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寧々ちゃんまだまだ寵愛中
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何でも鑑定団に出す為保管しているお宝ではなく、現役で活躍している黒電話が我が家にはある。
骨董屋で買ったんじゃないよ、おじいちゃんが昔使ってたの。
それでこの黒電話がジリジリジリジリジリって鳴る度に私の胸はワクワクしてしまうのだ。
家電と聞いて、思い出すのはうちの家電、最新のものじゃなかったけど、ナンバーディスプレイがあって、どこからかかってきたのか分かるのが当たり前の時代に私は生まれた。
携帯だってそうだ、出る前に誰からかかって来たのか当然のように知ってる。
しかも、出たくなければ指先一つで拒否してしまえるのが、私の知ってる電話なのだ。
だから、この黒電話が初めて家に響いた時、私は火災報知器が鳴ったのかと思って、泣いてしまった。辰巳さんち木造だし、燃えちゃうって怖かった。
そしたら「大丈夫電話だよ」って額にキスされて、てっきりアンティークとして置かれているんだと思っていた黒電話に辰巳さんの手が伸びた時は感動した。
え、それ本当に声聞こえるんですか?! って大きな声で言ってしまって、辰巳さんから、シーされてしまう。
それから、家の電話が鳴るのが楽しみで仕方ない、出るまで誰がかけてきたのかわからないのもいい。
それに【はい、辰巳です】って言えるのしゅき。
休みの日のお昼、家の中でジリジリジリジリって鳴り響て、私は走って受話器を取りに行った。
辰巳さんはお庭のチューリップに水をあげてる、去年の冬に色んな球根を一緒に植えたの。
ようやく芽が出てきたよ。
受話器を持って、相手が誰だか分からないから背筋を伸ばして耳を澄ませる。
「はい、辰巳です」
【ああ、花子?】
「あ……えっと……はいそうです」
【元気にしてる?】
「はい、元気です」
【良かった、一郎は?】
「えっと……今、お庭にいます」
【焚火はダメだぞ】
「お花にお水あげてます」
【おお、そうか。二郎は?】
「今日はバイトだけど、その後夕飯食べに家に来るって……いつもの感じだと泊まるのかな?」
【そうかそうか】
「急用ですか?」
【いや、ばーさんのアクセサリーとか服とか? また出て来たから暇ならうちにおいで、欲しいもん持ってっていいから】
「はい」
【俺、明日の午前中は家にいるから】
「はい、分かりました」
【じゃあ、花子ちゃんも風邪ひかないように気を付けろな】
「はい、おじいさまも」
チンっと電話を切れば、後ろから頭をなでなでされて見上げる、辰巳さんはタオルで肘まで拭きながら首を傾げた。
「おじいちゃん?」
「はい、そうです。おばあさまの形見? が出て来たそうなので取りに来いって」
「出て来たんじゃなくて、隠してたの出したんでしょ。寧々ちゃんに渡したくてずっとしまってたんだよ」
「??」
「だっておばあちゃんが死んだの十年前の話だし。どこかに保管してたんでしょう」
「そうなんですか」
「花子ちゃんに会いたくて仕方ないんだね。素直じゃないんだから」
辰巳さんは呆れ顔で言いながら携帯いじってる。
「誰に連絡するんです?」
「ん? 二郎」
って普通に言ってるけどお!!
「その! 一郎二郎花子って何です? 私かなって思って返事しちゃってますが」
一郎さんは、ああって携帯を弄るのをやめて、私を抱っこしてそのまま縁側に移動すると腰を降ろした。
水を撒いて、きらきら光るお庭を見ながら一郎さんは教えてくれる。
「ほら、家族の中でおじいちゃんだけが日本人の顔に名前でしょ?」
「言われてみれば……」
「今は寧々ちゃんがいるけど、昔は家族で揃うと、じいちゃん以外皆この系の顔だからね浮いてたんだよ彼は」
「そうですね……お写真で見ましたが、お父さんもアジア色薄いお顔でした」
「そうそう、でさ? 名前に関してとやかく言うじいちゃんじゃなかったんだけど、自分が呼ぶとして、この顔でロドニーだエロフェイだって言うのは抵抗があるって、突然僕を一郎って呼び出したんですよ。おばあちゃんは絶対アイビーって呼んでたけど」
「ほう」
「父は【おい、太郎】って呼ばれてましたよ。母はヨシ子、もちろん正式な場では本名で呼んでましたけど」
「…………」
じっと見つめ合って、思う。
いや私は寧々でいくない?
骨董屋で買ったんじゃないよ、おじいちゃんが昔使ってたの。
それでこの黒電話がジリジリジリジリジリって鳴る度に私の胸はワクワクしてしまうのだ。
家電と聞いて、思い出すのはうちの家電、最新のものじゃなかったけど、ナンバーディスプレイがあって、どこからかかってきたのか分かるのが当たり前の時代に私は生まれた。
携帯だってそうだ、出る前に誰からかかって来たのか当然のように知ってる。
しかも、出たくなければ指先一つで拒否してしまえるのが、私の知ってる電話なのだ。
だから、この黒電話が初めて家に響いた時、私は火災報知器が鳴ったのかと思って、泣いてしまった。辰巳さんち木造だし、燃えちゃうって怖かった。
そしたら「大丈夫電話だよ」って額にキスされて、てっきりアンティークとして置かれているんだと思っていた黒電話に辰巳さんの手が伸びた時は感動した。
え、それ本当に声聞こえるんですか?! って大きな声で言ってしまって、辰巳さんから、シーされてしまう。
それから、家の電話が鳴るのが楽しみで仕方ない、出るまで誰がかけてきたのかわからないのもいい。
それに【はい、辰巳です】って言えるのしゅき。
休みの日のお昼、家の中でジリジリジリジリって鳴り響て、私は走って受話器を取りに行った。
辰巳さんはお庭のチューリップに水をあげてる、去年の冬に色んな球根を一緒に植えたの。
ようやく芽が出てきたよ。
受話器を持って、相手が誰だか分からないから背筋を伸ばして耳を澄ませる。
「はい、辰巳です」
【ああ、花子?】
「あ……えっと……はいそうです」
【元気にしてる?】
「はい、元気です」
【良かった、一郎は?】
「えっと……今、お庭にいます」
【焚火はダメだぞ】
「お花にお水あげてます」
【おお、そうか。二郎は?】
「今日はバイトだけど、その後夕飯食べに家に来るって……いつもの感じだと泊まるのかな?」
【そうかそうか】
「急用ですか?」
【いや、ばーさんのアクセサリーとか服とか? また出て来たから暇ならうちにおいで、欲しいもん持ってっていいから】
「はい」
【俺、明日の午前中は家にいるから】
「はい、分かりました」
【じゃあ、花子ちゃんも風邪ひかないように気を付けろな】
「はい、おじいさまも」
チンっと電話を切れば、後ろから頭をなでなでされて見上げる、辰巳さんはタオルで肘まで拭きながら首を傾げた。
「おじいちゃん?」
「はい、そうです。おばあさまの形見? が出て来たそうなので取りに来いって」
「出て来たんじゃなくて、隠してたの出したんでしょ。寧々ちゃんに渡したくてずっとしまってたんだよ」
「??」
「だっておばあちゃんが死んだの十年前の話だし。どこかに保管してたんでしょう」
「そうなんですか」
「花子ちゃんに会いたくて仕方ないんだね。素直じゃないんだから」
辰巳さんは呆れ顔で言いながら携帯いじってる。
「誰に連絡するんです?」
「ん? 二郎」
って普通に言ってるけどお!!
「その! 一郎二郎花子って何です? 私かなって思って返事しちゃってますが」
一郎さんは、ああって携帯を弄るのをやめて、私を抱っこしてそのまま縁側に移動すると腰を降ろした。
水を撒いて、きらきら光るお庭を見ながら一郎さんは教えてくれる。
「ほら、家族の中でおじいちゃんだけが日本人の顔に名前でしょ?」
「言われてみれば……」
「今は寧々ちゃんがいるけど、昔は家族で揃うと、じいちゃん以外皆この系の顔だからね浮いてたんだよ彼は」
「そうですね……お写真で見ましたが、お父さんもアジア色薄いお顔でした」
「そうそう、でさ? 名前に関してとやかく言うじいちゃんじゃなかったんだけど、自分が呼ぶとして、この顔でロドニーだエロフェイだって言うのは抵抗があるって、突然僕を一郎って呼び出したんですよ。おばあちゃんは絶対アイビーって呼んでたけど」
「ほう」
「父は【おい、太郎】って呼ばれてましたよ。母はヨシ子、もちろん正式な場では本名で呼んでましたけど」
「…………」
じっと見つめ合って、思う。
いや私は寧々でいくない?
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