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第31話 ローリー・ディクソン
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2年に一度、仕事で隣国を訪れる。
あと1週間後に国を出る。
そんな時だった。
「宰相、わたくしと姉妹のように育った従姉が、今回の陛下との旅行に同行するの。
それでね、どうやら従姉のロザンヌがあなたに憧れているらしいのよ。
でね・・・・・・」
王妃様から、従姉であるロザンヌ嬢を旅行中エスコートしてほしいとお願いされた。
陛下に助けを求めたが・・・・・・
逃げられた。
旅行中ロザンヌ嬢をエスコートした。
金髪に空のようなブルーの瞳のロザンヌ嬢は、儚げに見える見た目や澄んだ声に反して、物知りで楽しい女性だった。
こういう女性に好意を抱ければ良いのかもしれない。
31歳で独身。
結婚に興味がないと言っても周りはうるさい。
でも、そんなの無理な話だった。
夜会で公爵にエスコートされているミラに会って、胸が締めつけらるような思いをした。
特にミラの身につけている公爵の色のネックレスは希少価値の高いブルーダイヤモンドで、そのデザインも素晴らしかった。
他国の王族が似たようなものを身につけていたのを思い出し、公爵のミラへの思いが痛いほどに伝わった。
当たり前だが、ミラと踊ることは叶わなかった。
国へ戻れば、忙しい毎日が待っていた。
楽しみといえば、ミラからの手紙。
工房の作品が注目され、予約でいっぱいだと言う。
そんな人気が集まる工房には『ロージー』という名前がつけられたらしい。
カイからも定期的に便りが届いていた。
ロージーが剣の才能を持つ話、王女殿下に気に入られ月に二度王城へ出向いている話。
でも、ある時届いたものは、いつもの便りと違っていた。
[ロージーお嬢様が心無いメイド達の噂話を聞いてしまい、心を痛めています。
お祖母様である伯爵夫人が支えとなっていますが、ミラ様への悪意ある噂話を聞いたロージーお嬢様の心の傷は測り知れません。
またミラ様の前では元気いっぱいに振る舞っている姿が痛々しく・・・ただ見守るしかできません。
別邸に暮らすクラリス様が、ご子息であるノア様が学園に入寮されてから一層不安定になり・・・・・・]
このカイからの便りの2ヶ月後に、赤い髪の女性が懐妊した知らせを受けた。
同い年の王女殿下から慕われているロージーの立場・・・・・・
エヴァンス公爵令嬢・・・・・・
これらを無くしてしまうのは、果たして正解なのか。
今安易な判断を下すのは、将来的にロージーにとって最善と言えるのか。
そんなことを考えて、ハッとした。
俺は、何を考えていた。
・・・ただの部外者にすぎないのに。
カイ・・・・・・俺のほうこそ何もできない。
ロージーは、カイを慕っていて剣の相手も務めている。
カイとアニーの存在は、ロージーにとって支えだ。
俺は急ぎスタンリー伯爵夫人に連絡を取り、公爵家の使用人の入れ替えを提案したがそれは叶わず、使用人の再教育が行われた。
ブルージェ王国の花祭りの時季は、どこもかしこも美しい花で彩られ活気溢れる。
そんな花祭りの時季に、サリンジャーを通して二人をブルージェ王国に招待し、その招待を受けてくれる返事を受け取った。
旅は一時的なものだが、こちらにいる間はすべてを忘れてただ楽しんでほしい。
二人が楽しめるように、ロージーと同じくらいの子どもがいる補佐官にあれこれ聞いて参考にした。
仕事を無理やり調整して、二人に会えたのは旅も終わりに近い頃だった。
子どもにも好評と噂に聞く観劇は、ロージーもミラも楽しめたようだった。
屋台の串焼きはロージーの口に合ったようで、口のまわりにタレをつけて食べる姿にミラと笑った。
ミラとロージーがこの国を楽しんでくれているのが嬉しかった。
二人の笑顔を見ると胸が温かくなり、いつまでも、こうしていられたら。
二人と一緒にいられたら。
そう思わずにいられなかった。
「ローリー、色々ありがとう。
とても楽しい1か月だった」
ミラの別れの言葉に、一瞬ドキリとした。
この旅行を招待したのは、俺だけど俺じゃない。
俺は数日会っただけだから。
ミラーー
君は、気づいているのか?
あと1週間後に国を出る。
そんな時だった。
「宰相、わたくしと姉妹のように育った従姉が、今回の陛下との旅行に同行するの。
それでね、どうやら従姉のロザンヌがあなたに憧れているらしいのよ。
でね・・・・・・」
王妃様から、従姉であるロザンヌ嬢を旅行中エスコートしてほしいとお願いされた。
陛下に助けを求めたが・・・・・・
逃げられた。
旅行中ロザンヌ嬢をエスコートした。
金髪に空のようなブルーの瞳のロザンヌ嬢は、儚げに見える見た目や澄んだ声に反して、物知りで楽しい女性だった。
こういう女性に好意を抱ければ良いのかもしれない。
31歳で独身。
結婚に興味がないと言っても周りはうるさい。
でも、そんなの無理な話だった。
夜会で公爵にエスコートされているミラに会って、胸が締めつけらるような思いをした。
特にミラの身につけている公爵の色のネックレスは希少価値の高いブルーダイヤモンドで、そのデザインも素晴らしかった。
他国の王族が似たようなものを身につけていたのを思い出し、公爵のミラへの思いが痛いほどに伝わった。
当たり前だが、ミラと踊ることは叶わなかった。
国へ戻れば、忙しい毎日が待っていた。
楽しみといえば、ミラからの手紙。
工房の作品が注目され、予約でいっぱいだと言う。
そんな人気が集まる工房には『ロージー』という名前がつけられたらしい。
カイからも定期的に便りが届いていた。
ロージーが剣の才能を持つ話、王女殿下に気に入られ月に二度王城へ出向いている話。
でも、ある時届いたものは、いつもの便りと違っていた。
[ロージーお嬢様が心無いメイド達の噂話を聞いてしまい、心を痛めています。
お祖母様である伯爵夫人が支えとなっていますが、ミラ様への悪意ある噂話を聞いたロージーお嬢様の心の傷は測り知れません。
またミラ様の前では元気いっぱいに振る舞っている姿が痛々しく・・・ただ見守るしかできません。
別邸に暮らすクラリス様が、ご子息であるノア様が学園に入寮されてから一層不安定になり・・・・・・]
このカイからの便りの2ヶ月後に、赤い髪の女性が懐妊した知らせを受けた。
同い年の王女殿下から慕われているロージーの立場・・・・・・
エヴァンス公爵令嬢・・・・・・
これらを無くしてしまうのは、果たして正解なのか。
今安易な判断を下すのは、将来的にロージーにとって最善と言えるのか。
そんなことを考えて、ハッとした。
俺は、何を考えていた。
・・・ただの部外者にすぎないのに。
カイ・・・・・・俺のほうこそ何もできない。
ロージーは、カイを慕っていて剣の相手も務めている。
カイとアニーの存在は、ロージーにとって支えだ。
俺は急ぎスタンリー伯爵夫人に連絡を取り、公爵家の使用人の入れ替えを提案したがそれは叶わず、使用人の再教育が行われた。
ブルージェ王国の花祭りの時季は、どこもかしこも美しい花で彩られ活気溢れる。
そんな花祭りの時季に、サリンジャーを通して二人をブルージェ王国に招待し、その招待を受けてくれる返事を受け取った。
旅は一時的なものだが、こちらにいる間はすべてを忘れてただ楽しんでほしい。
二人が楽しめるように、ロージーと同じくらいの子どもがいる補佐官にあれこれ聞いて参考にした。
仕事を無理やり調整して、二人に会えたのは旅も終わりに近い頃だった。
子どもにも好評と噂に聞く観劇は、ロージーもミラも楽しめたようだった。
屋台の串焼きはロージーの口に合ったようで、口のまわりにタレをつけて食べる姿にミラと笑った。
ミラとロージーがこの国を楽しんでくれているのが嬉しかった。
二人の笑顔を見ると胸が温かくなり、いつまでも、こうしていられたら。
二人と一緒にいられたら。
そう思わずにいられなかった。
「ローリー、色々ありがとう。
とても楽しい1か月だった」
ミラの別れの言葉に、一瞬ドキリとした。
この旅行を招待したのは、俺だけど俺じゃない。
俺は数日会っただけだから。
ミラーー
君は、気づいているのか?
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