11 / 13
第2話:勇者アスタの旅立ち③
しおりを挟む
「うぅ……ここは……? 僕は……生きて、る?」
国王様だけじゃない、国のみんなから願いを託されて旅に出たはずなのに、どうして自分はこんなところで寝ていたのだろうか。アスタはゆっくりと身体を起こす。衣服はそのままだが身に付けていたはずの鎧も籠手はおろか切り札である聖剣もない。
それにこの場所は一体どこだ。ベッドは王城で暮らしていた時とは比べ物にならないほど柔らかくて全身を包み込まれるような感覚を覚える。窓から差し込む月明かりがとても幻想的だ。
「あら目が覚めたの? もう少し寝ていてもよかったのに。アスタ君、痛い所はない? 一応手加減もしたし治癒もかけたから問題ないと思うのだけれど。大丈夫かしら?」
「……へ?」
アスタは呆けた声を上げた。彼の目の前にいたのは黒紫色の長髪の絶世の美女。魅惑の双丘を強調しつつ肩口がばっくりと開いた服に脚線美を見せつけるぴっちりとしたロングパンツ。ドレス姿よりもラフな格好だかその美しさは一切鈍っていない。その手にはカップが握られており、それをアスタにそっと手渡した。
「はい。ハチミツ入りの温かいミルクよ。これでも飲みながら少しお話ししましょうか、勇者アスタ君?」
「魔王……エーデルワイス……」
アスタは震える声でその名を呼びながら、自分を一撃で鎮めた女性からカップを受け取った。我ながら矛盾した行動だとは思いながらもせっかく頂いたものだからとミルクに口を付ける。
甘くて優しい。そしてどこか懐かしい味がして。アスタの目から自然と涙がこぼれた。
国王様だけじゃない、国のみんなから願いを託されて旅に出たはずなのに、どうして自分はこんなところで寝ていたのだろうか。アスタはゆっくりと身体を起こす。衣服はそのままだが身に付けていたはずの鎧も籠手はおろか切り札である聖剣もない。
それにこの場所は一体どこだ。ベッドは王城で暮らしていた時とは比べ物にならないほど柔らかくて全身を包み込まれるような感覚を覚える。窓から差し込む月明かりがとても幻想的だ。
「あら目が覚めたの? もう少し寝ていてもよかったのに。アスタ君、痛い所はない? 一応手加減もしたし治癒もかけたから問題ないと思うのだけれど。大丈夫かしら?」
「……へ?」
アスタは呆けた声を上げた。彼の目の前にいたのは黒紫色の長髪の絶世の美女。魅惑の双丘を強調しつつ肩口がばっくりと開いた服に脚線美を見せつけるぴっちりとしたロングパンツ。ドレス姿よりもラフな格好だかその美しさは一切鈍っていない。その手にはカップが握られており、それをアスタにそっと手渡した。
「はい。ハチミツ入りの温かいミルクよ。これでも飲みながら少しお話ししましょうか、勇者アスタ君?」
「魔王……エーデルワイス……」
アスタは震える声でその名を呼びながら、自分を一撃で鎮めた女性からカップを受け取った。我ながら矛盾した行動だとは思いながらもせっかく頂いたものだからとミルクに口を付ける。
甘くて優しい。そしてどこか懐かしい味がして。アスタの目から自然と涙がこぼれた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ゴミアイテムを変換して無限レベルアップ!
桜井正宗
ファンタジー
辺境の村出身のレイジは文字通り、ゴミ製造スキルしか持っておらず馬鹿にされていた。少しでも強くなろうと帝国兵に志願。お前のような無能は雑兵なら雇ってやると言われ、レイジは日々努力した。
そんな努力もついに報われる日が。
ゴミ製造スキルが【経験値製造スキル】となっていたのだ。
日々、優秀な帝国兵が倒したモンスターのドロップアイテムを廃棄所に捨てていく。それを拾って【経験値クリスタル】へ変換して経験値を獲得。レベルアップ出来る事を知ったレイジは、この漁夫の利を使い、一気にレベルアップしていく。
仲間に加えた聖女とメイドと共にレベルを上げていくと、経験値テーブルすら操れるようになっていた。その力を使い、やがてレイジは帝国最強の皇剣となり、王の座につく――。
※HOTランキング1位ありがとうございます!
※ファンタジー7位ありがとうございます!
勇者パーティを追放されそうになった俺は、泣いて縋って何とか残り『元のDQNに戻る事にした』どうせ俺が生きている間には滅びんだろう!
石のやっさん
ファンタジー
今度の主人公はマジで腐っている。基本悪党、だけど自分のルールあり!
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のリヒトは、とうとう勇者でありパーティリーダーのドルマンにクビを宣告されてしまう。幼馴染も全員ドルマンの物で、全員から下に見られているのが解った。
だが、意外にも主人公は馬鹿にされながらも残る道を選んだ。
『もう友達じゃ無いんだな』そう心に誓った彼は…勇者達を骨の髄までしゃぶり尽くす事を決意した。
此処迄するのか…そう思う『ざまぁ』を貴方に
前世のDQNに戻る事を決意した、暗黒面に落ちた外道魔法戦士…このざまぁは知らないうちに世界を壊す。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる