上 下
19 / 25

過労

しおりを挟む


隆弘さんの別荘で三日間いちゃいちゃして過ごしたのが、ちょうど二週間前。
今までのが全部夢だったのかなと思うほどに、この二週間、僕は隆弘さんと会えていない。
都外に出張だから一週間ほど帰ってこれないとは話していたものの、それ以外の日だって帰ってきた日と帰ってこない日が五分五分。

一人で食べるご飯も寂しいし、さすがにそろそろ会いたいなーと思っていると、噂をすれば影が射すというように隆弘さんから電話が掛かってきた。
喜んですぐに電話に出るも、聞こえてきたのは三坂さんの声だった。

「三坂です。翔さん、いま大丈夫?」
「大丈夫ですよ。どうかされましたか?」
「命に別状はないんだけど、隆弘が過労で倒れちゃって。良かったらお見舞いに来てあげて」
「え…すぐに行きます…!」

隆弘さんのいる病院を教えてもらって、タクシーを捕まえて急いで病院へと駆けつける。
病院に着くと救急外来の入り口で三坂さんが待ってくれていて、隆弘さんのところまで案内してくれると三坂さんはその場を後にした。

「隆弘さん」
「翔、来てくれたのか。久しぶりに会えて嬉しいよ」
「僕も会えて嬉しいけど、…病院でなんて……」
「心配かけて悪いな。検査も問題なかったし、点滴が終れば帰れるらしいから大丈夫だよ」

そう言って笑みを浮かべる隆弘さんの目の下は濃い隈が出来ていて、この二週間の忙しさを物語っていた。

「なかなか帰れなくてごめんな。連絡もあんまりできなくて。もうちょっと頑張ったら何とか出来たかもしれないが…」
「頑張りすぎて倒れた人が何言ってるんですか」
「あはは、確かに」
「また今度、帰れないぐらい忙しい日が続いたら会社まで会いに行ってもいいですか?5分でも5秒でも顔を見に……」
「もちろん、いつでも来て」

そう答える隆弘さんの笑顔があまりにも優しくて、僕は胸がぎゅっと苦しくなる。
そんなことを考えていたら、隆弘さんが僕の手を取った。そしてそのまま僕の手を口元に持っていき、手の甲に軽く口付ける。

「手繋いだまま寝てもいい?」
「いいに決まってます。ゆっくり休んでくださいね」

僕の言葉に、隆弘さんは安心したように微笑んで目を閉じた。


ーーー


約一時間ほどが経ち、点滴が終わるのとほぼ同時にお医者さんが色々と確認を行ってくれて「もう帰っても大丈夫ですよ」と許可をくれた。
隆弘さんが眠っていた間に三坂さんが車やらなんやらを用意してくれていたらしく、車に乗り込んですぐに出発することができた。

「今日いっぱいはゆっくり休んで」
「…え、明日からは」
「できるだけ仕事量は減らすけど、この時期だとゼロは厳しくて。でもなるべく家で仕事できるように、だとか、負担が減らせるように対応していくから」

コレでいいの?と隆弘さんを見て確認しようとするも、隆弘さんは俺にしか興味がないらしく、ただ僕のことをニコニコと眺めていた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ストレスを感じすぎた社畜くんが、急におもらししちゃう話

こじらせた処女
BL
社会人になってから一年が経った健斗(けんと)は、住んでいた部屋が火事で焼けてしまい、大家に突然退去命令を出されてしまう。家具やら引越し費用やらを捻出できず、大学の同期であった祐樹(ゆうき)の家に転がり込むこととなった。 家賃は折半。しかし毎日終電ギリギリまで仕事がある健斗は洗濯も炊事も祐樹に任せっきりになりがちだった。罪悪感に駆られるも、疲弊しきってボロボロの体では家事をすることができない日々。社会人として自立できていない焦燥感、日々の疲れ。体にも心にも余裕がなくなった健斗はある日おねしょをしてしまう。手伝おうとした祐樹に当たり散らしてしまい、喧嘩になってしまい、それが張り詰めていた糸を切るきっかけになったのか、その日の夜、帰宅した健斗は玄関から動けなくなってしまい…?

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話

ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに… 結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった

なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。 ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…

少年ペット契約

眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。 ↑上記作品を知らなくても読めます。  小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。  趣味は布団でゴロゴロする事。  ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。  文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。  文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。  文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。  三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。  文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。 ※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。 ※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。

処理中です...