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8 side公爵令嬢

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はじめは大嫌いだった。
ピンクブロンドにエメラルドの瞳を持つ小柄な少女は、いかにも男性の庇護欲ひごよくをそそりそうに感じた。

ルミエール殿下に対する話ぶりを見たときには、男爵家の令嬢とは思えない物言いに、生意気だと思った。

彼女ーールナ・アースはあの廊下で私たちに向けてはっきりと言った。

関わるつもりはないのだ。と。

空気のように接してくれ。と。

そちらがそのような態度なら、様子を見ようと思った。

彼女が何の目的でこの学院にやって来たのか見定めなくてはならない。そう思っていたから。

私は前の公爵令嬢のように、婚約者を奪われてはいけないのだからーー。


⭐︎


私はサチュルヌ。サチュルヌ・ドゥ・メテオール。国に3つしかない公爵家の長女で、第二王子の婚約者。母は王妹で、建国当初から続く公爵家の嫡男である父に嫁いだ。

今日は、王子妃教育のために王宮へ来ていた。

帰り際、陛下より呼び出しがあった。

案内され通されたのは、気心の知れた人間をプライベートで呼ぶ陛下の私室の1つだった。

中にはすでに陛下と、第二王子、そして宰相の息子であるメルキュールがいた。

(これは、あまりいい話ではなさそうね)

今日は、定期試験の結果が発表された日だ。そんな日にこのメンバーが集められて語られる内容なんて決まっている。

「あぁ、サチュルヌ。学院に、王子妃教育に疲れているところ呼び立ててすまないな。こちらへかけてくれ」

陛下が声をかけてくれた席へ収まると、すぐに陛下は話し出す。

「今日は定期試験の結果発表があったと思うが、各々結果はどうであった?」

どうであった、なとど白々しい。

(結果なんてすでに知っているくせに)

陛下がその気になれば、今日の発表を待たずに結果を知ることだってできるハズ。

(それなのに、わざわざこのメンバーを呼び出してこの話をするということは…)

結果がお気に召さないのだろう。

なんといっても第1位は全教科満点の男爵令嬢ルナ・アースだ。

最高級の教育を受けている私たちが彼女に負けるなど、本来あってはならないのだ。

「申し訳ありません。今回は1位を取ることができませんでしたが、次こそは私が1位になってみせます」

そうルミエール殿下が言った。

わたくしも次こそは陛下ののぞむ結果を出して見せます」

メルキュールも続く。

わたくしもより精進いたします」

そう、サチュルヌも続けた。

陛下は「そうか」と言われただけだった。

その後は当たりさわりのない会話を少しして、すぐに部屋を出された。

ルミエール殿下とメルキュールが馬車で帰る私を見送ってくれた。

2人は王宮に戻ってまた勉強なり執務なりをするのだろう。

「殿下、メルキュール。私、もっとがんばりますわ」

そう言うと、

「とは言っても正直、どこまで頑張ればあの化け物のような賢さに勝てるのかがわからない」

メルキュールは怒ったような、途方にくれたような顔で言った。

殿下は「…そうだな…」とだけ言った。

1人で帰る帰りの馬車の空気は重く、私の周りだけパリパリと電流が流れていた。
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