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第二章 王都編
第35話 冒険者ギルドで暴利な依頼を受けよう!
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ソフィアと隠しダンジョンを探索した翌日。
昼下がりまでぐっすり寝た俺は、一人で王都の中を歩いていた。
アルデンいわく、俺に褒美を与えるかどうか決断するのに数日かかるとのこと。
だからこそ、俺はその間に目いっぱい王都を楽しんでやると決めた。
マリーにも今日は自由行動を言い渡してある。
「さて、問題はどこに行くかだが……」
悩みに悩んだ末。
俺はゲームの中に登場するものの、まだ足を運んでいない場所があることに気付いた。
そう、それはつまり――
「そうだ、冒険者ギルドに行こう!」
◇◇◇
カランカラ~ン
王都の冒険者ギルドにやってきた俺は、さっそく中の様子を見てみた。
そこには受付や酒場など、イメージ通りの光景が広がっている。
「おい、誰だアイツ?」
「さあ、ただの新入りじゃないか?」
初めてギルドにやってきた俺が見慣れないせいか、中にいる冒険者たちがジロリと様子を窺ってくる。
しかしすぐに興味をなくしたようで、それぞれの会話に戻っていった。
今回、俺はお忍びで来ているため正体を明かすつもりはない。
基本的に冒険者ギルドは平民の組織だし、貴族だとバレて騒がれるのも面倒だからな。
ちょっと中の様子を見て、すぐに帰るつもりだ。
しかし、不幸にもここにはそんな俺の企みを妨げる存在がいた。
「あそこにいるのはまさか……やはりそうです! 主様~!」
「……ローラ?」
ギルドの中にはなぜか、レンフォード騎士団長のローラがいた。
彼女は俺を見つけるや否や、満面の笑みで駆け寄ってくる。
まさか、いきなりこんな落とし穴あるとは。
俺は一つため息をはき、彼女に対応する。
「ローラ、どうしてお前がこんなところにいる? 王国騎士団の鍛錬に参加しているんじゃなかったのか?」
「はっ! 本日の午後は騎士団メンバーのみの任務があるということだったので、空いた時間にこうしてギルドにやってきた次第です!」
「……ふむ」
空いた時間に顔を出す程なら、ローラは以前から冒険者ギルドと馴染みが深いのかもしれない。
基本的には平民だけの組織とはいえ、貴族が利用できないわけじゃないしな。
もしそうなら、ゲームでも主人公たちが足を踏み入れることはできなかったことだろう。
そんなことを考えていると、ローラの後ろから髭を携えた40歳前後の男性が姿を現す。
俺はその人物に見覚えがあった。
(この男、どこかで見覚えがある気が……そうだ! 確かギルドマスターだ!)
答えにたどり着いた俺の前で、ギルマスがローラに話しかける。
「ローラ様、そちらの方はいったい……?」
「ああ、聞いて驚くがいい。この方は私の偉大なる主――クラウス様だ!」
「なっ! クラウス様というと、レンフォード家の当主であるあの……?」
意外なことに、ギルマスは俺のことを知っているみたいだった。
やっぱりギルドに来たのは失敗だったかもしれないと後悔する。
しかし、その直後だった。
ギルマスの呟きに反応するようにして、周囲の冒険者たちがざわざわとし始める。
「おい、今の名前、どっかで聞いたことがある気が……」
「あれだよ、レンフォード支部所属のグエンがこの前こっちに来た時、話していた人物じゃないか?」
「ああ! ダンジョンで魔物と戦闘中に領主が現れたという、あの話か!」
(……ふむ、どこかで聞いた話だな)
冒険者たちの会話内容には、俺も心当たりがあった。
確かに以前、俺はダンジョンでボスと戦闘中の冒険者から獲物を奪い取ったことがあった。
その話がまさか、王都まで広がっているとは……
俺はニヤリと笑った。
(これはもしかしたら、俺にとって追い風かもな)
他人が戦っている魔物を横取りするのは、冒険者にとってタブーだ。
そのタブーを犯した俺は、彼らにとって悪人に等しい。
しかし貴族相手に文句を言えるほど、度胸がある者はまずいない。
そうなると溜まったストレスは俺がいなくなった後、酒の肴にでもされることだろう。
ローラが俺の正体を口にしたときはどうなるものかと思ったが……これは逆に俺の悪評を広げる絶好の機会だ。
もっと他にダメ押しの方法はないか。
そう思いながら周囲を見渡していると、依頼書が張られた掲示板が目に止まった。
そして依頼書の中に1枚『領地に住み着いたレッドドラゴンの討伐依頼』というものが張られていることに気付く。
依頼内容自体は大して珍しくもないが、問題はその報酬金額。
ゲームでも全く同じ依頼を見たことがあるが、その時に比べてなんと倍近い額が記載されていた。
(どういうことだ? なぜレッドドラゴンの討伐だけ倍近くも値段が違う? 他の依頼に関してはゲームと同水準だというのに……はっ、そうか!)
俺の天才的頭脳は、すぐその答えにたどり着いた。
まず大前提として、ゲームが間違っていることはないだろう。
ということは単純にこのギルドが、一般的な報酬金額の認識を間違えている可能性が高い。
それを踏まえ、ここからが俺の作戦内容となる。
まず、今の報酬金額が書かれているうちに、俺が依頼を受けて達成してしまう。
そして報酬をもらったタイミングで『本当は半分で済んだんだよ、ドンマイ。だけど約束は約束だから全額もらっていく!』と伝えたらどうなるだろうか?
当然、俺が貴族の身でありながら金に目がない、欲望のために生きる悪徳貴族だという噂が瞬く間に広がることだろう。
そこまでを瞬時に考えた俺は、掲示板からその依頼書を破り取った。
そんな俺を見て、ギルマスが恐る恐る口を開く。
「あの、クラウス様、いったい何を……?」
「ふむ。せっかくの機会だし、この依頼を受けようと思ってな」
「なっ! その討伐依頼をですか!?」
「ああ。それとも貴族の俺が受けるのには何か問題があるか?」
「い、いいえ、決してそのようなことは! ありがとうございます、ありがとうございます!」
なぜかオーバー気味に何度も頭を下げるギルマス。
きっと彼は貴族である俺に恐れをなしているのだろう。
作戦がうまくいきそうな気配に満足していると、ギルマスが続けて言う。
「それでクラウス様、もしよろしければ私も依頼に同行してよいでしょうか?」
「ん? ああ」
恐らく俺がちゃんと依頼を達成するか不安なんだろう。
まあ俺の目的はその先の報酬にあるから、その心配は無用だが。
そんな俺とギルマスのやり取りを見て、さらにローラが手を挙げる。
「それでしたら主様、私もお供いたします! ぜひ主様の活躍を間近で拝見させてください!」
「勝手にしろ」
「はっ!」
こうなった以上、ついてくるのが一人でも二人でも同じだ。
そのため、特に何も考えることなく頷く。
(さて、ここからが本番だぞ)
冒険者ギルドは数少ない、俺の悪評がちゃんと広まっている組織。
このチャンスを決して逃すまいと、俺は改めて気合を入れるのだった。
昼下がりまでぐっすり寝た俺は、一人で王都の中を歩いていた。
アルデンいわく、俺に褒美を与えるかどうか決断するのに数日かかるとのこと。
だからこそ、俺はその間に目いっぱい王都を楽しんでやると決めた。
マリーにも今日は自由行動を言い渡してある。
「さて、問題はどこに行くかだが……」
悩みに悩んだ末。
俺はゲームの中に登場するものの、まだ足を運んでいない場所があることに気付いた。
そう、それはつまり――
「そうだ、冒険者ギルドに行こう!」
◇◇◇
カランカラ~ン
王都の冒険者ギルドにやってきた俺は、さっそく中の様子を見てみた。
そこには受付や酒場など、イメージ通りの光景が広がっている。
「おい、誰だアイツ?」
「さあ、ただの新入りじゃないか?」
初めてギルドにやってきた俺が見慣れないせいか、中にいる冒険者たちがジロリと様子を窺ってくる。
しかしすぐに興味をなくしたようで、それぞれの会話に戻っていった。
今回、俺はお忍びで来ているため正体を明かすつもりはない。
基本的に冒険者ギルドは平民の組織だし、貴族だとバレて騒がれるのも面倒だからな。
ちょっと中の様子を見て、すぐに帰るつもりだ。
しかし、不幸にもここにはそんな俺の企みを妨げる存在がいた。
「あそこにいるのはまさか……やはりそうです! 主様~!」
「……ローラ?」
ギルドの中にはなぜか、レンフォード騎士団長のローラがいた。
彼女は俺を見つけるや否や、満面の笑みで駆け寄ってくる。
まさか、いきなりこんな落とし穴あるとは。
俺は一つため息をはき、彼女に対応する。
「ローラ、どうしてお前がこんなところにいる? 王国騎士団の鍛錬に参加しているんじゃなかったのか?」
「はっ! 本日の午後は騎士団メンバーのみの任務があるということだったので、空いた時間にこうしてギルドにやってきた次第です!」
「……ふむ」
空いた時間に顔を出す程なら、ローラは以前から冒険者ギルドと馴染みが深いのかもしれない。
基本的には平民だけの組織とはいえ、貴族が利用できないわけじゃないしな。
もしそうなら、ゲームでも主人公たちが足を踏み入れることはできなかったことだろう。
そんなことを考えていると、ローラの後ろから髭を携えた40歳前後の男性が姿を現す。
俺はその人物に見覚えがあった。
(この男、どこかで見覚えがある気が……そうだ! 確かギルドマスターだ!)
答えにたどり着いた俺の前で、ギルマスがローラに話しかける。
「ローラ様、そちらの方はいったい……?」
「ああ、聞いて驚くがいい。この方は私の偉大なる主――クラウス様だ!」
「なっ! クラウス様というと、レンフォード家の当主であるあの……?」
意外なことに、ギルマスは俺のことを知っているみたいだった。
やっぱりギルドに来たのは失敗だったかもしれないと後悔する。
しかし、その直後だった。
ギルマスの呟きに反応するようにして、周囲の冒険者たちがざわざわとし始める。
「おい、今の名前、どっかで聞いたことがある気が……」
「あれだよ、レンフォード支部所属のグエンがこの前こっちに来た時、話していた人物じゃないか?」
「ああ! ダンジョンで魔物と戦闘中に領主が現れたという、あの話か!」
(……ふむ、どこかで聞いた話だな)
冒険者たちの会話内容には、俺も心当たりがあった。
確かに以前、俺はダンジョンでボスと戦闘中の冒険者から獲物を奪い取ったことがあった。
その話がまさか、王都まで広がっているとは……
俺はニヤリと笑った。
(これはもしかしたら、俺にとって追い風かもな)
他人が戦っている魔物を横取りするのは、冒険者にとってタブーだ。
そのタブーを犯した俺は、彼らにとって悪人に等しい。
しかし貴族相手に文句を言えるほど、度胸がある者はまずいない。
そうなると溜まったストレスは俺がいなくなった後、酒の肴にでもされることだろう。
ローラが俺の正体を口にしたときはどうなるものかと思ったが……これは逆に俺の悪評を広げる絶好の機会だ。
もっと他にダメ押しの方法はないか。
そう思いながら周囲を見渡していると、依頼書が張られた掲示板が目に止まった。
そして依頼書の中に1枚『領地に住み着いたレッドドラゴンの討伐依頼』というものが張られていることに気付く。
依頼内容自体は大して珍しくもないが、問題はその報酬金額。
ゲームでも全く同じ依頼を見たことがあるが、その時に比べてなんと倍近い額が記載されていた。
(どういうことだ? なぜレッドドラゴンの討伐だけ倍近くも値段が違う? 他の依頼に関してはゲームと同水準だというのに……はっ、そうか!)
俺の天才的頭脳は、すぐその答えにたどり着いた。
まず大前提として、ゲームが間違っていることはないだろう。
ということは単純にこのギルドが、一般的な報酬金額の認識を間違えている可能性が高い。
それを踏まえ、ここからが俺の作戦内容となる。
まず、今の報酬金額が書かれているうちに、俺が依頼を受けて達成してしまう。
そして報酬をもらったタイミングで『本当は半分で済んだんだよ、ドンマイ。だけど約束は約束だから全額もらっていく!』と伝えたらどうなるだろうか?
当然、俺が貴族の身でありながら金に目がない、欲望のために生きる悪徳貴族だという噂が瞬く間に広がることだろう。
そこまでを瞬時に考えた俺は、掲示板からその依頼書を破り取った。
そんな俺を見て、ギルマスが恐る恐る口を開く。
「あの、クラウス様、いったい何を……?」
「ふむ。せっかくの機会だし、この依頼を受けようと思ってな」
「なっ! その討伐依頼をですか!?」
「ああ。それとも貴族の俺が受けるのには何か問題があるか?」
「い、いいえ、決してそのようなことは! ありがとうございます、ありがとうございます!」
なぜかオーバー気味に何度も頭を下げるギルマス。
きっと彼は貴族である俺に恐れをなしているのだろう。
作戦がうまくいきそうな気配に満足していると、ギルマスが続けて言う。
「それでクラウス様、もしよろしければ私も依頼に同行してよいでしょうか?」
「ん? ああ」
恐らく俺がちゃんと依頼を達成するか不安なんだろう。
まあ俺の目的はその先の報酬にあるから、その心配は無用だが。
そんな俺とギルマスのやり取りを見て、さらにローラが手を挙げる。
「それでしたら主様、私もお供いたします! ぜひ主様の活躍を間近で拝見させてください!」
「勝手にしろ」
「はっ!」
こうなった以上、ついてくるのが一人でも二人でも同じだ。
そのため、特に何も考えることなく頷く。
(さて、ここからが本番だぞ)
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