上 下
26 / 35
セリの帰郷と旅

7-モヤモヤを晴らす

しおりを挟む
モヤモヤしているのも、誤魔化していた。正直、殴ってやりたかった。
私を捨てた相手を。

墓の下。貴族の後継者は、もう違う人になっている。
セリには関係ない。でも、過去はカコだ。

支配的な姿から、床に転がる貴族の男を見て。もう大丈夫なんだと思えた。
冒険者のセリには、関わり合いのない人。

この街で仕事をしても会う事はない。
セリは。中級ポーションをサービスで置いて貴族の家を出て行った。

執事に介抱される貴族の男をもう気にも止めない。ギルドに文句があれば言えば良い。もう考えるのもやめた。


外に出てロードは、平然と聴いてくる。

「夕食は何食べる?」
「ワインで乾杯しながら、何か摘もうか!」

もうデートは、お終い。宿に帰る頃には日が傾いている。夜はこれからだけど、今日という日をお祝いしなきゃ。

「夜は、たっぷり付き合ってもらうけどな?」

高級宿、2人っきり、ハネムーン中である。

やる事は、決まっているけど。

「楽しみ」

ちゅっとキスして、ロードへと囁く。すぐに!と言いそうだけど、食事とシャワーは抜かさないでね?


ーその後の貴族の家


「旦那様!」

執事がポーションを飲ませると、なんとか座れるようになる。
他の使用人も集まるが、それに命令する。

「仕事に戻れ」

どうされるおつもりですか?相手は竜人ですが、抗議は冒険者ギルドにできるかと。

貴族に暴行、なかなかの罪になると思われるが。相手は格上、そうなれば理由の問題になる。それを訊ねられれば、口を閉ざすのはこちらの方。

「あれは、亡霊だ。ただの…」

執事に手伝ってもらい、やっと立ち上がる。当主に心配気な何か言いたそうな古くからこの家に仕えている執事。

「構わない」

当主の結論としては。面倒にしかならないから、抗議文だけおくっておけと執事に指示した。

部屋に戻り、執務机に座る。魔導具の設計図が広げられたままの自身の机。

(後悔?家が存続するなら良い。これでイイ)

貴族的な考え、それしかできない。これからもだった。

ポーションで取れたはずの痛みが、過去から苛むように痛む。
ただの幻だ。

ボーっとしていたのを頭を振って、散らす。
もしも、なんて不確かな物は必要ない。男は自身の仕事へ、戻って行った。

もう既に、墓に埋葬されている。


それを掘り起こす事はない。
だが、生きている者をどうこうする気もない。

竜人に護られた者がいる。ツガイとなった女は、この街出身の冒険者なのだとか。

そんな話が流れたらしいが、この家に関係のない話だ。





タイトル改題します
前『A級冒険者『竜の翼』は ハネムーン旅行に行くようですよ。え、冒険じゃないの?』

A級冒険者『竜の翼』は ハネムーン旅行に行くようですよ。え、冒険じゃないの? ファンタジー
https://www.alphapolis.co.jp/novel/208581808/461453723

と被るので。こっちは完結済みです。

書いたの忘れてたみたい。→っていうのがR18。ほぼ同じ内容でアルファポリスに投稿
詳しくは→ https://www.alphapolis.co.jp/novel/208581808/461453723/episode/3950318
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼女からスタートした侯爵令嬢は騎士団参謀に溺愛される~神獣は私を選んだようです~

桜もふ
恋愛
家族を事故で亡くしたルルナ・エメルロ侯爵令嬢は男爵家である叔父家族に引き取られたが、何をするにも平手打ちやムチ打ち、物を投げつけられる暴力・暴言の【虐待】だ。衣服も与えて貰えず、食事は食べ残しの少ないスープと一欠片のパンだけだった。私の味方はお兄様の従魔であった女神様の眷属の【マロン】だけだが、そのマロンは私の従魔に。 そして5歳になり、スキル鑑定でゴミ以下のスキルだと判断された私は王宮の広間で大勢の貴族連中に笑われ罵倒の嵐の中、男爵家の叔父夫婦に【侯爵家】を乗っ取られ私は、縁切りされ平民へと堕とされた。 頭空っぽアホ第2王子には婚約破棄された挙句に、国王に【無一文】で国外追放を命じられ、放り出された後、頭を打った衝撃で前世(地球)の記憶が蘇り【賢者】【草集め】【特殊想像生成】のスキルを使い国境を目指すが、ある日たどり着いた街で、優しい人達に出会い。ギルマスの養女になり、私が3人組に誘拐された時に神獣のスオウに再開することに! そして、今日も周りのみんなから溺愛されながら、日銭を稼ぐ為に頑張ります! エメルロ一族には重大な秘密があり……。 そして、隣国の騎士団参謀(元ローバル国の第1王子)との甘々な恋愛は至福のひとときなのです。ギルマス(パパ)に邪魔されながら楽しい日々を過ごします。

転生幼女具現化スキルでハードな異世界生活

高梨
ファンタジー
ストレス社会、労働社会、希薄な社会、それに揉まれ石化した心で唯一の親友を守って私は死んだ……のだけれども、死後に閻魔に下されたのは願ってもない異世界転生の判決だった。 黒髪ロングのアメジストの眼をもつ美少女転生して、 接客業後遺症の無表情と接客業の武器営業スマイルと、勝手に進んで行く周りにゲンナリしながら彼女は異世界でくらします。考えてるのに最終的にめんどくさくなって突拍子もないことをしでかして周りに振り回されると同じくらい周りを振り回します。  中性パッツン氷帝と黒の『ナンでも?』できる少女の恋愛ファンタジー。平穏は遙か彼方の代物……この物語をどうぞ見届けてくださいませ。  無表情中性おかっぱ王子?、純粋培養王女、オカマ、下働き大好き系国王、考え過ぎて首を落としたまま過ごす医者、女装メイド男の娘。 猫耳獣人なんでもござれ……。  ほの暗い恋愛ありファンタジーの始まります。 R15タグのように15に収まる範囲の描写がありますご注意ください。 そして『ほの暗いです』

異世界転生でチートを授かった俺、最弱劣等職なのに実は最強だけど目立ちたくないのでまったりスローライフをめざす ~奴隷を買って魔法学(以下略)

朝食ダンゴ
ファンタジー
不慮の事故(死神の手違い)で命を落としてしまった日本人・御厨 蓮(みくりや れん)は、間違えて死んでしまったお詫びにチートスキルを与えられ、ロートス・アルバレスとして異世界に転生する。 「目立つとろくなことがない。絶対に目立たず生きていくぞ」 生前、目立っていたことで死神に間違えられ死ぬことになってしまった経験から、異世界では決して目立たないことを決意するロートス。 十三歳の誕生日に行われた「鑑定の儀」で、クソスキルを与えられたロートスは、最弱劣等職「無職」となる。 そうなると、両親に将来を心配され、半ば強制的に魔法学園へ入学させられてしまう。 魔法学園のある王都ブランドンに向かう途中で、捨て売りされていた奴隷少女サラを購入したロートスは、とにかく目立たない平穏な学園生活を願うのだった……。 ※『小説家になろう』でも掲載しています。

独身男の一人旅 松山へ行ってみた

司条西
エッセイ・ノンフィクション
愛媛県松山市へ3泊4日で行った旅行記です。押絵に旅行写真を載せています。

辺境地で冷笑され蔑まれ続けた少女は、実は土地の守護者たる聖女でした。~彼女に冷遇を向けた街人たちは、彼女が追放された後破滅を辿る~

銀灰
ファンタジー
陸の孤島、辺境の地にて、人々から魔女と噂される、薄汚れた少女があった。 少女レイラに対する冷遇の様は酷く、街中などを歩けば陰口ばかりではなく、石を投げられることさえあった。理由無き冷遇である。 ボロ小屋に住み、いつも変らぬ質素な生活を営み続けるレイラだったが、ある日彼女は、住処であるそのボロ小屋までも、開発という名目の理不尽で奪われることになる。 陸の孤島――レイラがどこにも行けぬことを知っていた街人たちは彼女にただ冷笑を向けたが、レイラはその後、誰にも知られずその地を去ることになる。 その結果――?

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ハラーマル
ファンタジー
初めての彼氏との誕生日デート中、彼氏に裏切られた私は、貞操を守るため、展望台から飛び降りて・・・ 気がつくと、薄暗い洞窟の中で、よくわかんない種族に転生していました! 2人の子どもを助けて、一緒に森で生活することに・・・ だけどその森が、実は誰も生きて帰らないという危険な森で・・・ 出会った子ども達と、謎種族のスキルや魔法、持ち前の明るさと行動力で、危険な森で快適な生活を目指します!  ♢ ♢ ♢ 所謂、異世界転生ものです。 初めての投稿なので、色々不備もあると思いますが。軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 誤字や、読みにくいところは見つけ次第修正しています。 内容を大きく変更した場合には、お知らせ致しますので、確認していただけると嬉しいです。 「小説家になろう」様「カクヨム」様でも連載させていただいています。 ※7月10日、「カクヨム」様の投稿について、アカウントを作成し直しました。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...