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寧々ちゃんまだまだ寵愛中
私の可愛い眼鏡ちゃん ◎
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皆さんこんにちは! 尾台 絵夢です、営業二課で事務員さんをしてます。
お客さんと上手くいかない日もあるけれど、仕事はそれなりに充実しています。
好きな言葉は袴田です!
それでそれで、そんな私には後輩が二人いて一人はアルバイトの恵ちゃん。
アルバイト二年目でこないだ更新どうするのって聞いたら正社員登用試験受けてみようかなぁって言ってた、受けて受けて。
後もう一人は寧々ちゃんって眼鏡が可愛い女の子、今その寧々ちゃんに午後イチお願いしたい書類を届けに行く所です。
時刻はお昼休み中でして、前まで一緒にお昼食べていた日もあったけれど、今はさっぱりよ。
少し寂しいけど……子供はいつか親を離れて行くものだわって喜びましょう。
それで…………あ、いたいた、やっぱりあそこね。
寧々ちゃんの背中が見えたのでポンポンと叩けば伏せていた瞼がゆっくり開いた。
「寧ー々ーちゃんおーきーて」
「ん……尾台さ……?」
「ごめんね、せっかく寝てたのに」
「おはよう、angel」
辰巳さんが額の柔らかい髪を分けてキスして、寧々ちゃんは眠たそうに瞬きをしながら私を見る、そしたらハッと驚いて。
「わわわわ! そうだここ会社!」
「どんだけ二人の世界? まあいいや、これ目通しておいてって書類、さっき渡すの忘れてたから」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあまたね」
辰巳さんは寧々ちゃんを抱きながらPCを操作してたからこっちは見てなかったけど、一応頭を下げておいた。
いや、これ普通の会社じゃありえないと思うんだけど、寧々ちゃんが小さいせいか、辰巳さんの見た目のせいか皆あの状態でも気にせず接してる。
それは突然「お昼は辰巳さんの所に行ってきます」って言った日に寧々ちゃんがスタスタ部長席に向かって何か話した後辰巳さんに跨った時は、ええええぇぇえ??!! ってなったけど、直におにぎり食べだして、大声で話すでもない、いやらしいことするでもない、食べ終わっても静かにじっと胸にくっついてるだけで、時間になったら戻ってきたから。
ああ、うん、あれは座り心地のいい椅子みたんいなもんなのかなって謎の納得をしてしまった。
自席に戻って両手で頬杖をつきながら隣でスマホ片手にお菓子食べてるめぐちゃんに聞いてみる。
「ねえ私が会社で袴田君に跨ってお昼食べ」
「訴える」
「ですよね」
寧々ちゃんの方見たらさっきの書類読みながらパックのジュース飲ませてもらってた。
いいな、私も寧々ちゃんに何か飲ませたいな、餌付けたいな何この手のムズムズする感じ。
はあ、それにしても凄いな辰巳さんは本当に寧々ちゃんを射止めるなんて、とついこないだのことを思い出した。
それはある日の午後、私と桐生さんは辰巳さんに呼び出されていた。
理由は何となく予想はついてる、こないだ寧々ちゃんが取引先を怒らせてしまって危うく契約を中断されてしまう所だった。
それを私と桐生さんでお詫びに行ってトラブルは一旦収束した、担当はまた私に戻された。
相手が相当怒ってるから直に行こうって、辰巳さんには事後報告だった。
ミーティングルームに行く足が重くって部屋の前でうおおおおお……ってファイル抱き締めて震えてたら、肩を叩かれた。
「大丈夫だよ尾台、スケジュール調整できなかった僕の責任だから」
「そんなこと言ったら一番近くで見てたの私なのに……でもなんでしょう、寧々ちゃんずっと仕事してるのに進捗と日報に記載される仕事量と……何か違和感があって」
「そうなんだよね、仕事できるはずなのに上手く回せてないよね。相談してって言うんだけど大丈夫ですって返ってきちゃうし、でも容量だけ見るとできない仕事量じゃないし……」
「うん……それで気になって手出しちゃうと、謝らるから声掛けるのも難しいんです」
と、まさかその時は一課の仕事をやらされてるんて思わなくて、で、時間になったから入室したら辰巳さんは仕事中で私達の気付いてどうぞっと前の椅子を示した。
二人で席に着けば辰巳さんは左手に握ったペンを止めて言った。
「気付いていると思うから、率直に言いますね。なぜ八雲の担当を僕に断りもせず外したんですか。あれは僕が直接彼女に渡した仕事だったんですけど」
「それは先日お話した通り」
「桐生、僕は同じ話を二度聞きません時間の無駄だから。では結果、君達は何を得ましたか。はい尾台」
「結果……得た? んっと……」
「聞いて直に答えが出ないなら何も得られなかったってことだね。だって今から君の口から出てくる言葉は言い訳だから」
口を結んですみませんって言いそうになる、特に苛立った口調な訳じゃない、辰巳さんはいつだって怒らないし今も冷静に、間を置いて話してくれる。
長い指が組んでる腕を叩いて、な、何か言わなきゃなんだけど、そう、きっとここで桐生さんが僕が……と続けても犯人探しはしてないてって言われるだろうし、少しの沈黙があって辰巳さんは頷いて眼鏡を直した。
「じゃあ別の観点から、尾台はさ……何で寧々ちゃんを叱ってあげないの」
「え?」
「自分で言ってたよね怒りたくないってそれはそうだよ、自分本位に感情に任せて利益と保身の為に相手を威圧する行為は何の意味もないよ。でもさ叱るのは違うでしょ、部下を思って相手本位になって成長する為のアドバイスして正しい方向に導いてあげること、それが叱るだよ。有能な彼氏がいるんだからもっと彼から学びなさい」
「はい」
「二歳児にさ、積木渡して一発で全部積み上がると思う? 失敗するでしょ何度も、どうしてその成功や達成に繋がる大切な失敗を君達が摘み取るのかな。手を出して積み上げるはもちろん何の為にもならないよ。だからって、できないと決めつけて積み木を取り上げることは、彼女を否定してると等しいって分からない? 結局君達の行動は穏便に済ませたいって自分達のことしか考えていないんだよ。桐生はさ管理職に就いたんだから、体動かしてないで頭動かしましょう」
「はい」
「教育っていうのは、作るのではなく育てることです。あの時上手く彼女を叱ってあげられたら、目の前で起きた事実だけじゃなくて、他の所に気付けたはずなんだ。どうしてこんなことになったのかって聞いてあげるべきでしたよ。このまま同じようなことが起こったら、また君達は彼女から理由も聞かずに仕事を取り上げますか。その結果彼女はどうなりますか、君達がしたことの恐ろしさにもっと気付いて下さい。主観的にならずに素直な気持ちを伝えて、双方が納得できるまで話し合う、それがコミュニケ―ションでしょう。もし今僕がした内容に納得できない部分があればいくらでも意見を下さい」
二人共首を横に振って、納得できないと言うか……。
「むしろ腑に落ちた感じで……トラブルは解決したのに、解決してないみたいな……毎日変な感覚なんです。そうですよね寧々ちゃんの中では何も解決してないですね」
「でも寧々ちゃんも怖い思いしただろうし、って触れられなくて僕も障りない態度を取ってました」
「まあ大丈夫、君達は素直で思いやりのある人間だから、この話をしっかり心に留めておけば、二度同じ失敗は繰り返さないでしょう。そうだな……でも彼女の教育はもう少し根幹の所で助けが必要そうだから僕に任せてもらっていいかな」
そんなこと聞かれても頷くだけだけど、
「辰巳さんが? 私の席に座って? ですか」
「それは別に構わないですけど、具体的に何をするんですか」
「まあ仕事に関わると言うより、少しお話ししようかな……と。ああ、明日にでも彼女呼び出しておいてよ」
「呼び出すって……な、何を理由にですか」
だって寧々ちゃんなんて一番辰巳さん苦手そうだし。
「んー? 何かないの? 桐生君」
「何か? 何か……ですか、うーん……ああ、こないだ寧々ちゃんメンタルヘルスの資格取ってたけど……」
言えば辰巳さんは指をパチンと鳴らした。
「よし、それで呼び出しといて。で、難しい話はここらでおしまいにしましょうか」
辰巳さんは、ふうと息を吐いて椅子に寄りかかると頭の後ろに手を回して天井を見て呟いた。
「寧々ちゃんってさぁ…………可愛いよねぇ……」
「ええええぇええぇえ……」
「辰巳さん、もしかしてそれ言いたくて僕達呼び出してとか言いませんよね」
「どう、尾台ちゃん恋って楽しい?」
「へ? 恋? 恋!! それはもう楽しいですよ!! 四六時中相手のこと考えてキャッキャってなります」
「う!!」
「いいなあいいなあ、僕も恋いしたいな、いやもうしてる気がするな」
辰巳さんは目瞑ってふふふふふふふってにんまりしてて、え? でもそれって。
「ん? その寧々ちゃんに恋してるってことですか」
「yes」
「犯罪じゃないですか!」
「何を言ってるんだよ桐生君彼女は成人した女性だろ。ああ、僕が十代に見えるって?」
「いや、全然見えませんけど」
「なんて言うかあの図柄が……辰巳さんと小さくて眼鏡で無垢な寧々ちゃんっていうのが」
「そんなことを言ったら僕だって童貞だから無垢ですよ」
「ええええぇえぇぇぇえ…………」
「あらかじめ言っておきますけど僕達協力はできませんからね」
「協力? そんなものは必要ないよ。もう僕達は神に導かれ運命を共有した、後はタイミングだけだ」
「タイミング……」
「そうだよ、チャンスとタイミング、人生はいつも駆け引きだって……桐生君は痛い程分かってるだろ? まあ黙って僕を見ていればいいさ。ああ、恋のキューピッドになりたいとか、もちろんそういうのは大歓迎だけれどね?」
「恋のキューピッド?!!!」
何それなりたい!! 人を幸せにするのいい!!!
辰巳さんは口元を隠すように手を置いて。
「時はきた、神との契約は交わされた」
「え? 何て何て?」
「尾台も聞こえた? 辰巳さん今何て言ったんですか」
その答えに辰巳さんはぴっと人差し指を立てて、
「Where there is a will、there is a way. 一週間で彼女の全てを手に入れます」
自信たっぷりに言ってミーティングはお開きになった。
そして見事に翌週、寧々ちゃんは辰巳さんと結婚するのって言った…………しゅごい!!
ちなみにキューピッドになったのだから、役に立たないと! と思って辰巳さんに寧々ちゃんが下着欲しがってたよって教えてあげたのは私です。
それにしても、月曜日おはようって笑って言ってくれた私の眼鏡ちゃんは本当に可愛かったなあ。
お客さんと上手くいかない日もあるけれど、仕事はそれなりに充実しています。
好きな言葉は袴田です!
それでそれで、そんな私には後輩が二人いて一人はアルバイトの恵ちゃん。
アルバイト二年目でこないだ更新どうするのって聞いたら正社員登用試験受けてみようかなぁって言ってた、受けて受けて。
後もう一人は寧々ちゃんって眼鏡が可愛い女の子、今その寧々ちゃんに午後イチお願いしたい書類を届けに行く所です。
時刻はお昼休み中でして、前まで一緒にお昼食べていた日もあったけれど、今はさっぱりよ。
少し寂しいけど……子供はいつか親を離れて行くものだわって喜びましょう。
それで…………あ、いたいた、やっぱりあそこね。
寧々ちゃんの背中が見えたのでポンポンと叩けば伏せていた瞼がゆっくり開いた。
「寧ー々ーちゃんおーきーて」
「ん……尾台さ……?」
「ごめんね、せっかく寝てたのに」
「おはよう、angel」
辰巳さんが額の柔らかい髪を分けてキスして、寧々ちゃんは眠たそうに瞬きをしながら私を見る、そしたらハッと驚いて。
「わわわわ! そうだここ会社!」
「どんだけ二人の世界? まあいいや、これ目通しておいてって書類、さっき渡すの忘れてたから」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあまたね」
辰巳さんは寧々ちゃんを抱きながらPCを操作してたからこっちは見てなかったけど、一応頭を下げておいた。
いや、これ普通の会社じゃありえないと思うんだけど、寧々ちゃんが小さいせいか、辰巳さんの見た目のせいか皆あの状態でも気にせず接してる。
それは突然「お昼は辰巳さんの所に行ってきます」って言った日に寧々ちゃんがスタスタ部長席に向かって何か話した後辰巳さんに跨った時は、ええええぇぇえ??!! ってなったけど、直におにぎり食べだして、大声で話すでもない、いやらしいことするでもない、食べ終わっても静かにじっと胸にくっついてるだけで、時間になったら戻ってきたから。
ああ、うん、あれは座り心地のいい椅子みたんいなもんなのかなって謎の納得をしてしまった。
自席に戻って両手で頬杖をつきながら隣でスマホ片手にお菓子食べてるめぐちゃんに聞いてみる。
「ねえ私が会社で袴田君に跨ってお昼食べ」
「訴える」
「ですよね」
寧々ちゃんの方見たらさっきの書類読みながらパックのジュース飲ませてもらってた。
いいな、私も寧々ちゃんに何か飲ませたいな、餌付けたいな何この手のムズムズする感じ。
はあ、それにしても凄いな辰巳さんは本当に寧々ちゃんを射止めるなんて、とついこないだのことを思い出した。
それはある日の午後、私と桐生さんは辰巳さんに呼び出されていた。
理由は何となく予想はついてる、こないだ寧々ちゃんが取引先を怒らせてしまって危うく契約を中断されてしまう所だった。
それを私と桐生さんでお詫びに行ってトラブルは一旦収束した、担当はまた私に戻された。
相手が相当怒ってるから直に行こうって、辰巳さんには事後報告だった。
ミーティングルームに行く足が重くって部屋の前でうおおおおお……ってファイル抱き締めて震えてたら、肩を叩かれた。
「大丈夫だよ尾台、スケジュール調整できなかった僕の責任だから」
「そんなこと言ったら一番近くで見てたの私なのに……でもなんでしょう、寧々ちゃんずっと仕事してるのに進捗と日報に記載される仕事量と……何か違和感があって」
「そうなんだよね、仕事できるはずなのに上手く回せてないよね。相談してって言うんだけど大丈夫ですって返ってきちゃうし、でも容量だけ見るとできない仕事量じゃないし……」
「うん……それで気になって手出しちゃうと、謝らるから声掛けるのも難しいんです」
と、まさかその時は一課の仕事をやらされてるんて思わなくて、で、時間になったから入室したら辰巳さんは仕事中で私達の気付いてどうぞっと前の椅子を示した。
二人で席に着けば辰巳さんは左手に握ったペンを止めて言った。
「気付いていると思うから、率直に言いますね。なぜ八雲の担当を僕に断りもせず外したんですか。あれは僕が直接彼女に渡した仕事だったんですけど」
「それは先日お話した通り」
「桐生、僕は同じ話を二度聞きません時間の無駄だから。では結果、君達は何を得ましたか。はい尾台」
「結果……得た? んっと……」
「聞いて直に答えが出ないなら何も得られなかったってことだね。だって今から君の口から出てくる言葉は言い訳だから」
口を結んですみませんって言いそうになる、特に苛立った口調な訳じゃない、辰巳さんはいつだって怒らないし今も冷静に、間を置いて話してくれる。
長い指が組んでる腕を叩いて、な、何か言わなきゃなんだけど、そう、きっとここで桐生さんが僕が……と続けても犯人探しはしてないてって言われるだろうし、少しの沈黙があって辰巳さんは頷いて眼鏡を直した。
「じゃあ別の観点から、尾台はさ……何で寧々ちゃんを叱ってあげないの」
「え?」
「自分で言ってたよね怒りたくないってそれはそうだよ、自分本位に感情に任せて利益と保身の為に相手を威圧する行為は何の意味もないよ。でもさ叱るのは違うでしょ、部下を思って相手本位になって成長する為のアドバイスして正しい方向に導いてあげること、それが叱るだよ。有能な彼氏がいるんだからもっと彼から学びなさい」
「はい」
「二歳児にさ、積木渡して一発で全部積み上がると思う? 失敗するでしょ何度も、どうしてその成功や達成に繋がる大切な失敗を君達が摘み取るのかな。手を出して積み上げるはもちろん何の為にもならないよ。だからって、できないと決めつけて積み木を取り上げることは、彼女を否定してると等しいって分からない? 結局君達の行動は穏便に済ませたいって自分達のことしか考えていないんだよ。桐生はさ管理職に就いたんだから、体動かしてないで頭動かしましょう」
「はい」
「教育っていうのは、作るのではなく育てることです。あの時上手く彼女を叱ってあげられたら、目の前で起きた事実だけじゃなくて、他の所に気付けたはずなんだ。どうしてこんなことになったのかって聞いてあげるべきでしたよ。このまま同じようなことが起こったら、また君達は彼女から理由も聞かずに仕事を取り上げますか。その結果彼女はどうなりますか、君達がしたことの恐ろしさにもっと気付いて下さい。主観的にならずに素直な気持ちを伝えて、双方が納得できるまで話し合う、それがコミュニケ―ションでしょう。もし今僕がした内容に納得できない部分があればいくらでも意見を下さい」
二人共首を横に振って、納得できないと言うか……。
「むしろ腑に落ちた感じで……トラブルは解決したのに、解決してないみたいな……毎日変な感覚なんです。そうですよね寧々ちゃんの中では何も解決してないですね」
「でも寧々ちゃんも怖い思いしただろうし、って触れられなくて僕も障りない態度を取ってました」
「まあ大丈夫、君達は素直で思いやりのある人間だから、この話をしっかり心に留めておけば、二度同じ失敗は繰り返さないでしょう。そうだな……でも彼女の教育はもう少し根幹の所で助けが必要そうだから僕に任せてもらっていいかな」
そんなこと聞かれても頷くだけだけど、
「辰巳さんが? 私の席に座って? ですか」
「それは別に構わないですけど、具体的に何をするんですか」
「まあ仕事に関わると言うより、少しお話ししようかな……と。ああ、明日にでも彼女呼び出しておいてよ」
「呼び出すって……な、何を理由にですか」
だって寧々ちゃんなんて一番辰巳さん苦手そうだし。
「んー? 何かないの? 桐生君」
「何か? 何か……ですか、うーん……ああ、こないだ寧々ちゃんメンタルヘルスの資格取ってたけど……」
言えば辰巳さんは指をパチンと鳴らした。
「よし、それで呼び出しといて。で、難しい話はここらでおしまいにしましょうか」
辰巳さんは、ふうと息を吐いて椅子に寄りかかると頭の後ろに手を回して天井を見て呟いた。
「寧々ちゃんってさぁ…………可愛いよねぇ……」
「ええええぇええぇえ……」
「辰巳さん、もしかしてそれ言いたくて僕達呼び出してとか言いませんよね」
「どう、尾台ちゃん恋って楽しい?」
「へ? 恋? 恋!! それはもう楽しいですよ!! 四六時中相手のこと考えてキャッキャってなります」
「う!!」
「いいなあいいなあ、僕も恋いしたいな、いやもうしてる気がするな」
辰巳さんは目瞑ってふふふふふふふってにんまりしてて、え? でもそれって。
「ん? その寧々ちゃんに恋してるってことですか」
「yes」
「犯罪じゃないですか!」
「何を言ってるんだよ桐生君彼女は成人した女性だろ。ああ、僕が十代に見えるって?」
「いや、全然見えませんけど」
「なんて言うかあの図柄が……辰巳さんと小さくて眼鏡で無垢な寧々ちゃんっていうのが」
「そんなことを言ったら僕だって童貞だから無垢ですよ」
「ええええぇえぇぇぇえ…………」
「あらかじめ言っておきますけど僕達協力はできませんからね」
「協力? そんなものは必要ないよ。もう僕達は神に導かれ運命を共有した、後はタイミングだけだ」
「タイミング……」
「そうだよ、チャンスとタイミング、人生はいつも駆け引きだって……桐生君は痛い程分かってるだろ? まあ黙って僕を見ていればいいさ。ああ、恋のキューピッドになりたいとか、もちろんそういうのは大歓迎だけれどね?」
「恋のキューピッド?!!!」
何それなりたい!! 人を幸せにするのいい!!!
辰巳さんは口元を隠すように手を置いて。
「時はきた、神との契約は交わされた」
「え? 何て何て?」
「尾台も聞こえた? 辰巳さん今何て言ったんですか」
その答えに辰巳さんはぴっと人差し指を立てて、
「Where there is a will、there is a way. 一週間で彼女の全てを手に入れます」
自信たっぷりに言ってミーティングはお開きになった。
そして見事に翌週、寧々ちゃんは辰巳さんと結婚するのって言った…………しゅごい!!
ちなみにキューピッドになったのだから、役に立たないと! と思って辰巳さんに寧々ちゃんが下着欲しがってたよって教えてあげたのは私です。
それにしても、月曜日おはようって笑って言ってくれた私の眼鏡ちゃんは本当に可愛かったなあ。
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