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67. うちで飼うことになりました
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引っ越し初日は扉の改装や掃除、それ以降は内装を変えたり周辺の雑草を取り除いたりとそれなりに忙しくしていた。
扉は子供でも開けれるように軽くて丈夫な木材にして、そのままだと石の壁に木の扉で見た目的にも防犯的にもよろしくないので幻影魔法を駆使してこれまで通りの重厚な扉に見せかけた。
更に防犯として屋敷に結界を張った。こんな街外れの寂れた土地になんて誰も来ないだろうけど。
ちなみに部屋割りは終始レルム達が言い争っていたので俺が適当に決めた。嘆くレルム達には悪いが、さっさと済ませたかったので。
引っ越し作業も大分落ち着いてきた頃、セレーナの襲撃に見舞われた。
繰り出される凶悪な打撃をあしらい、逆に魔法で反撃したりと軽く相手してやる。
「ふにゃぁ~!やっぱりフィードと遊ぶのが一番楽しいにゃ~」
「それはどうも。引っ越したことは言ってなかったはずだが、また勘で居場所特定したのか?」
戦闘が落ち着き、呆れ混じりにセレーナに問いかけたところ、予想とは違った返答が。
「今回は違うにゃ。フィードの家族は街外れに移り住んだって街の人達が言ってたのにゃ。なんでかアタシを見た人ほぼ全員に言われたにゃ~」
言外にこれ以上街中で暴れるなと訴えられている……
「にしても、こーんな何もないとこに引っ越すなんてフィードも物好きなのにゃ~」
「仕方ないだろ、種族特有の悩みの種が……どうした?」
俺から視線を外して訝しげに目を細めるセレーナ。僅かに警戒心が顔を覗かせている。
「ん~……んんん~~??」
ひたすら首を傾げて唸るセレーナに俺まで首を傾げてしまう。いったい何だというのか。
「ん~……そこにゃ!」
直後、セレーナが神速パンチを突き出した。
誰もいないはずの俺の背後に。
ぎょっとして振り返れば、そこには鳩尾を押さえて呻くルファウスの姿が。
「ル、ルファウス?大丈夫か?」
「ああ、なんとか……」
「にゃ?フィードの知り合いかにゃ~?それは悪いことしちゃったにゃ、なんとなくそこに誰かいそうだったからつい手を出しちゃったにゃ~」
ほんのちょっぴり申し訳なさげに眉を下げて言い放ったセレーナに驚愕する。
気配と魔力を遮断して徹底的に姿を表さないこいつの居場所を正確に見極め、尚且つピンポイントで急所を狙うとは……俺でも普段どこにいるか分からないのに。
「街中で、フィードがちょっかいをかけられる際にも近くにいたが、そのときは反応してなかった。何故だ?」
「あれ、街にもいたにゃ?人いっぱいいるから全然気付かなかったにゃ~」
「人気のないここでは些細な気配も探りやすい、と」
痛みを堪えながら立ち上がり、いたって冷静に自分を襲ったやつに声をかけて分析しだすルファウス。
「いやお前もっと言うことあるだろ」
思わず口を出してしまう。
一瞬きょとんとしたルファウスだが、ハッと何かに気付いてぽんっと手を叩いた。
セレーナに向き直り、真剣な顔で一言。
「素晴らしい拳だった」
そこかよ!
もっとあるだろ、こう、自慢の隠密行動と隠蔽技術をいとも容易く見破られて悔しがったり、突然の事態に呆然としたり、突如ぶん殴られた怒りが沸いたり……!
セレーナはよく分かってない様子で、しかし褒められたのはなんとなく伝わったのか「ありがとにゃ?」と語尾に疑問符をつけてお礼を言う。2人揃って天然か。
脱力する俺に今度はルファウスが首を傾げたが、まあいいかと軽く流して諦めの混じった声音で言った。
「どうやらこの猫には隠せそうにないし、姿を現しておこう。また目にも留まらぬ殺人パンチの餌食になるのは御免だしな」
◇ ◇ ◇
3人(2人と1匹?)揃って俺の家へ。
途中、土魔法で畑をつくっていたレインと遭遇し、2人を紹介した。
にこやかに対応するレインに対し、2人は「天敵を狙う狩人みたいな雰囲気だにゃ~」「あの黒い笑顔、宰相と話が合いそうだな」とよく分からない評価を下していた。うちの可愛い弟に何を感じ取ったんだこの2人は。
「なんで畑もあるのにゃ?農家でも営むのにゃ?」
「我が家の食糧庫だ」
「フィードの家族大食いなのにゃ~」
「確かに胃袋がブラックホールだったな。毎回見てるこっちが胃もたれを起こしそうになる」
雑談を交わしながら歩いてると豪邸に着いた。
王族で、しかも監視として常に俺のそばにいるルファウスは特に何の反応もなかったが、セレーナは感嘆した様子で「でっかい家にゃ~」と目を瞬かせていた。
寒い中わざわざここまで来てくれたんだからと改良版ドラゴン温卓に案内したところ、中で丸くなって動かなくなってしまった。
「ふにゃぁ~……前のやつよりずっと気持ちいいにゃ~!ぽかぽかでぬくぬくで快適にゃ~」
「また1人ドラゴン温卓の魔の手に堕ちたか……」
「猫は炬燵で丸くなる……懐かしい歌を思い出した」
「決めた!アタシ、ここに住むにゃ~!」
「勝手に他人ん家に住み着くな!」
「番犬ならぬ番猫はいかがかにゃ?フィードの家族守ってあげるにゃ」
「イエ間に合ってます」
「じゃあペット枠にゃ!」
「ペット枠!?」
「じゃあ私もペット枠で。この猫がいるなら隠れられないし」
「お前もかルファウス!?」
自分ん家に帰れと散々説得したが徒労に終わり、セレーナとルファウスを我が家に迎え入れることとなった。
ただし、ペットとして。
お前ら本当にそれでいいのか……?
扉は子供でも開けれるように軽くて丈夫な木材にして、そのままだと石の壁に木の扉で見た目的にも防犯的にもよろしくないので幻影魔法を駆使してこれまで通りの重厚な扉に見せかけた。
更に防犯として屋敷に結界を張った。こんな街外れの寂れた土地になんて誰も来ないだろうけど。
ちなみに部屋割りは終始レルム達が言い争っていたので俺が適当に決めた。嘆くレルム達には悪いが、さっさと済ませたかったので。
引っ越し作業も大分落ち着いてきた頃、セレーナの襲撃に見舞われた。
繰り出される凶悪な打撃をあしらい、逆に魔法で反撃したりと軽く相手してやる。
「ふにゃぁ~!やっぱりフィードと遊ぶのが一番楽しいにゃ~」
「それはどうも。引っ越したことは言ってなかったはずだが、また勘で居場所特定したのか?」
戦闘が落ち着き、呆れ混じりにセレーナに問いかけたところ、予想とは違った返答が。
「今回は違うにゃ。フィードの家族は街外れに移り住んだって街の人達が言ってたのにゃ。なんでかアタシを見た人ほぼ全員に言われたにゃ~」
言外にこれ以上街中で暴れるなと訴えられている……
「にしても、こーんな何もないとこに引っ越すなんてフィードも物好きなのにゃ~」
「仕方ないだろ、種族特有の悩みの種が……どうした?」
俺から視線を外して訝しげに目を細めるセレーナ。僅かに警戒心が顔を覗かせている。
「ん~……んんん~~??」
ひたすら首を傾げて唸るセレーナに俺まで首を傾げてしまう。いったい何だというのか。
「ん~……そこにゃ!」
直後、セレーナが神速パンチを突き出した。
誰もいないはずの俺の背後に。
ぎょっとして振り返れば、そこには鳩尾を押さえて呻くルファウスの姿が。
「ル、ルファウス?大丈夫か?」
「ああ、なんとか……」
「にゃ?フィードの知り合いかにゃ~?それは悪いことしちゃったにゃ、なんとなくそこに誰かいそうだったからつい手を出しちゃったにゃ~」
ほんのちょっぴり申し訳なさげに眉を下げて言い放ったセレーナに驚愕する。
気配と魔力を遮断して徹底的に姿を表さないこいつの居場所を正確に見極め、尚且つピンポイントで急所を狙うとは……俺でも普段どこにいるか分からないのに。
「街中で、フィードがちょっかいをかけられる際にも近くにいたが、そのときは反応してなかった。何故だ?」
「あれ、街にもいたにゃ?人いっぱいいるから全然気付かなかったにゃ~」
「人気のないここでは些細な気配も探りやすい、と」
痛みを堪えながら立ち上がり、いたって冷静に自分を襲ったやつに声をかけて分析しだすルファウス。
「いやお前もっと言うことあるだろ」
思わず口を出してしまう。
一瞬きょとんとしたルファウスだが、ハッと何かに気付いてぽんっと手を叩いた。
セレーナに向き直り、真剣な顔で一言。
「素晴らしい拳だった」
そこかよ!
もっとあるだろ、こう、自慢の隠密行動と隠蔽技術をいとも容易く見破られて悔しがったり、突然の事態に呆然としたり、突如ぶん殴られた怒りが沸いたり……!
セレーナはよく分かってない様子で、しかし褒められたのはなんとなく伝わったのか「ありがとにゃ?」と語尾に疑問符をつけてお礼を言う。2人揃って天然か。
脱力する俺に今度はルファウスが首を傾げたが、まあいいかと軽く流して諦めの混じった声音で言った。
「どうやらこの猫には隠せそうにないし、姿を現しておこう。また目にも留まらぬ殺人パンチの餌食になるのは御免だしな」
◇ ◇ ◇
3人(2人と1匹?)揃って俺の家へ。
途中、土魔法で畑をつくっていたレインと遭遇し、2人を紹介した。
にこやかに対応するレインに対し、2人は「天敵を狙う狩人みたいな雰囲気だにゃ~」「あの黒い笑顔、宰相と話が合いそうだな」とよく分からない評価を下していた。うちの可愛い弟に何を感じ取ったんだこの2人は。
「なんで畑もあるのにゃ?農家でも営むのにゃ?」
「我が家の食糧庫だ」
「フィードの家族大食いなのにゃ~」
「確かに胃袋がブラックホールだったな。毎回見てるこっちが胃もたれを起こしそうになる」
雑談を交わしながら歩いてると豪邸に着いた。
王族で、しかも監視として常に俺のそばにいるルファウスは特に何の反応もなかったが、セレーナは感嘆した様子で「でっかい家にゃ~」と目を瞬かせていた。
寒い中わざわざここまで来てくれたんだからと改良版ドラゴン温卓に案内したところ、中で丸くなって動かなくなってしまった。
「ふにゃぁ~……前のやつよりずっと気持ちいいにゃ~!ぽかぽかでぬくぬくで快適にゃ~」
「また1人ドラゴン温卓の魔の手に堕ちたか……」
「猫は炬燵で丸くなる……懐かしい歌を思い出した」
「決めた!アタシ、ここに住むにゃ~!」
「勝手に他人ん家に住み着くな!」
「番犬ならぬ番猫はいかがかにゃ?フィードの家族守ってあげるにゃ」
「イエ間に合ってます」
「じゃあペット枠にゃ!」
「ペット枠!?」
「じゃあ私もペット枠で。この猫がいるなら隠れられないし」
「お前もかルファウス!?」
自分ん家に帰れと散々説得したが徒労に終わり、セレーナとルファウスを我が家に迎え入れることとなった。
ただし、ペットとして。
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