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周る

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店主はこちらを一瞥して、読書に戻る。こういった店にはこれで十分、許可が出た事を意味する。

棚が並び、背より高い場所にも本が並ぶ。床はコツコツと冷たく硬い石のようで一応の掃除はしてある。
埃が積もらなければ良いとばかりに角隅に埃があるが、本は綺麗だった。

人の気配は店主以外は、ないな。

寒いと感じるのは、地下だからかあ穴蔵のように細長い奥が続くせいか。
それでも、本が並ぶ様子に期待が湧き上がる。

ゆっくり本の背を目で追う。

誰かの書いた研究書
料理の作り方
植物図鑑が続く

本を書く余裕のある貴族や、冒険者に向けた本。研究者が発表の形として出した物もあった。
本の出版はかなり以前の物か。

シリーズもの、誰だか知らない名前の著者。紙の状態に注意をしつつ、一冊を出してみる。

魔導具の研究、野菜の切り方。
ちょっと、希望する内容とは違ったので戻す。

値段らしき字が時おりあるのを流し見て、本の森を奥に進む。

妖精が集っている本もあるが、魔術の本は触らないことにする。
碌なことがない。

罠であるか、怪しい魔術の類の事もある。


料理の本に突入し、コーヒーの淹れ方に使う食器類の記載。
これは珍しいな。殆どが紅茶に関する本の中で見つかった。

南のコーヒー豆を栽培する地に足を踏み入れた旅人の話か。甘い物の話もあったのでこれを買う事にする。

他に何か、読み物系統が欲しいと歩を進めればリンが姿を現していた。
少女が居ても、店主は気づかないか?

妖精がいて気配が紛れるのか、興味がないのかもな。)

本は、魔術的な物と親しみが深い。

魔力の根源とされる魔素、その属性に左右される妖精。力を蓄えた精霊の一歩手前の存在。
どちらも、魔術には関心が向くのだろう。

風があちこちに移動しているようだが、読書という興味の形ではないようだ。
楽しそうだし、読書の邪魔になってないようなので粗相がなければそのままにする。

たまに本のページがパラパラと捲れても、破損するほどではない。強化や保護の魔術がある上、盗難防止の術が敷かれているのだろう。


それらに力を貸す妖精も居て、静寂が心地よい。
(良い場所だな。)

清浄さと循環のある森のようなところ。緑はないが、本がその役割をして妖精の寝床となる。
妖精達の邪魔をしないように、ゆっくり動く。


旅行記の本を見つけ、どれかを買っていく事に決めた。
パラリパラリと、気になった本を見ていく。


この街には図書館などもあるんだったか。教会と一緒になっているかもしれないが。
そちらにも顔を出してみようかと頭の隅で記憶して、本を選ぶのに集中するのだった。



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