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第3話:告げられた真実②
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帰る場所はあるのか、その後に続いたこの言葉。勇者として魔王を倒すことが役目ではなく、殺されることが役目とは何を意味しているのか。アスタには見当がつかなかった。
「アスタ君。教えてあげてもいいけれど。これはあなたにとってとても辛いことよ。それでも聞く覚悟はあるかしら?」
「もちろんです。教えてください。僕は何をしなければいけないのか。何を求められているのか。あなたが何に気が付いたのか、教えてください。僕は何も知らない子供だから……」
「わかったわ。小さくても立派ね。アスタ君、これに見覚えはあるわよね? あなたが身に付けていたネックレスなのだけれど……」
エーデルワイスの手に黒い靄が現れてそこからシャリンと小さな音が鳴るとそこには見覚えのある紅玉。間違いない。旅立ちの日にアマリリスから託された加護の魔法が刻まれたネックレスだった。
「はい。それは魔王討伐に旅立つ僕に国王様から頂いたものです。それが何か関係があるんですか?」
「そう……やっぱり、餞別の贈り物だったのね……アスタ君はこの紅玉にどんな魔法が刻み込まれているか知っているかしら? これはね、決してあなたを護るような魔法じゃない。むしろその逆よ」
それはどういうことなのか。アスタにはさっぱりわからなかった。加護の魔法は代々サイネリア王国の女性王族だけが使える魔法だ。その効果はすさまじく、伝承によれば魔王が放つ強力な対軍魔法さえも無力化したこともあるという。それをアスタが僅かな魔力を紅玉に込めることで発動できるのだからこれ以上の加護はない。
「そうよね。そもそも魔法は一部例外もあるけれど基本的には一人一人固有のモノ。アスタ君は身体強化に特化しているから巧妙に偽装されたら気付けないのも無理はないわね。いい、よく聞いて。この石に込められている魔法は確かに加護だけど加護だけじゃない。同時に反転の魔法も刻まれているわ。その意味がわかるかしら?」
「反…………転?」
「あなたが加護の魔法を発動しようと魔力を石に流したその瞬間。反転魔法も起動して加護でなくあなたに天罰が下るわ。ルドベキア鉱石に王族の魔力も込められているから発動すればアスタ君の身体はもちろん然周囲にいる者、つまり魔王も巻き込むほどの大規模破壊魔法となるでしょう」
信じられないと言葉を失うアスタに。エーデルワイスはとどめの一撃を心臓に突き刺した。
「だからね。あなたが護りたいと思った国の王は、あなたが死ぬことで魔王を倒そうとしたのよ。そんな国をアスタ君は護りたい? そんな国に帰りたい?」
「そんな……嘘だ! 国王様や王女様が……そんなことするはずない! 全部あなたのでっち上げだ!」
「信じるか信じないかはアスタ君次第、と言いたいところだけれど、私もこの場所を失いたくないの」
そう言ってエーデルワイスはアスタの手を掴むとそのまま家の外へと誘導した。夜空に浮かぶ満天の星。人工的な明かりは一切なく、月明かりだけが世界を照らす導となっている幻想地帯。
「私の言っていることが本当かどうか。アスタ君自身の手で確かめてみなさい」
返却されたネックレス。違和感やエーデルワイスが事前に仕掛けを施していないか入念に調べるが変わった様子は感じられない。最初に貰った時と同じ状態だ。
「魔力を込めたらすぐに思い切り空に投げなさい。後は私が無力化してあげるから」
「……わかりました」
動揺を抑えきれぬまま。信じているはずなのに一度宿った疑念を振り払うことができず。アスタは言われるがままに紅玉に魔力を込め始めた。
「アスタ君。教えてあげてもいいけれど。これはあなたにとってとても辛いことよ。それでも聞く覚悟はあるかしら?」
「もちろんです。教えてください。僕は何をしなければいけないのか。何を求められているのか。あなたが何に気が付いたのか、教えてください。僕は何も知らない子供だから……」
「わかったわ。小さくても立派ね。アスタ君、これに見覚えはあるわよね? あなたが身に付けていたネックレスなのだけれど……」
エーデルワイスの手に黒い靄が現れてそこからシャリンと小さな音が鳴るとそこには見覚えのある紅玉。間違いない。旅立ちの日にアマリリスから託された加護の魔法が刻まれたネックレスだった。
「はい。それは魔王討伐に旅立つ僕に国王様から頂いたものです。それが何か関係があるんですか?」
「そう……やっぱり、餞別の贈り物だったのね……アスタ君はこの紅玉にどんな魔法が刻み込まれているか知っているかしら? これはね、決してあなたを護るような魔法じゃない。むしろその逆よ」
それはどういうことなのか。アスタにはさっぱりわからなかった。加護の魔法は代々サイネリア王国の女性王族だけが使える魔法だ。その効果はすさまじく、伝承によれば魔王が放つ強力な対軍魔法さえも無力化したこともあるという。それをアスタが僅かな魔力を紅玉に込めることで発動できるのだからこれ以上の加護はない。
「そうよね。そもそも魔法は一部例外もあるけれど基本的には一人一人固有のモノ。アスタ君は身体強化に特化しているから巧妙に偽装されたら気付けないのも無理はないわね。いい、よく聞いて。この石に込められている魔法は確かに加護だけど加護だけじゃない。同時に反転の魔法も刻まれているわ。その意味がわかるかしら?」
「反…………転?」
「あなたが加護の魔法を発動しようと魔力を石に流したその瞬間。反転魔法も起動して加護でなくあなたに天罰が下るわ。ルドベキア鉱石に王族の魔力も込められているから発動すればアスタ君の身体はもちろん然周囲にいる者、つまり魔王も巻き込むほどの大規模破壊魔法となるでしょう」
信じられないと言葉を失うアスタに。エーデルワイスはとどめの一撃を心臓に突き刺した。
「だからね。あなたが護りたいと思った国の王は、あなたが死ぬことで魔王を倒そうとしたのよ。そんな国をアスタ君は護りたい? そんな国に帰りたい?」
「そんな……嘘だ! 国王様や王女様が……そんなことするはずない! 全部あなたのでっち上げだ!」
「信じるか信じないかはアスタ君次第、と言いたいところだけれど、私もこの場所を失いたくないの」
そう言ってエーデルワイスはアスタの手を掴むとそのまま家の外へと誘導した。夜空に浮かぶ満天の星。人工的な明かりは一切なく、月明かりだけが世界を照らす導となっている幻想地帯。
「私の言っていることが本当かどうか。アスタ君自身の手で確かめてみなさい」
返却されたネックレス。違和感やエーデルワイスが事前に仕掛けを施していないか入念に調べるが変わった様子は感じられない。最初に貰った時と同じ状態だ。
「魔力を込めたらすぐに思い切り空に投げなさい。後は私が無力化してあげるから」
「……わかりました」
動揺を抑えきれぬまま。信じているはずなのに一度宿った疑念を振り払うことができず。アスタは言われるがままに紅玉に魔力を込め始めた。
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