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第2章

⑨.身も心もボロボロ……

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「うぅぅぅ……ひどい。ひどいわ……身も心もボロボロ……。だから助けてローイン君、あなたのおかーさんかっこおにばばぁがいじめるぅ~」

 お仕置きという名前のご褒美をたっぷりもらってずたぼろ……なフリをしたエクレア。
 彼女は近くのテーブルにて目の前の薬、納品のために持ってきた薬の品目を確認しては帳簿につけている、『お前居たのかっ!?』と読者から突っ込み入りそうなローインに助けを求めるも……

「…………」

 彼はエクレアをちらりと一瞥するだけですぐに確認作業へと戻った。
 端的にいうと『僕を巻き込まないで』である。
 どうやら意図的に空気と化してたようだ。

「そ、そんな~あなたとは将来を誓い合ったというn」


がしっ!!


「ついに息子と結婚する気になったのね!!」

「あっ……」

 『しまった!?』と思うも遅かった。スージーはエクレアの伸ばした手を両手でしっかりホールド。
 もう逃がさないとばかりに握りしめながらまくしたてる。


「いいのよ。息子はちょっと気の弱いところあるから、エクレアちゃんみたいなぐいぐい押していくタイプが相性抜群と思ってたのよ。私も娘が出来るし貴女も借金がなくなる。ルリージュも娘が奴隷という最悪の未来を歩まなくて済むようになるのが確定となるのだから、まさに全員がwin-winの関係よ!!早速皆に発表しなくちゃね!!!ローインとエクレアちゃんが婚約したっと村中に知らせて結婚式の準備!!息子はどうでもいいから適当な服を着せるけど、娘となるエクレアちゃんは最高の花嫁衣裳を着せないとね。私の学園時代どころか実家のキーテス伯爵家のコネも使って最高のお針子を呼んで衣装を作らせるから、まずは実家に連絡を入れるから爺を……はいない。じゃぁ私自らで連絡して、お父様やお母様にも知らせないと!!貴方達の孫が結婚するのだからきっと喜んでくれるはずだわ!!って大事な事わすれてたじゃない!!夫にこそ知らせないと!!あれのことだから『俺の息子がほしいならまず俺を倒してからだ』なんて宣言するはずだし、事前に痺れ薬でも盛って弱らせといてエクレアちゃんに不意打ちで脳天を『ごすん!!』といちg」





ごすん!!







ぱたん。






「はぁはぁ……あ、ありがとうローイン君。あの……」

「わ、わかってる。僕はエクレアちゃんと結婚は……その……するつもり……」

 エクレアはなにか言おうとするも、それをローインは先回りするかのごとく遮る。
 ただ、エクレアが言いたかったのはそれではない。

「いや、そうじゃなくってお母さんの脳天を椅子でぶん殴っていいの?すごい音響いたんだけど」

「あっ、そっちのこと…………こうなると見境なくなるから殴らないと止まらない。父さんからも許可は下りてる」

「そ、そーなのかー……」

 なんかぴくぴく痙攣してるけど、息子が大丈夫だって言うなら大丈夫なんだろう。
 ちょっと心配はするも、この人は師匠と負けず劣らず……少なくともスージーは認めたくないだろうが、どう考えても同レベルの変人だ。
 エクレア自身、昔から師匠に同様の処置を施してるだけあって、こういった人種はこれぐらいしないと止まらないんだなっと納得する。

「一応研究者で魔術や錬金術方面での知識は師匠以上な人ではあるんだけど、変なスイッチが入るとすぐ暴走しちゃうんだよねぇ、この人」

 それでも今回の暴走は半端なかった。どれだけエクレアを自分の娘にしたいのかがよくわかるぐらいに……

 エクレアはちらりと横目でローインをみる。本人はこれで話は終わりっといわんばかりに黙々と目の前の仕事に集中してる。
 彼は自己主張こそ苦手でも、母を反面教師としてまっすぐに育ちそうだっとそう評価する。

「まぁ私とローイン君は研究仲間として相性いいかもしれないし、親の方も多少暴走癖はあれどお養母さんとして慕える人柄でもあるし、案外結婚相手としては悪くないかも」

 結婚をどうこうの話に関しては、興味ないっとばかりに別話題へと移させたのはちょっと悪かったかなという反省を意味した、ぼそりと小さくぼやくエクレアの本音。
 もちろんローインには聞こえてないようにだ。

 第一貴族じゃあるまいし平民がこの年で婚約だなんて早すぎる。エクレアもローインに倣ってこの話題は切り上げる事にした。

「じゃぁスージーおばさんが起きるまでの間お茶の用意でもするけどリクエストある?苦い緑茶か甘い紅茶。それとも……」

「……ごくっ」

「それとも……ミルクがいい?」

「……みr……じゃなくって青汁」

「青汁?一応用意はできるけど本当にいいの?身体にいいといっても想像以上にまずよあれ」

「そ、それでいい……今日はそれ飲みたい気分」

「気分じゃ仕方ないか。私もそういった事あるしね」

 エクレア自身もまずいとわかっている青汁を無償に飲みたくなる時がある。
 なので今まさにそういう気分になってるからっと、自己主張してくるなんて珍しいな程度に思って深く考えず、モモちゃんと共に厨房の方へと向かうのであった。

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