【R18】兄弟の時間【BL】

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大好きな君と

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 夜中に目が覚めた、ケットしか掛けてないのに体が重くて顔しか動かなかった。
 いつも通り丸まって寝てるんだけど、その後ろから自分より一回り大きい体が僕を抱き締めていた。

 視線を上げたら綺麗な顔が静かに呼吸してる。
 届くかな……。
 少し顔上げたら顎のとこにキスできた。

 昔を思い出した。


 キスしちゃダメだって言って、豹が寝てる僕にキスしてた時、実は僕だって夜中にコッソリ豹にキスしてた。

「するならちゃんと口にして下さい」
「誰かさんのせいで体が動かないんだっつーの」

 薄め開けて長い銀色の睫毛が影を作ってる。
 豹は僕の顎を持ち上げて唇を重ねてきた。

「僕、昔もたまに豹が寝てる時隠れてキスしてたんだよ」
「…………へぇ、じゃあ俺達って結局しないとか言っておきながらキスしまくってたんですね」
「そーだな、だってしたくなるんだよ、知らんけど」
「知らんけどなりますよね、分かりますよ。兄さん兄さんって思ってたら抱き締めたくなってキスしたくなるんですよ」
「なるなる」
「なんだ、兄さん俺の事大好きじゃないですか」
「は? 好きじゃねぇよ調子乗んなヤリチン」
「直ぐ照れちゃう兄さんらぶぅう~」

 ぎゅってされて頭に顔スリスリされて、やれやれ!
 余は非情に満足であるぞ!!

「豹」
「はい」
「運命って信じる?」
「運命……?」

 顔をホールドしてくる腕にそっと手を置いた。

「そうだよ運命」

 少し間があって、前髪に豹の深い息が掛かった。

「信じてますよ、だって俺達が家族で兄弟である事は運命ですからね。これは自分で決められる事じゃないですから逆らえません。でも相愛なのは必然です、俺が兄さんを愛してるのは俺の意思だから、こうなったのは運命じゃないです」
「うん」
「俺達の意思が言葉が、兄さん抱き締めてる今の関係まで導いたんですよ。それに気付かせてくれたのは兄さんでしたけど」
「そうだな、運命だったら何も考えなくていーもんな」
「はい、いっぱい考えてここまで来ました」
「そっかいっぱい考えたのか! ごめん、パンちゃん頑張ってるのに僕ニートしてて」

 ごめんごめんって腕ポンポン叩いとく。


「ふふ、てっきりあれ、大石内蔵助みたいに自堕落なふりして真意は別にあって、いつ吉良邸に討ち入るか心中悶々としていたのかと思ってましたけど」
「そんな訳ないだろ、自分の身を捧げてまで仇討ちする武士道あったら、公園で人影見てビビって全力疾走とかしてないから、僕のどこに忠義を尽くす殿様的なものがいるんだよ。初めはいじけてたけど、最近はどうやったらこのまま働かずに済むかってそっちには本気で悶々してたかな☆ テヘ」
「流石です! 兄さんはなにやらせても極めようとしますね輝くクズ思考! 兄さん大好き」
「嫌味かよ」

 腕に噛み付いたら、超可愛い~って思ってたリアクションと違うんですけど。
 でも、こんな風に豹と話せる日がくるんて思わなかった。
 すっげ体温かい。

「ん~なんかほっとする」
「ええ」
「眠い」
「はい、まだ夜ですよ寝ましょう」
「パンちゃんの方向きたい」
「わかりました」
 体の向き変えてくれて、抱き付こうと思ったら目の前には白い肌に乳首ときたもんだ。

「えい」
「唐突な乳首攻めは止めた方がいいですよ」
「何で? 感じるから?」
「いえ? 本気の乳首攻め思い知らせてやりたくなるから」
「ヒィ!」

 はい出た暗黒笑顔舌舐めずりオバケ! 分かった分かった寝ます寝ます。
 ぎゅって抱き付いて目閉じたら豹がケット掛け直してくれた。

 豹の匂いする、上向いたらにこってしてちゅってしてくれる。
 なんだこれ、最高かよ。

「へへへ」
「ふふふ」
「笑ってんじゃねーよ気持ち悪いんだよ死ねうんこ」
「はいはい、兄さん寝んね」
 大好き豹、おやすみ。
「俺も大好きです。おやすみなさい」


 めっちゃ心の声漏れてた。











 次の日、二人で昼ぐらいに目が覚めた。
 僕はいいけど、お前はいいのかよって思ったら、このために有給を貯めに貯めに貯めといたので大丈夫ですとキラキラ笑顔で言われた。
 むしろボスから仕事はいくらでもあるけど、兄さんはこの世に一人しかいないんだから、死ぬ気で頑張ってこいと言われたって、外資なんだっけ? 社長外人なのかな言う事がイケメンだな。

 そんなんで、二人であくびしながらリビングに来て、飯どうしようみたいな。

「あれだなパンサー君よ、君は掃除はできるけど料理は全くダメだよね」
「そうですね、部屋は掃除しないと不便なのでしてましたけど、料理できなくても死ななかったのでやりませんでしたね」
「一本満足バーで満足してた訳だな」
「一回に十本は食いますけどね」
「全然満足してねぇじゃん、普通に米食えよ」

 旅行に行ってしまった斑鳩さん家の冷蔵庫には何にもなくて、冷凍庫に入ってた肉まんを温めて二人で食べた。

「ヒャァアッホー!! 兄さんと肉まんなんてしずかちゃんにお風呂みたいな組合わせじゃないですか!」
「のび太さんのエッチーッ! って何だよそれポロリはねぇよ黙って食えよ」

 とか言いつつ、なんか良くわからんが豹君が好きなので足叩いたら膝の上乗っけてくれた。

「何兄さん……ハァハァ……可愛いすぎ……抱っこでハァハァ食べたいの? ハァハァやだ……朝から俺完勃ち萌え死ぬ……ハァハァ」
「これお父さんが中華街で買ってきたのだから旨いんだよな」

 味違うから半分こにしてたまに額胸に刷り寄せて食べる朝ご飯はお腹以外も満たされる物があるなあ。
 パンちゃんパンちゃん、美味しい?

「はい美味しいです」
「っつ!? あっ……とそーいえば、髪とか……体も、風呂入れてくれたんだな、シーツも綺麗になってたしありがとう」
「いえいえ、兄さんの体なら何万回でも洗いたいですから」
「服も……あ、そうか服とか鞄取りに行かなきゃ」






「あ?」
  


 え? 豹君急に声低いんだけど!

「いや、だって困るだろ? 財布もあったしゲーム機も……」
「財布は小銭入れでしょう? 兄さんはカード作れないしあれ百均のマジックテープの財布じゃないですか、記念にあげたらいいでしょう。私物触られるのだって正直嫌ですが不可抗力。ゲーム機は買ってあげますよ新しいの」
「嫌でもお金入ってたし、セーブデー……んんん」
「るせーんだよ、俺以外の男と口聞かねぇって約束したろ」
「してねーよ!!」

 顎鷲掴みにされて唇塞がれて、このたまに出るパンちゃんの汚い言葉遣いなんですか?!
 でも言葉のわりに舌優しいし頭撫でてくるから、その、あの……あれだよな? 華ちゃんのとこ行くの不安なんだよな?

「華ちゃん嫌いなのは分かるけど、もう僕は豹だけだろ。それは誓ったよ覚えてる、ただ貰いに行くだけな」
「ああ、何でしたっけ? 華狼君だっけ? 狼だってクッソ弱そうな名前」
「はぁ? お前らみたいな、地に這いつくばって生きる動物なんて僕が嘴で目突けば一瞬で生涯終えるんだよ!」
「いやん! ホー君格好良すぎィ!!」

 ぎゅって抱き締められて体突き放す、生存競争と言うのは大きさや力だけではないのを教えてやらねばな!

「分かってると思いますけど」
「うん?」
「俺が頭下げたのは兄さんにであって高杉さんにではないですからね?」
「うん」
「兄さんにはどんな醜い自分だって構わないんです、俺と一緒にいてくれるならなんだってする覚悟ですから」
「うん、んんっ……なっ! どこ触って」

 つつっと下着越しに下からなぞられて腰が浮いて。

「俺だけを欲して俺だけ愛して俺の体だけ求めて下さい。兄さん無防備の警戒心0でうろちょろしてるから、行ったら絶対に何かされそうで怖いんですが」
「そんなの、ちゃんと断れっつああ!!」
「へぇ断れんの? じゃあ断る練習しましょうか。ほら、高杉さんが兄さんとセックスしたくて体触ってますよ振りほどいて下さい」
「ヒッ……! やっ豹の手やだあ」
「ちょっと兄さん、硬くしちゃダメでしょう? 高杉さんにも勃っちゃうんですか? 早く逃げないまたしゃぶり倒して動けなくさせて閉じかけてる穴に突っ込んで服従するまで嬲り犯しますけど」
「だ、め……パンちゃッ……ひぃ」

 掴まれて擦られて力入んないとこ耳舐められて体に熱い血が巡った。

「あーあもう濡らしてる……そんなに良かったんですか。ねぇ兄さんおねだりして? 弟のちんこ欲しいって上手に言えたら、この皆で食事してる机に押し倒して思いっきり奥まで突いてまた無理矢理射精させてあげますよ。善がり狂ってテーブルも床もどろどろに汚して意識失うまで俺で満たし」
「パンちゃんのばぁか!!」

 体捩ってガツンと頭突きして、もう! 神聖な食卓を汚すでないわ! 馬鹿者めが!

 息超上がってるけど僕だってやればできるんだゾ。
 豹は僕の額撫でて、全くノーダメージな顔で眼鏡直した。
「結構頑張りますね、可愛い」
「当たり前だろ!」
「まあ取りに行くんだとしても俺も同行するし、とりあえず今日明日は無理ですね」
「ん?」
「来週とか? 落ち着いたら行きましょうか。じゃ、準備しなきゃ」
「準備って何の?」

 豹はコップ取って僕に飲ませてきて、食事終わらせようとしてる。

「佐渡島に行く準備ですよ」
「エェエ!?!」
「ふふ、大丈夫お父さんとお母さん迎えに行くだけです」
「お? ああ、ふーんそうゆう約束してんだ」
「はい」
「へぇ……」
「兄さん、知ってます? 佐渡島二人の新婚旅行先なんですよ」
「うん、知ってるよ」
「今年で結婚三十周年なんですよ。これが僕達の答えだから必ず二人で迎えに来てって言われました」
「…………そっか」

 目、熱くなって……そんな僕見て豹はキスして笑った、何となく言いたいこと分かって抱き付いておいた。








 荷物はリュック一つに収まった、豹の荷物は初めから用意されてて何から何まで計算通りかよ、チクショー!



 二人で家出てリュックを豹が持ってくれた、家を何秒間か眺めてた、どっちから行こうかと言った訳じゃないけど僕らは歩き出した。





「ねえパンちゃん」
「何ですか」
「どーせなら、手繋いでこ?」
「え」

 見上げたら眼鏡の奥の琥珀がパチパチして、光速で手パンツで拭いてる。
 ピカピカになった手で、

「お手をどうぞ、兄様」
「うむ、苦しゅうない」

 普通に繋いで二人でじっとその手を見て、下げるタイミングで豹が恋人繋ぎに握り直してきた。

 見たらあっち向いて耳赤いし。
 ぎゅって握ってやって腕に刷り寄っちゃうゾ豹君ビクビクしてかわいーなー。

「豹、僕は恥ずかしくないからな、お前と手繋ぐの。兄弟とか男とか関係ないから、好きな人と手繋げるの、僕は嬉しいよ。こうなる日を信じてたんだ」
「え! 俺だってそういう意味で恥ずかしいんじゃないですよ。手握りたいキスしたい押し倒したい舐めたい弄りたい入れたい泣かせたい失神させたいまた入れたいっていう一連の流れ想像して鼻血が出そうだっただけです」
「中二かよ」
「いえ、小四です」
「どんだけ? 逆にお前辛抱強すぎて感心するな」
「そんな訳でこれからは二十五年貯め込んだ兄愛を昼夜問わず受け止めて貰いますからね」
「はいはい、勝手にすれば」

 冷たい兄さんきゅんきゅんするぅ!
 って信号で立ち止まってふるふるしてる弟のほっぺに不意打ちでちゅーしといた。
 驚いた顔に威厳たっぷりの上から目線で言ってやる。



「僕だって同じなんだから覚悟しとけよ」




 豹は固まって直ぐに笑って額を擦り付けて唇を重ねてきた。

「兄さん大好き」
「僕も好きだよ」


















 潮風に銀髪が揺れている、カモメが鳴いた。
 斜陽に照らされた綺麗な横顔が僕の視線に気が付いてこっちを見る。
 眼鏡を直して優しく微笑む、僕はそれに頷いてそっと肩に頭を預けた。






 島が見えた、見慣れた顔に僕達は手を振った。


















 豹と聞いた汽笛の音を、赤い夕陽を、風の匂いを、手から伝わるこの熱を、この瞬間を、この気持ちを












 僕は一生忘れないよ。






 完
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