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僕の主治医さん 第二部
アヒルの雄叫び
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『なにが相棒だ! なにが分かち合うだ! 冗談じゃないぞ! 僕はそんなの認めないからな!!』
怒りに任せて、羽根をバタバタさせながら雄叫びをあげる。
『まあ落ち着けよ。あまり叫ぶと御主人様が起きちゃうじゃないか』
『ここ最近あいつがずっと泊まってたからね。御主人様は寝不足だよ、可哀想に』
アヒル以外の動物達が、布団に潜り込んで眠っている彼等の御主人様に、同情的な目を向ける。それがますます気に入らないので、さらに羽根をバタバタさせた。
『僕は可哀想じゃないのか―――っ!!』
そんな叫びに、他の動物達の反応は生温いものだ。
『バカンスだからいいじゃない。なかなか行けない場所だよ?』
『こうやって戻ってこれるんだから、なにもそこまで怒ることもないと思うけどね』
『うるさーい!! あんな狭っ苦しい場所に、何日も閉じ込められた僕の気持ちが分かってたまるものか!!』
『だから叫ぶなって言ってるじゃないか。御主人様は明日は仕事なんだからな』
最初の頃は、ここに来たことで随分と文句を言っていたはずなのに、今ではすっかり、自分達の立場に馴染んでしまった彼等の態度に、苛立ちは募るばかりだ。
『てっきり、まだ不貞腐れていて、顔を出さないんだと思っていたよ』
『まさか、あいつのバカンス先に、一緒に連れて行かれていたとはね』
『でも、これで証明されたじゃないか。地球の反対側からも、ちゃんと一人で戻ってこれるって』
『前の時だってちゃんと戻ってこれたじゃないか!』
『あ、それはそうと始めまして、新参者のカモメです』
『カモメ君がつれてきた、金ぴかアヒル君はすごいよ。まぶしくて目が開けられないよ』
自分以外にアヒルがいると聞いて、愕然とする。
『そのアヒルは今どこに?!』
『御主人様の首からさがってるよ。あいつが君の代わりにって渡したらしいから』
『明日から、御主人様と一緒に毎日出勤なんだって』
『うらやましいよね。小さな怪獣達に襲われる心配もなしに、御主人様と一緒にいられるなんてさ』
『明日はカモメ君だけど、明後日は誰だっけ?』
『順番からすると、グソクムシ君じゃない?』
『え? 僕は先週に行ったばかりだよ。次は多分、キツネ君じゃ?』
『あれ、そうだっけ?』
自分だけ遠い異国の地に一人ぼっちなのに、こいつ等ときたら呑気そうになにを喋っているんだと、ますます腹が立ってくる。もう一度叫んでやる。
『僕のことが可哀想だと思わないのか―――――っ!!』
『だから静かにって何度言わせるんだよ。馬鹿なの? 鳥頭なの?』
ウミガメが溜め息混じりに言った。
『待てよ、今の言葉は聞き捨てならないぞ。鳥族に対する冒涜だ』
『一般論を言ったまでじゃないか』
『まあまあ。その件については、またあらためて話し合いなよ』
言い合いを始めたウミガメとペンギンに招き猫が仲裁に入る。
『あと一年の我慢じゃないか。我慢しなよ』
『それより夏休みに戻ってこれるように、気合を込めてあいつの枕元に立たなきゃ』
『僕達が集団で襲いかかっても、全然、気づかないんだもんね。君一人じゃ、ちょっと難しいかも』
『ア、ソノ間ハ、私ガ貴方ノ代ワリヲ務メマスカラ、御安心クダサイ』
『君、この時間に出てきちゃダメだよ、まぶしすぎるよ』
『スミマセン……』
いきなり出てきた光り輝く塊が、動物達に注意されてシュンとなっている。まぶしすぎてよく見えないが、たしかにアヒルの形をしているような……。
『金ぴかだ……』
『だから言ったじゃないか、金ぴかでまぶしいって』
『とにかくあと一年の辛抱だね。僕達だって楽しみにしているんだよ、バカンスに行くの』
その後も色々と他の場所に行けそうだから楽しみだよねと、おしゃべりを始める。
『ところで今のバカンス先って、一体どんな感じ?』
『そうそう、先に行ったんだから色々と話してくれないと。そのための円卓会議なんだからさ』
『もう最近はメンバーが多すぎて、円陣組めないけどねー』
『行ったばかりなんだから、話すことなんてあるわけないだろ』
『えー、せっかく楽しみにしていたのに』
『僕は御主人様の頭の上で休ませてもらうよ。地球の反対側から飛んでくるのは、けっこう疲れるんだからな』
口々に文句を言われて話を催促されたが、黙ってそのまま御主人様の枕元に行って寝る態勢に入った。
『やれやれ。じゃあ、次の定例会議の時にでも話を聞かせてよね』
『あ、そうだ。僕達が知りたいことを箇条書きにしておこうよ。あらかじめ分かっていた方が、調べやすいんじゃないかな』
『なるほど、それはいい考えだ。じゃあまずは……』
そんなわけで、その日の夜も遅くまで動物達の話し合いは続いた模様。
怒りに任せて、羽根をバタバタさせながら雄叫びをあげる。
『まあ落ち着けよ。あまり叫ぶと御主人様が起きちゃうじゃないか』
『ここ最近あいつがずっと泊まってたからね。御主人様は寝不足だよ、可哀想に』
アヒル以外の動物達が、布団に潜り込んで眠っている彼等の御主人様に、同情的な目を向ける。それがますます気に入らないので、さらに羽根をバタバタさせた。
『僕は可哀想じゃないのか―――っ!!』
そんな叫びに、他の動物達の反応は生温いものだ。
『バカンスだからいいじゃない。なかなか行けない場所だよ?』
『こうやって戻ってこれるんだから、なにもそこまで怒ることもないと思うけどね』
『うるさーい!! あんな狭っ苦しい場所に、何日も閉じ込められた僕の気持ちが分かってたまるものか!!』
『だから叫ぶなって言ってるじゃないか。御主人様は明日は仕事なんだからな』
最初の頃は、ここに来たことで随分と文句を言っていたはずなのに、今ではすっかり、自分達の立場に馴染んでしまった彼等の態度に、苛立ちは募るばかりだ。
『てっきり、まだ不貞腐れていて、顔を出さないんだと思っていたよ』
『まさか、あいつのバカンス先に、一緒に連れて行かれていたとはね』
『でも、これで証明されたじゃないか。地球の反対側からも、ちゃんと一人で戻ってこれるって』
『前の時だってちゃんと戻ってこれたじゃないか!』
『あ、それはそうと始めまして、新参者のカモメです』
『カモメ君がつれてきた、金ぴかアヒル君はすごいよ。まぶしくて目が開けられないよ』
自分以外にアヒルがいると聞いて、愕然とする。
『そのアヒルは今どこに?!』
『御主人様の首からさがってるよ。あいつが君の代わりにって渡したらしいから』
『明日から、御主人様と一緒に毎日出勤なんだって』
『うらやましいよね。小さな怪獣達に襲われる心配もなしに、御主人様と一緒にいられるなんてさ』
『明日はカモメ君だけど、明後日は誰だっけ?』
『順番からすると、グソクムシ君じゃない?』
『え? 僕は先週に行ったばかりだよ。次は多分、キツネ君じゃ?』
『あれ、そうだっけ?』
自分だけ遠い異国の地に一人ぼっちなのに、こいつ等ときたら呑気そうになにを喋っているんだと、ますます腹が立ってくる。もう一度叫んでやる。
『僕のことが可哀想だと思わないのか―――――っ!!』
『だから静かにって何度言わせるんだよ。馬鹿なの? 鳥頭なの?』
ウミガメが溜め息混じりに言った。
『待てよ、今の言葉は聞き捨てならないぞ。鳥族に対する冒涜だ』
『一般論を言ったまでじゃないか』
『まあまあ。その件については、またあらためて話し合いなよ』
言い合いを始めたウミガメとペンギンに招き猫が仲裁に入る。
『あと一年の我慢じゃないか。我慢しなよ』
『それより夏休みに戻ってこれるように、気合を込めてあいつの枕元に立たなきゃ』
『僕達が集団で襲いかかっても、全然、気づかないんだもんね。君一人じゃ、ちょっと難しいかも』
『ア、ソノ間ハ、私ガ貴方ノ代ワリヲ務メマスカラ、御安心クダサイ』
『君、この時間に出てきちゃダメだよ、まぶしすぎるよ』
『スミマセン……』
いきなり出てきた光り輝く塊が、動物達に注意されてシュンとなっている。まぶしすぎてよく見えないが、たしかにアヒルの形をしているような……。
『金ぴかだ……』
『だから言ったじゃないか、金ぴかでまぶしいって』
『とにかくあと一年の辛抱だね。僕達だって楽しみにしているんだよ、バカンスに行くの』
その後も色々と他の場所に行けそうだから楽しみだよねと、おしゃべりを始める。
『ところで今のバカンス先って、一体どんな感じ?』
『そうそう、先に行ったんだから色々と話してくれないと。そのための円卓会議なんだからさ』
『もう最近はメンバーが多すぎて、円陣組めないけどねー』
『行ったばかりなんだから、話すことなんてあるわけないだろ』
『えー、せっかく楽しみにしていたのに』
『僕は御主人様の頭の上で休ませてもらうよ。地球の反対側から飛んでくるのは、けっこう疲れるんだからな』
口々に文句を言われて話を催促されたが、黙ってそのまま御主人様の枕元に行って寝る態勢に入った。
『やれやれ。じゃあ、次の定例会議の時にでも話を聞かせてよね』
『あ、そうだ。僕達が知りたいことを箇条書きにしておこうよ。あらかじめ分かっていた方が、調べやすいんじゃないかな』
『なるほど、それはいい考えだ。じゃあまずは……』
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