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第四章 海藤ベイビーがやってきたの巻
第二十七話 惚気外来へGO
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ここで登場する森永先生は『恋と愛とで抱きしめて』ヒロインの奈緒です。
++++++++++
今日は健診の日。どれぐらい時間がかかるか分からないので有給を使わせてもらうことにした。そんな訳で久し振りに部長を先に送り出すところです。
「本当についていかなくても良いのか?」
「うん。今日は一人で大丈夫だよ、ただの定期健診だし」
「送っていくぞ?」
「会社と病院は反対方向だし、タクシー頼むから大丈夫だって」
「そうか、何かあったら連絡しろよ?」
「はーい。行ってらっしゃーい」
半ば強引に送り出しちゃった♪ 実のところ一人で行きたいのには理由があるんだよね。部長には内緒にしてるんだけど、健診の後に不定愁訴外来ってところに予約を入れてあるんだ。いわゆる愚痴外来ってやつ。あ、別に愚痴りたい訳じゃなくて、どっちかと言えば思う存分惚気たい?そんな感じです。
最初は初めての妊娠だったから不安で、そこの先生に話を聞いてもらったんだけど、何故か途中でお互いの旦那様の惚気話になっちゃって、それが楽しくてついつい予約を入れちゃったのね。お互いの旦那様……つまりそこにいる先生は女の人で、そんなことで予約を入れちゃって良いのかなって尋ねたら問題ないから是非惚気においでだって。
「こんにちはー」
健診を終えていつもの部屋に行くと森永先生と看護師さん、そしてスーツを着た見知らぬ男の人がいた。医療メーカーの人かな、それとも製薬会社の人? なんだか看護師の吉永さんが微妙な顔をしているのが可笑しい。
「あ、いらっしゃい、海藤さん」
私の顔を見た先生がニッコリ笑っておいでおいでをする。
「患者さんが見えましたので。加藤さん、部外者はとっととお帰り下さい」
これ幸いにと吉永さんが男の人を追い出しにかかる。だけど言われた本人は私が来ても気にしていないようで、普段は患者さんが座る椅子に座ってまったりコーヒーを飲み続けている。
「つれないなあ、吉永さん。僕は森永先生とゆっくり話をしたいのに」
「先生は多忙です。ヤスリで削っても傷つかないような図太い神経の持ち主の加藤さんとお話をしている暇なんて全くございません」
「こう見えても繊細なんだよ、俺」
「嘘つきは泥棒の始まりってことわざご存知ですか? それに妊婦さんをいつまで立たせておくつもりですか、さっさと椅子を明け渡して下さい」
吉永さんは物凄い勢いで男の人が持っていたマグカップを取り上げると、強引に椅子から立たせて部屋から追い出してしまった。さ、さすが吉永さん、元救命救急で働いていただけのことはあって凄い迫力。だけどそんなことして大丈夫なの? 予備の椅子があっちにも置いてあるの見えてたんだけど。
「あの、良かったんですか? 今の人も患者さんじゃ?」
「違うんですよ。あの人は以前にうちがお世話になったことのある人で、何故だかここに来るんですよねコーヒーを飲みに。うちは喫茶店じゃないって何度も言ってるのに全く聞く耳持たなくてちょっと困ってます」
困った人なんですけどお世話になった人なので無碍にも出来なくてーと笑う先生。なんでも以前、先生がストーカー被害に遭った時にお世話になった警察の人らしいんだけど、いつの間にかここに顔を出すようになってしまったとか。そう言えばお役人さんって感じがしないでもなかったかな。でもさ、こんな時間になんでここに居たんだろ? 仕事はしなくても良いのかな? もしかして警察の人って暇なの?
「コーヒー外来とか何とか言ってるんですよ、さっきの人」
「コーヒー外来ですか……」
「先生、呑気すぎるんですよ。今度、山口先生が休暇から戻ってきたらガツンと言ってもらいますから。あの人が来るようになってからコーヒーの消費量が半端ないし……あれ、先生の自腹なのに。それに患者さんじゃない人がここに居座るのはよくありません。あれは絶対に森永先生を口説こうとしているに違いありませんよ、けしからんです。はっきり言って邪魔です、はっきり言わなくても邪魔です、とにかく邪魔なんです」
吉永さんがそう言いながらお茶を出してくれた。何だか凄い言われよう。そこまで吉永さんに言わせるさっきの人って一体……。だけど森永先生はアハハと笑うだけで全く気にしていない様子。これは、口説かれているのを何とも思っていないというか、まったくのアウトオブ眼中なんだろうなあ。先生、旦那さまLOVEで他の人のことなんてまったく目に入ってないし。
「さて、と。今日の健診はどうでした?」
「はい、おかげさまで順調だということでした。あれだけカニカマを食べているのに塩分のことは何も言われませんでしたよ」
「他の食事できちんとセーブしているから大丈夫なんだと思いますよ?」
「良かったです。これでカニカマ禁止令が出たら私、どうやって毎日をすごしていいか分からなくなっちゃいますもん」
「あれですねー……塩分控えめのカニカマをメーカーに直談判して製造してもらうとか。あ、意外と病院でも使えそう、今度、話してみよう」
そう言ってメモ書きを作ってペタリと机の隅っこに貼り付けている。そしてカルテを出してくる。惚気全開でも必要なんですよ、病院って面倒臭いですね?って先生は笑った。
「どうですか、妊婦生活は。少しは慣れました?」
「この前、蟹煎餅の匂いで気持ち悪くなっちゃって。カニカマは平気なのに意外なところで伏兵ですよ」
「あらあら、それってやっぱり蟹の呪い?」
「ですよねー、私もそう思いました。それ以外はお味噌汁だけなので楽と言えば楽です。あとは旦那様の過保護がもう少しマシになると良いんですけど。今日も送る送らないで一時間近く揉めたんですよ?」
私の言葉にアハハと笑う森永先生。
「相変わらずなんですね、愛海さんの旦那様。まあ仕方がないですよ、初めてのお子さんともなれば誰だって浮足立ちますし。過保護になるのもある程度は容認してあげて下さい、男性はそれで気持ちが落ち着けるみたいだし」
「先生のところもそうでした?」
「うちですか? そりゃもう、初めての子が双子だったから浮き足立っちゃって。あれ持つなこれ持つな、出掛ける時は連絡しろって嫌になるぐらい煩かったですよ? しかも自衛官でしょ? なにもかもが命令口調で本当に困りました」
でもねと続ける。
「大事にしてくれているのが分かるから強く言えなくて、結局は言われるがままって感じでしたよ」
「私もそうなんですよ。過保護過ぎて息が詰まりそうになるんですけど、部長が私のことを凄く大事にしてくれているのが分かるから強く拒否できなくて」
困ったもんですよねーってお互いに笑っちゃう。こんなことを話しているから吉永さんにここが私が来ると惚気外来になるって言われるんだよね。吉永さんには申し訳ないけど先生と二人で惚気るのは凄く楽しい。森永先生の旦那様には会ったことがないけど話を聞く限りでは何となく部長と似ているような気がするな。いや、もしかしたら部長よりも溺愛度が高いかも。でも……。
「先生、さっきみたいな人がたびたび来るの、旦那様が知ったら怒りませんか?」
絶対に面白くないって思ってるよね、先生の旦那様。
「んー? ああ、加藤さんのこと? そりゃ怒ってますよ、そのうち酷い目に遭わせてやるとか言っていっつも脅かしてるもの」
「わー、やっぱりぃ……」
「だけど、そんなことを言っている旦那様を見ていると幸せな気分になっちゃうのも事実よねえ。私のこと、昔と変わらずに愛してくれているんだって実感するの」
「結婚されて何年でしたっけ?」
「今度の三月で十五年。あっという間ですよ、十五年なんて」
十五年かあ……ってことはお腹の子が中学三年生。うわー……なんだか物凄く先のことに思えちゃうけどそうでもないのかあ。
「ちょっと想像がつかないです、十五年先の私なんて。この子が産まれてくる十一月のことだってまだ想像がつかないのに」
「その為の準備期間ですものね。色々な初めてのことを経験しながらお父さんとお母さんになっていくんだから、楽しんで妊娠期間を過ごして下さいね。愛海さんが希望すれば産婦人科の先生も同席してここでお話しすることも出来ますから、何かあれば遠慮なく言って下さいね。その為の愚痴外来だから」
「今のところ私はカニカマさえ食べられたら問題ないです」
そんな私を見て、私ももう一人ぐらい子供が欲しくなっちゃうわーって呟く先生。まだまだお若いんだから問題ないんじゃないのかなって思うんだけどな。あ、旦那様と結構な年の差があるんだっけ? そうなるとちょっと考えてからでないといけないのかな。
その後、しばらく惚気全開でお互いの旦那様の自慢話なんかしちゃったりして、部屋から出る時、吉永さんに御馳走様でしたって言われてしまった。けど心行くまで惚気けることが出来て最高な気分。やっぱり来て良かった。大満足な気分で廊下を歩いている時、自衛隊と思しき制服姿の背の高い男性と擦れ違ったんだけど、もしかして森永先生の旦那様だったりして。コーヒー外来の加藤さんのことを何処かで聞きつけて来たんだったら面白いな……なんて考えたらウフフって変な笑いがこみ上げてきちゃった。ごめんなさい、森永先生、完全に他人事です。
+++++
『どうだった?』
お昼休みの時間、スマホに部長から電話がかかってきた。
「何も問題なしで順調だって。エコー写真をもらったよ。帰ってきたら見せてあげるね」
パッと見た感じはまだよく分かんないんだけどね。それでも初めての我が子の写真だから。
『そうか。今日は一日大人しくしていろよ?』
「なに言ってるんですか、一日中じっとしていたら太っちゃうよ。適度に動いてるから御心配なくぅ」
『だからと言って重たい物は持つんじゃないぞ』
「はいはい」
掃除機はゴロゴロ引っ張りながら移動するから“持つ”うちには入らないよね?
『何か買って来て欲しいものがあるならメールを入れておけ』
「はーい」
本当に過保護っていうか何と言うか。こんなに至れり尽くせりで甘やかされちゃうと後が大変だと思うんだけどなあ……。私、絶対に怠け癖がついちゃうと思うんだ。
++++++++++
今日は健診の日。どれぐらい時間がかかるか分からないので有給を使わせてもらうことにした。そんな訳で久し振りに部長を先に送り出すところです。
「本当についていかなくても良いのか?」
「うん。今日は一人で大丈夫だよ、ただの定期健診だし」
「送っていくぞ?」
「会社と病院は反対方向だし、タクシー頼むから大丈夫だって」
「そうか、何かあったら連絡しろよ?」
「はーい。行ってらっしゃーい」
半ば強引に送り出しちゃった♪ 実のところ一人で行きたいのには理由があるんだよね。部長には内緒にしてるんだけど、健診の後に不定愁訴外来ってところに予約を入れてあるんだ。いわゆる愚痴外来ってやつ。あ、別に愚痴りたい訳じゃなくて、どっちかと言えば思う存分惚気たい?そんな感じです。
最初は初めての妊娠だったから不安で、そこの先生に話を聞いてもらったんだけど、何故か途中でお互いの旦那様の惚気話になっちゃって、それが楽しくてついつい予約を入れちゃったのね。お互いの旦那様……つまりそこにいる先生は女の人で、そんなことで予約を入れちゃって良いのかなって尋ねたら問題ないから是非惚気においでだって。
「こんにちはー」
健診を終えていつもの部屋に行くと森永先生と看護師さん、そしてスーツを着た見知らぬ男の人がいた。医療メーカーの人かな、それとも製薬会社の人? なんだか看護師の吉永さんが微妙な顔をしているのが可笑しい。
「あ、いらっしゃい、海藤さん」
私の顔を見た先生がニッコリ笑っておいでおいでをする。
「患者さんが見えましたので。加藤さん、部外者はとっととお帰り下さい」
これ幸いにと吉永さんが男の人を追い出しにかかる。だけど言われた本人は私が来ても気にしていないようで、普段は患者さんが座る椅子に座ってまったりコーヒーを飲み続けている。
「つれないなあ、吉永さん。僕は森永先生とゆっくり話をしたいのに」
「先生は多忙です。ヤスリで削っても傷つかないような図太い神経の持ち主の加藤さんとお話をしている暇なんて全くございません」
「こう見えても繊細なんだよ、俺」
「嘘つきは泥棒の始まりってことわざご存知ですか? それに妊婦さんをいつまで立たせておくつもりですか、さっさと椅子を明け渡して下さい」
吉永さんは物凄い勢いで男の人が持っていたマグカップを取り上げると、強引に椅子から立たせて部屋から追い出してしまった。さ、さすが吉永さん、元救命救急で働いていただけのことはあって凄い迫力。だけどそんなことして大丈夫なの? 予備の椅子があっちにも置いてあるの見えてたんだけど。
「あの、良かったんですか? 今の人も患者さんじゃ?」
「違うんですよ。あの人は以前にうちがお世話になったことのある人で、何故だかここに来るんですよねコーヒーを飲みに。うちは喫茶店じゃないって何度も言ってるのに全く聞く耳持たなくてちょっと困ってます」
困った人なんですけどお世話になった人なので無碍にも出来なくてーと笑う先生。なんでも以前、先生がストーカー被害に遭った時にお世話になった警察の人らしいんだけど、いつの間にかここに顔を出すようになってしまったとか。そう言えばお役人さんって感じがしないでもなかったかな。でもさ、こんな時間になんでここに居たんだろ? 仕事はしなくても良いのかな? もしかして警察の人って暇なの?
「コーヒー外来とか何とか言ってるんですよ、さっきの人」
「コーヒー外来ですか……」
「先生、呑気すぎるんですよ。今度、山口先生が休暇から戻ってきたらガツンと言ってもらいますから。あの人が来るようになってからコーヒーの消費量が半端ないし……あれ、先生の自腹なのに。それに患者さんじゃない人がここに居座るのはよくありません。あれは絶対に森永先生を口説こうとしているに違いありませんよ、けしからんです。はっきり言って邪魔です、はっきり言わなくても邪魔です、とにかく邪魔なんです」
吉永さんがそう言いながらお茶を出してくれた。何だか凄い言われよう。そこまで吉永さんに言わせるさっきの人って一体……。だけど森永先生はアハハと笑うだけで全く気にしていない様子。これは、口説かれているのを何とも思っていないというか、まったくのアウトオブ眼中なんだろうなあ。先生、旦那さまLOVEで他の人のことなんてまったく目に入ってないし。
「さて、と。今日の健診はどうでした?」
「はい、おかげさまで順調だということでした。あれだけカニカマを食べているのに塩分のことは何も言われませんでしたよ」
「他の食事できちんとセーブしているから大丈夫なんだと思いますよ?」
「良かったです。これでカニカマ禁止令が出たら私、どうやって毎日をすごしていいか分からなくなっちゃいますもん」
「あれですねー……塩分控えめのカニカマをメーカーに直談判して製造してもらうとか。あ、意外と病院でも使えそう、今度、話してみよう」
そう言ってメモ書きを作ってペタリと机の隅っこに貼り付けている。そしてカルテを出してくる。惚気全開でも必要なんですよ、病院って面倒臭いですね?って先生は笑った。
「どうですか、妊婦生活は。少しは慣れました?」
「この前、蟹煎餅の匂いで気持ち悪くなっちゃって。カニカマは平気なのに意外なところで伏兵ですよ」
「あらあら、それってやっぱり蟹の呪い?」
「ですよねー、私もそう思いました。それ以外はお味噌汁だけなので楽と言えば楽です。あとは旦那様の過保護がもう少しマシになると良いんですけど。今日も送る送らないで一時間近く揉めたんですよ?」
私の言葉にアハハと笑う森永先生。
「相変わらずなんですね、愛海さんの旦那様。まあ仕方がないですよ、初めてのお子さんともなれば誰だって浮足立ちますし。過保護になるのもある程度は容認してあげて下さい、男性はそれで気持ちが落ち着けるみたいだし」
「先生のところもそうでした?」
「うちですか? そりゃもう、初めての子が双子だったから浮き足立っちゃって。あれ持つなこれ持つな、出掛ける時は連絡しろって嫌になるぐらい煩かったですよ? しかも自衛官でしょ? なにもかもが命令口調で本当に困りました」
でもねと続ける。
「大事にしてくれているのが分かるから強く言えなくて、結局は言われるがままって感じでしたよ」
「私もそうなんですよ。過保護過ぎて息が詰まりそうになるんですけど、部長が私のことを凄く大事にしてくれているのが分かるから強く拒否できなくて」
困ったもんですよねーってお互いに笑っちゃう。こんなことを話しているから吉永さんにここが私が来ると惚気外来になるって言われるんだよね。吉永さんには申し訳ないけど先生と二人で惚気るのは凄く楽しい。森永先生の旦那様には会ったことがないけど話を聞く限りでは何となく部長と似ているような気がするな。いや、もしかしたら部長よりも溺愛度が高いかも。でも……。
「先生、さっきみたいな人がたびたび来るの、旦那様が知ったら怒りませんか?」
絶対に面白くないって思ってるよね、先生の旦那様。
「んー? ああ、加藤さんのこと? そりゃ怒ってますよ、そのうち酷い目に遭わせてやるとか言っていっつも脅かしてるもの」
「わー、やっぱりぃ……」
「だけど、そんなことを言っている旦那様を見ていると幸せな気分になっちゃうのも事実よねえ。私のこと、昔と変わらずに愛してくれているんだって実感するの」
「結婚されて何年でしたっけ?」
「今度の三月で十五年。あっという間ですよ、十五年なんて」
十五年かあ……ってことはお腹の子が中学三年生。うわー……なんだか物凄く先のことに思えちゃうけどそうでもないのかあ。
「ちょっと想像がつかないです、十五年先の私なんて。この子が産まれてくる十一月のことだってまだ想像がつかないのに」
「その為の準備期間ですものね。色々な初めてのことを経験しながらお父さんとお母さんになっていくんだから、楽しんで妊娠期間を過ごして下さいね。愛海さんが希望すれば産婦人科の先生も同席してここでお話しすることも出来ますから、何かあれば遠慮なく言って下さいね。その為の愚痴外来だから」
「今のところ私はカニカマさえ食べられたら問題ないです」
そんな私を見て、私ももう一人ぐらい子供が欲しくなっちゃうわーって呟く先生。まだまだお若いんだから問題ないんじゃないのかなって思うんだけどな。あ、旦那様と結構な年の差があるんだっけ? そうなるとちょっと考えてからでないといけないのかな。
その後、しばらく惚気全開でお互いの旦那様の自慢話なんかしちゃったりして、部屋から出る時、吉永さんに御馳走様でしたって言われてしまった。けど心行くまで惚気けることが出来て最高な気分。やっぱり来て良かった。大満足な気分で廊下を歩いている時、自衛隊と思しき制服姿の背の高い男性と擦れ違ったんだけど、もしかして森永先生の旦那様だったりして。コーヒー外来の加藤さんのことを何処かで聞きつけて来たんだったら面白いな……なんて考えたらウフフって変な笑いがこみ上げてきちゃった。ごめんなさい、森永先生、完全に他人事です。
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『どうだった?』
お昼休みの時間、スマホに部長から電話がかかってきた。
「何も問題なしで順調だって。エコー写真をもらったよ。帰ってきたら見せてあげるね」
パッと見た感じはまだよく分かんないんだけどね。それでも初めての我が子の写真だから。
『そうか。今日は一日大人しくしていろよ?』
「なに言ってるんですか、一日中じっとしていたら太っちゃうよ。適度に動いてるから御心配なくぅ」
『だからと言って重たい物は持つんじゃないぞ』
「はいはい」
掃除機はゴロゴロ引っ張りながら移動するから“持つ”うちには入らないよね?
『何か買って来て欲しいものがあるならメールを入れておけ』
「はーい」
本当に過保護っていうか何と言うか。こんなに至れり尽くせりで甘やかされちゃうと後が大変だと思うんだけどなあ……。私、絶対に怠け癖がついちゃうと思うんだ。
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✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
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(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
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