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第2章 私は学園で恋をする

魔導書が無くなりました

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遅くなりました!すみません!



**************
















 ダンスの授業の後、私が離れようとして、「離すわけないでしょう?」と即座に告げた殿下は、そのまま私をエスコートをして教室に戻りました。

 ユリウス様とすれ違う時は非常に憂惧しましたが、眼光を鋭くされるだけでしたので、一時的には安心しました。でも、後から思うに、恨みがあるならもう少し分かりにくくやった方が……。隣にいた殿下は絶対に気がついていましたから。

 わざわざユリウス様から庇うようにして連れ出して下さった殿下は、やはりお優しい方だと思います。強引な所はありますが、こういう所に他の方々は強く惹かれるのでしょうね。



「ありがとうございました、殿下」

「エスコートをするのは当たり前だよ」



 お互いユリウス様の事は口には出さないで席につきました。でも感謝の言葉は、あの時庇保してくれた事も含んでいると、殿下は気がついてくれているでしょうか―――。








 **







 寮に戻った私は、魔法の自習をしようと思い、家から持ってきた魔導書を開こうと鞄の中を開けましたが……。



(ない………)



 休み時間に読もうと思って持って行ったのですが、読んだ後は確実にバッグに入れて置いていたのです。なのに、今開けてみればない。

 教室外には何処にも持ち出していません。
 嫌な予感が頭の中を横切ります。

 迂闊でした。魔法で鍵を掛けておけば良かったです。

 万が一自分が机の下に入れて置いた場合があると思い、教室に戻って探してもやはり見つからない。

 さて困りましたね。父様から頂いたものですから、絶対に何がなんでも返してもらわなければなりません。禁忌の魔法は書いていないので、見られて駄目なものでは無いことが不幸中の幸いです。



「ジゼル嬢……?」



 険しい顔をしていた私でしたが、後ろから掛けられた声に振り向き、そして息を呑みました。頬がぽっと赤くなるのが自分でもよく分かります。平静を取り繕って挨拶をしました。



「御機嫌よう、レヴィロ公爵様」

「どうしたのですか?教室に1人で」



 教室の出入口から覗いているクリストファー様は首を傾げました。



「忘れ物を致しまして」

「そうでしたか。そうしたら、私に君を女子寮まで送らせて下さい。こんな時間に1人では、幾ら敷地内でも危ないですから」



 紳士なクリストファー様にきゅんとしましたが、本当は忘れ物ではなく探し物なので、丁重にお断りをさせて頂きます。口を開こうとして、外から聞こえた声に阻まれました。



「クリストファー様」

「あぁ、ユリウス。今丁度探していたところでした。どうしましたか?」



 私は教室内、ユリウス様は教室外で、お互いにお互いは見えません。しかし、今日の今日で身体が強ばってしまいます。女性から向けられる殺気と、男性から向けられる殺気では、印象が違います。感じた事の無い恐怖が私を襲いました。防衛出来るように、魔力の気配を消しながら結界を張っておきます。



「少しよろしいですか」

「ユリウスからとは珍しいですね。いいですよ」



 私が聞いてはいけない話かもしれないので、防音の結界を張って欲しいのですが、ユリウス様の靴音が聞こえますので張っていませんね。

 ………もしかして、教室に入ってくるんじゃ……。

 私は急いで魔法で姿を消し、端に寄っておきます。



「入りましょうか」



 案の定ユリウス様は教室に入ってきました。この時間に誰かがいるとは普通思いませんから。クリストファー様は、静止させようと声を掛けようとして、教室に私が居ない事に気づき目をぱちくりとしていました。

 釣り目を細めたユリウス様は、怒気を僅かに含ませて言います。



「――ジゼル=ウェリスに近づいてはなりません」



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