6 / 17
6、銀のタイプ
しおりを挟む
きっとそんなもんです。変な望みは止めましょう。
幼馴染や親戚、身近にいる異性って年頃になると意識するもんじゃないですか。
それで時が経って、ふとした時に今まで年賀状なんてよこさなかった癖に急に結婚しましたとか子供が生まれましたとか新年早々ハガキで言い出すもんです。
ああ、私なんて眼中になかったんだなって失恋のような気持になる漫画読んだ事あります。(次の日謎のイケメン御曹司と肩がぶつかる漫画)
だから、こんなに一緒にいるけど、銀君だってわからない。
だって、私を構ってくれる理由が幼馴染……というか、まあ小さい時に私がケガすれば、そういうのは一緒にいた銀君のせいになるでしょ? 「あなたの方がお兄ちゃんなんだからちゃんと見てなきゃダメでしょう」って。
だから、そういうのの積み重ねでちゃんと守りなさいよってずっと言われてる。
おかしいよ、いつまでそれ? って思うけど、うちの両親の職業普通じゃないし、普通ってわかんない。
きっとこの世の誰だって普通がどういうもんだなんて正確には言えないでしょう? 絶対なんてない。よそはよそ、うちはうちだ。だから悩んでる。
告白しますと、私は銀君意識してますよ。
きっと……ここだけの話……だから、内緒。誰にも言わないで下さいね? 内緒内緒。
でも、聞いちゃったんです、銀君の話。だから私は変な感情表に出しちゃいけないの。
あれは、会社のお昼休み。たまたま、フリースぺースで同僚とご飯を食べていた。
いつもは自席で雑談しながらだけど、その日は昼休みにちょうど私達の天井にあるエアコンの空調調整があったから、仕方なくだ。
ビルの最上階、全面ガラス張りで渋谷を見下ろすように窓に設置されたカウンター席がずらり、他にもオシャレなテーブルや、安定感のある大き目なバランスボールにローテーブルが置かれてて今時のITオフィス感が漂ってる。
クライミングウォールの壁が合ったり小スペースにはスピンバイクにトレーニングベンチまで置かれてる。
きっとあれだ、ああいうのは陽キャ達がやるんだろうなって横目で見てたら、そこに幼馴染がいたんです。
銀君が3メートルはある天井にタッチして、クライミングウォールの一番上の石から飛び降りてきた。
歓声と同時にはえーよ! って隣で登ってる社員が言ってて競争していたみたいだ。
着地した銀君は肩を回して捲ったワイシャツを戻してのカフスを閉めています、横目で次あっちに足かけた方がいいですよってアドバイスしてる。
そっか、銀君そんな事してるんだ、どんだけリア充だよって心の中でツッコんで一瞬目合ったけど逸らして直ぐに背を向け渋谷が一望できるカウンター先でお友達とご飯を食べました。
左に席をおく同僚のここみちゃんはサブウェイのBLTサンドを食べながら言います。
「私達にテーブル席はちょっとね……?」
私はこくんと首を振って、
「わかります。この階に来たのは初めてですし、仕事できそうな方々勢ぞろいでいたたまれないです」
答えれば右の愛ちゃんも縦に振りながらいます。
「高所恐怖症だからしんどいけど、今だけでも渋谷を制覇した気持ちになって食べよう!」
「ですね私も高い所は苦手です! 有り得ないって言われてもこのガラスがなくなったら……って考えると景色なんて眺められないですが、外で食べるなんてもっとハードル高いですからね」
頷きながら、陽気そうな人が集まってくるフリースペースで陰キャな私達はソワソワしながら三人でご飯を食べます。なにが恐怖ってこのここには他の会社の人も共有してるから知らない人わんさか来るんです!
高いのやだし場違いな気がするから、我々は早く自分の陣地に戻りたいのです。
だから、いつもと違って上辺な会話を各々ペラペラしゃべって、お弁当を掻っ込んで一番に食べ終えたのでトイレに行く! って先に席を立ちました。
空調工事終了までまだ時間はあるけど、そんなのどっかで時間潰せばいいし、それよりこの空気とお外で銀君と同じ空間なの耐えられないから、そそくさ退場しようと思ったら。
ローテーブル席くっつけてちょっとミーテインング的なものしながら昼食とってる銀君達のグループが雑誌開いてワイワイ話してたんだ。
その内容は知らないけど、幼馴染の隣にいた女の人が雑誌を開いて「小野君はこの中でどの子がタイプなの?」って聞いてて銀君はページを一巡して、首を傾げて視線を雑誌から離した。
それで、フロアをぐるりと見渡して、ああいうのですかねえって言った。
指差したのは壁に飾られている金髪美女の外国人さんのポスターだった。
海に向かう一本の畑道、麦わら帽子からブロンドを覗かせて、整った笑顔は彫の深い目鼻立ちだ。口元に真っ白い歯を光らせて、お胸が目立つキャミソールにダメージの入ったショートパンツ…………コーラ片手にこちらにウィンクしてる。
出るとこ出ててくびれててセクシー代表みたいな、そういうレトロな飲料メーカーのポスター。
見た瞬間に私はお胸がバクバクですよ? 意味わかんないけど。
でもまあ好みは人それぞれだし否定はしません! そして銀君ならその隣にいても負けない体格してるし、皆んもああいうのね~な感想でした。
だからこそ! 空気のように私はその横をスタスタと足早に去り、誰にもその存在を知られずにフリースペースから姿を消しました。
だからね? そもそも銀君私なんて全くタイプじゃないのが前提なんです。
分かったでしょ? だから内緒だもん。私の気持ちなんて、
す
好きじゃないもん。
「はあ……」
溜息ついて首輪を眺めました。
もう自宅のベッドの上です。回想終了です。夕飯の後洗い物を真希子さんと一緒にして家に戻ってきました。両親はまだ帰ってきてません。
いつも通り二人が帰ってくるのはバラバラだろうから、私一人で入るにはもったいないのでお風呂は沸かさずシャワーで済ませました。
昔は……お風呂も小野さんの家でいただいてました。何かこれと言ったきっかけは覚えていませんが、いつの間にか銀君とお風呂に入らなくなりました。
それで、寝転がった私が両手で握るこれ、首輪にリード……私達を繋ぐ、首の輪っかです。
今は私が首につけてるこれにもちゃんと意味はあります。
幼馴染や親戚、身近にいる異性って年頃になると意識するもんじゃないですか。
それで時が経って、ふとした時に今まで年賀状なんてよこさなかった癖に急に結婚しましたとか子供が生まれましたとか新年早々ハガキで言い出すもんです。
ああ、私なんて眼中になかったんだなって失恋のような気持になる漫画読んだ事あります。(次の日謎のイケメン御曹司と肩がぶつかる漫画)
だから、こんなに一緒にいるけど、銀君だってわからない。
だって、私を構ってくれる理由が幼馴染……というか、まあ小さい時に私がケガすれば、そういうのは一緒にいた銀君のせいになるでしょ? 「あなたの方がお兄ちゃんなんだからちゃんと見てなきゃダメでしょう」って。
だから、そういうのの積み重ねでちゃんと守りなさいよってずっと言われてる。
おかしいよ、いつまでそれ? って思うけど、うちの両親の職業普通じゃないし、普通ってわかんない。
きっとこの世の誰だって普通がどういうもんだなんて正確には言えないでしょう? 絶対なんてない。よそはよそ、うちはうちだ。だから悩んでる。
告白しますと、私は銀君意識してますよ。
きっと……ここだけの話……だから、内緒。誰にも言わないで下さいね? 内緒内緒。
でも、聞いちゃったんです、銀君の話。だから私は変な感情表に出しちゃいけないの。
あれは、会社のお昼休み。たまたま、フリースぺースで同僚とご飯を食べていた。
いつもは自席で雑談しながらだけど、その日は昼休みにちょうど私達の天井にあるエアコンの空調調整があったから、仕方なくだ。
ビルの最上階、全面ガラス張りで渋谷を見下ろすように窓に設置されたカウンター席がずらり、他にもオシャレなテーブルや、安定感のある大き目なバランスボールにローテーブルが置かれてて今時のITオフィス感が漂ってる。
クライミングウォールの壁が合ったり小スペースにはスピンバイクにトレーニングベンチまで置かれてる。
きっとあれだ、ああいうのは陽キャ達がやるんだろうなって横目で見てたら、そこに幼馴染がいたんです。
銀君が3メートルはある天井にタッチして、クライミングウォールの一番上の石から飛び降りてきた。
歓声と同時にはえーよ! って隣で登ってる社員が言ってて競争していたみたいだ。
着地した銀君は肩を回して捲ったワイシャツを戻してのカフスを閉めています、横目で次あっちに足かけた方がいいですよってアドバイスしてる。
そっか、銀君そんな事してるんだ、どんだけリア充だよって心の中でツッコんで一瞬目合ったけど逸らして直ぐに背を向け渋谷が一望できるカウンター先でお友達とご飯を食べました。
左に席をおく同僚のここみちゃんはサブウェイのBLTサンドを食べながら言います。
「私達にテーブル席はちょっとね……?」
私はこくんと首を振って、
「わかります。この階に来たのは初めてですし、仕事できそうな方々勢ぞろいでいたたまれないです」
答えれば右の愛ちゃんも縦に振りながらいます。
「高所恐怖症だからしんどいけど、今だけでも渋谷を制覇した気持ちになって食べよう!」
「ですね私も高い所は苦手です! 有り得ないって言われてもこのガラスがなくなったら……って考えると景色なんて眺められないですが、外で食べるなんてもっとハードル高いですからね」
頷きながら、陽気そうな人が集まってくるフリースペースで陰キャな私達はソワソワしながら三人でご飯を食べます。なにが恐怖ってこのここには他の会社の人も共有してるから知らない人わんさか来るんです!
高いのやだし場違いな気がするから、我々は早く自分の陣地に戻りたいのです。
だから、いつもと違って上辺な会話を各々ペラペラしゃべって、お弁当を掻っ込んで一番に食べ終えたのでトイレに行く! って先に席を立ちました。
空調工事終了までまだ時間はあるけど、そんなのどっかで時間潰せばいいし、それよりこの空気とお外で銀君と同じ空間なの耐えられないから、そそくさ退場しようと思ったら。
ローテーブル席くっつけてちょっとミーテインング的なものしながら昼食とってる銀君達のグループが雑誌開いてワイワイ話してたんだ。
その内容は知らないけど、幼馴染の隣にいた女の人が雑誌を開いて「小野君はこの中でどの子がタイプなの?」って聞いてて銀君はページを一巡して、首を傾げて視線を雑誌から離した。
それで、フロアをぐるりと見渡して、ああいうのですかねえって言った。
指差したのは壁に飾られている金髪美女の外国人さんのポスターだった。
海に向かう一本の畑道、麦わら帽子からブロンドを覗かせて、整った笑顔は彫の深い目鼻立ちだ。口元に真っ白い歯を光らせて、お胸が目立つキャミソールにダメージの入ったショートパンツ…………コーラ片手にこちらにウィンクしてる。
出るとこ出ててくびれててセクシー代表みたいな、そういうレトロな飲料メーカーのポスター。
見た瞬間に私はお胸がバクバクですよ? 意味わかんないけど。
でもまあ好みは人それぞれだし否定はしません! そして銀君ならその隣にいても負けない体格してるし、皆んもああいうのね~な感想でした。
だからこそ! 空気のように私はその横をスタスタと足早に去り、誰にもその存在を知られずにフリースペースから姿を消しました。
だからね? そもそも銀君私なんて全くタイプじゃないのが前提なんです。
分かったでしょ? だから内緒だもん。私の気持ちなんて、
す
好きじゃないもん。
「はあ……」
溜息ついて首輪を眺めました。
もう自宅のベッドの上です。回想終了です。夕飯の後洗い物を真希子さんと一緒にして家に戻ってきました。両親はまだ帰ってきてません。
いつも通り二人が帰ってくるのはバラバラだろうから、私一人で入るにはもったいないのでお風呂は沸かさずシャワーで済ませました。
昔は……お風呂も小野さんの家でいただいてました。何かこれと言ったきっかけは覚えていませんが、いつの間にか銀君とお風呂に入らなくなりました。
それで、寝転がった私が両手で握るこれ、首輪にリード……私達を繋ぐ、首の輪っかです。
今は私が首につけてるこれにもちゃんと意味はあります。
0
お気に入りに追加
45
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる