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Childhood friend lover2

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 胸が鷲掴まれて心臓が止まりそうになる、だってハイジと呼ばれたそいつはサッカーボールのTシャツに短パンなんだよ。
 オレが想像していた素朴で目がキラキラでクララのバカ! って言いそうな女の子じゃない、あえて言うなら素足くらいしか同じ所がない、だがしかし、ハイジは笑いながらこっちに駆け下りてきてオレに右手を差し出してきたのだ。

「ボク、新井ハイジ宜しく!」

 ああ、マジかよ……こいつが本当にハイジちゃんなのか!
 あまりのショックに頭がグルグルだよ、でも仕方ないから手握っておくか。

「オレ、沖田かける……」
「ん? かける? かけるってどういう字?」
「字?」

 確かオレの名前は難しいヤツで……と答えられないでいたら、父さんが。
「飛ぶ、とか空高く飛び跳ねるみたいな漢字だよ」
「ああ、飛翔のかけるか」

 とバカそうな顔で言ってのけた。
 ひしょう……って? え?
 なんて、バカそうなこいつにバカにされそうで聞けない。

 なんっつーか、絶対女子だと思っていたせいで、その姿にドン引きしてオレが恥ずかしくなっちゃって、それ以降顔が見れなかった。

 だが、このハイジとやらがとんでもない距離なし野郎だったから、その日の午後からうるさかった。

 お昼を簡単にカップラーメンの天ぷらそばで済ませたら、五分後には「かーけーるぅ! あーそーぼぉ!」って来たのだ。
 迷惑だから止めなさい!! ってハイジのお母さんが首のとこ掴めば、直にうちの母さんが「いいですよーお友達0人だから遊んでください!」って勝手なこと言った。
 オレはもちろん自室に逃げ込んだが、追い掛けられて見つかってしまい。ハイジはオレの部屋を見るや窓を開けて「おおおお!」って叫んだ後、なぜか外に出て行った。

 何だと思ったら、数分後には「おい、翔!!」って声がして、開けられた窓から顔を覗かせたら真正面の窓からハイジが顔を出していた。
「ボクの部屋ここだから宜しくな!」
「いや別に」
 何を宜しくなんだよ。
「喜べよ」
「全然嬉しくないから」

 で、またものの数秒で帰って来たと思ったら、折り紙とかいっぱい持って来てるし、仕方ないから遊んでやることにした。
 遊んで、遊んで、おやつ食べて遊んで。

 気付いたら夕方になってて、ハイジのばーちゃんがうちの庭で焼き肉でもしませんか、なんて言うからそのまま一緒に夕飯なんか食べてしまった。
 別にハイジがいるから美味しいんじゃない、普通に肉が美味かったんだ。
 オレ達はおにぎり食いながら肉食って野菜は避けてアイスまで食ったらお腹いっぱいになって、またオレの部屋で遊んだ。
 ハイジも覆面ライダー知ってた、飛行機の模型も超喜んでた、恐竜も好きだって、人のもん勝手に触んなよ。

 で、新しい家は嬉しいけど、一人で寝るなんて考えらんないって枕を父さん達の部屋に置くって用意してたのに、まさかのオレ達は遊び疲れてそのまま二人でベッドで寝てしまったのだ。

 夜中に一回目が覚めた、知らないヤツと目が合ってビックリしたけど、にこってされたから何も言わずにそのまま手繋いで寝た。

 そんなオレの引越し一日目だった(尚、母さんは酔っぱらってそのままハイジの家で寝てた)。

 次の日は、確かあれだ、朝一でうちの風呂に一緒に入ったんだ、父さんと三人で記念すべき一番風呂はハイジと一緒だった。
 で、朝ご飯はハイジの家で食おうってなって、東京って近所付き合い薄いって聞いてたのにそんな事ないんだな。
 ハイジの家は古くて……といっても汚い古さじゃない、ちゃんと掃除はしてあるけど懐かしい感じで模様が入った擦りガラスや玉暖簾に電話も黒電話がまだ現役で畳の部屋に仏壇に、縁側付きの庭だ。
 新しい家もいいけど、こっちの方がただいまっぽい、オレは嫌いじゃないよ。

 ハイジのおばーちゃんが握ってくれたおかかのおにぎりと野菜の味噌汁とウィンナーと甘い卵焼き、全部食べたら、外案内してくれるって。
 ハイジ君いい子ねーって素敵なお隣さんで安心したって母さんは言ってた。

 その後夏休みが終わるまで、悔しいが毎日遊んでしまった、幼稚園の事も色々教えてくれた、園章が桜の型で格好良かった。
 ちなみに転園した幼稚園でオレ達のクラスは別々だった。
 というか、その先も小学校も中学校も高校も、同じ所だけどクラスは別だった。
 大学は学部も違うしな。

 まあ別に? 正直? ハイジとオレってあんまり性格あってないし一緒じゃなくて構わないんだけどさ?
 でも園庭遊びの時間やバス待ちの時間は必ずハイジと遊んでたかな、特別仲がいいヤツ、なんてのもいなかったし。
 そんでオレは幼児ながらあることに気付いてしまった、認めたくないまさかの事実……。








 ハ イ ジ ……モ テ る !!!!!!!


 あの○○くんと結婚するんだぁーっで良く出てくるヤツ、単語で出てくるナンバーワンがハイジ君のお嫁さんになるんだーであった。
 え、何でだよ、あのハイジが!?
 あの強引で遊ぼう遊ぼううるさくて、バカみたいに笑ってやたらと明るいウザいだけのアイツがモテるって?!!

 が、ハイジのモテは幼稚園の一時的な物じゃなくてその後も変わらずで、女子達はこぞってハイジの名前を口にしたな。

 おかしい、おかしいよ。
 オレだってハイジちゃんと結婚するって言う予定だったんだ。




 突然決まった引っ越し、隣の家には同い年の子、初めまして、と顔を上げ赤面する二人。
 そこには純粋無垢な元気で明るい笑顔の似合う女の子がいるはずだったんだ、これがオレとハイジちゃんのラブストーリー!!!!
 後にオレはこのハイジちゃんの幻想に囚われ、いつかこのオレを受け止め癒してくれる幼女ハイジちゃんが現れるんではないかと、童貞を温め温め成長して行く事になるのだが、この時のオレはまだそれを知らない。

 んで、あれだ新しい幼稚園の思い出は、親子遠足で芋掘りに行って疲れたオレの分までハイジが掘ってくれて、芋も待ってくれたし帰りのバスも一緒に座って帰ったとか、ハイジのお誕生日会とか、クリスマスとかそういうの。
 別に、楽しかった思い出だとは言ってねえけど、まあそれなりの幼少期だな、オレのアルバムなのかハイジのアルバムなのか訳わかんない位アイツが映ってる寂しさ溢れるメモリー見ます? 焼き払おうかな。


 だから小学校もそう、クラスが違うから実際そんなつるんでた訳じゃないんだ。
 でも玄関を開けたらハイジは必ずうちの前にいて、一緒の小学校だから仕方なく通う毎日だ。


「まだ飯食ってんのかよ」
「今沖田? って言えよ」
「言わねえよバカ」
 ああ、本当にアホ面。
「朝からバカとはなんだよ」
「バカにバカって言っただけだろっつか袋はぁ? 何でリコーダーの袋ないんだよ吹いたら戻せよ」
「うるさいなあ、この方が何かあった時直ぐ吹けるだろ」
「お前如きが何を吹くんだよ雑音にしかならないんだから止めとけ」
 ランドセルからリコーダー引き抜いてパン食ってるハイジの頭ポコポコ叩いてたら、ハイジはにやってオレを見てパン平らげて口を拭った。
「ハハハハハハ!!! ボクの才能に溺れるがいい」
「あ?」
 オレからリコーダー取り上げて咳払いすると、おもむろに口に当てて吹き出して、通学通勤、散歩中の人がたくさん行き交う通学路で、ハイジのリコーダーの音が響いた。










「情熱大陸……だと……?!」





 選曲ぅッ!!!
 葉加瀬太郎もびっくな穴を塞ぐ滑らかな指先と、リズム感、そしてミスタッチがないんだが?!!
 ハイジは自分の世界に入ったまま目をつぶって歩きだして気持ち悪さこの上なかったので別の道から学校に行ったら、あいつはどこまで行っってしまったのか遅刻してきた。
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