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第2章 私は学園で恋をする
学園に入学しました
しおりを挟むついに、ついに、学園入学です!
全寮制なので、長期休暇以外は家に帰ってこられなくなります。家族に会えないのは寂しく思いますが、皆で学べる事に舞い上がっているのも然り。
学園は、13歳の魔力を保持している者は入学資格があり、試験でクラス分けをされる、という仕組みです。かなりの人が通うため、混乱が起きないよう予めクラス分けの通知が来るのですが、無事にAクラスでした。ウェリス家の顔に泥を塗る結果にはならなくて心底ほっとしています。
「制服似合っているわ、リズ」
シャツに細いリボンを襟の裏から通して正面に付け、膝下のフレアスカートを履き、更には校章の刺繍の付いた黒いローブを羽織っています。ローブの淵にはほんのり色がついており、これで学年を見分けるようです。ちなみに私達は紫でした。靴はヒールの付いた紺色のショートブーツで、デザインがとても可愛らしいので一番のお気に入り。
母様が私をハグして褒めてくれたので、「ありがとうございます」と抱きしめ返しました。父様も兄様も使用人の方総出で、私の門出をお祝いしてエントランスに集まっています。嬉しくて胸の奥がじんと温かくなりました。
「ドロシー、ジゼルの事よろしく頼むよ」
「はいっ!旦那様!」
貴族は3人まで使用人を連れて行って良いことになっています。基本的に自分で何でもできますが、家柄が家柄なので一人も連れて行かないのは体裁にかかわりますので、ドロシーのみを連れていきます。イリーナは侍女長なので家を動けませんから。
「では、行って参ります!」
「頑張りなさい!元気で!」
「いってらっしゃい、リズ。休暇は帰ってくるのよ!」
「いってらっしゃい。殿下は無視するんだよ!」
「「「「「「「いってらっしゃいませ」」」」」」」
それぞれから見送られ、私は馬車に乗り込み窓から手を振りました。殿下の側近とは思えない台詞を残した兄様に個人的に吃驚しましたが……。
そしてドロシーがこの場面に感激して滂沱の涙を流していたので慌ててハンカチを差し出しました。そのハンカチで鼻水もちーん。全然かまわないのですけれど、きっとそれを気づいたドロシーはまた泣いてしまうと思うのでそれが心配です。
「ごめんなさぁぁいっジゼル様ぁぁあ!!!」
「気にしなくていいよ、ドロシー」
やっぱりそうでした。
王都に住んでいる私は、学園まで一時間もかかりません。
馬車から出ると、やはり高位貴族ですので注目を浴びますから、「ごきげんよう」とお転婆な私を封印して淑女の笑顔で乗り切りました。
学園は王城のように立派で壮麗なゴシック建築で、初めて見上げた時は、その圧巻さに舌を巻きました。その校舎にこつりこつりとゆっくり足を進め入ります。
Aクラスに入ると、既に何人もの生徒が着席していました。Aクラスに入る人物というのは、事前に相応の知識を持ち合わせている者ですので、高位貴族が必然的に多くなってしまいます。
伯爵位の子息や令嬢が挨拶の為に席を立ち、こちらに向かって頭を垂れました。私もそれに返しつつ、自分の席に座りましたが、そこで気が付いてしまいました。
両隣が、フリージア様と殿下だということに―――。
これはいいのでしょうか……って全然少しも良くないですよ!
私がフリージア様と殿下を引き裂いたみたいな構図、こんなの耐えられません!
まだお二方とも到着していなかった事が救いですね。心の準備が必要ですし、まだ私が席を移動できる策を考える時間がありますから―――。
「殿下、おはようございます。○○伯爵家の■■と申します―――」
「グラシエ公爵令嬢様、ごきげんよう。△△侯爵家の●●と申しますわ―――」
oh……時間なかったぁ……。
やばい、迫っている。後ろを振り向けません。
入学早々、ジゼル=ウェリス、大ピンチです。
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