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第三章 どうせなら楽しもうと思う

42 お姉ちゃん

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 皆様こんにちは、西園寺櫻子です。
 いやー、すっごくご無沙汰してしまってすみません。連載中の『金の毛並みの子犬は青狼騎士様のお気に入り』ですが、5巻出したところでストップしてしまって、何年経ったんでしょう……十数年? それとも実はさほど経っていない? よくわからないですが、それがまた、恐いというかなんというか……。

 実は私、なんかの弾みで『金犬青狼』の世界に来ちゃったみたいなんですよ。しかも、聖女ですって。似合わないですよねー(笑)。どうせなら、主人公達見放題の第三騎士団の団員とかが良かったんですけど。
 で、異世界転生しちゃったわけなんですけど、最近まではその事にまったく気づかず生活していました。記憶のスタートは5、6歳くらいで、癒しの力を持っているから聖女になるべく教会に引き取られて修行してまして。その前の事は覚えてないけど、まあ、そんなもんなのかなぁ、なんて思って。
 この世界、魔獣とかいるし治安もそんなに良くないから、家族を殺されたとかでショックを受けて記憶が無いのかも、だったら思い出さなくていいかー、なんて思っていたんですよ。それでまあ、支障もなかったですからね。

 でも!

 ちょっと前、魔獣討伐の遠征に行きまして、そこで、びっくりする事があったんです。
 コカトリスの毒にやられた魔術師を助けて欲しいってやって来た騎士がいて。それが、ノア・ヴァーツだったんです! そう! あのノアですよ! で、助けて欲しいって魔術師が、ユージーン・フィンレイで。
 最初のうちは何も気が付かなかったんですけど、治療中にノアが言った言葉に『んっ?』と思って。治療を終えて王都に戻ってからも、なーんか引っかかるなぁって考えていたら、急に思い出したんです。自分は西園寺櫻子で、ここは私が描いてる漫画の世界だって。
 そこからはもう、次々と記憶が蘇ってきまして、ノアが私の実の弟で、この世界に一緒に来たっていう事も思い出しました。もともとノアって、弟をモデルに出来たキャラですし( ´艸`)

 で、今日、いよいよそのノアと再会できる事になりました。もう、ドキドキです! 向こうの記憶はどの程度あるのかなぁ。お姉ちゃんの事、思い出してくれるといいのですが。
 あ、でもこっち来るちょっと前に、ユージーン×ノアのスピンオフ的な話を描こうとして『余計な事するなー』とか言われたんだった! やばっ! 今どうなってるんだろう(≧∇≦) いろんな意味でドキドキです! 

 あ、なんか呼ばれたんで、行ってきます!
 頑張るぞー! 



(……と、妄想遊びはこれくらいにして)

 呼びに来た近衛騎士の後をついて行く。
 大きな両開きの扉の前で一度立ち止まり、その後、中に招かれた。

 

「聖女ドロリス、第二王子殿下にご挨拶申し上げます」

 片方の足を後ろに引き膝を曲げ腰を落とす、という遠征前に教会で指導された挨拶をライアン王子に対してする。

(相変わらずキラキラしてるわね、さすが王子様)

 姿勢を戻して軽く微笑み、少し視線をずらすと、片膝をついた一人の騎士が目に留まった。

(ノアっ!! てか彰! いややっぱりノア!)

 感情が昂り思わずサササッと近寄ると、自分も跪いてノアの右手を両手でギュッと握った。

「へっ? あのっ?」

 驚いたようでノアは手を引っ込めようとするが、離すわけがない。

「あの、ええと、聖女、様?」
「聖女様だなんてそんな、他人行儀な呼び方しないで下さい!」
「はっ?」

 ノアの声に、涙が出そうになる。

(あの時は、何も思い出さないし何も感じなかったけど……ああ、ノア……立派に成長して……)

「え? あのっ? ええっ?」

 戸惑っているようだが、そんなの構っていられない。

「ノア、お姉ちゃんだよ」
「……へっ?」
「ノア~~~」
「うわうわうわ、ちょっと待って下さい!」

 抱きつかれて後ろに倒れそうになり慌てるノア。そして不機嫌な表情の第二王子。困り顔の第三騎士団団長、侍従、近衛騎士。
 しかし、

「うっ、ううっ、ノア……彰……ウウッ」
「え、アキ、ラ、って……ええっ? 姉ちゃんっ?」
「だから、そう言ってるでしょうっ!」
「え、ちょっと待ってちょっと待って……ええっ?」
 
 両肩を掴んで引き離し、まじまじと顔を見て、

「……さくら……」

 確認の為、小声で囁かれたその名に、コクコクと頷く。

「そんな事って……姉ちゃんっ!」
「うわーん! 会えて嬉しい!」
「俺もだよ! 姉ちゃーん」

 二人はしっかり抱き合い、声を上げて泣いた。


 


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