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過労
しおりを挟む隆弘さんの別荘で三日間いちゃいちゃして過ごしたのが、ちょうど二週間前。
今までのが全部夢だったのかなと思うほどに、この二週間、僕は隆弘さんと会えていない。
都外に出張だから一週間ほど帰ってこれないとは話していたものの、それ以外の日だって帰ってきた日と帰ってこない日が五分五分。
一人で食べるご飯も寂しいし、さすがにそろそろ会いたいなーと思っていると、噂をすれば影が射すというように隆弘さんから電話が掛かってきた。
喜んですぐに電話に出るも、聞こえてきたのは三坂さんの声だった。
「三坂です。翔さん、いま大丈夫?」
「大丈夫ですよ。どうかされましたか?」
「命に別状はないんだけど、隆弘が過労で倒れちゃって。良かったらお見舞いに来てあげて」
「え…すぐに行きます…!」
隆弘さんのいる病院を教えてもらって、タクシーを捕まえて急いで病院へと駆けつける。
病院に着くと救急外来の入り口で三坂さんが待ってくれていて、隆弘さんのところまで案内してくれると三坂さんはその場を後にした。
「隆弘さん」
「翔、来てくれたのか。久しぶりに会えて嬉しいよ」
「僕も会えて嬉しいけど、…病院でなんて……」
「心配かけて悪いな。検査も問題なかったし、点滴が終れば帰れるらしいから大丈夫だよ」
そう言って笑みを浮かべる隆弘さんの目の下は濃い隈が出来ていて、この二週間の忙しさを物語っていた。
「なかなか帰れなくてごめんな。連絡もあんまりできなくて。もうちょっと頑張ったら何とか出来たかもしれないが…」
「頑張りすぎて倒れた人が何言ってるんですか」
「あはは、確かに」
「また今度、帰れないぐらい忙しい日が続いたら会社まで会いに行ってもいいですか?5分でも5秒でも顔を見に……」
「もちろん、いつでも来て」
そう答える隆弘さんの笑顔があまりにも優しくて、僕は胸がぎゅっと苦しくなる。
そんなことを考えていたら、隆弘さんが僕の手を取った。そしてそのまま僕の手を口元に持っていき、手の甲に軽く口付ける。
「手繋いだまま寝てもいい?」
「いいに決まってます。ゆっくり休んでくださいね」
僕の言葉に、隆弘さんは安心したように微笑んで目を閉じた。
ーーー
約一時間ほどが経ち、点滴が終わるのとほぼ同時にお医者さんが色々と確認を行ってくれて「もう帰っても大丈夫ですよ」と許可をくれた。
隆弘さんが眠っていた間に三坂さんが車やらなんやらを用意してくれていたらしく、車に乗り込んですぐに出発することができた。
「今日いっぱいはゆっくり休んで」
「…え、明日からは」
「できるだけ仕事量は減らすけど、この時期だとゼロは厳しくて。でもなるべく家で仕事できるように、だとか、負担が減らせるように対応していくから」
コレでいいの?と隆弘さんを見て確認しようとするも、隆弘さんは俺にしか興味がないらしく、ただ僕のことをニコニコと眺めていた。
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