25 / 44
恋色カレイドスコープ【改稿版】
第三話 友よ大志を抱け side - 優奈
しおりを挟む
美咲は絶対に恋してると思うんだなあ……昨日の電話のことを思い出しながらウィンナーを口に放り込む。
+++
お風呂から出て自分の部屋に戻って、まったりしながら積んであった小説の続きを読もうとしていたらスマホがブルブルと震えた。
「えー……こんな時間に誰なのさ、せっかく珍しくまとめて本が読める時間が確保できたっていうのに」
ブツブツ言いながらテーブルの上に放り出してあったスマホの液晶画面を見れば『美咲』の表示。
「どうしたのかな、こんな時間に」
美咲のお父さんとお母さんは弁護士。そのせいもあってか、こういうことにはきちんとしていて夜の遅い時間にお友達の家に電話をかけるのは迷惑だからNGという家だった。
だからこんな時間は何か話したいことがあれば大抵はメールで送ってきてるんだけど、わざわざこの時間に電話をかけてきてまで話したいことって一体なんだろう?
「よっぽど直接話したいことがあるんだよね。それとも文字にするには超めんどくさいぐらい複雑なこと? はーい、もしもしお待たせ!」
『あ、優奈、ごめんね、こんな時間に』
そして電話の向こう側からは相変わらずの申し訳なさそうな美咲の声。
なんていうか美咲って周りに気を遣いすぎなんだよね。幼稚園からの大親友がかけてきた電話なんだから迷惑だなんて絶対に思わないのに。
……あ、でも本を読む時間が削れちゃうのは無念かな。んー、でもいいや、相手は美咲なんだもん、本を読むより美咲と話すことの方が大事に決まってるんだし。
「気にしないで。でも良かったよ、あと五分早かったらお風呂出たところでパニックだったかもしれないから」
『ごめーん』
私の返事に美咲が笑いながら謝る。うん、さっきの申し訳なさそうな声よりこっちの方がずっといい。
「それでー? お母さん達にこっそり内緒で電話してきたのはどうして?」
『んーっとね、今日、料理研究会で文化祭で作るカレーの予行をしたの』
「あー……そう言えば帰る時に美味しそうなカレーの匂いが漂ってたよ。美咲がいると分かってたら家庭科室に押しかければ良かったかな、一足先に味見できたかもしれないのに残念なことした~~」
図書館で調べものをし終わって外に出た時に超いい匂いがしてたんだよ。あれ、美咲たちが作ってたカレーだったんだなあ。あの匂いのせいで帰りのコンビニでどうしても我慢できなくてカレーマン買っちゃったんだよね。
だけど美咲の言いたいことはそこじゃないはず。そんなことだったらメールですむことだもの。きっとその時にもっと大事なことがあったに違いない。
『でね、家庭科室にお鍋を運んでたら早瀬先輩と偶然に会っちゃってね、お鍋を運ぶの手伝ってくれたの。で、そのお礼にカレーを御馳走することになっちゃった』
ほら、やっぱり!!
普通の子だったら校内で顔を合わせたぐらいでそこまで大騒ぎすることじゃないのかもしれない。だけど美咲にとってはとんでもなく大事件だ。しかもお鍋を運んでもらったって?
『研究会の部長が先輩と同じクラスの人でね。お鍋を運んでからカレーを作るところを見て、で、一緒に食べたんだよ? 美味しいって言ってくれたの。あ、レシピはうちの部に受け継がれているものだし、私はニンジンとジャガイモの皮むきをしただけなんだけどね』
「へえ、先輩も優しいところがあるんだね」
『うん。でも、お鍋けっこう重かったから悪かったかなあって』
「大丈夫だって。男子の方が女子より力もあるしそのぐらいなんでもないと思うよ?」
『そう? だったら良いんだけど』
きっと美咲は自分の声が恋する乙女モードになっているなんて気づいてもいないよね。スマホからピンク色の空気が流れ出ているように見えるのは気のせいじゃないと思うんだ。
とにかく、幼稚園からの親友に初めて訪れた恋の季節に拍手喝采を送りたい。きっと私は明日から彼女をニヨニヨと見守りながら、ネタに出来ることは無いかと彼女を観察するんだろうなあ。我ながらかなり性格が悪い。
性格悪いと思いつつ、次の日から更に美咲ちゃん観察日記などと密かに名付けながら親友の動向を生温かく見守ることにした。あ、別にストーカーしてるわけじゃないからね?
だって早瀬先輩が小学校の時の意地悪な男子みたいな美咲に酷いことを言わないかなって少し心配だったんだもん。その時のための証拠集めも必要でしょ? まだ二人が親しくなると決まったわけでもないのに私ったらちょっと気が早すぎる?
「けど、先輩が美咲の名前を知っていたのには驚いた。もしかして本屋でのことも覚えてるかもね」
『んー……それは無いと思うよ? 病院で見かけたって言ってた。ほら、私の頭って目立つし』
美咲の髪の毛は茶色くてフワフワだ。そのせいで小学校の時は男子がからかってきたり、中学校では生活指導の先生に注意を受けたりして嫌な思いを何度もしてきた。でもそれはアイルランド人のお婆ちゃん譲りなんだからしかたがないって本人もそれなりに割り切っている。
それと色白な美咲にはその髪がとっても似合っていて可愛いんだからもっと自信を持たなくちゃって思うんだ。ま、本人は雨の日は爆発して大変だよ~っていつも泣いてるけどね。
「病院で思い出した。今日は通院の日だったんだよね? どうだった? もう行かなくても良いって?」
『うん。あと少しでお薬も飲まなくていいようになるって先生は言ってた』
「よかったよかった。これでようやく人並みに体育が出来るようになるね」
『でも今年中は様子見ましょうだって。体育参加は来年からになるみたい』
「そっかー」
美咲が極度の貧血に陥ったのは小学校の高学年になった頃だったと思う。悪性ではなく成長期の女の子にみられる鉄分の欠乏なんちゃらが主な原因だということらしいけど、話を聞いていたら一言で貧血と言ってもなかなか馬鹿に出来ないんだなと改めて鉄の大切さを教えてくれるものだった。
その治療もようやく一段落。本人もやっと普通の中学生生活を送れるよと喜んでいる。それと同時に訪れた恋の予感。これが運命と言わずして何とやら。いやあ素晴らしいネタ……じゃなくて、親友に到来した恋の季節!!
+++
「優奈、なんか変な笑いを浮かべてるよ?」
そこで我に返る。どうやらちょっと魂があっちの世界に行っちゃっていたみたいで美咲が心配そうな顔でこっちを覗き込んでいた。
「そう? きっと陽気のせいだね、うん」
「そうかなあ……」
「そうだよ。五月病っていうじゃない?」
「もうそろそろ十月だよ……?」
「細かいことは気にしない気にしない」
「えーー……」
お弁当を食べ終えたので教室を出て校庭の隅っこにある日当たりのいいベンチに二人して座った。貧血気味で体育を見学している美咲にとっては、この時間が学校でのんびりと外の空気を吸いながらお日様にあたる唯一の時間だ。そして私たちの前では同級生の男子や先輩達がサッカーを始めていた。
「よくご飯食べて直ぐに走り回れるよね、感心しちゃう。お腹痛くなったりしないのかなあ」
「私もあんなふうに走り回ってみたいなあ。あ、でもあんなに思いっ切り行ったり来たりしてたら足が絡まって転んじゃうかも」
頭と足がお互いに反対側に動いちゃうそうだよと笑っている。
「あ、美咲、早瀬先輩がいるよ。ほら、こっち見てるかも」
途端に美咲が顔を赤らめて視線を膝に落とした。
「そ、そんなことないよ、ボール見てるだけだよ」
「そうかなあ、絶対に先輩は美咲のこと意識していると思うけどなあ」
「……まだこっち見てる?」
「ううん。山崎先輩にボール渡されて蹴りながらあっち行っちゃった」
そう言うとホッとした様子で視線を上にあげる。その時はすでに先輩はこっちに背中を向けて山崎先輩と何やら話しながらボールを蹴り合っていた。
でも、間違いなく今の早瀬先輩は美咲を見ていたと思うんだ。だって最初にこちらに視線を向けた時、微かに微笑んだのはきっと隣に座っていた美咲に気がついたからだもん。
「そんなに恥ずかしがることないじゃん。目が合ったらせんぱーいって言って手を振ってあげたら喜ぶと思うんだけどなー」
「そそそそ、そんなことできないよ!!」
「相変わらず恥ずかしがり屋だよね、美咲ってば」
「優奈が元気すぎなんだってば。手を振ったりなんてありえない」
頬っぺたを赤くして恥ずかしそうにチラチラと先輩を見ている美咲をみながらフフフッと変な笑いがこみ上げてしまった。
けどね、美咲は気がついていないと思うけど、もう一つ気になる視線があるんだ。
それはなんだか突き刺さるような冷たさを感じる視線。発生源は校舎三階の音楽室、その視線を送るのは我が藤森中学校の歌姫と呼ばれる杉野晴香先輩だ。
柔らかく微笑みながら透き通った歌声で全校生徒を魅了する先輩が、今はまるで能面のような冷たい表情をしてこちらを見下ろしている。
そして先輩が見ているのは間違いなく美咲だ。本人は全く気がついていないけどね。親友の恋の行方に暗雲が……なんてことを言うと、また恋愛小説読み過ぎって言われるのかな。でも私はやっぱり心配だよ。
温かい早瀬先輩の視線と冷たい杉野先輩の視線、どちらからも見詰められているのに全く気がつかない私の親友はある意味において最強かもしれない。でもあの冷たい視線は超危険!! 私の小説家の本能がそう言ってるから間違いない!
その背中、私が守ることにする!!と勝手に決意した。
「美咲、私がついてるから心配ないよ!」
「え?」
私に手を握られた美咲が目を丸くした。
「背中は私に任せて美咲は前進あるみ! ほふく前進でgo!go!だからね!」
「んん? ほふく前進って? どういうこと?」
なんとのこと?と首を傾げる親友の肩をガシッと掴んでウンウンとうなずいてみせる私だった。
+++
お風呂から出て自分の部屋に戻って、まったりしながら積んであった小説の続きを読もうとしていたらスマホがブルブルと震えた。
「えー……こんな時間に誰なのさ、せっかく珍しくまとめて本が読める時間が確保できたっていうのに」
ブツブツ言いながらテーブルの上に放り出してあったスマホの液晶画面を見れば『美咲』の表示。
「どうしたのかな、こんな時間に」
美咲のお父さんとお母さんは弁護士。そのせいもあってか、こういうことにはきちんとしていて夜の遅い時間にお友達の家に電話をかけるのは迷惑だからNGという家だった。
だからこんな時間は何か話したいことがあれば大抵はメールで送ってきてるんだけど、わざわざこの時間に電話をかけてきてまで話したいことって一体なんだろう?
「よっぽど直接話したいことがあるんだよね。それとも文字にするには超めんどくさいぐらい複雑なこと? はーい、もしもしお待たせ!」
『あ、優奈、ごめんね、こんな時間に』
そして電話の向こう側からは相変わらずの申し訳なさそうな美咲の声。
なんていうか美咲って周りに気を遣いすぎなんだよね。幼稚園からの大親友がかけてきた電話なんだから迷惑だなんて絶対に思わないのに。
……あ、でも本を読む時間が削れちゃうのは無念かな。んー、でもいいや、相手は美咲なんだもん、本を読むより美咲と話すことの方が大事に決まってるんだし。
「気にしないで。でも良かったよ、あと五分早かったらお風呂出たところでパニックだったかもしれないから」
『ごめーん』
私の返事に美咲が笑いながら謝る。うん、さっきの申し訳なさそうな声よりこっちの方がずっといい。
「それでー? お母さん達にこっそり内緒で電話してきたのはどうして?」
『んーっとね、今日、料理研究会で文化祭で作るカレーの予行をしたの』
「あー……そう言えば帰る時に美味しそうなカレーの匂いが漂ってたよ。美咲がいると分かってたら家庭科室に押しかければ良かったかな、一足先に味見できたかもしれないのに残念なことした~~」
図書館で調べものをし終わって外に出た時に超いい匂いがしてたんだよ。あれ、美咲たちが作ってたカレーだったんだなあ。あの匂いのせいで帰りのコンビニでどうしても我慢できなくてカレーマン買っちゃったんだよね。
だけど美咲の言いたいことはそこじゃないはず。そんなことだったらメールですむことだもの。きっとその時にもっと大事なことがあったに違いない。
『でね、家庭科室にお鍋を運んでたら早瀬先輩と偶然に会っちゃってね、お鍋を運ぶの手伝ってくれたの。で、そのお礼にカレーを御馳走することになっちゃった』
ほら、やっぱり!!
普通の子だったら校内で顔を合わせたぐらいでそこまで大騒ぎすることじゃないのかもしれない。だけど美咲にとってはとんでもなく大事件だ。しかもお鍋を運んでもらったって?
『研究会の部長が先輩と同じクラスの人でね。お鍋を運んでからカレーを作るところを見て、で、一緒に食べたんだよ? 美味しいって言ってくれたの。あ、レシピはうちの部に受け継がれているものだし、私はニンジンとジャガイモの皮むきをしただけなんだけどね』
「へえ、先輩も優しいところがあるんだね」
『うん。でも、お鍋けっこう重かったから悪かったかなあって』
「大丈夫だって。男子の方が女子より力もあるしそのぐらいなんでもないと思うよ?」
『そう? だったら良いんだけど』
きっと美咲は自分の声が恋する乙女モードになっているなんて気づいてもいないよね。スマホからピンク色の空気が流れ出ているように見えるのは気のせいじゃないと思うんだ。
とにかく、幼稚園からの親友に初めて訪れた恋の季節に拍手喝采を送りたい。きっと私は明日から彼女をニヨニヨと見守りながら、ネタに出来ることは無いかと彼女を観察するんだろうなあ。我ながらかなり性格が悪い。
性格悪いと思いつつ、次の日から更に美咲ちゃん観察日記などと密かに名付けながら親友の動向を生温かく見守ることにした。あ、別にストーカーしてるわけじゃないからね?
だって早瀬先輩が小学校の時の意地悪な男子みたいな美咲に酷いことを言わないかなって少し心配だったんだもん。その時のための証拠集めも必要でしょ? まだ二人が親しくなると決まったわけでもないのに私ったらちょっと気が早すぎる?
「けど、先輩が美咲の名前を知っていたのには驚いた。もしかして本屋でのことも覚えてるかもね」
『んー……それは無いと思うよ? 病院で見かけたって言ってた。ほら、私の頭って目立つし』
美咲の髪の毛は茶色くてフワフワだ。そのせいで小学校の時は男子がからかってきたり、中学校では生活指導の先生に注意を受けたりして嫌な思いを何度もしてきた。でもそれはアイルランド人のお婆ちゃん譲りなんだからしかたがないって本人もそれなりに割り切っている。
それと色白な美咲にはその髪がとっても似合っていて可愛いんだからもっと自信を持たなくちゃって思うんだ。ま、本人は雨の日は爆発して大変だよ~っていつも泣いてるけどね。
「病院で思い出した。今日は通院の日だったんだよね? どうだった? もう行かなくても良いって?」
『うん。あと少しでお薬も飲まなくていいようになるって先生は言ってた』
「よかったよかった。これでようやく人並みに体育が出来るようになるね」
『でも今年中は様子見ましょうだって。体育参加は来年からになるみたい』
「そっかー」
美咲が極度の貧血に陥ったのは小学校の高学年になった頃だったと思う。悪性ではなく成長期の女の子にみられる鉄分の欠乏なんちゃらが主な原因だということらしいけど、話を聞いていたら一言で貧血と言ってもなかなか馬鹿に出来ないんだなと改めて鉄の大切さを教えてくれるものだった。
その治療もようやく一段落。本人もやっと普通の中学生生活を送れるよと喜んでいる。それと同時に訪れた恋の予感。これが運命と言わずして何とやら。いやあ素晴らしいネタ……じゃなくて、親友に到来した恋の季節!!
+++
「優奈、なんか変な笑いを浮かべてるよ?」
そこで我に返る。どうやらちょっと魂があっちの世界に行っちゃっていたみたいで美咲が心配そうな顔でこっちを覗き込んでいた。
「そう? きっと陽気のせいだね、うん」
「そうかなあ……」
「そうだよ。五月病っていうじゃない?」
「もうそろそろ十月だよ……?」
「細かいことは気にしない気にしない」
「えーー……」
お弁当を食べ終えたので教室を出て校庭の隅っこにある日当たりのいいベンチに二人して座った。貧血気味で体育を見学している美咲にとっては、この時間が学校でのんびりと外の空気を吸いながらお日様にあたる唯一の時間だ。そして私たちの前では同級生の男子や先輩達がサッカーを始めていた。
「よくご飯食べて直ぐに走り回れるよね、感心しちゃう。お腹痛くなったりしないのかなあ」
「私もあんなふうに走り回ってみたいなあ。あ、でもあんなに思いっ切り行ったり来たりしてたら足が絡まって転んじゃうかも」
頭と足がお互いに反対側に動いちゃうそうだよと笑っている。
「あ、美咲、早瀬先輩がいるよ。ほら、こっち見てるかも」
途端に美咲が顔を赤らめて視線を膝に落とした。
「そ、そんなことないよ、ボール見てるだけだよ」
「そうかなあ、絶対に先輩は美咲のこと意識していると思うけどなあ」
「……まだこっち見てる?」
「ううん。山崎先輩にボール渡されて蹴りながらあっち行っちゃった」
そう言うとホッとした様子で視線を上にあげる。その時はすでに先輩はこっちに背中を向けて山崎先輩と何やら話しながらボールを蹴り合っていた。
でも、間違いなく今の早瀬先輩は美咲を見ていたと思うんだ。だって最初にこちらに視線を向けた時、微かに微笑んだのはきっと隣に座っていた美咲に気がついたからだもん。
「そんなに恥ずかしがることないじゃん。目が合ったらせんぱーいって言って手を振ってあげたら喜ぶと思うんだけどなー」
「そそそそ、そんなことできないよ!!」
「相変わらず恥ずかしがり屋だよね、美咲ってば」
「優奈が元気すぎなんだってば。手を振ったりなんてありえない」
頬っぺたを赤くして恥ずかしそうにチラチラと先輩を見ている美咲をみながらフフフッと変な笑いがこみ上げてしまった。
けどね、美咲は気がついていないと思うけど、もう一つ気になる視線があるんだ。
それはなんだか突き刺さるような冷たさを感じる視線。発生源は校舎三階の音楽室、その視線を送るのは我が藤森中学校の歌姫と呼ばれる杉野晴香先輩だ。
柔らかく微笑みながら透き通った歌声で全校生徒を魅了する先輩が、今はまるで能面のような冷たい表情をしてこちらを見下ろしている。
そして先輩が見ているのは間違いなく美咲だ。本人は全く気がついていないけどね。親友の恋の行方に暗雲が……なんてことを言うと、また恋愛小説読み過ぎって言われるのかな。でも私はやっぱり心配だよ。
温かい早瀬先輩の視線と冷たい杉野先輩の視線、どちらからも見詰められているのに全く気がつかない私の親友はある意味において最強かもしれない。でもあの冷たい視線は超危険!! 私の小説家の本能がそう言ってるから間違いない!
その背中、私が守ることにする!!と勝手に決意した。
「美咲、私がついてるから心配ないよ!」
「え?」
私に手を握られた美咲が目を丸くした。
「背中は私に任せて美咲は前進あるみ! ほふく前進でgo!go!だからね!」
「んん? ほふく前進って? どういうこと?」
なんとのこと?と首を傾げる親友の肩をガシッと掴んでウンウンとうなずいてみせる私だった。
1
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
今日も青空、イルカ日和
鏡野ゆう
ライト文芸
浜路るいは航空自衛隊第四航空団飛行群第11飛行隊、通称ブルーインパルスの整備小隊の整備員。そんな彼女が色々な意味で少しだけ気になっているのは着隊一年足らずのドルフィンライダー(予定)白勢一等空尉。そしてどうやら彼は彼女が整備している機体に乗ることになりそうで……? 空を泳ぐイルカ達と、ドルフィンライダーとドルフィンキーパーの恋の小話。
【本編】+【小話】+【小ネタ】
※第1回ライト文芸大賞で読者賞をいただきました。ありがとうございます。※
こちらには
ユーリ(佐伯瑠璃)さん作『その手で、愛して。ー 空飛ぶイルカの恋物語 ー』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/515275725/999154031
ユーリ(佐伯瑠璃)さん作『ウィングマンのキルコール』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/515275725/972154025
饕餮さん作『私の彼は、空飛ぶイルカに乗っている』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/274274583/812151114
白い黒猫さん作『イルカフェ今日も営業中』
https://ncode.syosetu.com/n7277er/
に出てくる人物が少しだけ顔を出します。それぞれ許可をいただいています。
※小説家になろう、カクヨムでも公開中※
多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?
あとさん♪
恋愛
「俺の愛は、期待しないでくれ」
結婚式当日の晩、つまり初夜に、旦那様は私にそう言いました。
それはそれは苦渋に満ち満ちたお顔で。そして呆然とする私を残して、部屋を出て行った旦那様は、私が寝た後に私の上に伸し掛かって来まして。
不器用な年上旦那さまと割と飄々とした年下妻のじれじれラブ(を、目指しました)
※序盤、主人公が大切にされていない表現が続きます。ご気分を害された場合、速やかにブラウザバックして下さい。ご自分のメンタルはご自分で守って下さい。
※小説家になろうにも掲載しております
夏の扉が開かない
穂祥 舞
ライト文芸
コントラバスをたしなむ大学生の泰生(たいき)は、3回生になり通うキャンパスが変わったことを理由に、吹奏楽部を退部する。だが1回生の頃から親しくしていた旭陽(あさひ)との関係が拗れたことも、退部を決めた理由であることを周囲に隠していた。
京都・伏見区のキャンパスは泰生にとって心地良く、音楽を辞めて卒業までのんびり過ごそうと決めていた。しかし、学校帰りに立ち寄った喫茶店でアルバイトをしている、同じ学部の文哉(ふみや)と話すようになり、管弦楽団に入部しろとぐいぐい迫られる。生活を変えたくない気持ちと、心機一転したい気持ちの板挟みになる泰生だが……。
綺想編纂館朧様主催の物書き向け企画「文披31題」のお題に沿って、7/1から1ヶ月かけて、2000字程度の短編で物語を進めてみたいと思います。毎回引きを作る自信は無いので、平坦な話になると思いますし、毎日更新はおそらく無理ですが、実験的にやってみます。私が小さい頃から親しんできた、ちょっと泥臭い目の京都南部を感じていただければ。
この物語はフィクションです。実在する人物・団体とは、何ら関係ありません。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
【完結】真実の愛とやらに目覚めてしまった王太子のその後
綾森れん
恋愛
レオノーラ・ドゥランテ侯爵令嬢は夜会にて婚約者の王太子から、
「真実の愛に目覚めた」
と衝撃の告白をされる。
王太子の愛のお相手は男爵令嬢パミーナ。
婚約は破棄され、レオノーラは王太子の弟である公爵との婚約が決まる。
一方、今まで男爵令嬢としての教育しか受けていなかったパミーナには急遽、王妃教育がほどこされるが全く進まない。
文句ばかり言うわがままなパミーナに、王宮の人々は愛想を尽かす。
そんな中「真実の愛」で結ばれた王太子だけが愛する妃パミーナの面倒を見るが、それは不幸の始まりだった。
周囲の忠告を聞かず「真実の愛」とやらを貫いた王太子の末路とは?
異世界でゆるゆる生活を満喫す
葉月ゆな
ファンタジー
辺境伯家の三男坊。数か月前の高熱で前世は日本人だったこと、社会人でブラック企業に勤めていたことを思い出す。どうして亡くなったのかは記憶にない。ただもう前世のように働いて働いて夢も希望もなかった日々は送らない。
もふもふと魔法の世界で楽しく生きる、この生活を絶対死守するのだと誓っている。
家族に助けられ、面倒ごとは優秀な他人に任せる主人公。でも頼られるといやとはいえない。
ざまぁや成り上がりはなく、思いつくままに好きに行動する日常生活ゆるゆるファンタジーライフのご都合主義です。
エロパワーで野球能力アップ!? 男女混合の甲子園を煩悩の力で駆け上がる! ~最強ハーレムを築くまで、俺は止まらねぇからよぉ~
猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ライト文芸
「ふんっ! あんたみたいなザコが決勝に残るなんてね!!」
相手チームのキャプテンがこちらを睨みつける。
彼女こそ、春の大会を制した『スターライト学園』のキャプテンであるハルカだ。
「今日こそはお前を倒す。信頼できる仲間たちと共にな」
俺はそう言って、スコアボードに表示された名前を見た。
そこにはこう書かれている。
先攻・桃色青春高校
1番左・セツナ
2番二・マ キ
3番投・龍之介
4番一・ミ オ
5番三・チハル
6番右・サ ユ
7番遊・アイリ
8番捕・ユ イ
9番中・ノゾミ
俺以外は全員が女性だ。
ここ数十年で、スポーツ医学も随分と発達した。
男女の差は小さい。
何より、俺たち野球にかける想いは誰にも負けないはずだ!!
「ふーん……、面白いじゃん」
俺の言葉を聞いたハルカは不敵な笑みを浮かべる。
確かに、彼女は強い。
だが、だからといって諦めるほど、俺たちの高校野球生活は甘くはない。
「いくぞ! みんな!!」
「「「おぉ~!」」」
こうして、桃色青春高校の最後の試合が始まった。
思い返してみると、このチームに入ってからいろんなことがあった。
まず――
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる