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第17話 回答
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アリシアと名乗った少女は俺に用があるとのことだったので、食堂のスペースを借りて少し話し合うことになった。
俺たち4人はテーブルで向かい合うように座る。
向かいにはアリシアとフードを被った少女。
そしてこちら側には俺と――
「……なんでモニカは俺の隣に座ってるんだ? 普通向こうじゃないのか?」
「こうしないと全員が座れない。うん、合理的」
「……そうか」
まあ、本人がいいならいいか。
するとそんなモニカを見て、アリシアが小さく目を開く。
「珍しいですね、モニカがこれだけ誰かに心を開くなんて」
「そうなのか?」
俺が会った時からずっとこんな感じだったし、昔からこうだと思ってた。
「はい、普段は他人との交流より魔術の研究を優先する子ですから。そのペンダントを渡したと聞いた時は騙されたのではないかと半信半疑だったのですが、この姿を見ればそれも納得できます」
「疑いが晴れたようでよかったよ。というか、このペンダントってそんなに重要なものだったのか?」
テーブルに置いたペンダントに触れながら俺がそう尋ねると、アリシアは小さく頷いた。
「はい、私たちにとっては間違いなく。通常であれば共にクエストを達成した相手など、私たちが対等と認めた同盟相手にしか渡さないものですから。実際、モニカが渡したのはあなたが初めてとなります」
「……ふむ」
そのわりにはやけにあっさりと渡されたような気がするが。
まあ、それだけ命を助けてくれたことに感謝されているということか。
モニカなら俺がいなくても勝手に生き延びたようにも思うけど。
「けど、そんなものを俺なんかがもらって本当によかったのか?」
「もちろんです。あなたにモニカが助けられたのは事実ですから」
アリシアはその場で姿勢を整えると、丁寧に頭を下げる。
「改めてお礼を。ユーリさん、モニカを助けてくれて誠にありがとうございました」
「……ああ、どういたしまして」
ここで変に謙遜するのも違うかと考えた俺は、素直に礼を受け入れることにした。
その後、顔を上げたアリシアはリナが出してくれたお茶を一口含んだ後、真剣な眼差しをこちらに向けてくる。
「お礼を申し上げた直後で申し訳ないのですが……ユーリさんに少しお尋ねしたいことがありまして。よろしいでしょうか?」
「ああ、そういやそう言ってたな。当然それは構わないけど……」
ふと、ここで俺は違和感を覚えた。
「そもそもの話、俺がこの宿にいるってよく分かったな。ここに来た時の様子を見るに初めから当てがあったみたいだけど」
「……えっと、それについてですが……」
なぜかここで少し言いよどむアリシア。
何か言いづらいことがあるのだろうか?
そう疑っていると、隣からちょんちょんと二の腕をつつかれる。
「なんだ、モニカ?」
「これのおかげ」
「これって……このペンダントのことか?」
モニカはペンダントを指さしながら、こくりと頷く。
「そう。このペンダントは特殊な魔力を発していて、わたしはその魔力を追うことができる」
「えっと……それはつまり、このペンダントを持ってる奴はモニカに位置が筒抜けってわけか?」
「うん。大森林のような色んな魔力がある場所だと難しいけど、この町の中くらいならどこでも分かる」
俺はモニカからこのペンダントを貰った時のことを思い出した。
『待って。ユーリに渡したいものがある』
『これは?』
『わたし……というよりは、わたしが所属しているパーティーの友好の証的なもの。町に戻ったら改めて今回のお礼がしたいから、これを持っておいて』
『……ああ、分かった』
この時、町の中で待ち合わせ場所を決めないことを疑問に思ったりしたが……
そういう事情があったのなら納得できる。
「なるほど、そういうことだったのか」
得心がいって頷く俺に対して、アリシアは申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「申し訳ありませんユーリさん、モニカが説明していなかったようで。決して元からその機能を利用するつもりはなかったのですが……」
「大丈夫だ、気にしなくていい。俺としてもそっちの探す手間が省けたようで何よりだよ」
「……そう言っていただけると助かります」
疑問が解消したので、話を進めることにする。
「それで、尋ねたいことってのは?」
「……その件でしたね」
俺の確認を聞き、アリシアは再びその場でビシッと姿勢を整える。
そして隣にいるフード姿の子と何やらアイコンタクトをして頷き合った後、透き通るような碧眼をまっすぐ俺に向けてきた。
そして、
「それでは、率直にお尋ねします」
ここまでとは纏う雰囲気が一変、嘘をつくことだけは決して許さないという力強い口調でこう告げた。
「ユーリさん……あなたはこれまでに、ドラゴンを倒したことはありますか?」
「ないな」
意図が分からない質問だったが、考える余地もなかったので即答する。
するとなぜか、シーンとその場の空気が凍るのだった。
俺たち4人はテーブルで向かい合うように座る。
向かいにはアリシアとフードを被った少女。
そしてこちら側には俺と――
「……なんでモニカは俺の隣に座ってるんだ? 普通向こうじゃないのか?」
「こうしないと全員が座れない。うん、合理的」
「……そうか」
まあ、本人がいいならいいか。
するとそんなモニカを見て、アリシアが小さく目を開く。
「珍しいですね、モニカがこれだけ誰かに心を開くなんて」
「そうなのか?」
俺が会った時からずっとこんな感じだったし、昔からこうだと思ってた。
「はい、普段は他人との交流より魔術の研究を優先する子ですから。そのペンダントを渡したと聞いた時は騙されたのではないかと半信半疑だったのですが、この姿を見ればそれも納得できます」
「疑いが晴れたようでよかったよ。というか、このペンダントってそんなに重要なものだったのか?」
テーブルに置いたペンダントに触れながら俺がそう尋ねると、アリシアは小さく頷いた。
「はい、私たちにとっては間違いなく。通常であれば共にクエストを達成した相手など、私たちが対等と認めた同盟相手にしか渡さないものですから。実際、モニカが渡したのはあなたが初めてとなります」
「……ふむ」
そのわりにはやけにあっさりと渡されたような気がするが。
まあ、それだけ命を助けてくれたことに感謝されているということか。
モニカなら俺がいなくても勝手に生き延びたようにも思うけど。
「けど、そんなものを俺なんかがもらって本当によかったのか?」
「もちろんです。あなたにモニカが助けられたのは事実ですから」
アリシアはその場で姿勢を整えると、丁寧に頭を下げる。
「改めてお礼を。ユーリさん、モニカを助けてくれて誠にありがとうございました」
「……ああ、どういたしまして」
ここで変に謙遜するのも違うかと考えた俺は、素直に礼を受け入れることにした。
その後、顔を上げたアリシアはリナが出してくれたお茶を一口含んだ後、真剣な眼差しをこちらに向けてくる。
「お礼を申し上げた直後で申し訳ないのですが……ユーリさんに少しお尋ねしたいことがありまして。よろしいでしょうか?」
「ああ、そういやそう言ってたな。当然それは構わないけど……」
ふと、ここで俺は違和感を覚えた。
「そもそもの話、俺がこの宿にいるってよく分かったな。ここに来た時の様子を見るに初めから当てがあったみたいだけど」
「……えっと、それについてですが……」
なぜかここで少し言いよどむアリシア。
何か言いづらいことがあるのだろうか?
そう疑っていると、隣からちょんちょんと二の腕をつつかれる。
「なんだ、モニカ?」
「これのおかげ」
「これって……このペンダントのことか?」
モニカはペンダントを指さしながら、こくりと頷く。
「そう。このペンダントは特殊な魔力を発していて、わたしはその魔力を追うことができる」
「えっと……それはつまり、このペンダントを持ってる奴はモニカに位置が筒抜けってわけか?」
「うん。大森林のような色んな魔力がある場所だと難しいけど、この町の中くらいならどこでも分かる」
俺はモニカからこのペンダントを貰った時のことを思い出した。
『待って。ユーリに渡したいものがある』
『これは?』
『わたし……というよりは、わたしが所属しているパーティーの友好の証的なもの。町に戻ったら改めて今回のお礼がしたいから、これを持っておいて』
『……ああ、分かった』
この時、町の中で待ち合わせ場所を決めないことを疑問に思ったりしたが……
そういう事情があったのなら納得できる。
「なるほど、そういうことだったのか」
得心がいって頷く俺に対して、アリシアは申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「申し訳ありませんユーリさん、モニカが説明していなかったようで。決して元からその機能を利用するつもりはなかったのですが……」
「大丈夫だ、気にしなくていい。俺としてもそっちの探す手間が省けたようで何よりだよ」
「……そう言っていただけると助かります」
疑問が解消したので、話を進めることにする。
「それで、尋ねたいことってのは?」
「……その件でしたね」
俺の確認を聞き、アリシアは再びその場でビシッと姿勢を整える。
そして隣にいるフード姿の子と何やらアイコンタクトをして頷き合った後、透き通るような碧眼をまっすぐ俺に向けてきた。
そして、
「それでは、率直にお尋ねします」
ここまでとは纏う雰囲気が一変、嘘をつくことだけは決して許さないという力強い口調でこう告げた。
「ユーリさん……あなたはこれまでに、ドラゴンを倒したことはありますか?」
「ないな」
意図が分からない質問だったが、考える余地もなかったので即答する。
するとなぜか、シーンとその場の空気が凍るのだった。
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