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15 sideメルキュール
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ドゴォン!!という音とともに土煙がたっている。
うっすらと見える影は2つ。
メルキュールは血の気が引くのを感じた。
(巻き込んでしまった!相手が相手とはいえ、…こちらのミスだ)
全力の一撃ではないとはいえ、それなりの力を込めた一撃だ。多少魔法の心得があると聞いているエトワール子爵令息とは違い、丸腰の人間に当たれば致命傷になりかねない。
土煙の向こうから、うっすらと魔法陣が見えた。
淡く水色に輝く魔法陣の向こう側には、ルナを守るように立つノーヴァとルナがいた。
そっと抱きしめるようにルナを守るノーヴァの右腕は、肩からひじ、ひじから手の甲にかけて服が燃えて、やけどとすり傷ができていた。ルナの左頬にもすり傷と切り傷があった。そのほかにも、2人の体には所々、やけどにすり傷、切り傷があった。
そんなルナは、自分を守るノーヴァからそっと離れ、こちら側へ歩いてきた。
と思っていると、
スパァーーン!!とものすごくいい音がして、自分の左頬がはりとばされた。
時間差でジンジンとした痛みが左頬にはしる。
「誰にケンカ売ってんのよ!!!」
目を見開き、顔を真っ赤にして、いつものすまし顔はどこへやら。見たこともないくらい怒り狂ってアース男爵令嬢は吠えた。
身体中から湯気が出ているのではと思うほど怒り狂っている。
私の胸ぐらをつかみ、押したり引いたりしながら、
「アンタがっ!アンタたちが憎いのは!恨んでるのはっ!私でしょっ…⁉︎私と…、…っおばあさまでしょっ⁉︎…なんでっ、なんでノーヴァに当たるのよ!!!」
ボロボロと涙をこぼしながら、私の胸を殴ってくる。
「ノーヴァじゃないでしょ⁉︎…憎いのはっ!ノーヴァじゃないでしょ⁉︎…傷つけたいのはっ…!傷つけて、罰してやりたいのは!私だけのはずでしょうっっ!」
ボロボロと涙をこぼし、ギラギラとした目で泣き叫ぶ女ーー。
無礼で、身の程知らずな女ーー。
こんなにも純粋な怒りを自分にぶつけてくる人間は今までいなかった。
(ーー怒る女を、美しいと思うのは、はじめてだーー)
そんな驚きの感情がメルキュールを支配していた。
「ちょっと!聞いてんの⁉︎アンタ達は、ケンカを売る相手を間違えてるって言ってんのよ!ノーヴァはっ、…ノーヴァはねぇっ…!」
殴る手を止めて、堪えきれないようにブルブル震えながら、私をにらみつけ、振り絞るような声で叫ぶルナ。
「ノーヴァはっ、本当なら王都になんて来たくなかったのよ!学院に興味なんてなかったし、学院での授業だって受けたくもなかったのよ!静かに密かに領地でのんびり暮らして、コソッと死ぬのが夢。とか言ってるヤツなのよ!」
フーフーと、怒る様はまるで猫のようだ。
「それなのに、ノーヴァはお人好しだからっ…私が学院に行くって言えば、お目付け役なんて言ってついて来てくれてっ!…私が寂しい思いをしないよう、いじめられたりしないよう、そのつもりで来たのがバレバレのくせに、何にも言わずにそばにいてくれてっ!そんなっ、そんなノーヴァがっ、なんでアンタ達なんかにいちゃもんつけられるのよ!!!」
魂の叫びのような想いをぶつけられた私は何も言えなかった。
本来であれば、こちらから極刑にできるほどの無礼を働かれてなお、私は動けず、彼女の叫びを聞いていた。
いつの間にかノーヴァとルナの背後には、ルミエール殿下とサチュルヌ嬢がいた。
その彼らでさえ、動けないようだった。
うっすらと見える影は2つ。
メルキュールは血の気が引くのを感じた。
(巻き込んでしまった!相手が相手とはいえ、…こちらのミスだ)
全力の一撃ではないとはいえ、それなりの力を込めた一撃だ。多少魔法の心得があると聞いているエトワール子爵令息とは違い、丸腰の人間に当たれば致命傷になりかねない。
土煙の向こうから、うっすらと魔法陣が見えた。
淡く水色に輝く魔法陣の向こう側には、ルナを守るように立つノーヴァとルナがいた。
そっと抱きしめるようにルナを守るノーヴァの右腕は、肩からひじ、ひじから手の甲にかけて服が燃えて、やけどとすり傷ができていた。ルナの左頬にもすり傷と切り傷があった。そのほかにも、2人の体には所々、やけどにすり傷、切り傷があった。
そんなルナは、自分を守るノーヴァからそっと離れ、こちら側へ歩いてきた。
と思っていると、
スパァーーン!!とものすごくいい音がして、自分の左頬がはりとばされた。
時間差でジンジンとした痛みが左頬にはしる。
「誰にケンカ売ってんのよ!!!」
目を見開き、顔を真っ赤にして、いつものすまし顔はどこへやら。見たこともないくらい怒り狂ってアース男爵令嬢は吠えた。
身体中から湯気が出ているのではと思うほど怒り狂っている。
私の胸ぐらをつかみ、押したり引いたりしながら、
「アンタがっ!アンタたちが憎いのは!恨んでるのはっ!私でしょっ…⁉︎私と…、…っおばあさまでしょっ⁉︎…なんでっ、なんでノーヴァに当たるのよ!!!」
ボロボロと涙をこぼしながら、私の胸を殴ってくる。
「ノーヴァじゃないでしょ⁉︎…憎いのはっ!ノーヴァじゃないでしょ⁉︎…傷つけたいのはっ…!傷つけて、罰してやりたいのは!私だけのはずでしょうっっ!」
ボロボロと涙をこぼし、ギラギラとした目で泣き叫ぶ女ーー。
無礼で、身の程知らずな女ーー。
こんなにも純粋な怒りを自分にぶつけてくる人間は今までいなかった。
(ーー怒る女を、美しいと思うのは、はじめてだーー)
そんな驚きの感情がメルキュールを支配していた。
「ちょっと!聞いてんの⁉︎アンタ達は、ケンカを売る相手を間違えてるって言ってんのよ!ノーヴァはっ、…ノーヴァはねぇっ…!」
殴る手を止めて、堪えきれないようにブルブル震えながら、私をにらみつけ、振り絞るような声で叫ぶルナ。
「ノーヴァはっ、本当なら王都になんて来たくなかったのよ!学院に興味なんてなかったし、学院での授業だって受けたくもなかったのよ!静かに密かに領地でのんびり暮らして、コソッと死ぬのが夢。とか言ってるヤツなのよ!」
フーフーと、怒る様はまるで猫のようだ。
「それなのに、ノーヴァはお人好しだからっ…私が学院に行くって言えば、お目付け役なんて言ってついて来てくれてっ!…私が寂しい思いをしないよう、いじめられたりしないよう、そのつもりで来たのがバレバレのくせに、何にも言わずにそばにいてくれてっ!そんなっ、そんなノーヴァがっ、なんでアンタ達なんかにいちゃもんつけられるのよ!!!」
魂の叫びのような想いをぶつけられた私は何も言えなかった。
本来であれば、こちらから極刑にできるほどの無礼を働かれてなお、私は動けず、彼女の叫びを聞いていた。
いつの間にかノーヴァとルナの背後には、ルミエール殿下とサチュルヌ嬢がいた。
その彼らでさえ、動けないようだった。
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