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婚約破棄

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 シャルロッテは、王宮の庭園でアルフレッド王子と待ち合わせていた。
 彼は最近忙しいらしく、なかなか会えなかった。

 シャルロッテは彼に会えることを楽しみにしていたが、同時に不安も感じていた。


 婚約者となってから2年。
 先延ばしされているようにさえ思えた。

 もちろん婚約しているだけなので純潔の身のままだった。


 やがて、アルフレッドが現れる。
 彼はシャルロッテに近づいてきた。

「シャルロッテ、君に話したいことがあるんだ」
 真剣な表情であった。

「私もです。アルフレッド、私……」

 シャルロッテは彼に自分の気持ちを伝えようとしたが、その前に彼が口を挟んだ。

「ごめん、シャルロッテ。僕は君との婚約を破棄したい」

「えっ?」

 シャルロッテは信じられないという表情で彼を見た。
 彼は真剣な顔で言った。

「僕は君の能力を評価しているし、王家の人間としては君のことを大切に思っている」
「でも、本当の愛を知ったんだ」

「本当の愛? それは……誰なの?」

 シャルロッテは涙がこぼれそうになりながら聞いた。すると、彼は視線を庭園の奥に向けた。

「あそこにいる人だよ」

 シャルロッテもその方向を見た。

 そこには、白いドレスを着た女性が立っていた。

 その女性は、シャルロッテの親友であるエリザベスだった。

「リ、リズ……?」
「ロッティ、ごめんなさい……」
 シャルロッテとエリザベスは、愛称で呼ぶほどの仲だった。

「そうだよ。僕はエリザベスと愛し合っているんだ。君と王国には悪いけど、僕たちは逃げるつもりだ」

 アルフレッドはそう言って、エリザベスの元へ走って行った。
 エリザベスも彼に抱きつき、二人は馬車に乗り込んだ。


 御者は気まずそうにしながらも、シャルロッテが見ていると気づくと顔を隠して急いで馬に乗った。

 馬車は王宮を後にして走り去った。
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