49 / 68
第三章 どうせなら楽しもうと思う
49 楽しく生きる為に
しおりを挟む
治療室を出て、食堂に向かいながら話す。
「……姉ちゃんの事だから、団長達の事、観察したがるかと思ったけど」
「あんたねぇ……私の事なんだと思ってんの」
「ハハ、悪い。それにしても治療できて良かったよ。俺って単独では役に立たないけど、姉ちゃんの治癒能力を高めるブースター的な力があるのかな」
「そうかもね。まあその辺は今後も色々試してみてだね」
「だな。……姉ちゃん? なんか元気ないけど、大丈夫か? ポーション飲む? 少し横になる? 戻って治療師さんに診てもらうか?」
「ううん、大丈夫。大丈夫だから、食堂に行こう」
そう言うけれど、ドロリスの表情は冴えない。
「いやホント、無理すんなよ。挨拶は明日でも……姉ちゃん? 泣いてる?」
ドロリスの目が潤み鼻もグスグスさせているのに気づき、ノアは驚いて肩を掴んだ。
「え? どうした? どっか辛いのか?」
「…………じゃ、なかった……」
「ん?」
「そ、んな、つもりじゃなかった」
「えっ?」
「わた、し、イーサンとウィリアムを、苦しめるつもりじゃ、なかった……」
「えっ? は? なに言って……」
慌てるノアの腕にすがり、ドロリスは泣きながら言った。
「そんな、しっかりした設定じゃなかったの。頭の中でちょっと考えた事がある、程度で……イーサンは生まれつきの体質のせいで、体内に入ってしまった魔毒は出しにくくて。討伐の時に淫魔の媚薬的な成分が入っちゃって、排出できなくて苦しんでいる時、ウィリアムが治療行為としてあれやこれやして、なんやかんやで二人は付き合い出すって……いつかそういうスピンオフ描きたいなって考えたけど、でも、そんな、絶対描くって決めてたわけじゃなくて……それなのにこんな……媚薬成分だけじゃなく、他のいろんな魔毒が溜まっちゃって、ずっと苦しんでて。それなのに皆の為に団長で居続けてくれてるイーサンと、心配しながらも彼の意思を尊重して見守り続けていたウィリアムは、どんなに辛かったか……私の、せいで……」
肩を震わし、泣くドロリス。
(そうか、姉ちゃん、責任を感じてるんだ。てか、なかなか凄い設定だな、オイ)
そう思いながらも、ノアはドロリスを抱きしめた。
「大丈夫、気にするなよ、姉ちゃん」
「でも……」
「確かにこの世界は、姉ちゃんの描いてた『金犬青狼』の世界だ。でも、全てが漫画通りってわけじゃない。嘆きの森遠征ではコカトリスが出て来たし、ユージーンは隻眼にならなかったし顔に傷も残らなかった。ユージーンは最初からレイモンドじゃなくて俺の事好きだったし、俺は俺の意思で、ユージーンの事が好きになった。それに姉ちゃんは聖女としてここにいる。団長の症状を緩和する事ができた。で、俺も、聖女の弟として姉ちゃんの手助けができる。だから大丈夫だよ。一緒に団長の治療をしよう」
「ノア……」
涙で濡れた顔を上げ、ドロリスがノアを見る。
「俺は、感謝してるよ。姉ちゃんが創ってくれたこの世界は優しい。好きな人に好きと言えて、それをどうこう言うヤツはいない。俺とユージーンは結婚するつもりでそういう話もしているし、きっとジョシュアとレイモンドも、そして団長とウィリアムさんも結婚するつもりだと思う」
「うん……」
「皆で幸せになろう。その為に頑張ろう、一緒に。せっかくこの世界に来たんだ、楽しまなくっちゃ! 楽しく生きる為に、思いっきり努力しよう。姉ちゃんには俺がついているから安心して」
「うん、ありがとう、ノア……私、頑張るよ」
二人はキュッとお互いを抱きしめたが、
ガシャン、シャン、シャン、シャン……
大きな音が響き、驚いて音の方を見ると、
「あ……ユージーン……」
魔杖を取り落とし、立ち尽くすユージーンがそこにいた。
「……失礼」
杖を拾い、一礼して去っていくユージーン。
「えーと……ノア……大丈夫?」
「ん? あ、ああ、大丈夫」
「え? ホントに? なんか目がうつろだけど」
「さっき、ちゃんと姉ちゃんだって紹介してるし、ユージーンもちゃんと納得してたし、なんも、なんも問題ないから……」
プルプルと微かに震えながらそう言うノアを見るドロリスの目に、輝きが宿る。
「本当? 本当に大丈夫? 今夜はお仕置きだって言われてイッてもイッても何度も執拗にイイトコロを攻められてあまりにも強すぎる快楽にもう許してって泣いても終わらない激しいセッ」
「ファーッ!! なに言ってんだよ姉ちゃんっ! ホント、ホントにもおっ!」
ものすごい剣幕で怒鳴るノアにドロリスは言葉を切り、
「……フッ、フフッ、フフフフフ」
笑い出し、涙を拭いた。
「フフッ、ありがとね、ノア。元気出た」
「ったく……そんなんで元気出すなよ、俺は疲れたよ。全く……姉ちゃんは聖女で見た目17、8なんだから、言動には気を付けてくれよ。あーあと、俺達だけど」
鼻の頭を掻きながら、ノアがボソリと言う。
「俺達まだ、最後までしてないからな」
「えっ? そうなの?」
「そう! だから、あんまりユージーンに変な事言ったり教えたりすんなよ。俺達は俺達のペースでゆっくりじっくり進めるんだから……って、聞いてる?」
「うんうん、聞いてるっ。わー、そっかー、そうなんだー。え、じゃあどのへんまでしたの? お互いのを手で、とかはもちろんやってるよね? フェラも、さっきの絵を見たユージーンの感じからはしてるっぽいけど。素股とかは」
「あーもう、何イキイキしてんだよ。ついさっきまで泣いてたくせに」
「だって~」
ワクワク顔のドロリスを見て、ノアは笑った。
「まあ、いいけど。どうせなら楽しい方がいいもんな。この世界で楽しく生きていこうぜ」
「うん! 良かった、ノアと一緒で」
「俺も。姉ちゃんと一緒で嬉しいよ。じゃ、食堂行こう。そろそろ落ち着いてる時間だから、挨拶できると思うよ。で、俺達も昼飯食べよう。俺、腹ペコペコ」
「治療の後ってお腹すくのよね。行こう行こう!」
「団員達が交代で作ってるから、美味しい時とそうでない時があるんだけど、今週は美味しいんだ!」
「やったー!」
二人はニコニコと食堂に向かったが、そこで、毒入りだとわかったうえで飲んでいる、とでも言うかのような表情でスープを口に運んでいるユージーンを見て震えあがるのだった。
☆次回はエロ有です。ドロリス、当たらずとも遠からず!? 苦手な方は飛ばして下さい。エロ、2話続けて、その後エピローグです。
「……姉ちゃんの事だから、団長達の事、観察したがるかと思ったけど」
「あんたねぇ……私の事なんだと思ってんの」
「ハハ、悪い。それにしても治療できて良かったよ。俺って単独では役に立たないけど、姉ちゃんの治癒能力を高めるブースター的な力があるのかな」
「そうかもね。まあその辺は今後も色々試してみてだね」
「だな。……姉ちゃん? なんか元気ないけど、大丈夫か? ポーション飲む? 少し横になる? 戻って治療師さんに診てもらうか?」
「ううん、大丈夫。大丈夫だから、食堂に行こう」
そう言うけれど、ドロリスの表情は冴えない。
「いやホント、無理すんなよ。挨拶は明日でも……姉ちゃん? 泣いてる?」
ドロリスの目が潤み鼻もグスグスさせているのに気づき、ノアは驚いて肩を掴んだ。
「え? どうした? どっか辛いのか?」
「…………じゃ、なかった……」
「ん?」
「そ、んな、つもりじゃなかった」
「えっ?」
「わた、し、イーサンとウィリアムを、苦しめるつもりじゃ、なかった……」
「えっ? は? なに言って……」
慌てるノアの腕にすがり、ドロリスは泣きながら言った。
「そんな、しっかりした設定じゃなかったの。頭の中でちょっと考えた事がある、程度で……イーサンは生まれつきの体質のせいで、体内に入ってしまった魔毒は出しにくくて。討伐の時に淫魔の媚薬的な成分が入っちゃって、排出できなくて苦しんでいる時、ウィリアムが治療行為としてあれやこれやして、なんやかんやで二人は付き合い出すって……いつかそういうスピンオフ描きたいなって考えたけど、でも、そんな、絶対描くって決めてたわけじゃなくて……それなのにこんな……媚薬成分だけじゃなく、他のいろんな魔毒が溜まっちゃって、ずっと苦しんでて。それなのに皆の為に団長で居続けてくれてるイーサンと、心配しながらも彼の意思を尊重して見守り続けていたウィリアムは、どんなに辛かったか……私の、せいで……」
肩を震わし、泣くドロリス。
(そうか、姉ちゃん、責任を感じてるんだ。てか、なかなか凄い設定だな、オイ)
そう思いながらも、ノアはドロリスを抱きしめた。
「大丈夫、気にするなよ、姉ちゃん」
「でも……」
「確かにこの世界は、姉ちゃんの描いてた『金犬青狼』の世界だ。でも、全てが漫画通りってわけじゃない。嘆きの森遠征ではコカトリスが出て来たし、ユージーンは隻眼にならなかったし顔に傷も残らなかった。ユージーンは最初からレイモンドじゃなくて俺の事好きだったし、俺は俺の意思で、ユージーンの事が好きになった。それに姉ちゃんは聖女としてここにいる。団長の症状を緩和する事ができた。で、俺も、聖女の弟として姉ちゃんの手助けができる。だから大丈夫だよ。一緒に団長の治療をしよう」
「ノア……」
涙で濡れた顔を上げ、ドロリスがノアを見る。
「俺は、感謝してるよ。姉ちゃんが創ってくれたこの世界は優しい。好きな人に好きと言えて、それをどうこう言うヤツはいない。俺とユージーンは結婚するつもりでそういう話もしているし、きっとジョシュアとレイモンドも、そして団長とウィリアムさんも結婚するつもりだと思う」
「うん……」
「皆で幸せになろう。その為に頑張ろう、一緒に。せっかくこの世界に来たんだ、楽しまなくっちゃ! 楽しく生きる為に、思いっきり努力しよう。姉ちゃんには俺がついているから安心して」
「うん、ありがとう、ノア……私、頑張るよ」
二人はキュッとお互いを抱きしめたが、
ガシャン、シャン、シャン、シャン……
大きな音が響き、驚いて音の方を見ると、
「あ……ユージーン……」
魔杖を取り落とし、立ち尽くすユージーンがそこにいた。
「……失礼」
杖を拾い、一礼して去っていくユージーン。
「えーと……ノア……大丈夫?」
「ん? あ、ああ、大丈夫」
「え? ホントに? なんか目がうつろだけど」
「さっき、ちゃんと姉ちゃんだって紹介してるし、ユージーンもちゃんと納得してたし、なんも、なんも問題ないから……」
プルプルと微かに震えながらそう言うノアを見るドロリスの目に、輝きが宿る。
「本当? 本当に大丈夫? 今夜はお仕置きだって言われてイッてもイッても何度も執拗にイイトコロを攻められてあまりにも強すぎる快楽にもう許してって泣いても終わらない激しいセッ」
「ファーッ!! なに言ってんだよ姉ちゃんっ! ホント、ホントにもおっ!」
ものすごい剣幕で怒鳴るノアにドロリスは言葉を切り、
「……フッ、フフッ、フフフフフ」
笑い出し、涙を拭いた。
「フフッ、ありがとね、ノア。元気出た」
「ったく……そんなんで元気出すなよ、俺は疲れたよ。全く……姉ちゃんは聖女で見た目17、8なんだから、言動には気を付けてくれよ。あーあと、俺達だけど」
鼻の頭を掻きながら、ノアがボソリと言う。
「俺達まだ、最後までしてないからな」
「えっ? そうなの?」
「そう! だから、あんまりユージーンに変な事言ったり教えたりすんなよ。俺達は俺達のペースでゆっくりじっくり進めるんだから……って、聞いてる?」
「うんうん、聞いてるっ。わー、そっかー、そうなんだー。え、じゃあどのへんまでしたの? お互いのを手で、とかはもちろんやってるよね? フェラも、さっきの絵を見たユージーンの感じからはしてるっぽいけど。素股とかは」
「あーもう、何イキイキしてんだよ。ついさっきまで泣いてたくせに」
「だって~」
ワクワク顔のドロリスを見て、ノアは笑った。
「まあ、いいけど。どうせなら楽しい方がいいもんな。この世界で楽しく生きていこうぜ」
「うん! 良かった、ノアと一緒で」
「俺も。姉ちゃんと一緒で嬉しいよ。じゃ、食堂行こう。そろそろ落ち着いてる時間だから、挨拶できると思うよ。で、俺達も昼飯食べよう。俺、腹ペコペコ」
「治療の後ってお腹すくのよね。行こう行こう!」
「団員達が交代で作ってるから、美味しい時とそうでない時があるんだけど、今週は美味しいんだ!」
「やったー!」
二人はニコニコと食堂に向かったが、そこで、毒入りだとわかったうえで飲んでいる、とでも言うかのような表情でスープを口に運んでいるユージーンを見て震えあがるのだった。
☆次回はエロ有です。ドロリス、当たらずとも遠からず!? 苦手な方は飛ばして下さい。エロ、2話続けて、その後エピローグです。
983
お気に入りに追加
1,539
あなたにおすすめの小説
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。
貧乏大学生がエリート商社マンに叶わぬ恋をしていたら、玉砕どころか溺愛された話
タタミ
BL
貧乏苦学生の巡は、同じシェアハウスに住むエリート商社マンの千明に片想いをしている。
叶わぬ恋だと思っていたが、千明にデートに誘われたことで、関係性が一変して……?
エリート商社マンに溺愛される初心な大学生の物語。
【完結】長い物語の終わりはハッピーエンドで
志麻友紀
BL
異世界召喚されたら、前世の賢者の記憶がよみがえった!
転送の事故により魔力ゼロで玉座に放り出された史朗を全員無視。彼らの目当ては、史朗が召喚に巻き込まれた少女で、彼女こそ救国の聖女だという。
そんな史朗に唯一、手を差し伸べてくれたのは、濃紺の瞳の美丈夫、聖竜騎士団長ヴィルタークだった。彼の屋敷でお世話係のメイドまでつけられて大切にされる日々。
さらに史朗が魔鳥に襲われ、なけなしの魔力で放った魔法で、生命力が枯渇しかけたのを、肌を合わせることでヴィルタークは救ってくれた。
治療のためだけに抱いた訳じゃない。お前が好きだと言われて史朗の心も揺れる。
一方、王国では一年の間に二人もの王が亡くなり、評判の悪い暫定皇太子に、ヴィルタークの出生の秘密もあいまって、なにやら不穏な空気が……。
R18シーン入りのお話は章タイトルの横に※つけてあります。
ムーンライトノベルズさんでも公開しています。
モブの強姦って誰得ですか?
気まぐれ
BL
「お前を愛している。」
オッスおらモブ!こに世界では何も役に立たないモブ君だよ!
今ね、泣きたいんだよ。現在俺は尊敬していた勇者に強姦されている!皆ここからが重要だぞ!
俺は・・・男だ・・・
モブの俺は可愛いお嫁さんが欲しい!
異世界で起こる哀れなモブの生活が今始まる!
高嶺の花と思われがちですが、ただの外面です。
猫宮乾
BL
周囲に高嶺の花だと思われている僕(グレイ)であるが、それは無論外面で、中身は高尚でもなんでもない。しかも貴族だが貧乏だ。夢は玉の輿にのること。そんなある日、国王陛下が宣言した。第二王子がいっこうに結婚する気がないので、その心を射止めた者の願いを、できる範囲のことならなんでも一つ叶える、と。よぉーし! 第二王子殿下を射止めるぞー!
婚約者に会いに行ったらば
龍の御寮さん
BL
王都で暮らす婚約者レオンのもとへと会いに行ったミシェル。
そこで見たのは、レオンをお父さんと呼ぶ子供と仲良さそうに並ぶ女性の姿。
ショックでその場を逃げ出したミシェルは――
何とか弁解しようするレオンとなぜか記憶を失ったミシェル。
そこには何やら事件も絡んできて?
傷つけられたミシェルが幸せになるまでのお話です。
【完結】だから俺は主人公じゃない!
美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。
しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!?
でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。
そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。
主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱!
だから、…俺は主人公じゃないんだってば!
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる