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第12話
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ローリーに手を取られてダンスフロアに移動すると、ちょうど曲が始まったところだった。
向かい合って、ローリーの顔が正面のよく見える位置にくる。
懐かしいその顔は、私が知るローリーよりも随分と大人の男性だった。
「・・・ん?どうした?
良い男で見惚れてしまったか?」
「額が広くてね、ちょっと見入ってしまっただけ」
「ブルージェ王国随一の理想の額を持つ男と言われているからな」
「相変わらず、よく回る口だわ」
「この口の上手さを買われて、今の地位も手にしたようなものだからな」
「ふ~ん」
「・・・な、何だ?そんなに後退してきてるか?」
私が笑うと、髪が気になるのか見えるはずはないのに目を上に向けている。
この頭の回転が速く、口が回るローリーは、今は亡きブルージェ王国出身だったお祖母様の実家であるディクソン侯爵家の現当主だ。
当時お祖母様のお兄様がディクソン侯爵家を継いだが子どもに恵まれず、お父様のお兄様つまりは私の伯父様がディクソン侯爵家の養子となった。
でも、伯父様もまた子どもに恵まれず、親戚の子爵家から養子になったのがローリーだった。
ローリーは伯父様と毎年のようにスタンリー伯爵家を訪れていた。
私が初めてローリーに会ったのは、まだ本当に幼い頃だった。
7歳年上のローリーは、夏になるとやってくる大好きな存在だった。
今考えると、ローリーは子守をさせられていたようにしか思えないが、私にとっては大切な遊び相手だった。
お人形遊びや、お絵描き、かくれんぼ。
ローリーは文句を言いながらも、いつも私が飽きるまで相手をしてくれた。
絵本でお姫様が王子様とダンスを踊るのを見て、『踊りたい!』とわがままを言えば『身長差がありすぎだろ』と言いながらも、低い姿勢になって踊ってくれた。
5歳にると、婚約者を『王子様』とはしゃぐ私に呆れながらも話を聞いてくれ、変わらずに相手をしてくれた。
そんな従兄は、学園を卒業と同時に滅多に我が家に訪れることはなかった。
最後にローリーに会ったのは私の結婚前だから、4年振りの再会だった。
「ミラ」
「・・・ん、何?」
「・・・ドレスの刺繍、いいんじゃないか」
地味ともいえる、このシンプルなドレスに渾身の刺繍をしたつもりだった。
だから、自分なりの集大成を、このドレスの刺繍を気づいてもらえたのが嬉しかった。
「・・・・・・ありがとう」
嬉しいのと少し照れくささもあり、目の前のローリーの顔を見られず辺りを見渡した。
今夜は大勢の招待客がいるうえに、ブルージェ王国の国王様もいらっしゃるので、会場は賑わいを見せている。
そんな中に、旦那様に腰を抱かれているクラリス様を見つけてしまい、一気に現実に引き戻された。
この状況を、エヴァンス公爵夫人でありながらエスコートもされずに放っておかれ、地味なドレスを着ている惨めな自分を、ローリーに知られたくない気持ちでいっぱいになった。
でも・・・・・・とっくに気づかれているのも分かっていた。
あんな隅に、公爵夫人が俯いてひとりでいるなんてありえないから。
国王様の登場に驚きすぎて、自分の情けない状況をすっかり忘れていただけだ。
ローリーの顔が見られなかった。
「ミラ、顔を上げて」
沈んだ顔を取り繕ってローリーを見上げると、なぜかニヤリと片方の口角を上げていた。
すると、行くぞ。と言って、急に私の片手を上げるとクルクルと私を回し始めた。
ーー幼い頃、ローリーにダンスを踊ってもらうたびに、こうしてクルクル回してもらった。
『もっと、もっと』とねだっては、私はよく目を回してローリーが慌てていた。
わからないけど、泣きそうになった。
「ミラ、明日スタンリー伯爵家に顔を出すんだけど、ロージーに会わせてもらえるか?」
ダンスが終わると、ローリーにお願いされた。
私は「もちろん!」と答えた。
向かい合って、ローリーの顔が正面のよく見える位置にくる。
懐かしいその顔は、私が知るローリーよりも随分と大人の男性だった。
「・・・ん?どうした?
良い男で見惚れてしまったか?」
「額が広くてね、ちょっと見入ってしまっただけ」
「ブルージェ王国随一の理想の額を持つ男と言われているからな」
「相変わらず、よく回る口だわ」
「この口の上手さを買われて、今の地位も手にしたようなものだからな」
「ふ~ん」
「・・・な、何だ?そんなに後退してきてるか?」
私が笑うと、髪が気になるのか見えるはずはないのに目を上に向けている。
この頭の回転が速く、口が回るローリーは、今は亡きブルージェ王国出身だったお祖母様の実家であるディクソン侯爵家の現当主だ。
当時お祖母様のお兄様がディクソン侯爵家を継いだが子どもに恵まれず、お父様のお兄様つまりは私の伯父様がディクソン侯爵家の養子となった。
でも、伯父様もまた子どもに恵まれず、親戚の子爵家から養子になったのがローリーだった。
ローリーは伯父様と毎年のようにスタンリー伯爵家を訪れていた。
私が初めてローリーに会ったのは、まだ本当に幼い頃だった。
7歳年上のローリーは、夏になるとやってくる大好きな存在だった。
今考えると、ローリーは子守をさせられていたようにしか思えないが、私にとっては大切な遊び相手だった。
お人形遊びや、お絵描き、かくれんぼ。
ローリーは文句を言いながらも、いつも私が飽きるまで相手をしてくれた。
絵本でお姫様が王子様とダンスを踊るのを見て、『踊りたい!』とわがままを言えば『身長差がありすぎだろ』と言いながらも、低い姿勢になって踊ってくれた。
5歳にると、婚約者を『王子様』とはしゃぐ私に呆れながらも話を聞いてくれ、変わらずに相手をしてくれた。
そんな従兄は、学園を卒業と同時に滅多に我が家に訪れることはなかった。
最後にローリーに会ったのは私の結婚前だから、4年振りの再会だった。
「ミラ」
「・・・ん、何?」
「・・・ドレスの刺繍、いいんじゃないか」
地味ともいえる、このシンプルなドレスに渾身の刺繍をしたつもりだった。
だから、自分なりの集大成を、このドレスの刺繍を気づいてもらえたのが嬉しかった。
「・・・・・・ありがとう」
嬉しいのと少し照れくささもあり、目の前のローリーの顔を見られず辺りを見渡した。
今夜は大勢の招待客がいるうえに、ブルージェ王国の国王様もいらっしゃるので、会場は賑わいを見せている。
そんな中に、旦那様に腰を抱かれているクラリス様を見つけてしまい、一気に現実に引き戻された。
この状況を、エヴァンス公爵夫人でありながらエスコートもされずに放っておかれ、地味なドレスを着ている惨めな自分を、ローリーに知られたくない気持ちでいっぱいになった。
でも・・・・・・とっくに気づかれているのも分かっていた。
あんな隅に、公爵夫人が俯いてひとりでいるなんてありえないから。
国王様の登場に驚きすぎて、自分の情けない状況をすっかり忘れていただけだ。
ローリーの顔が見られなかった。
「ミラ、顔を上げて」
沈んだ顔を取り繕ってローリーを見上げると、なぜかニヤリと片方の口角を上げていた。
すると、行くぞ。と言って、急に私の片手を上げるとクルクルと私を回し始めた。
ーー幼い頃、ローリーにダンスを踊ってもらうたびに、こうしてクルクル回してもらった。
『もっと、もっと』とねだっては、私はよく目を回してローリーが慌てていた。
わからないけど、泣きそうになった。
「ミラ、明日スタンリー伯爵家に顔を出すんだけど、ロージーに会わせてもらえるか?」
ダンスが終わると、ローリーにお願いされた。
私は「もちろん!」と答えた。
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