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007 家族の仇

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 押し寄せる情報量は、既に僕の理解できる上限を超えていた。
 何もわからず、ただ呆然とその場で膝をつく僕に対し、アルトさんは気付く。

「なんだ、間抜けな面を晒して。まだ気付いていないのか? お前はオレたちに騙されたんだよ」
「騙され、た?」
「ああ、そうだ。お前だけ結界の外に取り残されたのが不具合とでも思ったか? けど残念、これは元から結界の外側に使用者がいないと発動しない――そういうアイテムだったんだよ」

 そこまで説明され、心より先に頭が理解した。
 転移結晶にはデメリットがあり、アルトさんは元からそれを知っていた。
 その上で、僕だけにそれを隠していた。

 つまり――この裏切りは、この場でいきなり思いついたものじゃない。
 以前から想定されていた、計画的なものだったんだ。

「いつから……ですか?」
「あん?」
「いつから、僕を騙してたんですか?」
「気になるのか? いいだろう、転移まではもう少しかかるだろうし教えてやる。まあ、オレがこの時を楽しみにしてなかったといえば嘘になるしな」

 そんな前置きのあと、アルトさんは告げた。
 僕にとってはあまりにも想定外で――そして、屈辱的な言葉を。


「オレたちがいつから、お前を騙していたかだったよな? 答えは簡単だ。初《・》――つまり、
「…………は?」


 脳が、理解を拒んだ。
 それほどまでに信じがたい言葉だった。
 アルトさんが、僕の故郷を魔物に襲わせた?
 つまり――僕の大切な家族や友人たちを殺したのは!

「なんで、そんなことをしたんですか!?」

 怒りのまま、僕はアルトさんを強く糾弾した。
 だが、アルトさんは戸惑う素振りすら見せず、へらへらと笑って口を開く。

「そう焦るな、ちゃんと順を追って教えてやる。あの時、オレたち【黎明の守護者】はBランク魔物の【ハングリー・ドレイク】を追っていた。コイツが厄介な相手でな、空腹であればあるほど力を増す特性のせいで倒すのに苦戦してたんだ」

 一呼吸置いた後、アルトさんは続ける。


「そんな時、ある村を見つけた。そう、お前の村だ。そこでオレたちは天才的なアイディアを閃いた。空腹なほど強くなるんだったら、まずその腹を満たしてやればいいと」
「まさか、それで……」
「そのまさかだ。オレたちはハングリー・ドレイクをお前の村に誘導し、村人を食わせることでその腹を満たさせた。その後はお前の知っての通り――お前以外の村人全員が死んだあと、弱ったその魔物をオレたちが見事に討伐したってわけだ」
「そん、な……」


 つまり僕は……初めから間違っていたんだ。
 僕の大切な家族を殺した仇を恨むどころか、恩人だと勘違いし続けていた。
 アルトさんたちはそれを知っていながら、ずっと隠していた。
 それどころか、僕をパーティーに入れて――

「そうです! それならなぜ、僕をパーティーに勧誘したんですか!? アルトさんたちからすれば、目撃者の可能性がある僕はその場で始末した方が――」
「ああ、それなら簡単だ。お前がユニークスキルを持っていたからだよ」
「っ、【無限再生】のことですか? ですがそれなら、外れスキルだって説明したはずじゃ……」

 たとえユニークスキルであれ、外れスキル持ちを仲間にするメリットなど存在しないはず。
 そう思っての問いだったのだが、アルトさんは手を左右に振った。
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