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あらすじ

病棟へ

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拠点に戻って来た。

単独で帰って来たため、待機の兵に色々聞かれるが

腕の中のつがいに意識がいっていた。
なんとか質問には答えたと思う。

(着替えさせないとな。)

医師を呼んだが、女医と指名させてもらった。
他の男が、たとえ医師でも俺の番に触らせたくない。

その気持ちを優先させた。

俺が見て、触った感じ、出血はないが打ち身ができている。

きめ細かい肌に、人間特有の滑らかさ。
その、か弱さに庇護欲さえ湧く。


俺のものだ。

そう確信しているが、それを証明する方法は思いつかない。

わかるから、わかる。

艶やかな髪まで冷え切っている。
こんなにも弱いのかと内心驚いた。

そろそろ、診察を待たせるわけにはいかない。

女医に場所を明け渡した。
ベッドに横たえられた姿が消えそうで触れて確かめたくなる。

グッと堪える。番の体調が優先だ。
医師は淀みなく診て行く。

体重も軽い。医師から見ても細いのは、栄養失調のせいか。

見つけた時のことを思い出す。
見た時の、焦燥感と別れ難さを感じた。

(まだ喋ってもいないのに。)
雪に埋もれそうな番に、すぐ行動に移したが
自分は冷静じゃなかったと思う。

魔物を仕留めてそのまま、部隊を置いて帰っても
どこか焦っていた。

早く巣に帰りたい。
囲ってしまわなければ。

そんな思いが胸に占拠していた。

すぐに抱き上げた筈だが記憶に焼き付けられたズタボロの服地、そこから覗く白い肌。
ぶかっとした服はサイズが合っていなかった。

防具も貧弱で、中身が一瞬無事か不安に思ったほど。
自然と呼吸を確認した。

寒さか?魔法の勢いに気を飛ばしてしまったか。
あの巨体に当たってはいないのは見えていたが。

ベッドの上で眠る番を見る。
医師は安静に、消化の良い食事をとらせる方針だ。

治癒魔法といのうがあるが、子供には負担になる場合もあるらしい。
医師の判断を聞くことにした。

しかし、なんとも頼りない体躯だ。
剥いて着せた服もたぶつく袖。緩い作りとはいえ、細いな。

病的なほど?

医師の診断は、栄養失調と疲労だった。
命の危険はないようだ。人はすぐ死ぬ。戦士と名乗っていても。


俺の番に、良いものを食わせなければ。
温かい服の用意と…

(何が好きだろう?)

まだ話せないみたいだ。
寝かせておかなければならないのは残念だ。


小刻みに震えている?
ギュッと手を握った。小さな手だ。


歳は、いくつだろう?
はやくみつみあいたい。

受け入れられたい。



「ロード様!」
男の声に振り返る。
もし
部屋に入って来ていたら、殺気を放っていたかもしれない。反射だが。

“番の部屋にはいるな”、と。

扉を開けて入らず、声をかけたようだ。病室だからか
許可を得て入るのだろう。


すませておかなければ、一緒の時間が削れるかもしれない。
重い足を動かして部屋を出て行ったロードだった。
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