上 下
6 / 46
第一部・第一章:神様の命令はゼッタイ!

6

しおりを挟む
〈爽side〉


 嵐武様に追い出された俺は、自分の部屋で学園に入学するということについて思考を巡らせていた。

「…明日、神界を出て人間界に行くのかぁ……」

 俺の年齢だと、高校1年生になるんだよな。

 学園……か。

 どういう場所なんだろう?

 楽しみ半分、怖さ半分ってとこだな。

 だって、今までいたとこから全く別の所に行かされるんだぞ?

 不安がない訳がない。

 神様から教えてもらった情報だけでどこまでやれるのか、ものすごく不安だ。

 向こうに着いたら分からないことは誰に聞けば良いんだろ?

 神様達も暇じゃないし、気軽に呼んじゃ駄目なんだろうな。

 学園って年の近い子が沢山通ってるとこなんだっけ。

 友達とか恋人とか、神様に聞いても難しく答えてくれちゃうもんだから理解できるもんも出来なかったんだよなぁ。

 とりあえず仲良くなったら友達なのか?

 わかんねぇなぁ…………

 床に座り込んでた態勢からごろんと横になる。

 あー駄目だ、色んなもんが頭の中ぐるぐるしてる。気持ち悪い。

 考えなきゃいけないのが多すぎて嫌だ。

「爽。お邪魔しますね」

「うおわっ!?白狐か、びっくりした」

 突然背後から現れたクリーム色の狐。

 びっくりした……白狐だった。

 なんで白狐っていつも背後からぬっと現れるんだろ?疑問だ。

「好きなだけ私の体を撫で繰りまわして良いですからここに居させて下さい」

 いつも人型の白狐だけど、時間のあるときは可愛らしい狐になってる。

 その姿のときはクリーム色の滑らかなもふもふの体を好きなだけ撫でて撫でて撫でまくるのが俺の日課。

 俺は触り心地の良さそうな白狐を瞳に映した瞬間飛びかかった。体のあちこちを撫で撫でしてもふもふしてひたすら満喫した。この触り心地マジ気持ち良い。

 あ、一応言っとくが変態じゃないぞ。

「明日ですね。爽が高校生になる記念する日は」

 それを聞いたとたん、白狐を撫でていた手がふと止まった。

「……うん、そうだね…」

「元気がありませんね。学園生活に不安を感じてるからですか?」

「それはもちろんだけど……それよりも、神様達が争ってることの方が気がかりでさ……」

 学園生活の件は今更どうこう言っても決定事項なんだからどうにもならないだろうから今はいい。

 けど神様達の争いは別だ。

 今回の争いは焔の戦神と雷の戦神が巻き起こしたと聞いた。

 二人とも、よくここに出入りしていた。

 嵐武様との仕事で来ていたことがほとんどだけど、特に焔の戦神こと炎縛神様は時間が空いたときに人間界のことを教えてくれたり話し相手になってくれたりした。

 性格はちょっとアレだけど根は良い神様達なのに。

「爽は他人のことを心配しすぎです。いつも言ってますが、もっと自分のために時間を費やした方が良いと思います」

 え?そうなの?

「俺結構自分のために時間使ってると思うんだけどなぁ。神様達に人間界の情報教えてーってお願いしたり、剣術や体術の稽古をお願いしたり、全部自分のためだし……」

「神の役に立ちたいと情報収集していたことは知ってます。稽古だって、次々と消えてしまう弱い神を守りたいという願いから懇願していたことも知っています」

 全くその通りで言葉が出ない。

 だがそれは数年前までの話だ。

 俺がいくら強くなっても守ることはできないと悟ったから。

 弱い神同士の戦を見て、率直に思ったことだ。

 どれだけ弱い神様でも、人間の俺に守られるほど弱くないと知ったから。

 人間の俺がどう足掻いても、努力しても、このひと達には追い付けないんだ、と。

「……昔の話じゃん。今は只のがり勉野郎だよ?俺」

「そうですね。人間風情にしては知識が満載ですもんね。知識を得すぎて脳ミソ爆発すれば良いと思います」

 あれあれ?

 白狐が若干毒舌なのは気のせいかな?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

恋より友情!〜婚約者に話しかけるなと言われました〜

k
恋愛
「学園内では、俺に話しかけないで欲しい」 そう婚約者のグレイに言われたエミリア。 はじめは怒り悲しむが、だんだんどうでもよくなってしまったエミリア。 「恋より友情よね!」 そうエミリアが前を向き歩き出した頃、グレイは………。 本編完結です!その後のふたりの話を番外編として書き直してますのでしばらくお待ちください。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

王子は婚約破棄をし、令嬢は自害したそうです。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「アリシア・レッドライア! おまえとの婚約を破棄する!」 公爵令嬢アリシアは王子の言葉に微笑んだ。「殿下、美しい夢をありがとうございました」そして己の胸にナイフを突き立てた。 血に染まったパーティ会場は、王子にとって一生忘れられない景色となった。冤罪によって婚約者を自害させた愚王として生きていくことになる。

裏切りの代償

志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。 家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。 連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。 しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。 他サイトでも掲載しています。 R15を保険で追加しました。 表紙は写真AC様よりダウンロードしました。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

処理中です...