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第1章、異世界と私
第22話:エーデルワイスの月夜
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『カンパーイ!』
鉱山での激しい戦闘を終え、私たちは無事に智大大蔵の街へと戻ってきた。ギルドに戻りお互いの健闘を称え合いながら、明日クロックタウンのギルド集合とし、解散となった。
リリーも、智大大蔵のギルドメンバーやリョウと共に笑顔を見せ、安堵した様子だ。
「お疲れ様会をしましょう」とリリーが言い、リョウも「地元の味を楽しんでください」と智大大蔵の評判の良いレストランへ案内してくれることになった。
「クロワッサン生地にナッツが練り込んであるパンがおいしい!」「瑞樹さんってめちゃくちゃ食べるんですか?」「橘さん、朝昼は食べない代わりに夕飯はびっくりするぐらい食べるんです」
レストランは赤レンガ造りの建物で、店内はミントの香りが漂っている。テーブルには香草をふんだんに使った山の料理が並び、山菜の香り豊かなスープや、メインの川魚にパンに小さなフルーツパスタなど、異世界ならではの味が揃っていた。
リリーはカクテルで乾杯する一方で、私とリョウは紅茶をいただいた。ミントエーテルの香りがほんのり漂うその紅茶を一口飲むと、不思議な気分になる。
「智大大蔵の料理はエーテルが豊富で体にも良いんです」とリリーが説明し、リョウも「僕たち魔族には特に重要で、こうした料理は生活に欠かせません」と補足してくれた。
間接照明に照らされた明るい店内にほっとし、戦闘を振り返ると、リリーが「瑞樹さんのギアのおかげで熊の位置を探知できました」と私に感謝を伝え、リョウも「僕も驚きましたよ。持ち運び型エーテルギアにこれだけ実用的な複数の機能とは」と微笑んでくれた。
私は少し照れてしまって無口になってしまった。そろそろ列車が最終だと、リリーはクロックタウンへ戻るという。
私も一緒に戻ろうとしたが、リョウが「せっかくなので、私の部屋でお茶しませんか?」と誘ってくれた。
リョウの家は智大大蔵の静かな一角にあり、ベランダからは夜風が心地よく吹き込んでくる。彼は私に温かいハーブティーを淹れ、魔族として生きることについて語ってくれた。
「ある日突然、意識が目覚めたので戸惑いはありましたが、一番大切なことは、自分が何をしてきたかということ。何をしていくのか、ということだと思います。今はここが故郷だと思えるようになりました」
彼の話に、私は異世界人と前世の記憶を持たない魔族の共通点を感じた。どちらも突然、知らない世界に放り出されてしまう。
「今を生きる、しかありません」穏やかなリョウの声に私はうなづくしかできなかった。
少し夜風に当たろうとベランダへ出ると、庭には月明かりに照らされたエーデルワイスが美しく咲き誇っていた。白く柔らかな花びらが静かな夜の空気に揺れ、まるでこの街や私たちを見守っているかのようだった。
「エーデルワイス、故郷でも見かけることがありました」「そうですか」
エーデルワイスの静かな佇まいを眺めながら、この世界との「縁」、異世界で出会った人々や街への感謝が胸に溢れてきた。
智大大蔵の夜は、静かで温かな空気に包まれていた。
鉱山での激しい戦闘を終え、私たちは無事に智大大蔵の街へと戻ってきた。ギルドに戻りお互いの健闘を称え合いながら、明日クロックタウンのギルド集合とし、解散となった。
リリーも、智大大蔵のギルドメンバーやリョウと共に笑顔を見せ、安堵した様子だ。
「お疲れ様会をしましょう」とリリーが言い、リョウも「地元の味を楽しんでください」と智大大蔵の評判の良いレストランへ案内してくれることになった。
「クロワッサン生地にナッツが練り込んであるパンがおいしい!」「瑞樹さんってめちゃくちゃ食べるんですか?」「橘さん、朝昼は食べない代わりに夕飯はびっくりするぐらい食べるんです」
レストランは赤レンガ造りの建物で、店内はミントの香りが漂っている。テーブルには香草をふんだんに使った山の料理が並び、山菜の香り豊かなスープや、メインの川魚にパンに小さなフルーツパスタなど、異世界ならではの味が揃っていた。
リリーはカクテルで乾杯する一方で、私とリョウは紅茶をいただいた。ミントエーテルの香りがほんのり漂うその紅茶を一口飲むと、不思議な気分になる。
「智大大蔵の料理はエーテルが豊富で体にも良いんです」とリリーが説明し、リョウも「僕たち魔族には特に重要で、こうした料理は生活に欠かせません」と補足してくれた。
間接照明に照らされた明るい店内にほっとし、戦闘を振り返ると、リリーが「瑞樹さんのギアのおかげで熊の位置を探知できました」と私に感謝を伝え、リョウも「僕も驚きましたよ。持ち運び型エーテルギアにこれだけ実用的な複数の機能とは」と微笑んでくれた。
私は少し照れてしまって無口になってしまった。そろそろ列車が最終だと、リリーはクロックタウンへ戻るという。
私も一緒に戻ろうとしたが、リョウが「せっかくなので、私の部屋でお茶しませんか?」と誘ってくれた。
リョウの家は智大大蔵の静かな一角にあり、ベランダからは夜風が心地よく吹き込んでくる。彼は私に温かいハーブティーを淹れ、魔族として生きることについて語ってくれた。
「ある日突然、意識が目覚めたので戸惑いはありましたが、一番大切なことは、自分が何をしてきたかということ。何をしていくのか、ということだと思います。今はここが故郷だと思えるようになりました」
彼の話に、私は異世界人と前世の記憶を持たない魔族の共通点を感じた。どちらも突然、知らない世界に放り出されてしまう。
「今を生きる、しかありません」穏やかなリョウの声に私はうなづくしかできなかった。
少し夜風に当たろうとベランダへ出ると、庭には月明かりに照らされたエーデルワイスが美しく咲き誇っていた。白く柔らかな花びらが静かな夜の空気に揺れ、まるでこの街や私たちを見守っているかのようだった。
「エーデルワイス、故郷でも見かけることがありました」「そうですか」
エーデルワイスの静かな佇まいを眺めながら、この世界との「縁」、異世界で出会った人々や街への感謝が胸に溢れてきた。
智大大蔵の夜は、静かで温かな空気に包まれていた。
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