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ゼルを待つうちに、眠ってしまったアンナ。

夢を見た。
ゼルが、お城の服を着て綺麗な女性と行ってしまう。

真新しい服、革の手袋は私を拒絶を動かし
ピカピカの靴は私から離れて行く。

あれはゼルなのかしら?

そう疑問を持ったところで、声をかけられた。

「アンナ、こんなところで寝たら風邪をひくよ」
「あ、ゼル?帰ってきたの。」

「うん。何とか出て来れたよ。ちょっと酒臭い?」


アンナに向けられた笑顔は、いつものゼルだった。
真夜中に帰ってきたゼルに抱きつく

「寝てても良いのに」
「大丈夫なの?」

涙声のアンナを抱きしめる。
落ち着いたら、気になった事を聞いてみた。


「お酒とか、美しいお姫様がいたでしょ?」
「ゴテゴテの皇女様がいた。」

きっと煌びやかに装っていたのだろうに。
ゼルからしたら、ゴテゴテと表現になってしまった。

「今から出られるか?」

もう日が昇る方が早い時間帯だ。
どこの店も開いていないし、危ない。


「ちょっと出かけるだけだよ、ほらあったかくして。」

言われるがまま、上着を着込んだ。
手を繋いで家を出た。

海の方へ進む。
まだどっぷりと暗い夜の海。

「まだ、日は登らないか。」

「朝日を見にきたのかしら。まだ無理そうね。」

新鮮な気持ちだ。ゼルの手だけが生きている感触を伝えるように。


出航する船に、頼んで乗せてもらった。

「私、こんな時間に海に出るのは初めてだわ。」
「じゃあ、初の冒険者だ。」

2人で微笑み合う。と言ってもまだ暗いから灯りが必要ね。


「あそこで寝よ」
船が出て、波の合間を進んでいるのでしょうけど

見えない。
ゼルだけがそばに居た。


「アンナ、好きだ」
「私もよ、ゼル。」


温かな眠りに誘われる。
一緒に日の出を見て、いつまで船にいるのか聞く。


「それなんだが、しばらくどっかに行かないか?」
「あら急ね、どこに行くの?」


「そうだなおじさんとおばさんに会いに行くか。」

隣国で商売をしている父と母に会いにね。

「そうね、結婚するって直接言いに行こうか。」


笑い合って、船に行く道を任せた。
2人の行く将来は、どんな道でも一緒に進んで行こうと誓い合ったのでした。



<<END>>
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