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第一部 最弱魔術師から最強剣士への成り上がり
22 魔術の威力を測ろう
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魔力測定を終えた後、俺とティナはギルド奥にある部屋に連れてこられた。
学園の訓練場ほどではないがとても広い。
どうやら魔術の使用や模擬戦などが行える空間らしい。
興味を持ってついてきた冒険者たちがざわざわと騒ぐ中、フルールは大きな声で告げる。
「さあ、次は二人の魔術を見ていくよ。魔力量がAランク基準を超えている二人には、これを使用してもらう」
フルールが指さした先にあるのは、人の高さほどある巨大な透明の石だった。
「見たことはあるかな? これは魔硬石(まこうせき)と言って、現在確認されている自然物質の中で最も硬いと言われている魔石だ。最上級魔術でもなければ傷一つつけることができないんだよ」
実物を見るのは初めてだが、聞いたことはある。
硬度も魔力伝導率も魔術触媒として非常に優秀でありながら、加工できる人間がおらずに魔術の的程度にしか使われていないという悲しい魔石だ。
これの破壊度合いによって魔術の威力を試すらしい。
「まあ実際に魔術を放つ前に、どれくらいの硬さなのか確かめなよ」
言って、フルールは俺とティナに手のひらサイズの魔硬石を渡す。
加工が難しいという話は本当なのか、すごく歪な形で持ちにくい。
フルールの勧め通り、硬さを確かめるため軽く力を入れる。
「……あっ」
「ん? どうしたのかな、ルークさん」
「いえ何でもありません」
「そう? ならいいけど」
ピシッとヒビが入る音が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
そういうことにしておく。
ホントホント。オレ、ウソツカナイ。
俺はヒビの入った側を下向きにして、フルールに魔硬石を返した。
「じゃあ、そろそろ始めようか」
その後、例に倣ってティナから先に試すことになった。
注目を受ける中、ティナは緊張した様子もなく詠唱を続ける。
そして――
「――蒼の化身よ、全てを喰らえ――蒼龍」
――昨日レーニスが使用したものと同じ最上級魔術、蒼龍を発動する。
落ち着いて発動できたのが功を奏したのか、威力はレーニスのものに勝るとも劣らない。
周囲がおおっと歓声を上げる中、蒼龍は魔硬石のおよそ半分を破壊した。
どうやらそれはとんでもない記録だったようで、称賛の声が次々と飛んでくる。
「すげぇ! 魔力量だけじゃなく魔術の威力までとんでもねぇぞ!」
「これは恐ろしい新人が現れたな」
「ああ、こうなるとあっちの兄貴の方はどうなるのか気になるな。魔力量は妹以上なんだろ?」
冒険者たちの言葉を聞き、フルールは頷く。
「ああ、本当に素晴らしい記録だよこれは。誇ってくれていい」
「ありがとうございます」
「じゃあ、次はルークさんだね。もうさっきから胸が高鳴って仕方ないよ。新しい魔硬石をすぐ用意するから、どーんとやっちゃってよ、どーんと!」
「はあ……」
とりあえず頷いた後、腰から剣を抜く。
するとそれを見たフルールが目を見開く。
「それは何だい? 見慣れない形だけど……直接それを相手に振り下ろしたりするのかな?」
「いえ、魔術用の触媒です。俺専用なのでちょっと特殊なんです」
「ああ、そうだったんだ。一見すると刃物にしか見えないから、まさかそれで切りかかるのかと思っちゃったよ。そんな訳ないよね、あれだけの魔力を持った魔術師がそんな野蛮な戦い方をするなんて」
「あはは、まさか」
「だよねー」
一分後。
「グラディウス・アーツ流、一の型――天地」
「嘘ついた!」
魔硬石から40メートル程離れた位置で俺が剣を振り下ろしたのを見て、フルールは驚いたようにそう叫んだ。
「思いっきり振り下ろしてるよ! そんな触媒の使い方見たことあるもんか!」
「えっ、いや、実は風魔法を放ったんです」
「そんな訳でしょ! そもそもそんな離れたところで振り下ろしても、魔硬石には傷一つつく訳ないんだから――」
フルールがそう叫んで、無傷なまま鎮座する魔硬石に指を向けた瞬間だった。
すっと、魔硬石が上下にずれる。
そのまま真っ二つになった魔硬石がカランカランと音を鳴らしながら床に落ちて転がる。
「――えっ? うそ、本当に風魔法で? えっ?」
あまりにも衝撃的な光景だったらしく、フルールは完全に言葉を失っていた。
それは周りにいる者たちも同じだ。
徐々に出てきた声も、称賛というよりは驚愕を表す言葉ばかりだった。
「嘘だろ、いまアイツなにした? あの変な棒振り下ろしただけだよな?」
「風刃か何かを使ったのか? 聞いたことのない魔術名だったけど。どちらにせよ魔硬石を真っ二つなんて尋常じゃねぇよ」
「俺たちは立ち会ってしまったのかもしれねぇな。“伝説の幕開けの瞬間”ってやつによぉ……!」
そこでようやく現実に戻ってきたのか、フルールははっと顔を上げる。
「ティナさん、ルークさん、二人は文句なしの実力者だ。特にルークさんは今すぐにでもSランクにしたいくらいにはね」
「当然です、私のお兄様は最強ですから」
やはりティナの方が俺より嬉しそうにしていた。
自分が褒められた時は落ち着いていたのに。
「登録に関しての説明を改めてさせてもらいたい。場所を移そうか」
フルールにそう促されるまま、俺たちは移動した。
学園の訓練場ほどではないがとても広い。
どうやら魔術の使用や模擬戦などが行える空間らしい。
興味を持ってついてきた冒険者たちがざわざわと騒ぐ中、フルールは大きな声で告げる。
「さあ、次は二人の魔術を見ていくよ。魔力量がAランク基準を超えている二人には、これを使用してもらう」
フルールが指さした先にあるのは、人の高さほどある巨大な透明の石だった。
「見たことはあるかな? これは魔硬石(まこうせき)と言って、現在確認されている自然物質の中で最も硬いと言われている魔石だ。最上級魔術でもなければ傷一つつけることができないんだよ」
実物を見るのは初めてだが、聞いたことはある。
硬度も魔力伝導率も魔術触媒として非常に優秀でありながら、加工できる人間がおらずに魔術の的程度にしか使われていないという悲しい魔石だ。
これの破壊度合いによって魔術の威力を試すらしい。
「まあ実際に魔術を放つ前に、どれくらいの硬さなのか確かめなよ」
言って、フルールは俺とティナに手のひらサイズの魔硬石を渡す。
加工が難しいという話は本当なのか、すごく歪な形で持ちにくい。
フルールの勧め通り、硬さを確かめるため軽く力を入れる。
「……あっ」
「ん? どうしたのかな、ルークさん」
「いえ何でもありません」
「そう? ならいいけど」
ピシッとヒビが入る音が聞こえた気がしたが、きっと気のせいだろう。
そういうことにしておく。
ホントホント。オレ、ウソツカナイ。
俺はヒビの入った側を下向きにして、フルールに魔硬石を返した。
「じゃあ、そろそろ始めようか」
その後、例に倣ってティナから先に試すことになった。
注目を受ける中、ティナは緊張した様子もなく詠唱を続ける。
そして――
「――蒼の化身よ、全てを喰らえ――蒼龍」
――昨日レーニスが使用したものと同じ最上級魔術、蒼龍を発動する。
落ち着いて発動できたのが功を奏したのか、威力はレーニスのものに勝るとも劣らない。
周囲がおおっと歓声を上げる中、蒼龍は魔硬石のおよそ半分を破壊した。
どうやらそれはとんでもない記録だったようで、称賛の声が次々と飛んでくる。
「すげぇ! 魔力量だけじゃなく魔術の威力までとんでもねぇぞ!」
「これは恐ろしい新人が現れたな」
「ああ、こうなるとあっちの兄貴の方はどうなるのか気になるな。魔力量は妹以上なんだろ?」
冒険者たちの言葉を聞き、フルールは頷く。
「ああ、本当に素晴らしい記録だよこれは。誇ってくれていい」
「ありがとうございます」
「じゃあ、次はルークさんだね。もうさっきから胸が高鳴って仕方ないよ。新しい魔硬石をすぐ用意するから、どーんとやっちゃってよ、どーんと!」
「はあ……」
とりあえず頷いた後、腰から剣を抜く。
するとそれを見たフルールが目を見開く。
「それは何だい? 見慣れない形だけど……直接それを相手に振り下ろしたりするのかな?」
「いえ、魔術用の触媒です。俺専用なのでちょっと特殊なんです」
「ああ、そうだったんだ。一見すると刃物にしか見えないから、まさかそれで切りかかるのかと思っちゃったよ。そんな訳ないよね、あれだけの魔力を持った魔術師がそんな野蛮な戦い方をするなんて」
「あはは、まさか」
「だよねー」
一分後。
「グラディウス・アーツ流、一の型――天地」
「嘘ついた!」
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「思いっきり振り下ろしてるよ! そんな触媒の使い方見たことあるもんか!」
「えっ、いや、実は風魔法を放ったんです」
「そんな訳でしょ! そもそもそんな離れたところで振り下ろしても、魔硬石には傷一つつく訳ないんだから――」
フルールがそう叫んで、無傷なまま鎮座する魔硬石に指を向けた瞬間だった。
すっと、魔硬石が上下にずれる。
そのまま真っ二つになった魔硬石がカランカランと音を鳴らしながら床に落ちて転がる。
「――えっ? うそ、本当に風魔法で? えっ?」
あまりにも衝撃的な光景だったらしく、フルールは完全に言葉を失っていた。
それは周りにいる者たちも同じだ。
徐々に出てきた声も、称賛というよりは驚愕を表す言葉ばかりだった。
「嘘だろ、いまアイツなにした? あの変な棒振り下ろしただけだよな?」
「風刃か何かを使ったのか? 聞いたことのない魔術名だったけど。どちらにせよ魔硬石を真っ二つなんて尋常じゃねぇよ」
「俺たちは立ち会ってしまったのかもしれねぇな。“伝説の幕開けの瞬間”ってやつによぉ……!」
そこでようやく現実に戻ってきたのか、フルールははっと顔を上げる。
「ティナさん、ルークさん、二人は文句なしの実力者だ。特にルークさんは今すぐにでもSランクにしたいくらいにはね」
「当然です、私のお兄様は最強ですから」
やはりティナの方が俺より嬉しそうにしていた。
自分が褒められた時は落ち着いていたのに。
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