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第6話
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「学園の卒業パーティーで、王太子殿下の飲み物に違和感を感じたクラリスがそれを飲んだんだ。
そうしたら、どんどん気分が悪くなっていって・・・媚薬を盛られていたんだ・・・・・・」
『話を聞いてほしい・・・』
お兄様にそう言われて、ロージーがお昼寝の時間に話を聞くことにした。
今までは自分から離婚を切り出すことばかり考えていたけれど、お兄様が私と離婚をしてクラリス様と再婚する予定でいる可能性だってある。
どちらにしても、これから語られる内容を想像するだけで気が重かったし、二人きりで部屋に居ることも息がつまりそうだった。
話が始まると予想通りにあの方を“クラリス”と親しげに呼んでいた。
媚薬入りの飲み物で気分が悪くなったクラリス様には、医師による治療も行われたがあまり効き目が無かった。
医師には楽にしてあげたければ性行為をするしかない。と言われたがそんなこと出来るはずもなく、ただ苦しむクラリス様を身守るだけだった。
でも、苦しむクラリス様に懇願され、最終的にそういった行為をするに至った。
もちろん、クラリス様にはすぐに避妊薬が渡された。
お兄様は純潔を失ったクラリス様にものすごく責任を感じた。
それは王太子殿下も同じだった。
三人は学園の生徒会で共に活動する親しい間柄で、お兄様とクラリス様が幼馴染ということを殿下もご存知だった。
殿下は、ふたりが結婚できるように取り計らうと仰ったが、クラリス様はそれを断った。
でも、それから2か月後にクラリス様の妊娠が発覚する。
殿下は再度ふたりの結婚を提案するが、クラリス様が拒否したことにより表向きは外国へ嫁いだこととし、内密にとある場所で出産し生活することになった。
「ミラはすでに会ったと思うが、息子は・・・・・・ノアっていうんだ。
現在7歳で、どの家庭教師も褒めるほど優秀で。
僕たちには息子が居ないだろ。
それで、ノアを正式な跡継ぎにと考えている」
「それは・・・私と離婚してクラリス様と再婚するという「違う!」」
「・・・・・・大きな声を出して、申し訳ない。
ミラ、君との離婚なんて考えていない。
クラリスとノアには敷地内の別邸に住んでもらうつもりだ」
「愛人として囲う。ということですね」
「クラリスとは・・・・・・君と結婚してからは何もない・・・・・・。
でも、周りはこの状況をそう思うだろう」
「クラリス様は、納得されているんですか?」
「している」
「・・・・・・少し、少し、考える時間をもらえますか?」
「もちろんだ」
想定内の話のはずなのに、本人の口から語られるのは想像以上にズシリと胸に突き刺さった。
あの少年が跡継ぎでーー
ふたりが敷地内の別邸に暮らすーー
でも、先日ふたりをお屋敷で見た時には、すでにここに慣れ親しんでいるように感じた。
『ロージー!また遊びに来たよ!』
『にぃに!』
ロージーだって・・・・・・。
どうして・・・・・・
「どうして、どうして、私に黙ってロージーを会わせたんですか?」
「クラリスとノアがロージーに会いたがっていたんだ。
よくロージーの話をしていたから。
君に黙っていたのは、申し訳ないと思っている」
「・・・・・・結構です。
・・・謝罪は、もう結構です」
泣くつもりなんてないのに、今にも涙が溢れそうになった。
「ミラ・・・・・・」
お兄様の呼ぶ声が聞こえたけれど、私はその場から逃げ出した。
数日スタンリー伯爵家へ帰り、これからの事を両親に話した。
「アニーとカイを連れて行きなさい」
お母様はまるでこうなる事が分かっていたようだった。
侍女のアニーに護衛のカイ。
私が幼い頃からお世話になっていた二人は、3年前に結婚して今では夫婦でもある。
ロージーを抱いた私は、アニーとカイを連れ立ってお屋敷へ戻った。
そうしたら、どんどん気分が悪くなっていって・・・媚薬を盛られていたんだ・・・・・・」
『話を聞いてほしい・・・』
お兄様にそう言われて、ロージーがお昼寝の時間に話を聞くことにした。
今までは自分から離婚を切り出すことばかり考えていたけれど、お兄様が私と離婚をしてクラリス様と再婚する予定でいる可能性だってある。
どちらにしても、これから語られる内容を想像するだけで気が重かったし、二人きりで部屋に居ることも息がつまりそうだった。
話が始まると予想通りにあの方を“クラリス”と親しげに呼んでいた。
媚薬入りの飲み物で気分が悪くなったクラリス様には、医師による治療も行われたがあまり効き目が無かった。
医師には楽にしてあげたければ性行為をするしかない。と言われたがそんなこと出来るはずもなく、ただ苦しむクラリス様を身守るだけだった。
でも、苦しむクラリス様に懇願され、最終的にそういった行為をするに至った。
もちろん、クラリス様にはすぐに避妊薬が渡された。
お兄様は純潔を失ったクラリス様にものすごく責任を感じた。
それは王太子殿下も同じだった。
三人は学園の生徒会で共に活動する親しい間柄で、お兄様とクラリス様が幼馴染ということを殿下もご存知だった。
殿下は、ふたりが結婚できるように取り計らうと仰ったが、クラリス様はそれを断った。
でも、それから2か月後にクラリス様の妊娠が発覚する。
殿下は再度ふたりの結婚を提案するが、クラリス様が拒否したことにより表向きは外国へ嫁いだこととし、内密にとある場所で出産し生活することになった。
「ミラはすでに会ったと思うが、息子は・・・・・・ノアっていうんだ。
現在7歳で、どの家庭教師も褒めるほど優秀で。
僕たちには息子が居ないだろ。
それで、ノアを正式な跡継ぎにと考えている」
「それは・・・私と離婚してクラリス様と再婚するという「違う!」」
「・・・・・・大きな声を出して、申し訳ない。
ミラ、君との離婚なんて考えていない。
クラリスとノアには敷地内の別邸に住んでもらうつもりだ」
「愛人として囲う。ということですね」
「クラリスとは・・・・・・君と結婚してからは何もない・・・・・・。
でも、周りはこの状況をそう思うだろう」
「クラリス様は、納得されているんですか?」
「している」
「・・・・・・少し、少し、考える時間をもらえますか?」
「もちろんだ」
想定内の話のはずなのに、本人の口から語られるのは想像以上にズシリと胸に突き刺さった。
あの少年が跡継ぎでーー
ふたりが敷地内の別邸に暮らすーー
でも、先日ふたりをお屋敷で見た時には、すでにここに慣れ親しんでいるように感じた。
『ロージー!また遊びに来たよ!』
『にぃに!』
ロージーだって・・・・・・。
どうして・・・・・・
「どうして、どうして、私に黙ってロージーを会わせたんですか?」
「クラリスとノアがロージーに会いたがっていたんだ。
よくロージーの話をしていたから。
君に黙っていたのは、申し訳ないと思っている」
「・・・・・・結構です。
・・・謝罪は、もう結構です」
泣くつもりなんてないのに、今にも涙が溢れそうになった。
「ミラ・・・・・・」
お兄様の呼ぶ声が聞こえたけれど、私はその場から逃げ出した。
数日スタンリー伯爵家へ帰り、これからの事を両親に話した。
「アニーとカイを連れて行きなさい」
お母様はまるでこうなる事が分かっていたようだった。
侍女のアニーに護衛のカイ。
私が幼い頃からお世話になっていた二人は、3年前に結婚して今では夫婦でもある。
ロージーを抱いた私は、アニーとカイを連れ立ってお屋敷へ戻った。
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