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ひたい
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「ねぇホー君ホー君」
「何パンちゃん」
小さい時、まだ豹が俺より背もちっこくて白くてもやし通り越してカイワレみたいだった時。
「これ……」
「ん?」
「落っこちてたのこの本、にーちゃん見て」
「へぇ、あ、ちゅーしてる」
豹が子汚い雑誌を持ってきた。
お母さんの病院の待ち合い室にあったって。
「ね、ちゅーしてるの」
「うん、それで?」
「からの、これ」
ぺらっとページをめくって…………。
「これちゅー…………だけどベロがくっついてんの?」
「うん」
「何で?」
「知らない」
それはディープキスしてるワンシーンだった。
もしかして次をめくったら乳首ツンツン位はしてたかもしれないけど、その頃の僕達にはディープキスですら頭にクエスチョンマークだったから二人共その絵に興味深々だった。
「ちゅーは良くするよなママともパパともパンちゃんともさ」
「うん」
「でもこれはしないな」
「うん、した事ない」
「だな」
「だね」
二人で確認しあってまた雑誌をじっと見て…………。
でもこのベロが女の人のなのか男の人のなのか、今一良く分かんないなと僕は色んな角度から雑誌を眺めていた。
「鷹君……」
「ん?」
そしたら、豹が僕に一歩近付いて服の裾を両手で掴んできた。
「はい、べろ」
「え?」
顔を振って銀の髪を後ろに追いやって豹はゆっくり口を開いた、赤い舌が僕の方に伸びて。
あ、これは何かちょっと違うんじゃないかって思った。
いつも軽くしてる大好きよのキスと違う、わかんないけどこれは……これはしていいの?
弟と、男の子と……そんな細かい事わかんないけど……。
「ホー君……ホー君」
「あ、パンちゃん……」
弟は俺にピッタリくっついて顔を下に向けたら鼻についてしまいそうな位、舌を伸ばしていた。
でもそっか、そんな良くわかんないヤツを豹は僕としたいのかと思ったら少し舌を出してツンと弟の紅に触れた。
ぬるっとして痺れて直ぐ口を離した。
互いに目は開けたままだった。
豹はなぜか頬を赤くして少し潤んだ瞳で口を結んだ。
「何だか変な感じするね」
「うん、良くわかんないけどこれはパパとママには内緒だな」
「え? ホー君と二人だけの秘密?」
「うんそうしよう、兄ちゃんとの秘密だぞ秘密。約束」
「うん、兄ちゃんとの約束は絶対」
約束の時は互いに頭を掴んで額を擦り合わせる、それがいつの間にか僕達の中で合図になっていた。
それが約束の合図だって定めた日はないけど自然とそうなってた。
細い砂のような銀髪を掴んだら、下から手が伸びて僕の髪を掴んでべっこうの瞳が伏せる。
どちらからした訳でもなく温かいおでこがくっついて「約束げんまん」って二人で言った。
二人で瞼を開けて当たり前だけど至近距離に豹がいて目が合って、さっきこれは普通にしていいものじゃないって何となく思ったのに、なぜか弟の唇を見つめてしまった。
見つめてしまったら、豹が薄く唇を開けた。
そんでやっぱりそこから真っ赤な舌が覗いて、変に胸がソワソワして唇を噛んで誘われるままにまたその舌に触れた。
小さい時って秘密とか約束とか内緒って何か特別な感じがして、それから僕達は特に意味があった訳じゃないけど親や学校や他人の目を盗んでその行為を続けていた。
きっかけは何でもいい、バレないっつーのが楽しかったんだ。
見付かったら怒られるかもってスリルが面白かった。
そっかだったら、兄弟であんな事してんのはおかしいってその時も何となくわかってたのか、だってバレちゃいけないんだもんな。
朝起きて、一階に朝ご飯食べに行く途中で突然振り向いて豹の髪を掴んで舌を寄せる。
触れて二人でにやってして笑いながら食卓についた。
通学路で靴紐直していたら急に豹が髪を掴んできてにたくさん生徒が歩いてるのに見えないように一瞬舌が触れる。
偶然すれ違った廊下で、親がいるリビングで、教室でトイレでお風呂で……。
って何やってんだ僕!
くっ……異界なる古より宿りし神竜の意志、右目に刻まれた咎より重き獄の焔の導きよ………………より恥ずかしい黒歴史なんですけど誰か消してッ!!
まぁそんなのもいつの間にかやらなくなって、忘れて。
意味がわかって思い出した頃には、ベッドでのたうち回ってゴロゴロやってあの頃の僕、死ね死ね! ううん、やっぱ生きて!
って思う位には恥ずかしい過去に出来上がってたのである。
いや僕だけじゃないはず、恥ずかしい過去とか誰にだってあるよね?!
一回位は誰だって有名になった自分想像してサインの練習位しただろ!
したよね、してないかな、しようよ! 紙持ってきて今からやろう!
いや、そんなの僕の黒歴史に比べたらショボいな!
はぁ、ただそんなのは僕の中だけの黒歴史で豹はもっと小さかったし覚えてな…………むしろ忘れてて下さい!
と思うのに、この眼鏡君、覚えているから嫌なのだ。
怖いよ、怖い。
アレは確か中学の時、選択の授業で豹が柔道にしたから練習にちょっと体貸してくれますかって言われて、いいよ~ってしたら、投げ技決められまくって反撃してもいいですよって言われちゃって突如寝不足だと言い張った午後四時。
そこら辺から、アレなんか豹君もしかして僕より力強くね? って以後十年以上寝不足のままなんだけど(めっちゃ規則正しい快眠ニートエブリディ)
で、何とかしなきゃなんて思いも虚しく弟はみるみる僕より逞しいナイスガイになっていた。
そして今またジムに通ってどう見ても睡眠時間0,5秒って言わなきゃいけないような体になっちゃって、そんな弟が今、僕に迫ってる。
「ホー君……」
「あっ……その呼び方は止めろっつたろ」
「兄ちゃん……」
「…………それも……」
茶色い透き通った豹の目が好きだ。
でも見ていると不思議と逸らさないとと思って顔を背けてしまう。
「兄さんダメ、俺を見て下さい」
「やだってば」
顔を背けたのに両手で掴まれて、手が大きくなってて髪まで触ってる。
僕の短い真っ黒な髪の毛の感触を確かめるみたいに武骨な指が毛並みを撫でる。
「相変わらず猫っ毛……俺の髪も昔と変わってないですよ、触って下さい」
「いいよ、っつか僕にも触らなくていいから」
「ほら、兄さん触って?」
手を取られて頭の上に置かれて心臓変な風になる。
「…………こんな癖強かったっけ?」
「ああ……兄さんの手」
フッと笑いながら言われて目を合わせずに髪を見る、強めの癖毛に指を絡めた。
へぇくりくりしてるわりには固くないんだとか思って引っ張ったら琥珀が眼鏡越しに優しくカーブした。
ズキン
っと痛みにも似た胸の疼きだった。
思わず、うっと言ってしまいそうな衝撃。
そして僕はこの痛みにトラウマがあってしこりがあって傷があって心がそれを覚えてて勝手に体がそれ以上を拒絶した。
絡めた指を離そうと思ったらグッと頭を固定されて豹の息がかかる。
視線がまた絡んで……手、離さなきゃいけないのに銀髪が揺らいで額がゴツンとぶつかる。
「ちょっと豹」
「兄さん好きです」
「止めろってば、どう言う意……味」
「好きだよ鷹君」
背筋がゾクっとして息が止まる。
自分より大きい体強い力綺麗な顔、ゆっくり口が開いてああ、やっぱりあの赤が見える。
呼吸が震えた瞬間、僕の携帯が鳴った。
ローテーブルに置かれた携帯の液晶画面にはお父さんの名前が表示されていた。
ナイス助け船!! って思ったのは一瞬で豹はそれを横目で見るとにやっと笑って体重をかけてきた。
声に出さずに口を動かして額を着けたまま秘密の呪文を唱える。
弟の唇の動きに釘付けになった。
“約束げんまん”
それを読み解こうと口を真似ていたら開いた唇に豹の舌が沈んだ。
それは小さい時にやった、少し擦れ合って触れて離すのとは違って僕は焦った。
だってこんなのした事ないから、巻き込まれるように舌を連れてかれて音を立てて吸われて、僕の携帯が鳴ってるのに豹は気にも止めないで奥に入ってくる。
苦しくて髪を握りこんで侵入を拒みたいのに、息するのにやっとでぬるぬるしたのが顎を滑ってく。
「ひょ…ぅ…っ……やっぁ」
「んんっ」
眼鏡が当たって少し顔が離れて豹が濡れた唇を舐めた後、僕の唇を指で拭ってくれた。
それは赤らめた頬の昔と同じ顔。
「豹……」
名前だけポツリと出ただけで何も言えない、テーブルの携帯を取って僕に渡してくれた。
「お風呂沸かしてきます、お父さん安心させてあげてください」
「何パンちゃん」
小さい時、まだ豹が俺より背もちっこくて白くてもやし通り越してカイワレみたいだった時。
「これ……」
「ん?」
「落っこちてたのこの本、にーちゃん見て」
「へぇ、あ、ちゅーしてる」
豹が子汚い雑誌を持ってきた。
お母さんの病院の待ち合い室にあったって。
「ね、ちゅーしてるの」
「うん、それで?」
「からの、これ」
ぺらっとページをめくって…………。
「これちゅー…………だけどベロがくっついてんの?」
「うん」
「何で?」
「知らない」
それはディープキスしてるワンシーンだった。
もしかして次をめくったら乳首ツンツン位はしてたかもしれないけど、その頃の僕達にはディープキスですら頭にクエスチョンマークだったから二人共その絵に興味深々だった。
「ちゅーは良くするよなママともパパともパンちゃんともさ」
「うん」
「でもこれはしないな」
「うん、した事ない」
「だな」
「だね」
二人で確認しあってまた雑誌をじっと見て…………。
でもこのベロが女の人のなのか男の人のなのか、今一良く分かんないなと僕は色んな角度から雑誌を眺めていた。
「鷹君……」
「ん?」
そしたら、豹が僕に一歩近付いて服の裾を両手で掴んできた。
「はい、べろ」
「え?」
顔を振って銀の髪を後ろに追いやって豹はゆっくり口を開いた、赤い舌が僕の方に伸びて。
あ、これは何かちょっと違うんじゃないかって思った。
いつも軽くしてる大好きよのキスと違う、わかんないけどこれは……これはしていいの?
弟と、男の子と……そんな細かい事わかんないけど……。
「ホー君……ホー君」
「あ、パンちゃん……」
弟は俺にピッタリくっついて顔を下に向けたら鼻についてしまいそうな位、舌を伸ばしていた。
でもそっか、そんな良くわかんないヤツを豹は僕としたいのかと思ったら少し舌を出してツンと弟の紅に触れた。
ぬるっとして痺れて直ぐ口を離した。
互いに目は開けたままだった。
豹はなぜか頬を赤くして少し潤んだ瞳で口を結んだ。
「何だか変な感じするね」
「うん、良くわかんないけどこれはパパとママには内緒だな」
「え? ホー君と二人だけの秘密?」
「うんそうしよう、兄ちゃんとの秘密だぞ秘密。約束」
「うん、兄ちゃんとの約束は絶対」
約束の時は互いに頭を掴んで額を擦り合わせる、それがいつの間にか僕達の中で合図になっていた。
それが約束の合図だって定めた日はないけど自然とそうなってた。
細い砂のような銀髪を掴んだら、下から手が伸びて僕の髪を掴んでべっこうの瞳が伏せる。
どちらからした訳でもなく温かいおでこがくっついて「約束げんまん」って二人で言った。
二人で瞼を開けて当たり前だけど至近距離に豹がいて目が合って、さっきこれは普通にしていいものじゃないって何となく思ったのに、なぜか弟の唇を見つめてしまった。
見つめてしまったら、豹が薄く唇を開けた。
そんでやっぱりそこから真っ赤な舌が覗いて、変に胸がソワソワして唇を噛んで誘われるままにまたその舌に触れた。
小さい時って秘密とか約束とか内緒って何か特別な感じがして、それから僕達は特に意味があった訳じゃないけど親や学校や他人の目を盗んでその行為を続けていた。
きっかけは何でもいい、バレないっつーのが楽しかったんだ。
見付かったら怒られるかもってスリルが面白かった。
そっかだったら、兄弟であんな事してんのはおかしいってその時も何となくわかってたのか、だってバレちゃいけないんだもんな。
朝起きて、一階に朝ご飯食べに行く途中で突然振り向いて豹の髪を掴んで舌を寄せる。
触れて二人でにやってして笑いながら食卓についた。
通学路で靴紐直していたら急に豹が髪を掴んできてにたくさん生徒が歩いてるのに見えないように一瞬舌が触れる。
偶然すれ違った廊下で、親がいるリビングで、教室でトイレでお風呂で……。
って何やってんだ僕!
くっ……異界なる古より宿りし神竜の意志、右目に刻まれた咎より重き獄の焔の導きよ………………より恥ずかしい黒歴史なんですけど誰か消してッ!!
まぁそんなのもいつの間にかやらなくなって、忘れて。
意味がわかって思い出した頃には、ベッドでのたうち回ってゴロゴロやってあの頃の僕、死ね死ね! ううん、やっぱ生きて!
って思う位には恥ずかしい過去に出来上がってたのである。
いや僕だけじゃないはず、恥ずかしい過去とか誰にだってあるよね?!
一回位は誰だって有名になった自分想像してサインの練習位しただろ!
したよね、してないかな、しようよ! 紙持ってきて今からやろう!
いや、そんなの僕の黒歴史に比べたらショボいな!
はぁ、ただそんなのは僕の中だけの黒歴史で豹はもっと小さかったし覚えてな…………むしろ忘れてて下さい!
と思うのに、この眼鏡君、覚えているから嫌なのだ。
怖いよ、怖い。
アレは確か中学の時、選択の授業で豹が柔道にしたから練習にちょっと体貸してくれますかって言われて、いいよ~ってしたら、投げ技決められまくって反撃してもいいですよって言われちゃって突如寝不足だと言い張った午後四時。
そこら辺から、アレなんか豹君もしかして僕より力強くね? って以後十年以上寝不足のままなんだけど(めっちゃ規則正しい快眠ニートエブリディ)
で、何とかしなきゃなんて思いも虚しく弟はみるみる僕より逞しいナイスガイになっていた。
そして今またジムに通ってどう見ても睡眠時間0,5秒って言わなきゃいけないような体になっちゃって、そんな弟が今、僕に迫ってる。
「ホー君……」
「あっ……その呼び方は止めろっつたろ」
「兄ちゃん……」
「…………それも……」
茶色い透き通った豹の目が好きだ。
でも見ていると不思議と逸らさないとと思って顔を背けてしまう。
「兄さんダメ、俺を見て下さい」
「やだってば」
顔を背けたのに両手で掴まれて、手が大きくなってて髪まで触ってる。
僕の短い真っ黒な髪の毛の感触を確かめるみたいに武骨な指が毛並みを撫でる。
「相変わらず猫っ毛……俺の髪も昔と変わってないですよ、触って下さい」
「いいよ、っつか僕にも触らなくていいから」
「ほら、兄さん触って?」
手を取られて頭の上に置かれて心臓変な風になる。
「…………こんな癖強かったっけ?」
「ああ……兄さんの手」
フッと笑いながら言われて目を合わせずに髪を見る、強めの癖毛に指を絡めた。
へぇくりくりしてるわりには固くないんだとか思って引っ張ったら琥珀が眼鏡越しに優しくカーブした。
ズキン
っと痛みにも似た胸の疼きだった。
思わず、うっと言ってしまいそうな衝撃。
そして僕はこの痛みにトラウマがあってしこりがあって傷があって心がそれを覚えてて勝手に体がそれ以上を拒絶した。
絡めた指を離そうと思ったらグッと頭を固定されて豹の息がかかる。
視線がまた絡んで……手、離さなきゃいけないのに銀髪が揺らいで額がゴツンとぶつかる。
「ちょっと豹」
「兄さん好きです」
「止めろってば、どう言う意……味」
「好きだよ鷹君」
背筋がゾクっとして息が止まる。
自分より大きい体強い力綺麗な顔、ゆっくり口が開いてああ、やっぱりあの赤が見える。
呼吸が震えた瞬間、僕の携帯が鳴った。
ローテーブルに置かれた携帯の液晶画面にはお父さんの名前が表示されていた。
ナイス助け船!! って思ったのは一瞬で豹はそれを横目で見るとにやっと笑って体重をかけてきた。
声に出さずに口を動かして額を着けたまま秘密の呪文を唱える。
弟の唇の動きに釘付けになった。
“約束げんまん”
それを読み解こうと口を真似ていたら開いた唇に豹の舌が沈んだ。
それは小さい時にやった、少し擦れ合って触れて離すのとは違って僕は焦った。
だってこんなのした事ないから、巻き込まれるように舌を連れてかれて音を立てて吸われて、僕の携帯が鳴ってるのに豹は気にも止めないで奥に入ってくる。
苦しくて髪を握りこんで侵入を拒みたいのに、息するのにやっとでぬるぬるしたのが顎を滑ってく。
「ひょ…ぅ…っ……やっぁ」
「んんっ」
眼鏡が当たって少し顔が離れて豹が濡れた唇を舐めた後、僕の唇を指で拭ってくれた。
それは赤らめた頬の昔と同じ顔。
「豹……」
名前だけポツリと出ただけで何も言えない、テーブルの携帯を取って僕に渡してくれた。
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