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第20話〜振り下ろされた刀〜

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「ぐ…っぎゃあああっ」

 突然背後にいた従者の一人が断末魔のような悲鳴を上げてその場に倒れた。

「!!」

 咄嗟に松明が後ろに向けられる。すると血ぬられた刀がボゥ…と闇に浮かび、その刀を手にした敵武者が松明の灯りで現れた。

「――っ姫様!お逃げ下さいっ」

 男たちは刀を構えて敵武者に斬りかかる。私は伊織に強く引かれて走り出した。

「ハァ…ッハァッ!」

 呼吸が乱れて苦しい。着物の裾が足に絡んで上手く足が運べない。それでも、目指す門はもうすぐそばに見えているのだ。

 けれど

 その時だった。

「あ…っ!」

「姫様!」

 石に|躓いて(つまずいて)バランスを崩した私は思いきり地面に叩きつけられた。

 咄嗟に伊織が差し出した手を私は必死に掴み、立ち上がろうとした。

 ズキンッ!!

「…痛―…!!」

 足を痛めた…!
 痛みが全身を貫き私は苦痛に顔を歪めた。

「…姫様っ!」

「大丈夫…っ伊織だけでも早く逃げてっ!」

「何をバカなことを…っ」

 吐き捨てるようにそう言うと伊織は私の肩をガシリと担いだ。

「言ったはずでしょう!何があっても私は姫様のそばを離れませんと!」

「―…伊織」

私 は泥まみれになった伊織を間近に見た。

 必死な表情だった。

 私もキッと前を向く。泥にまみれても、たとえ足の骨が折れても私たちは生き抜くんだ…!

 ザザッ!

「…っ!」

 葉を掠る音が背後であがったのはその時だった。

「姫様…っ!!」

 背後を振り返った伊織が悲鳴を上げた。

「!!」

「桜姫ッ!御覚悟!!」

 いつの間にか背後にまで迫ってきていた敵武者が刀を振り上げて私に斬りかかってきた。

  足がもつれて避けきれず私はよろめく。

「―――――ッ!」

 息を飲んだ。たまらず目を強く瞑ったその瞬間、何かが私の上に覆い被さった。

「っぐぁぁっ!」

 男の悲鳴が上がる。

「!!」

 私はハッと目を開けた。
 近くに敵武者が倒れる。駆け付けた味方の武士が切ったのだ。
 けれど、私にはその姿が見えなかった。

私の目に映るのは
墨染――

「湊尹……」

 私を強く抱きしめるのは紛れもなく湊尹、その人だった。

「桜姫様は無事でいらっしゃいます!」

 駆け付けた味方武士の軍団に伊織が興奮気味な声を上げている。安心したように振り返った伊織は次の瞬間青ざめた。

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