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1章
初めての班 02
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「あ、あの。コハクさんも異界人なのですよね? どんな世界から来たのですか?」
林を進んでいる途中、野乃花がコハクにそう問いかける。
「日本っていう国だよ。魔物も出ないし、戦争もしてない平和な国・・・かな」
「そうなのですか!? 実は私も日本から来たんです。戦いとは無縁の世界でした。もしかして、同じ世界から来たのかもしれません!」
野乃花という少女は比較的大人しい性格だが、同じ場所から来たという事でコハクに仲間意識が芽生えたのか、嬉しそうに話を始めた。
「そう言えば、野乃花さんの名前は確かに日本人だよね。同じ世界なのかな?」
「そうかもしれません。私、元の世界では運動が苦手だったのに、ここに来てから凄く身体が強くなって、びっくりしてるんです。でも私、それなのに上手く戦えなくて・・・」
「それは、しょうがないよ。僕だって英雄の力なんて大層な力持ったのに、未だに戦いは全然慣れないし」
「元の世界の話か? 俺はアメリカ出身だ」
カイが会話に乱入する。
「へぇ、カイさんはアメリカからなのかぁ。あれ? そういえば、出身関係なく言葉が通じてるような。なんでだろう」
「そういえば、そうですよね。あまり気にしてなかったけれど・・・」
異界人として送られてくる人々は、日本人だけではなく様々は国、世界から転移してきている。
つまり、皆話せる言葉はそれぞれ異なるはずだろう。
ましてやここは異世界であり、ヴァーリア国にもヴァーリア特有の言語が存在する。
それなのに、コハク達はヴァーリアの言葉を聞いたことも無いのに、何故かそれを理解する事が出来るのだ。
「何故、異界人が言葉を理解出来るのかには、色々と説があるが」
皆が不思議に思っている所で、煉が説明を始める。
「我々異界人が転移させられた時、なんらかの方法で"最適化"されていると言われている。
言語だけじゃない。元の世界ではなんの魔法も扱えなかった者が、こっちの世界では強力な魔法を扱える様になっているだろう?」
「最適化? それって、誰かが僕らの身体を勝手に改造したってこと?」
まるで宇宙人に誘拐されて頭の中を弄られるようにだろうか? と思うと、コハクは寒気を感じた。
「そういう事になるな。我々はなんらかの現象によって偶然この世界に転移してしまったのではなく、何者かによって人為的に転移させられた可能性がある、という説が有力だ」
「・・・誰かが、僕らを異世界に?」
「ねぇ、お話しするのは構わないですけどさー、盛り上がり過ぎて魔物に気付くの遅れて全滅、とかやめてよねー?」
ハルが少し不機嫌そうに言う。
「おっと、あんまりこの話をするのはやめっか。ハルがついて来れなくて怒りそうだし」
「カイ、あんま調子乗るなー」
ハルが低い声でそう言う。
「おー、怖っ」
「でも確かに。あんまり気を抜いてるとまた魔物に襲われるかもしれないです・・・」
「そう、ですね」
そう言いながら、5人は林を進んでいく。
すると、先頭を進んでいた煉が足を止める。
「どうしたの?何かあった?」
ハルが煉に声をかける。
「ああ、向こうで何か動いた。コハク、また周辺に使い魔を飛ばせるか?」
「了解」
コハクは直ぐに使い魔を生成して周囲に飛ばす。
「煉は元の世界でも、怪物と戦ってたらしいぜ」
カイが小声で言う。
「なるほど、確かに戦いなれてる感じがしますね」
「ああ、そうだろ?」
「・・・待って、向こう側の使い魔から何か見えた。あれはさっきと同じ魔狼だ。・・・けど」
その時、コハクは使い魔を通して魔物の姿を確認した。
「けど、何よ? どうしたの?」
「赤い。赤い魔狼だ。あんな色の魔物、初めて見た」
「うそ、ほんと!?」
ハルが、目の色を変えてコハクに迫る。
「ほら、あそこの繁みの中にいる」
コハクが指さす方角の繁みから、溶岩の様な赤い色の魔物が、姿を現す。
「赤い色の魔物か、多分希少種だな」
煉が冷静な様子で説明する。
「人間にも特異な力を持つ者がいるように、魔物にも特別な個体がいるんだ。希少種の素材から作られる装備はかなりの値打ちがある」
「あれの素材が手に入れば、めちゃくちゃ儲かるわ・・・!」
ハルは滅多に見つけられない希少な獲物に興奮気味である。
魔物は鼻先を動かし匂いを嗅ぎ、こちらに気が付いたのか繁みの中に戻っていく。
「やば、ばれた? ほら見失わない内に追いかけて! 脚の早いカイと野乃花は繁みの向こうに回り込んで!」
ハルは小声で、それでいて激しく指示を出す。
カイは「はいよ、扱いが荒いこった」と言いながら、姿勢を低くして林を進んでいく。
「わ、私もですか?」困惑した様子で野乃花は言う。
「いいから早く! あの魔物はぜっっっったい倒して持ちかえるんだからね!?」
「は、はい」
野乃花が弱々しく返事を返す。
「コハク、魔物の様子はどうだ?」
「今、使い魔で上から見てるんだけど、あまり視界が良くなくて上手く確認できない」
「ほら2人も動いて! 煉は右から、コハクは左から回り込む!」
「了解。ハル、焦るなよ」
煉は困った様に苦笑いを浮かべる。
「わかってるって。さ、早く行くよ!」
「希少種か・・・」
もしかしたら、あの希少種の魔物を倒せば、カギツキ隊長に少しは認めてもらえるだろうかと。
ふとコハクはそう思った。
林を進んでいる途中、野乃花がコハクにそう問いかける。
「日本っていう国だよ。魔物も出ないし、戦争もしてない平和な国・・・かな」
「そうなのですか!? 実は私も日本から来たんです。戦いとは無縁の世界でした。もしかして、同じ世界から来たのかもしれません!」
野乃花という少女は比較的大人しい性格だが、同じ場所から来たという事でコハクに仲間意識が芽生えたのか、嬉しそうに話を始めた。
「そう言えば、野乃花さんの名前は確かに日本人だよね。同じ世界なのかな?」
「そうかもしれません。私、元の世界では運動が苦手だったのに、ここに来てから凄く身体が強くなって、びっくりしてるんです。でも私、それなのに上手く戦えなくて・・・」
「それは、しょうがないよ。僕だって英雄の力なんて大層な力持ったのに、未だに戦いは全然慣れないし」
「元の世界の話か? 俺はアメリカ出身だ」
カイが会話に乱入する。
「へぇ、カイさんはアメリカからなのかぁ。あれ? そういえば、出身関係なく言葉が通じてるような。なんでだろう」
「そういえば、そうですよね。あまり気にしてなかったけれど・・・」
異界人として送られてくる人々は、日本人だけではなく様々は国、世界から転移してきている。
つまり、皆話せる言葉はそれぞれ異なるはずだろう。
ましてやここは異世界であり、ヴァーリア国にもヴァーリア特有の言語が存在する。
それなのに、コハク達はヴァーリアの言葉を聞いたことも無いのに、何故かそれを理解する事が出来るのだ。
「何故、異界人が言葉を理解出来るのかには、色々と説があるが」
皆が不思議に思っている所で、煉が説明を始める。
「我々異界人が転移させられた時、なんらかの方法で"最適化"されていると言われている。
言語だけじゃない。元の世界ではなんの魔法も扱えなかった者が、こっちの世界では強力な魔法を扱える様になっているだろう?」
「最適化? それって、誰かが僕らの身体を勝手に改造したってこと?」
まるで宇宙人に誘拐されて頭の中を弄られるようにだろうか? と思うと、コハクは寒気を感じた。
「そういう事になるな。我々はなんらかの現象によって偶然この世界に転移してしまったのではなく、何者かによって人為的に転移させられた可能性がある、という説が有力だ」
「・・・誰かが、僕らを異世界に?」
「ねぇ、お話しするのは構わないですけどさー、盛り上がり過ぎて魔物に気付くの遅れて全滅、とかやめてよねー?」
ハルが少し不機嫌そうに言う。
「おっと、あんまりこの話をするのはやめっか。ハルがついて来れなくて怒りそうだし」
「カイ、あんま調子乗るなー」
ハルが低い声でそう言う。
「おー、怖っ」
「でも確かに。あんまり気を抜いてるとまた魔物に襲われるかもしれないです・・・」
「そう、ですね」
そう言いながら、5人は林を進んでいく。
すると、先頭を進んでいた煉が足を止める。
「どうしたの?何かあった?」
ハルが煉に声をかける。
「ああ、向こうで何か動いた。コハク、また周辺に使い魔を飛ばせるか?」
「了解」
コハクは直ぐに使い魔を生成して周囲に飛ばす。
「煉は元の世界でも、怪物と戦ってたらしいぜ」
カイが小声で言う。
「なるほど、確かに戦いなれてる感じがしますね」
「ああ、そうだろ?」
「・・・待って、向こう側の使い魔から何か見えた。あれはさっきと同じ魔狼だ。・・・けど」
その時、コハクは使い魔を通して魔物の姿を確認した。
「けど、何よ? どうしたの?」
「赤い。赤い魔狼だ。あんな色の魔物、初めて見た」
「うそ、ほんと!?」
ハルが、目の色を変えてコハクに迫る。
「ほら、あそこの繁みの中にいる」
コハクが指さす方角の繁みから、溶岩の様な赤い色の魔物が、姿を現す。
「赤い色の魔物か、多分希少種だな」
煉が冷静な様子で説明する。
「人間にも特異な力を持つ者がいるように、魔物にも特別な個体がいるんだ。希少種の素材から作られる装備はかなりの値打ちがある」
「あれの素材が手に入れば、めちゃくちゃ儲かるわ・・・!」
ハルは滅多に見つけられない希少な獲物に興奮気味である。
魔物は鼻先を動かし匂いを嗅ぎ、こちらに気が付いたのか繁みの中に戻っていく。
「やば、ばれた? ほら見失わない内に追いかけて! 脚の早いカイと野乃花は繁みの向こうに回り込んで!」
ハルは小声で、それでいて激しく指示を出す。
カイは「はいよ、扱いが荒いこった」と言いながら、姿勢を低くして林を進んでいく。
「わ、私もですか?」困惑した様子で野乃花は言う。
「いいから早く! あの魔物はぜっっっったい倒して持ちかえるんだからね!?」
「は、はい」
野乃花が弱々しく返事を返す。
「コハク、魔物の様子はどうだ?」
「今、使い魔で上から見てるんだけど、あまり視界が良くなくて上手く確認できない」
「ほら2人も動いて! 煉は右から、コハクは左から回り込む!」
「了解。ハル、焦るなよ」
煉は困った様に苦笑いを浮かべる。
「わかってるって。さ、早く行くよ!」
「希少種か・・・」
もしかしたら、あの希少種の魔物を倒せば、カギツキ隊長に少しは認めてもらえるだろうかと。
ふとコハクはそう思った。
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