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第2章

14.僕は上を目指す!!(side:ローイン)

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“すっごーい!なにあれ!?すっごーい!!さっきのなにあれ!?もう一回みせてみせて”


 エクレアがみてる前で錬金術を披露した際、決まってよく口にする『すごい』という言葉。
 その煽てにつられてつい、何度もポーションを錬成するローイン。

 途中魔力切れに陥って倒れた際は慌てて快方するエクレア。
 その際『無理させすぎちゃってごめんなさい』っと申し訳なさそうにして謝ってくるエクレア。

 彼女の看病は的確である。
 当然だろう。

 彼女は薬師なのだから診察の心得もある。
 実際に怪我人や病人を治療してる、一人前の薬師。


 それに引き換え自分は……


 だからこそいけない!!


 いけないんだ!!


 このままじゃだめなんだ!!


 流されてはいけないんだ!!


 ローインは自分にそう言い聞かせながら、改めて机の薬を……
 エクレアが納品した数々の薬に目をやる。

 その中の一つ、小瓶に詰められている粉末、数種の薬草を粉末にした『ポーションの元』
 ポーションは前回説明した通り、薬草に魔力を通してその薬効成分を増幅させながら水に溶かしこむ技術。
 傍から見ると、ただ魔力を流してるだけにみえるが実際は繊細な作業だ。

 少しでも調整を間違えると変異する。最悪の場合は毒物へとなる。

 そうならないよう繊細な魔力操作が必要だが、この『ポーションの元』は繊細な魔力操作を排除させた。

 彼女が作った『ポーションの元』は薬草が魔力反応しやすくなるような加工を予め施されてるのだ。
 水の中に入れてから雑に魔力を流しただけで、そこそこな出来のポーションとなる。故に『ポーションの元』

 穴だらけな知識を持つローインと共に開発したそれは画期的な代物だ。
 これさえあれば現地でポーションが作れる。
 アイテムボックスのような収納魔法が勇者固有の『チート』魔法と称されており、再現できたものは誰もいない。逆にいえば収納魔砲を再現させようと研究されるぐらい、携帯性は何よりも重要視されるものだ。
 劣化性というデメリットを帳消しにできるだけのメリットはあるだろう。

 売れないわけがない。
 製法の発表でかなりの利益をあげる事が期待できる代物なのに……
 エクレアは一人の功績としていない。

 時期を見計らってからローインと共に開発したという連名で公表するつもりなのだ。
 ローインに気を使ってくれているのだ。
 エクレアこそ気を使われるような立場だというのに……


 彼女は笑ってこう言い切ったのだ。


“気にしない気にしない。収入はもっと別のアテを考えてるからこれはただの繋ぎなんだしね。だから名誉を一緒に分かち合お、ねっ”



 甘んじるな!!

 彼女の好意に甘えるな!!!




“僕は上を目指す!!”


 どうせ無駄だ。

 諦めろ。

 生まれ持った魔力だけで十分生きていけるんだ。

 努力なんて必要ない……




そんな心の声を黙らせる。

強い意志でねじ伏せる!!




「ポーションを作ろうか……『ポーションの元』を使ったものじゃなく薬草を使った、自身の技量で品質がいくらでも変わるポーション作りを極めよう。
 そうやって腕を磨いていつかたどり着こう……ポーションの最高峰に位置する伝説のポーション『霊薬エリクサー』を作り出せるようになるまで……」

 少し前に見る機会があった伝説のポーション。

 青く淡く輝く、『視た』だけで凄まじいまでの力を秘めてるのがわかる最高峰のポーション。

 死の淵にいたエクレアの命を繋ぎとめて浮上させてくれた伝説のポーション。

 それを自分の手で作り出すのだ。




 その道は過酷だろう。

 でも彼女はさらに過酷な道を歩いている。

 音を上げずに歩いている。

 他者への気遣いを忘れずに歩いている。

 今は無理でもいずれは共に歩きたい。



 それは共に戦う仲間としてか……

 薬やポーションの作成や事務作業という裏方の仕事仲間としてか……


 それとも……








……………………


 スージーと共に研究室へ向かうエクレアの背中は遠い。



 それに追いつくのはいつなのか……



 誰もわからない。




 わかる事は一つ





 エクレアがローインに対して行ったそれは完全に乙女ゲームの『脳内お花畑ヒロイン』が行ったそれであることだ。

 エクレアは狙ってやったのか、それとも天然でやらかしたのか……


 全ては神?のみぞs……







…………………


 後日のエクレアのアトリエにて




「う~ん、『ポーションの元』だけど対費用効果考えるとやっぱり儲け少ないなぁ。まぁ今は魔王もいない事もあって平和だから需要少ないし、その需要を考えると必要以上にシェアは取れないよね。下手したらポーション精製を生活の糧にしてる人から恨まれかねないし……製法も薬学と魔術の両方に精通してなければいけないから作れる人限られちゃうし……やっぱりローイン君に悪かったかも。『味噌』や『醤油』の精製って失敗技術こそが参考になるからといって、ローイン君の荒いポーション精製を分析してたなんて知ったらがっかりするだろうし、お詫びの意味を込めて『ポーションの元』の連名にしたっていうのに儲けが少ないなら分け前も……ぶつぶつ」



 訂正。

 天然でやらかした。




 乙女ゲーム補正ぱねぇ
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