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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり

30 戦いの後で

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 エレジィおよび魔族化した隣国の騎士団との戦いの後、俺たちはすぐさま被害の確認と王都への連絡を済ませた。
 ミアレルト領の騎士たちの活躍により、負傷者はいたものの死者は一人もいなかった。
 大量の魔族に襲われたことから考えると、十分な戦果であるといえるだろう。

「死者が出なかったのはルークたちのおかげだよ」

 被害が軽微で済んだことを確認した後、ユナは俺とティナに向けて安心した笑みでそう告げた。
 そう言ってもらえるのはすごくありがたいことだ。

 対してティナに関しては、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。

「申し訳ありません、お兄様。敵を捕獲することに失敗いたしました」

 なんでも、ティナは魔族化した騎士たち20人余りを氷魔術で捕らえたらしい。
 が、エレジィの死と時を同じくして、捕らえたはずの彼らが消滅したのだとか。
 自身の死と共に、配下にいる者たちも口封じに殺せるような魔術を使用していたのだろう。

 ティナに責任は全くない。
 エレジィの意図を見抜けなかった俺のせいだろう。
 魔神化の厄介さを考えればあの判断は間違っていなかったと今でも思うが、それでもだ。

「ティナのせいじゃない。エレジィがこんな対策をしていたことに気付けなかった俺の落ち度だ」
「そんな! お兄様のせいでは――」
「ルーク、ティナ、二人ともすごく頑張ってくれたよ。だから今は私たちが無事でいられることを喜ぼうよ! ねっ?」

 ユナの言葉に、俺とティナは顔を合わせて小さく笑う。

「そうだな、ユナの言う通りだ」
「ですね。この領地を守ることができたことを誇りましょう」

 責任についての話はこれでいったん終わった。

 数日後には、王都から調査のため騎士団がやってくる手はずになっている。
 今回の戦いで得た情報をそれまでにまとめておかなくては。
 俺たちが王都に戻れるのは、その対応をした後になるだろう。

「それにしても、やっぱりルークはすごいね」
「えっ?」

 突然のユナの言葉に、俺は首を傾げる。

「だってね、あのエレジィって魔族は本当に強くて、私が手も足も出ないで絶望していた時に颯爽と現れて倒しちゃうんだもん。だから、本当にすごいなぁって思って」
「ええ、お兄様ですから」
「なぜティナが自慢げなんだ?」

 なぜか俺より嬉しそうにしているティナにツッコミを入れてから、ユナに向き直る。

「けど、そんなエレジィに立ち向かい続けていたユナだってすごいだろ。魔心があったからっていうのもあるけど、それでも自分や父親を守ることができたのはユナの力だ。ユナはもっと自分を誇ってもいいと思う」
「……ルーク」
「むっ、いけません、いけませんよこれは。ユナ様、前からおっしゃっているように、そう容易く私のお義姉さまになれるとは思いこまないことですね」
「お前はいったい何を言っているんだ」
「そそそ、そうだよ! べ、別にそんなつもりじゃないよ! 違うからね、ルーク!?」
「わ、分かってる。だからそんなに動揺するな、ユナ」

 頬を赤く染め、必死に否定するユナを見ていると変な勘違いをしそうになるから止めてほしい。
 別に照れているわけではない。
 本当だよ?

 それからも、俺とティナとユナの会話は賑わいながら続いていった。
 ユナを魔族の脅威から救い、この時間を勝ち取ることができてよかったと。
 心の底から俺はそう思うのだった。
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