【R18】モブキャラ喪女を寵愛中

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診察

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 三小田君は家が近くて小学校も一緒だった、だからと言って話す間柄ではなかったけれど。
 低学年の時は私より小さくて集団下校の時は私より前を歩いていた。

 でも高学年になって急に背が高くなって私は抜かされてしまい、いつの間にか最後尾の旗を三小田君が持っていた。

 小学校は下校班で行動する事があって、その班で掃除とか昼休み遊んだり、飼育係とか…………三小田君と接する機会は多かった。
 でもクラスは一緒だったり違ったり、カーストが違かったし私は陰キャだしでやっぱり話す事はなかったけれどね。
 小学校の卒業式はいっぱいいっぱいで三小田君がどこにいたか覚えてないし話してない。


 それで家が近いから学区も一緒で中学も一緒。

 中学生になって登下校がたまに被る事があったけれど話さないし、単語帳の事があって、更に口を利かなくなってしまった、だから三小田君の事はあまり記憶にない。
 私が避けてたしね……。



 そんなんだから、ちゃんと正面から見たのなんて、あの単語帳を返されたぶりだよ! 
 皆の前で公開処刑されたあの日ぶり………。
 ひぃいいい……恥ずかしすぎ! 死ねる!!

 えっと……あれっていつだっけ? もう十年以上前よ……私は顔も体系も変わったな。
 昔はおばあちゃんにこそこそお菓子貰っててちょっとぽっちゃりしてたから、デブ! ってほどではないけど。
 成長するにつれいつの間にか痩せてた。

 三小田君は相変わらず格好いいな。
 真っ黒の清潔感のあるショートカットに昔と変わらない垂れがちな目が優しそうで女子からモテていた、そっか目の下のホクロも今気付けばセクシーな感じだ。
 走るのも速くて秀才で、住む世界が違う人は生きる世界も違うんだ……。

 ワイシャツに白衣着て胸にはネームプレート見て直ぐ分かったのは、男の人にしては特徴のある高い声と、その印象的な目……あっ眼鏡は止めたんだ。


 お医者さん……なりたいって言ってたもんね。
  

「本当になるなんて凄いですね」
「まだまだ見習いです」
「立派……」


 じっと見つめあっちゃって。


「ええっと……その久しぶりだね……ああっじゃないか、あの、こちらに座って下さい」
「あ…………はい」

 二人して緊張しちゃって……どうしようどうしようってなる。

「えっとこれ……」
「ああ、荷物はその、後ろかごに入れていいよ、あっ……下さい」
「は、はい」

 熱あって体辛くて肩掛けのポーチ外すのも一苦労でわたわたしてたら手伝ってくてれて、不意に距離近くてわわわわわわ!

 びくってしたら、体ぐらってして三小田君は支えてくれた。
 コートも脱がせてくれて、診察室暑かったからちょっと汗かいてて恥ずかしい。

「ああ……っと熱が……38、8℃でしたっけ、いつからですか」
「今日の朝から? 昨日は少し怠かったんですけどそこまで辛くはなくて、寝る前ちょっと喉の方までかっかするなって思って寝て、起きたらこんな辛くなってました」
「はい」

 
 三小田君は私を椅子に座らせて、パソコンを見ながらカルテに色々書いてる。
 マスクを外してたまにキーボードを叩く指先を見て。

「全部電子カルテ……じゃないんですね」
「んん……難しい所だよね、古いカルテは徐々に電子カルテに移行してるんだけど、まだまだ電子カルテ反対って人も多くて診察はこっち使ったり面倒臭………………………ってうわ最悪!! 今の愚痴じゃないからね!!」
「分かってるよ……なんかあの……会社の健康診断、問診の先生ずっとパソコン見ててこっち向かないから無機質な感じで、昔みたいに手書きカルテっていいなって思っただけです」
「ああ、そっか……」

 PCの手を止めて三小田君は私の方を真っ直ぐ向いて顔を覗き込んできた。

「他に体の不調はありますか」
「何いきなり……」
「だって八雲さんがこっち向いてくれなくて寂しいって言ったから」

 にやってされて思わず顔逸らしちゃって三小田君って以外と意地悪なんだな。

「ああっと……少し息苦しいです……軽い喘息持ちなので」
「じゃあ肺の音聞きましょうか」
「う」
「医療行為です」
「……………はい」

 聴診器出されて……。
 って、あのやっぱあの変な空気流れるよね。

「服の上からで大丈夫って言いたいですけど、その厚手のニットはちょっと……どうかな」
「あ、はいごめんなさい、どうぞ」

 って医療行為なんだからいかがわしい気持ちなしでニットの首の所を少し開ける。
 当然、補整下着のせいで深い谷間のできた盛り上がった胸が露になって、そこに聴診器置くの。

 昔はおじいちゃんの先生ばっかだったし、服の上からでも、え? むしろ直接でもいいっすよ! って感じだったのに知り合いってだけでどんだけ恥ずかしいんだよ!!


 これは医療行為! って胸元もっと開いて……うん、だって厚手のニットっとヒートテック二枚重ねじゃ服の上から音なんて聞こえませんもんね!
 目瞑って見せたら、ピトッて冷たい聴診器が肌に吸い付く場所を変える度胸が揺れて何とも言えない気持ち。

「んん」

 でも熱い体にひんやりした聴診器がちょっと気持ち良かった。

「大きく息吸ってもらっていいですか」
「はい」
「吐いて、もう一回」
「はあ……」
「ごめん、ゆっくりでいいから」

 肺の音を聞かれて、そうだった! ゴールドの下着とか超恥ずかしいじゃん!
 三小田君見たかな? 目瞑ってるからわからない! こんなもさい見た目の癖に下着は金とか…………とか!!
「後ろ向いて下さい」
「は、はい」

 背中の音も聞かれて、胸よりは恥ずかしくなけどピトピト聴診器当てられてやだやだ!


「そんなゼーゼーはしてないかな、咳出ます? 鼻は?」
「どっちも少し……」
「喉見ましょうか」
「う」
「い、医療行為……です」
「わかってますよ」

 でもなんか唇がワナワナしちゃうんだってば!
 三小田君綺麗な顔して近付いてくるし、なにその木の棒! そんなもの入れないでぇ!

 舌圧子で舌を押さえられて、顎震えて。

「もう少し口開けられます?」
「っ……ん」
「大丈夫? 苦しい?」
「んぁ……」
 顎触られて変な声出てしまった!

「ああ、扁桃腺も腫れてるし赤いね、痛いでしょう」
「はい」

 板抜かれて口閉じて三小田君は抗生物質出しますねって机に向かった。

「他に何か症状ありますか」
「特には」
「お腹痛くないですか? 昔のデータでは風邪の時一緒に整腸剤も処方されてるけど」
「大丈夫です」
「わかりました」

 三小田君はカルテにペンを走らせてて、診察……終わったのかなってコートに手を掛ける。

「あの……八雲さん」
「ん? はい何ですか」
「あの、さ…………今更なんだけど」
「はい」

 ペンを置いた三小田君は視線を一周させて私の方を向いて頭下げてきた…………え? 何? 何で?


「ごめんね…………えっと、その……昔の事ごめんなさい」
「へ? 何何? ごめんね? ってどうして」
「あれ、覚えてないかな。八雲さん肺炎で学校休んでその間毎日僕が家に行ってたでしょ、それで復帰してお礼にって単語帳を……」
「ああ、やだやだ! そんな……あれは!! 私の方が…………お母さんで嫌な気持ちにさせた事だから……」

 肩を叩いて顔を上げてもらって、でもまだ三小田君は納得いかない表情だ。

「違うんだよ……ほら僕達小学校から一緒だったし……皆に冷やかされてさ、あの頃はバカであんな事言うつもりなかったのに……」
「本当にいいってば」
「凄く後悔したんだよ。あの後直ぐに謝りに行きたかったんだけど、八雲さんいなくて、探してさ……見付けたんだけど体育館裏の見えない所で……一人で泣いてて…………僕、声掛けられなくて……本当に後悔してる」
「ああっと……昔の……事だから私も子供で、だから泣いただけで、気にしないで下さい」
「その後、塾で会っても挨拶もぎこちなくなっちゃって、八雲さん僕を避けるようになったから、どんどん言えなくなってしまって、あの日傷つけて本当にごめんなさい」
「…………」

 そんな事今更言われてもなんだけど、あ、やだ……下向いてたから勝手に涙出ちゃう。

 三小田君は直ぐにティッシュで涙を拭いてくれた。

「本当にごめん、こんな一方的なごめん僕の自己満だって分かってるんだけど。でもずっと言いたかったんだ」
「うん、ありがとう」

 平気? って目ティッシュでぽんぽんされて、何だよこのイケドクターは無理すぎ、とりあえず早く帰りたいから頷いて笑っとく。

「ちなみに八雲さん今何してるの?」
「ん?」
「進路悩んでたよね。医学部コースの模擬授業受けてたし、塾の前に公園でよく一人でぼーっとしてた。色々あったからてっきり医療系志望なんだと思っていたんだけど……」
「ああ…………悩んだ事もあったけど……結局お母さんに相談できなくてね? 今は普通に事務職だよ」
「そっか、なんか勿体ないな……凄く勉強できる人だったに……」
「それが仕事じゃ全然使えなくて……あ、やだ、ごめん……なんでもない」
「ううん」

 ごみ捨てるよって手を出されて、ありがとうって涙を拭いたティッシュを渡したら、そのまま手を握られた。

「三小田君?」
「さっきのごめんね、には続きがあるんだよね」
「?」
「あのさ、それ……その鞄の横に置いてある紙、ここの病院の事務員募集だよね、転職考えてるの?」
「えっと……急にって訳じゃないけど」
「そっか…………」
「あの、三小田君、手を……」

 引っ込めようと思ったら強く握られて、


「一緒に働けたら嬉しいな、その時は運命だと思っていい?」
「ダ、ダ、ダダダダメ!!」
「ふふふ」

 手離されてコートと鞄持って急いで立ち上がる、診察室を出る時三小田君は言った。







「八雲さん凄く綺麗になったね」
「?!!」






 何も答えず部屋を出た。



 こ、怖ッ!!

 よろよろ待ち合い室の椅子に座って、わわわわわ!!
 びっくりしたぁあ!!

 心臓がバクバクやばい!!
 急に何だよ三小田君! 体調悪いのに止めてよもう!
 呼吸整えてたらお尻のポケットがブルブルして、携帯見る。



「!!!」





【体調はどうですか? お見舞いに行ってもいいかな。会いたいです】




 しゅごいの受信してしもた。
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