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第7話 異世界で初めての交流
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森を抜け、町まであと少しというところにあった街道沿いの川。
その川で溺れていた青髪の少女を、俺は引き上げた。
「ありがとう。助かった」
「どういたしまして……って言いたいところだが、何でずっとその体勢なんだ?」
せっかく陸に上がったというのに、少女は溺れていた時の丸まった体勢から微動だにしなかった。
なんなら、動きがなさすぎてちょっと気味が悪いくらいだ。
ちょっぴり引いている俺に対し、少女は戸惑うことなく答える。
「これは魔力を固定しているせい」
「魔力を固定?」
聞き慣れないワードに首を傾げると、少女はこくりと頷く。
「うん。そうすることによって体の強度が何倍にも上昇する。これさえ覚えておけば強敵の攻撃から身を守れてすごく便利。代償として、しばらく体勢を変えられなくなるっていう欠点は存在するけど」
「なるほど……それでこんな状態になってるってことは、強敵から襲われるような目に遭ったのか?」
「うん。ついさっき、ドラゴンに全力で叩かれた」
「ドラゴン!?」
少女の口から出てきたワードを聞き、思わず大声で復唱してしまった。
ドラゴンといえば、ファンタジーでは定番となっている最強クラスの魔物だ。
俺がついさっき斬り倒したただの鳥とは比べ物にならないだろう。
そんな魔物と戦っていたこの少女は、もしかしたらかなりの強者なのかもしれない。
そう思い尋ねてみると、少女はここに至る経緯を教えてくれた。
彼女はパーティーメンバーと共にドラゴンと戦っている途中、真っ先に狙われて戦闘不能となった。
さらに運が悪く川に落とされるも、魔力固定の代償で体は動かせない。
そこで、なんとか魔力を使って一命を取り留めていたところに俺が通りかかったんだとか。
「うん、やっと動けるようになってきた」
そんな説明を続けること数分、少女はおもむろにそう呟きながら立ち上がった。
どうやら代償の時間は終了したらしい。
「もう平気なのか?」
「うん。あなたのおかげで助かった、本当にありがとう」
「そっちが無事ならそれで何よりだ。それよりも、ドラゴンにやられた後なのに随分と落ち着いてるんだな。仲間のもとに戻らなくていいのか?」
「それについても大丈夫。ついさっき、ドラゴンの気配が消滅した。急いで戻る必要はない」
ということは、きっとこの少女の仲間がドラゴンを倒したのだろう。
彼女のパーティーはよっぽど強いみたいだ。
「それなら君の仲間も大丈夫そうだな、よかったよ」
「モニカ」
「え?」
「わたしの名前。モニカだから、そう呼んで。あと、あなたの名前も教えてほしい」
突然の申し出だが、これも縁というやつだろうか。
俺は素直に応じることにした。
「俺は悠里だ」
「……うん。ユーリ、これからよろしく」
「ああ、よろしくモニカ」
こうして、俺は異世界で初めて人と交流したのだった。
その後、モニカは仲間と合流するということで、この場でお別れとなった。
別れの挨拶を告げ町に向かおうとすると、突然モニカが俺の裾を掴む。
「待って。ユーリに渡したいものがある」
そう言ってモニカが差し出してきたのは、何やらかっこいい紋章が描かれたペンダントだった。
「これは?」
「わたし……というよりは、わたしが所属しているパーティーの友好の証的なもの。町に戻ったら改めて今回のお礼がしたいから、これを持っておいて」
「……ああ、分かった」
別に、改めて礼をされるほどのことをしたとは思わないが……
ここで断る方が失礼な気がしたので、素直に受け取ることにした。
でもこのペンダントだけ渡されて、俺はどうすればいいんだろう?
せめて待ち合わせ場所とかを決めた方がいいんじゃ……
「それじゃ、また」
「あっ」
そうこう考えているうちに、モニカはその場からぷかぷかと浮かび森の方へ飛んでいった。
あれも魔術の一種なのだろうか。
同じ空を飛ぶでも、強引に大気を蹴って突き進む俺とは優雅さが段違いだ。羨ましい。
結果的に、気になったこと全てを尋ねることはできなかったが……
「まっ、なんとかなるか」
細かいことは俺より、この世界の住人であるモニカの方が詳しいはず。
俺がとやかく考えずとも何とかなるだろう。
俺はこの世界で初めてできた友人? に思いを馳せながら、今度こそ町に向かうのだった。
◇◇◇
――しかし、その数分後。
たどり着いた町の城門にて。
「なに!? 身分証や冒険者カードがなければ、保証金も持っていないだと!? そんな奴を町に入れるわけないだろう! 論外だ、さっさとここを去れ!」
(えぇー)
剣を除いて着の身着のままで異世界にやってきた俺は、門番からさっそくの洗礼を受けるのだった。
その川で溺れていた青髪の少女を、俺は引き上げた。
「ありがとう。助かった」
「どういたしまして……って言いたいところだが、何でずっとその体勢なんだ?」
せっかく陸に上がったというのに、少女は溺れていた時の丸まった体勢から微動だにしなかった。
なんなら、動きがなさすぎてちょっと気味が悪いくらいだ。
ちょっぴり引いている俺に対し、少女は戸惑うことなく答える。
「これは魔力を固定しているせい」
「魔力を固定?」
聞き慣れないワードに首を傾げると、少女はこくりと頷く。
「うん。そうすることによって体の強度が何倍にも上昇する。これさえ覚えておけば強敵の攻撃から身を守れてすごく便利。代償として、しばらく体勢を変えられなくなるっていう欠点は存在するけど」
「なるほど……それでこんな状態になってるってことは、強敵から襲われるような目に遭ったのか?」
「うん。ついさっき、ドラゴンに全力で叩かれた」
「ドラゴン!?」
少女の口から出てきたワードを聞き、思わず大声で復唱してしまった。
ドラゴンといえば、ファンタジーでは定番となっている最強クラスの魔物だ。
俺がついさっき斬り倒したただの鳥とは比べ物にならないだろう。
そんな魔物と戦っていたこの少女は、もしかしたらかなりの強者なのかもしれない。
そう思い尋ねてみると、少女はここに至る経緯を教えてくれた。
彼女はパーティーメンバーと共にドラゴンと戦っている途中、真っ先に狙われて戦闘不能となった。
さらに運が悪く川に落とされるも、魔力固定の代償で体は動かせない。
そこで、なんとか魔力を使って一命を取り留めていたところに俺が通りかかったんだとか。
「うん、やっと動けるようになってきた」
そんな説明を続けること数分、少女はおもむろにそう呟きながら立ち上がった。
どうやら代償の時間は終了したらしい。
「もう平気なのか?」
「うん。あなたのおかげで助かった、本当にありがとう」
「そっちが無事ならそれで何よりだ。それよりも、ドラゴンにやられた後なのに随分と落ち着いてるんだな。仲間のもとに戻らなくていいのか?」
「それについても大丈夫。ついさっき、ドラゴンの気配が消滅した。急いで戻る必要はない」
ということは、きっとこの少女の仲間がドラゴンを倒したのだろう。
彼女のパーティーはよっぽど強いみたいだ。
「それなら君の仲間も大丈夫そうだな、よかったよ」
「モニカ」
「え?」
「わたしの名前。モニカだから、そう呼んで。あと、あなたの名前も教えてほしい」
突然の申し出だが、これも縁というやつだろうか。
俺は素直に応じることにした。
「俺は悠里だ」
「……うん。ユーリ、これからよろしく」
「ああ、よろしくモニカ」
こうして、俺は異世界で初めて人と交流したのだった。
その後、モニカは仲間と合流するということで、この場でお別れとなった。
別れの挨拶を告げ町に向かおうとすると、突然モニカが俺の裾を掴む。
「待って。ユーリに渡したいものがある」
そう言ってモニカが差し出してきたのは、何やらかっこいい紋章が描かれたペンダントだった。
「これは?」
「わたし……というよりは、わたしが所属しているパーティーの友好の証的なもの。町に戻ったら改めて今回のお礼がしたいから、これを持っておいて」
「……ああ、分かった」
別に、改めて礼をされるほどのことをしたとは思わないが……
ここで断る方が失礼な気がしたので、素直に受け取ることにした。
でもこのペンダントだけ渡されて、俺はどうすればいいんだろう?
せめて待ち合わせ場所とかを決めた方がいいんじゃ……
「それじゃ、また」
「あっ」
そうこう考えているうちに、モニカはその場からぷかぷかと浮かび森の方へ飛んでいった。
あれも魔術の一種なのだろうか。
同じ空を飛ぶでも、強引に大気を蹴って突き進む俺とは優雅さが段違いだ。羨ましい。
結果的に、気になったこと全てを尋ねることはできなかったが……
「まっ、なんとかなるか」
細かいことは俺より、この世界の住人であるモニカの方が詳しいはず。
俺がとやかく考えずとも何とかなるだろう。
俺はこの世界で初めてできた友人? に思いを馳せながら、今度こそ町に向かうのだった。
◇◇◇
――しかし、その数分後。
たどり着いた町の城門にて。
「なに!? 身分証や冒険者カードがなければ、保証金も持っていないだと!? そんな奴を町に入れるわけないだろう! 論外だ、さっさとここを去れ!」
(えぇー)
剣を除いて着の身着のままで異世界にやってきた俺は、門番からさっそくの洗礼を受けるのだった。
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