橘瑞樹の一生〜機械とエーテル、スチームパンクなエルヴァニアで過ごした一世紀〜

Coppélia

文字の大きさ
上 下
33 / 47
第2章、学園と修さんと私

第32話:移り気な青色

しおりを挟む
「なあ工藤、ここだけ紫陽花がピンク色ってさ、実は」「おう、そこだけ陶磁のエーテル配管だろ」

祐二を怖がらせようとしたレオンがちょっと拗ねた。祐二は満足気だ。

私の机の上には「初級共通科目確認テスト」の回答へのパスワードが記載されていた。

このパスワードと貸与されているタブレットを使えば回答が見れる。タブレットは本人のエーテル紋がなければ開けられない。

『合格』

大丈夫だとは思っていたが、やはりほっとしてあたりを見回せばみな、ほっとした顔をしている。

落ちたからと補講で済むが、やはり試験の緊張感はなかなかのものだった。

今月末には2泊3日の現地実習がある。
その前には農業実習があり、今日はその農業実習用のエーテルギアをつくる班分けの日だった。

グループリーダーになりたい人はアイデアを持って立候補し、説明するプレゼンをこれから行う。その中で共感したギアのグループに入る。3人に満たなければ解散、5人以上は別グループというルールで、投票もある。

私が所属する「ポーチュラカ」は3324年入学という意味だが、この「ポーチュラカ」全員268人にプレゼンする必要がある。

立候補者は104人。
私ももちろん立候補した。

「瑞樹、緊張してる?笑顔に凄みがあるよ」
エドガーが苦笑している。今回、私はエドガーと共同提案として設計図を提出していた。

「ええ。まあ、準備はしたし、あなたもいます。大丈夫」丹田にまで空気を送るイメージで深呼吸すれば、自然に口角が上がった。

発表の順番は後半の方だったので、最初は他の生徒たちの発表を見ていた。

クラスで最初に発表したのはレオン。テーマは「熱エネルギー活用法」。ギアは地中の熱に対して作物の状態を確認し知らせることに加え、外気温との差分で蒸気機関を回しエネルギーを得るという、レオンらしい広い視野をもつギアだった。

分かりやすく堂々としたプレゼンに、私も素直に感心した。

「我々は里山の境目に安全な境界を設けることで自然と社会の共存を目指します。」

エドガーの説明からスタート。スライドに映した資料を使いながら、我々は少しずつ、考えを説明していった。

どのようにエーテルを吸収し、循環しているのか。その循環は人の社会の循環と山や森といった自然環境とは違っていて、それが混ざったあたりのエーテルを循環させるか、分けるかを調査するギアをつくりたいと説明した。

「このギアはまだ我々の仮説に対して、調査するためのギアです。しかし、社会がえらい、自然がえらいではなく、あくまで干渉しながらも共存するために、どこまで立ち入っていいか、の目安を作れると思います」

最後にそう締めくくったとき、教室内が静まり返った。私は一瞬緊張したが、次の瞬間、プラムが拍手すると、拍手が巻き起こった。

「まずは飛び込んで、知ろうとする、お前らしい」「調査するギアか。面白いな」

エドガーと2人、悩んだが、発表できてよかった。投票結果は下の方だったが、先生方からの特別賞を頂いた。それはなんとなく、面映かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

戦車で行く、異世界奇譚

焼飯学生
ファンタジー
戦車の整備員、永山大翔は不慮の事故で命を落とした。目が覚めると彼の前に、とある世界を管理している女神が居た。女神は大翔に、世界の安定のために動いてくれるのであれば、特典付きで異世界転生させると提案し、そこで大翔は憧れだった10式戦車を転生特典で貰うことにした。 少し神の手が加わった10式戦車を手に入れた大翔は、神からの依頼を行いつつ、第二の人生を謳歌することした。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...