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雄○太○

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「え? 何? 何で袴田君?! 私のめぐちゃんは?!!」
「俺に尾台さん引き渡して帰りましたよ、優しい方ですよね本当に。ねぇ尾台さん、俺この前お酒の飲み方考えて下さいって言いましたよね」
「う……あの、ここどこ?」
「俺の家」
「ベッド……?」
「俺のベッド」
「体?」
「裸」
「ヒゥ!!」
「尾台さんがあっついあっついって勝手に脱いだんですよダメだよって優しく言ってるのに。そういうのも本当止めて? 俺じゃなくてもするの? 昔はどうしてたんですか禁酒させますよ」


 目がちょっと怒ってるので、袴田君のエッチ! とか言うのは止めておこう。

「しゅみません」
「迎えに行く前に尾台さんの家に寄って服とか少し身の回りのもの持ってきたんで、お風呂入ったらそのまま寝ていいですよ」
「ウンアリガト」
「いいえ」

 袴田君はVネックの白いシャツに黒いルームウェア着てて、へぇそうゆうの着るんだ。
 ベッドの頭のとこ座って腕組んで足組んで私を睨んでる。

「袴田君怒ってるの? 大好きな尾台さんの事……怒ってますか」
「ええ、怒ってますね言う事聞かないから。大好きだから怒りも倍ですよ」
「え! やだぁ」
「やだじゃないでしょう、いい年してどうしてそんなクソガキみたいな飲み方しかできないんですか」
「あ、あ……」
 歯ギリギリしてる!
「俺がいなかったらそのまま変な人に連れてかれてるかもしれないじゃないですか」
「そ……うかな」
「ねぇ尾台さん、誤魔化さないで、ごめんなさいちゃんとして?」

 声恐いの、目も見下しまくりだし。

「ぅう……」
「そんな目で見てもダメです」
「あ、あ……ごめん……なさぃ」

 袴田君の眼鏡越しの目がちょっと見た事ない冷たいヤツだったので、マジビビる。

「ちゃんと反省して次に生かすって約束しますか」
「するする! 私やれば出来る子!」

 いっぱい頷いたら袴田君はくすっと笑って私の頬を撫でて額を寄せてきた。
「これが最後ですよ」
「……はい」
「ケンカにならなくて良かったですね」
「うん」
「久瀬さんから、ちょっと言葉攻めし過ぎてオーバーヒートさせちゃったから慰めてあげてって言われてます」
「慰めてくれるの?」
「もちろん、とりあえずお風呂入れますか? 先に入ってればいつでも眠れるから」
「袴田君は?」
「入りましたよ」
「そっか」
「一緒に入りたかった?」
「ばか!」

 ほっぺ両手でむにゅってしたら、袴田君はそのままちゅってしてきた。
 何これ恋人みたいな時間じゃないですか(セフレって言われてるけど)。

「場所わかる?」
「はい」
「お風呂場に全部用意してあります、着ていた服は黒い袋に入れておいて下さい」
「黒い袋?」
「洗濯代行に頼んでるんで」
「自分で洗いなよ、どんだけシティボーイだよ」
「面倒臭いんで無理です不潔にするよりいいでしょう? お金で解決できる事は活用しないと」
「ふぅん……」


 脱衣所に行ったら、大きな黒いバックがあって、これに入れると洗濯して畳まれて家に届くんだって、そんな会社が存在する事を今日初めて知ったよ。
 洗濯物をお金払ってしてもらうって正直住む世界が違うなぁって感想だ、そういえば料理もしないって言ってたよね。
 袴田君……実は謎だらけじゃん。
 私の話はいっぱい聞いてもらうけど、私は袴田君の事何も知らないや。

 シャワーの使い方分からなくて苦戦して、今度は私が袴田君のシャンプー使う番だ。
 いや、待てよ、初めて袴田君の家で目覚めた日も体のべたつきとかなかったし、私あれお風呂入ってたぽいんだよな。
 うちのユニットバスなんかより全然広くて、綺麗で鏡なんかオシャレな形してるしシャワーの粒子細かい。
 そんでもって、ここに元カノと入った事あんのかなって不意に考えちゃうんだけど、何なんだよ私! だってメイク落としとかあるんだもん、気になるじゃん。

 あ、やだ今更になって放置されてるスマホとか気になってきた。
 いや、今更だよね見たかったらいくらでも見る時間あるだろうし、ってゆうか私これお風呂終わってどんな顔で袴田君に声かけるの。
 お風呂終わりましたって? なんかそれ準備オッケー的な感じになってない??
 わしゃわしゃしてたら、やだ、めっちゃ泡立つこのシャン……ってこれボディーソープじゃん! 髪ぎしぎししちゃう!!

 もう最悪最悪ってしながら全部終わらせて脱衣所見たら、私の家のベッドにポイってされてたであろうパジャマが置いてあった。
 手に取ってクンクンして、うんこれうちの。
 あ、歯ブラシも家のと同じの、磨こ磨こ。

 今まで飲み会あった日記憶なくても朝起きたら普通にパジャマ着て寝てたけど、あれも全部袴田君がしてくれてたのかな。
 ぎゅってパジャマ胸に抱えて、ドア開けたら直ぐそこにいるのに袴田君の顔思い浮かべてしまった。
 何だよ側に居てももんもんすんのかよ、思春期か。

 袖通して、背中が濡れないように手首に付けてあったゴムで髪結わいて脱衣所を出た。
 真っ白いフローリングの廊下の壁には写真が飾られてて、行った事ないような海外の港町と深海の生物に波…………い、意味不明、どこ褒めるんだこれは、どっちも私のセンスとは程遠い。
 ドアを開ければ小さな音楽が聞こえて…………ジャズ……なのか、え? ジャズなのかこれは? サビがどこなのかよくわからないんだけどケツメイシではないのは分かるってゆうか、サックスとトランペットとホルンの違いも全く分からんけど、この曲好きとか言った方がいいのかな、袴田君はキッチンのカウンターでパソコンを弄っていた。
 おしゃれなバーチェアに座って足を組んで、タバコを咥えながら視線だけ私に向けて。

「おかえりなさい」
「はい……」
「煙ごめん。空気清浄器ついてるけど、ここが一番換気扇に近かったから」
「別に気にしないで下さい」

 袴田君がタバコ吸うのは知ってたけど、飲み会でも吸ってる姿は見た事なかったので新鮮だった。
 と言っても私を見て直ぐ消してしまったけど。

「ソファーに座って待ってて?」
「え?」
「手洗ってきます、髪乾かしてあげる」
「え、あ……はい」

 言われるがままちょっと待ってたら袴田君は化粧水やら持って現れた。

「なぁに?」
「いつも尾台さんの顔に俺が勝手に塗ってるやつ」
「いつも?」
「そう、家で使ってるのと同じでしょ? いつ家に来てもいいように同じ物常備してましたから」

 発言する前に化粧水顔にぱしゃぱしゃされちゃって、オイル塗られちゃってクリーム揉み込まれて。

「ちょっと待って袴田君!!」
「何ですか順番間違えてますか、スクワランオイルちゃんと乳化させましたけど」
「違くて何これ!」
「え? いつもの酔っぱらった時してる尾台三法則ですよ」
「三法則?」
「風呂入れる、スキンケアスする、服着せる」
「ありがとうございます」
「ええ、もう二年目なので慣れました、泥酔してなければお風呂一人で入って出てくる良い子なんですよこの子」
「その体に塗ろうとしてるのは?」
「杏子油です、これは俺が使ってるやつ」

 黙って塗られて良い香りするのに袴田君無表情なんだけど!

「ドキドキ! は?」
「待ってください、俺は明日必ず綺麗な状態で尾台さんを出社させる使命感みたいのあるんで邪魔しないで」
「わ、わかった」
「飲み会で「それじゃあ袴田君、後は宜しくね」って言われてからが本番ですからね」
「お疲れ様です…………あの、そ、総務って大変だね! ファイツ☆」
「…………」
「ヒッ!」
 睨まれちゃった! 誰のせいで? みたいな目されちゃった!

 髪にも杏子油塗られて乾かされて一息つく頃には袴田君の寄りかかるのも恥ずかしくなくなってた。



 その…………無言なのはいいんだけど、あの…………ふとめぐちゃんに言われた言葉思い出しちゃって、変に意識しちゃう。

「はい、終了……じゃあ尾台さんお水飲みましょうね」
「はい」
「常温? 冷たいの?」
「冷たいのがいいです」
「わかりました」

 袴田君は冷蔵庫からペットボトルとグラスを持ってこっち来るんだけど。
 私の視線はある所に釘付けなっていた。

 めぐちゃんの可愛らしいハイトーンが頭の中に響く。



【それでそれで? やっぱり袴田君の雄は太かった??】
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