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6、銀のタイプ
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きっとそんなもんです。変な望みは止めましょう。
幼馴染や親戚、身近にいる異性って年頃になると意識するもんじゃないですか。
それで時が経って、ふとした時に今まで年賀状なんてよこさなかった癖に急に結婚しましたとか子供が生まれましたとか新年早々ハガキで言い出すもんです。
ああ、私なんて眼中になかったんだなって失恋のような気持になる漫画読んだ事あります。(次の日謎のイケメン御曹司と肩がぶつかる漫画)
だから、こんなに一緒にいるけど、銀君だってわからない。
だって、私を構ってくれる理由が幼馴染……というか、まあ小さい時に私がケガすれば、そういうのは一緒にいた銀君のせいになるでしょ? 「あなたの方がお兄ちゃんなんだからちゃんと見てなきゃダメでしょう」って。
だから、そういうのの積み重ねでちゃんと守りなさいよってずっと言われてる。
おかしいよ、いつまでそれ? って思うけど、うちの両親の職業普通じゃないし、普通ってわかんない。
きっとこの世の誰だって普通がどういうもんだなんて正確には言えないでしょう? 絶対なんてない。よそはよそ、うちはうちだ。だから悩んでる。
告白しますと、私は銀君意識してますよ。
きっと……ここだけの話……だから、内緒。誰にも言わないで下さいね? 内緒内緒。
でも、聞いちゃったんです、銀君の話。だから私は変な感情表に出しちゃいけないの。
あれは、会社のお昼休み。たまたま、フリースぺースで同僚とご飯を食べていた。
いつもは自席で雑談しながらだけど、その日は昼休みにちょうど私達の天井にあるエアコンの空調調整があったから、仕方なくだ。
ビルの最上階、全面ガラス張りで渋谷を見下ろすように窓に設置されたカウンター席がずらり、他にもオシャレなテーブルや、安定感のある大き目なバランスボールにローテーブルが置かれてて今時のITオフィス感が漂ってる。
クライミングウォールの壁が合ったり小スペースにはスピンバイクにトレーニングベンチまで置かれてる。
きっとあれだ、ああいうのは陽キャ達がやるんだろうなって横目で見てたら、そこに幼馴染がいたんです。
銀君が3メートルはある天井にタッチして、クライミングウォールの一番上の石から飛び降りてきた。
歓声と同時にはえーよ! って隣で登ってる社員が言ってて競争していたみたいだ。
着地した銀君は肩を回して捲ったワイシャツを戻してのカフスを閉めています、横目で次あっちに足かけた方がいいですよってアドバイスしてる。
そっか、銀君そんな事してるんだ、どんだけリア充だよって心の中でツッコんで一瞬目合ったけど逸らして直ぐに背を向け渋谷が一望できるカウンター先でお友達とご飯を食べました。
左に席をおく同僚のここみちゃんはサブウェイのBLTサンドを食べながら言います。
「私達にテーブル席はちょっとね……?」
私はこくんと首を振って、
「わかります。この階に来たのは初めてですし、仕事できそうな方々勢ぞろいでいたたまれないです」
答えれば右の愛ちゃんも縦に振りながらいます。
「高所恐怖症だからしんどいけど、今だけでも渋谷を制覇した気持ちになって食べよう!」
「ですね私も高い所は苦手です! 有り得ないって言われてもこのガラスがなくなったら……って考えると景色なんて眺められないですが、外で食べるなんてもっとハードル高いですからね」
頷きながら、陽気そうな人が集まってくるフリースペースで陰キャな私達はソワソワしながら三人でご飯を食べます。なにが恐怖ってこのここには他の会社の人も共有してるから知らない人わんさか来るんです!
高いのやだし場違いな気がするから、我々は早く自分の陣地に戻りたいのです。
だから、いつもと違って上辺な会話を各々ペラペラしゃべって、お弁当を掻っ込んで一番に食べ終えたのでトイレに行く! って先に席を立ちました。
空調工事終了までまだ時間はあるけど、そんなのどっかで時間潰せばいいし、それよりこの空気とお外で銀君と同じ空間なの耐えられないから、そそくさ退場しようと思ったら。
ローテーブル席くっつけてちょっとミーテインング的なものしながら昼食とってる銀君達のグループが雑誌開いてワイワイ話してたんだ。
その内容は知らないけど、幼馴染の隣にいた女の人が雑誌を開いて「小野君はこの中でどの子がタイプなの?」って聞いてて銀君はページを一巡して、首を傾げて視線を雑誌から離した。
それで、フロアをぐるりと見渡して、ああいうのですかねえって言った。
指差したのは壁に飾られている金髪美女の外国人さんのポスターだった。
海に向かう一本の畑道、麦わら帽子からブロンドを覗かせて、整った笑顔は彫の深い目鼻立ちだ。口元に真っ白い歯を光らせて、お胸が目立つキャミソールにダメージの入ったショートパンツ…………コーラ片手にこちらにウィンクしてる。
出るとこ出ててくびれててセクシー代表みたいな、そういうレトロな飲料メーカーのポスター。
見た瞬間に私はお胸がバクバクですよ? 意味わかんないけど。
でもまあ好みは人それぞれだし否定はしません! そして銀君ならその隣にいても負けない体格してるし、皆んもああいうのね~な感想でした。
だからこそ! 空気のように私はその横をスタスタと足早に去り、誰にもその存在を知られずにフリースペースから姿を消しました。
だからね? そもそも銀君私なんて全くタイプじゃないのが前提なんです。
分かったでしょ? だから内緒だもん。私の気持ちなんて、
す
好きじゃないもん。
「はあ……」
溜息ついて首輪を眺めました。
もう自宅のベッドの上です。回想終了です。夕飯の後洗い物を真希子さんと一緒にして家に戻ってきました。両親はまだ帰ってきてません。
いつも通り二人が帰ってくるのはバラバラだろうから、私一人で入るにはもったいないのでお風呂は沸かさずシャワーで済ませました。
昔は……お風呂も小野さんの家でいただいてました。何かこれと言ったきっかけは覚えていませんが、いつの間にか銀君とお風呂に入らなくなりました。
それで、寝転がった私が両手で握るこれ、首輪にリード……私達を繋ぐ、首の輪っかです。
今は私が首につけてるこれにもちゃんと意味はあります。
幼馴染や親戚、身近にいる異性って年頃になると意識するもんじゃないですか。
それで時が経って、ふとした時に今まで年賀状なんてよこさなかった癖に急に結婚しましたとか子供が生まれましたとか新年早々ハガキで言い出すもんです。
ああ、私なんて眼中になかったんだなって失恋のような気持になる漫画読んだ事あります。(次の日謎のイケメン御曹司と肩がぶつかる漫画)
だから、こんなに一緒にいるけど、銀君だってわからない。
だって、私を構ってくれる理由が幼馴染……というか、まあ小さい時に私がケガすれば、そういうのは一緒にいた銀君のせいになるでしょ? 「あなたの方がお兄ちゃんなんだからちゃんと見てなきゃダメでしょう」って。
だから、そういうのの積み重ねでちゃんと守りなさいよってずっと言われてる。
おかしいよ、いつまでそれ? って思うけど、うちの両親の職業普通じゃないし、普通ってわかんない。
きっとこの世の誰だって普通がどういうもんだなんて正確には言えないでしょう? 絶対なんてない。よそはよそ、うちはうちだ。だから悩んでる。
告白しますと、私は銀君意識してますよ。
きっと……ここだけの話……だから、内緒。誰にも言わないで下さいね? 内緒内緒。
でも、聞いちゃったんです、銀君の話。だから私は変な感情表に出しちゃいけないの。
あれは、会社のお昼休み。たまたま、フリースぺースで同僚とご飯を食べていた。
いつもは自席で雑談しながらだけど、その日は昼休みにちょうど私達の天井にあるエアコンの空調調整があったから、仕方なくだ。
ビルの最上階、全面ガラス張りで渋谷を見下ろすように窓に設置されたカウンター席がずらり、他にもオシャレなテーブルや、安定感のある大き目なバランスボールにローテーブルが置かれてて今時のITオフィス感が漂ってる。
クライミングウォールの壁が合ったり小スペースにはスピンバイクにトレーニングベンチまで置かれてる。
きっとあれだ、ああいうのは陽キャ達がやるんだろうなって横目で見てたら、そこに幼馴染がいたんです。
銀君が3メートルはある天井にタッチして、クライミングウォールの一番上の石から飛び降りてきた。
歓声と同時にはえーよ! って隣で登ってる社員が言ってて競争していたみたいだ。
着地した銀君は肩を回して捲ったワイシャツを戻してのカフスを閉めています、横目で次あっちに足かけた方がいいですよってアドバイスしてる。
そっか、銀君そんな事してるんだ、どんだけリア充だよって心の中でツッコんで一瞬目合ったけど逸らして直ぐに背を向け渋谷が一望できるカウンター先でお友達とご飯を食べました。
左に席をおく同僚のここみちゃんはサブウェイのBLTサンドを食べながら言います。
「私達にテーブル席はちょっとね……?」
私はこくんと首を振って、
「わかります。この階に来たのは初めてですし、仕事できそうな方々勢ぞろいでいたたまれないです」
答えれば右の愛ちゃんも縦に振りながらいます。
「高所恐怖症だからしんどいけど、今だけでも渋谷を制覇した気持ちになって食べよう!」
「ですね私も高い所は苦手です! 有り得ないって言われてもこのガラスがなくなったら……って考えると景色なんて眺められないですが、外で食べるなんてもっとハードル高いですからね」
頷きながら、陽気そうな人が集まってくるフリースペースで陰キャな私達はソワソワしながら三人でご飯を食べます。なにが恐怖ってこのここには他の会社の人も共有してるから知らない人わんさか来るんです!
高いのやだし場違いな気がするから、我々は早く自分の陣地に戻りたいのです。
だから、いつもと違って上辺な会話を各々ペラペラしゃべって、お弁当を掻っ込んで一番に食べ終えたのでトイレに行く! って先に席を立ちました。
空調工事終了までまだ時間はあるけど、そんなのどっかで時間潰せばいいし、それよりこの空気とお外で銀君と同じ空間なの耐えられないから、そそくさ退場しようと思ったら。
ローテーブル席くっつけてちょっとミーテインング的なものしながら昼食とってる銀君達のグループが雑誌開いてワイワイ話してたんだ。
その内容は知らないけど、幼馴染の隣にいた女の人が雑誌を開いて「小野君はこの中でどの子がタイプなの?」って聞いてて銀君はページを一巡して、首を傾げて視線を雑誌から離した。
それで、フロアをぐるりと見渡して、ああいうのですかねえって言った。
指差したのは壁に飾られている金髪美女の外国人さんのポスターだった。
海に向かう一本の畑道、麦わら帽子からブロンドを覗かせて、整った笑顔は彫の深い目鼻立ちだ。口元に真っ白い歯を光らせて、お胸が目立つキャミソールにダメージの入ったショートパンツ…………コーラ片手にこちらにウィンクしてる。
出るとこ出ててくびれててセクシー代表みたいな、そういうレトロな飲料メーカーのポスター。
見た瞬間に私はお胸がバクバクですよ? 意味わかんないけど。
でもまあ好みは人それぞれだし否定はしません! そして銀君ならその隣にいても負けない体格してるし、皆んもああいうのね~な感想でした。
だからこそ! 空気のように私はその横をスタスタと足早に去り、誰にもその存在を知られずにフリースペースから姿を消しました。
だからね? そもそも銀君私なんて全くタイプじゃないのが前提なんです。
分かったでしょ? だから内緒だもん。私の気持ちなんて、
す
好きじゃないもん。
「はあ……」
溜息ついて首輪を眺めました。
もう自宅のベッドの上です。回想終了です。夕飯の後洗い物を真希子さんと一緒にして家に戻ってきました。両親はまだ帰ってきてません。
いつも通り二人が帰ってくるのはバラバラだろうから、私一人で入るにはもったいないのでお風呂は沸かさずシャワーで済ませました。
昔は……お風呂も小野さんの家でいただいてました。何かこれと言ったきっかけは覚えていませんが、いつの間にか銀君とお風呂に入らなくなりました。
それで、寝転がった私が両手で握るこれ、首輪にリード……私達を繋ぐ、首の輪っかです。
今は私が首につけてるこれにもちゃんと意味はあります。
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