子狐のウエディング

Sigune.

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第2章

第11話

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 デイドリームは会議室3へ戻った。そして、デイドリームは会議室が実技試験仕様に変わっていた事に驚いた。高い天井近くまでそびえる崖。その下にある海。住宅なんかもある。

 これをするために会議室を広くしていたのかとようやく理解した。

 会議室は実技試験仕様で席がなくなっているので、受験者は端の3D空間のような場所に集まっているのが見えた。待機場というらしい。今まで会議室3にいなかった受験者も集まって、とても窮屈そうだ。ということは、夢香もいるのか……

 少し複雑な気持ちになった。

 そこに向かおうとすると、目の前にローズがいた。さっきお礼を言いそびれたローズだ。

「さっきはあり……」

「からかってごめんね」
デイドリームのお礼を遮《さえぎ》るようにローズは謝った。

「いやいや、本部へ連行されなかったのはローズさんのおかげなので」

「からかったのは許してくれるの?」
ローズは聞いた。

「全然気にしてないですよ」
と、デイドリームが言うと微笑んで去っていった。


「どうしよう」

 デイドリームは待機場の入り口で立ち止まっていたどうやって入れば良いか分からない。

 「どうしたのかな?」
後ろからリアムの声が聞こえて、デイドリームはビクッと肩を上げた。

 「入り方が分からな……くって」
途中、リアムのオーラに負けながら言い切った。

 「受験票をそこにかざせば入れるよ」
カードリーダーのようなものを指差し言った。

 かざすと、待機場の一部がドアのスペースになった。デイドリームがそこから入ると、リアムは話し始めた。
「それでは最後の試験を始めようか」

 そのリアムの声でざわざわと騒々しい話し声が止んだ。
「実技試験内容は2つ考えてある。まず1つ目は缶蹴《かんけ》りだ」

 会議室がざわめく。缶蹴りならデイドリームも学校でしたことがある。むしろ田舎の広い土地だからこそできるものなのかもしれない。

 リアムが周りを睨《にら》むように見渡すと、ざわめきが再び止んだ。

「缶蹴りは缶蹴りでもただの缶蹴りじゃない。今からする缶蹴りはウェザーヒーローの練習でも取り入れているものだ」

 会場が再びざわめく。この人達はリアムの圧を感じていないのだろうか。だとしたら鈍感だなと思った。まあ、デイドリームが敏感なだけかもしれないけど。
 
 リアムは続けた。
「田舎の缶蹴りとの最大の違いは、能力を使用しても良いということだ。能力を使って遠くに蹴ったり隠したりなんでもOKだ。ただし注意点が2つある。当たり前だが死者は出したらいけない。人が死ぬような行為をしたものはたとえ死んでいなくても失格とする。もう1つ、缶を場外に出すことは出来ないようになっている。壁に跳ね返ってしまう。そこは気をつけてくれ」

 リアムがそう言い終わると、缶蹴りに使えそうな能力の者は喜び、それ以外は落ち込んだ。
 

 そうして、実技試験が始まった。
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