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【後日談2】トロワ・メートル
29.ハコちゃんがチーフ
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東屋にあるベンチ、いつも座っている場所に腰をかけ、葉子は足を組んでギターを構える。
「えー、ではいまから配信を始めるわけですが。その前にチーフに確認をいたします。北星秀の上司だったということでご紹介してもよろしいですか」
向かいのベンチで呆然としている甲斐チーフが、ハッと我に返った。
「ほ、ほん、ほんとうに、ライブ配信を始めてしまうのですか??」
「はい。久しぶりに唄います。チーフのリクエストも唄います!」
「ハコちゃんが、私の、ために!?」
「はい。ご紹介の時に、本名ではないネット上でのニックネームでお呼びしたいのですが、どのようなお名前がよろしいですか?」
「いや、そんな……」
毎朝『いいね』をタップしてくれていたアカウントがあることを知っているが、葉子は蒼から聞かされただけなので、知らない振りをした。だがそのアカウントで付けている名前を言ってくれるかなと期待したが、甲斐チーフは恥ずかしそうに、ただただ戸惑っているだけだった。
「では、レストランで皆が呼んでいるように『お師匠さん』でよろしいですか」
「え、はい……おまかせします……」
「さらに、確認をいたしますが。いまから、私『葉子』を呼ぶときは?」
「えっと、ハコちゃん」
「では、篠田給仕長、蒼君のことは?」
「ダ、ダラシーノさん」
「父の十和田シェフのことは?」
「えーーっと、ハコパパシェフ!」
「秀星さんのことは?」
「北星秀!」
「既に本名を明かしている私と蒼君と父の三人ですが、なるべくオンライン上のネームでお願いします。秀星さんについては、いまも本名は明かしていませんので、北星秀で必ず通してください」
「わかりました!」
徐々にその気になるお顔を見せてくれたので、葉子はホッとする。
「どうしよう、ドキドキしてきました」
「大丈夫ですよ。お姿は映しませんからお声だけください。北星についてのエピソードは、視聴者さんも大好きなので、私からチーフへ伺ったら、そのままお話ししてください」
「はい。ここでは葉子さんがチーフですね。ハコちゃんチーフ、よろしくお願いいたします」
だんだんといつもの軽快な口調になってきたようで、なんとか平常心を取り戻したと葉子は思いたい。
「まず、SNSに告知をいたします。お待ちくださいね」
スマートフォンで、いつものハコのSNSアカウントを開きアクセス。
『お久しぶりです!
いきなりのゲリラライブをします🎸🎤✨
新しくご紹介したい方がいます!』
と打ち込んだ。
次はタブレットで動画配信サイトへアクセス、ライブ配信の準備をする。
「準備できました。SNSでも気がつかれた方、ちらほらコメントくださっていますね」
「わー、どうしよう。ああ、どうしよう」
「大分のご家族にも元気なお姿が届いて、安心すると思いますよ」
「ああ、じいちゃんが動画配信に登場しちゃって、ひっくりかえるかもしれません」
「ひっくり返しちゃいましょう」
笑う葉子が、いつもの教え子のセルヴーズに見えなかったのか、甲斐チーフが違う人を見るかのように唖然としていた。
カメラは本日は葉子へと向いている。その向こうには、鏡のような湖面に緑が映っている風景が広がるはずだ。
いい日にここに来たと葉子は思えた。秀星が写真に収めたような景色が見られる日和で風景で。葉子は束の間、東屋の屋根のそばへに垣間見える空へと目線を馳せる。
秀星さん。この景色がある日に引き寄せてくれたのかな。いまから、あなたのお師匠さんに、寄り添いたいと思います――。そう心の中でつぶやき、カメラへと手を伸ばす。
「では撮影開始します。5、4、3、2……」
いつもは蒼がやってくれる『キュー』を自分で行う。
ライブ配信が始まり、タブレットに自分の姿が映っているのを確認。葉子の背後には、緑生い茂る湖畔が映っている。
「お久しぶりです。ハコです。いま、ちょっと早い昼休みを取っています。背後の景色、見えますでしょうか」
しばらくそこで無言になる。風の音、木々の葉が織りなす森のざわめき、遠くからは野鳥の鳴き声も聞こえている。湖面が少しだけ水紋を描いているのもタブレットに映し出されている。視聴者に、この場所の雰囲気が伝わることを祈りながらの無言タイムだった。
*わあ、ハコちゃんひさしぶり!!
*ここ、どこ? 初めての場所だよね。あれ、写真集に載っていた?
*ギター持ってる! なにか唄ってくれるのかな
*今日はハコちゃん、顔出しOKの日?
*SNSのお知らせを見て来たんだけど。紹介したい人って誰?
コメントがちらほら入って来たことを、タブレットで確認。
サラリーマンやOL、主婦などなど、ちょうどお昼時と重なって多くの人が休憩時間に入っていたのか、気がついてくれた人々が結構いた。
「ここは北星がいつも撮影していたポイントから、少しだけ離れた場所にあります。私が毎朝、発声練習をしていたところですね。北星さんが湖畔での撮影を終えたら、ここで発声練習をしている私のところに顔を出してくれました。そんなときは『北星さん、今朝の写真を見せて』とお願いすると、嬉しそうに見せてくれました。なので、北星はここで撮影した写真も多く残しています。特に、五月から、いまの九月ぐらいまでは緑が生い茂る場所なので、緑が映る湖面がエメラルドのように美しくなります。この緑に染まる湖面の写真も、『エゴイスト』にて大沼の風景『夏』に入っています」
*いま写真集を手元でめくってみたけど、ほんとだ、同じ場所だ!
*写真のほうが、すごく絵画的に見える。やっぱり北星さん、綺麗に切り取る人だったんだね
視聴者にも、この東屋の雰囲気や空気が伝わっているようだった。
「本日はご紹介したい方がいます。カメラは私に向いていますが、レンズとは反対側のベンチに座っていらっしゃいます。北星さんの元上司で、北星さんの前にメートル・ドテルを勤めていた方です」
すぐにコメント欄もざわついた。
*北星さんの上司!?
*またメートル・ドテルさん!? なんでハコちゃんと一緒にいるの??
「矢嶋シャンテでお勤めを終えて引退、地元に戻られてご隠居生活をされていたのですが、この度、フレンチ十和田を訪ねてきてくださり、そのまま一緒にお仕事をすることになりました。いま私の直属の上司で、ソムリエになるための先生をしてくださっています」
*ソムリエ?? ハコちゃん、ソムリエになるの!?
*新しい目標を見つけていたんだね。楽しみ
*新しい上司さん、北星さんに会いに来たのかな。それでそのまま、ハコちゃんの先生になったのかな
*ソムリエになるのかよ。大変だぞ。でも応援する👍✨
*今日、ダラシーノは? 声が聞こえない!
*ソムリエって、何年勤務が必要ってあるだろ。ハコちゃんいまからなるなら、だいぶ歳月必要とするよ。頑張って
これも初めて伝えたので、コメント欄がまたさんざめく。
「北星と、もちろんダラシーノさんの上司でもあったお方で、ワインエキスパートの資格をお持ちです。矢嶋シャンテで給仕長を務められたキャリアもあるうえに、ワインの知識も豊富なので、毎日のお勉強が楽しいです。ホールも若いギャルソンを影から支えてくださっています。シェフの父も厨房の料理人達からも頼られている存在になっています。レストランでは『お師匠さん』が愛称です。なので、ここでもお師匠さんと呼びたいと思います。仕事中は私は『チーフ』と呼んでいます」
ギターを構えて、始まりの挨拶と配信のいきさつを伝え終えた葉子は、カメラの向こうにいる甲斐チーフに声をかけようとする。だが、もうガチガチに緊張しているのが伝わってくる。
「えー、ではいまから配信を始めるわけですが。その前にチーフに確認をいたします。北星秀の上司だったということでご紹介してもよろしいですか」
向かいのベンチで呆然としている甲斐チーフが、ハッと我に返った。
「ほ、ほん、ほんとうに、ライブ配信を始めてしまうのですか??」
「はい。久しぶりに唄います。チーフのリクエストも唄います!」
「ハコちゃんが、私の、ために!?」
「はい。ご紹介の時に、本名ではないネット上でのニックネームでお呼びしたいのですが、どのようなお名前がよろしいですか?」
「いや、そんな……」
毎朝『いいね』をタップしてくれていたアカウントがあることを知っているが、葉子は蒼から聞かされただけなので、知らない振りをした。だがそのアカウントで付けている名前を言ってくれるかなと期待したが、甲斐チーフは恥ずかしそうに、ただただ戸惑っているだけだった。
「では、レストランで皆が呼んでいるように『お師匠さん』でよろしいですか」
「え、はい……おまかせします……」
「さらに、確認をいたしますが。いまから、私『葉子』を呼ぶときは?」
「えっと、ハコちゃん」
「では、篠田給仕長、蒼君のことは?」
「ダ、ダラシーノさん」
「父の十和田シェフのことは?」
「えーーっと、ハコパパシェフ!」
「秀星さんのことは?」
「北星秀!」
「既に本名を明かしている私と蒼君と父の三人ですが、なるべくオンライン上のネームでお願いします。秀星さんについては、いまも本名は明かしていませんので、北星秀で必ず通してください」
「わかりました!」
徐々にその気になるお顔を見せてくれたので、葉子はホッとする。
「どうしよう、ドキドキしてきました」
「大丈夫ですよ。お姿は映しませんからお声だけください。北星についてのエピソードは、視聴者さんも大好きなので、私からチーフへ伺ったら、そのままお話ししてください」
「はい。ここでは葉子さんがチーフですね。ハコちゃんチーフ、よろしくお願いいたします」
だんだんといつもの軽快な口調になってきたようで、なんとか平常心を取り戻したと葉子は思いたい。
「まず、SNSに告知をいたします。お待ちくださいね」
スマートフォンで、いつものハコのSNSアカウントを開きアクセス。
『お久しぶりです!
いきなりのゲリラライブをします🎸🎤✨
新しくご紹介したい方がいます!』
と打ち込んだ。
次はタブレットで動画配信サイトへアクセス、ライブ配信の準備をする。
「準備できました。SNSでも気がつかれた方、ちらほらコメントくださっていますね」
「わー、どうしよう。ああ、どうしよう」
「大分のご家族にも元気なお姿が届いて、安心すると思いますよ」
「ああ、じいちゃんが動画配信に登場しちゃって、ひっくりかえるかもしれません」
「ひっくり返しちゃいましょう」
笑う葉子が、いつもの教え子のセルヴーズに見えなかったのか、甲斐チーフが違う人を見るかのように唖然としていた。
カメラは本日は葉子へと向いている。その向こうには、鏡のような湖面に緑が映っている風景が広がるはずだ。
いい日にここに来たと葉子は思えた。秀星が写真に収めたような景色が見られる日和で風景で。葉子は束の間、東屋の屋根のそばへに垣間見える空へと目線を馳せる。
秀星さん。この景色がある日に引き寄せてくれたのかな。いまから、あなたのお師匠さんに、寄り添いたいと思います――。そう心の中でつぶやき、カメラへと手を伸ばす。
「では撮影開始します。5、4、3、2……」
いつもは蒼がやってくれる『キュー』を自分で行う。
ライブ配信が始まり、タブレットに自分の姿が映っているのを確認。葉子の背後には、緑生い茂る湖畔が映っている。
「お久しぶりです。ハコです。いま、ちょっと早い昼休みを取っています。背後の景色、見えますでしょうか」
しばらくそこで無言になる。風の音、木々の葉が織りなす森のざわめき、遠くからは野鳥の鳴き声も聞こえている。湖面が少しだけ水紋を描いているのもタブレットに映し出されている。視聴者に、この場所の雰囲気が伝わることを祈りながらの無言タイムだった。
*わあ、ハコちゃんひさしぶり!!
*ここ、どこ? 初めての場所だよね。あれ、写真集に載っていた?
*ギター持ってる! なにか唄ってくれるのかな
*今日はハコちゃん、顔出しOKの日?
*SNSのお知らせを見て来たんだけど。紹介したい人って誰?
コメントがちらほら入って来たことを、タブレットで確認。
サラリーマンやOL、主婦などなど、ちょうどお昼時と重なって多くの人が休憩時間に入っていたのか、気がついてくれた人々が結構いた。
「ここは北星がいつも撮影していたポイントから、少しだけ離れた場所にあります。私が毎朝、発声練習をしていたところですね。北星さんが湖畔での撮影を終えたら、ここで発声練習をしている私のところに顔を出してくれました。そんなときは『北星さん、今朝の写真を見せて』とお願いすると、嬉しそうに見せてくれました。なので、北星はここで撮影した写真も多く残しています。特に、五月から、いまの九月ぐらいまでは緑が生い茂る場所なので、緑が映る湖面がエメラルドのように美しくなります。この緑に染まる湖面の写真も、『エゴイスト』にて大沼の風景『夏』に入っています」
*いま写真集を手元でめくってみたけど、ほんとだ、同じ場所だ!
*写真のほうが、すごく絵画的に見える。やっぱり北星さん、綺麗に切り取る人だったんだね
視聴者にも、この東屋の雰囲気や空気が伝わっているようだった。
「本日はご紹介したい方がいます。カメラは私に向いていますが、レンズとは反対側のベンチに座っていらっしゃいます。北星さんの元上司で、北星さんの前にメートル・ドテルを勤めていた方です」
すぐにコメント欄もざわついた。
*北星さんの上司!?
*またメートル・ドテルさん!? なんでハコちゃんと一緒にいるの??
「矢嶋シャンテでお勤めを終えて引退、地元に戻られてご隠居生活をされていたのですが、この度、フレンチ十和田を訪ねてきてくださり、そのまま一緒にお仕事をすることになりました。いま私の直属の上司で、ソムリエになるための先生をしてくださっています」
*ソムリエ?? ハコちゃん、ソムリエになるの!?
*新しい目標を見つけていたんだね。楽しみ
*新しい上司さん、北星さんに会いに来たのかな。それでそのまま、ハコちゃんの先生になったのかな
*ソムリエになるのかよ。大変だぞ。でも応援する👍✨
*今日、ダラシーノは? 声が聞こえない!
*ソムリエって、何年勤務が必要ってあるだろ。ハコちゃんいまからなるなら、だいぶ歳月必要とするよ。頑張って
これも初めて伝えたので、コメント欄がまたさんざめく。
「北星と、もちろんダラシーノさんの上司でもあったお方で、ワインエキスパートの資格をお持ちです。矢嶋シャンテで給仕長を務められたキャリアもあるうえに、ワインの知識も豊富なので、毎日のお勉強が楽しいです。ホールも若いギャルソンを影から支えてくださっています。シェフの父も厨房の料理人達からも頼られている存在になっています。レストランでは『お師匠さん』が愛称です。なので、ここでもお師匠さんと呼びたいと思います。仕事中は私は『チーフ』と呼んでいます」
ギターを構えて、始まりの挨拶と配信のいきさつを伝え終えた葉子は、カメラの向こうにいる甲斐チーフに声をかけようとする。だが、もうガチガチに緊張しているのが伝わってくる。
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