ながら、凪は満足げに笑っていた。
「あんた、今夜覚えてろよ」
俺の言葉に一瞬だけキョトンとして、目を細めて笑う。
抱かれたい男No.1である俺はその色気満載の笑い顔に、一生勝てないなと頭の中で敗北宣言を唱えるのだった。
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