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セリの帰郷と旅
4-セリの望み
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長年通っていたこの町を出た元凶を目の前にして、セリの気持ちが溢れ出す。
「『いやだ、拒否する。ありえない、皆無。』どの言葉なら納得したの?お蔭で仕事ができなくなった。依頼もね!」
セリが怒っている。ここまで鬱憤をためていたのだ。周囲は様子を見る。
「不安だったし、嫌だった。」
「何故だ!僕を否定するっ」
「私の自由を制限しようとするからだ。」
「薬草採取、薬師として良いと言っている!」
「あの屋敷で、か?」
妻になって、屋敷で暮らせ!と続く。それはもう、私の求める自由ではない。
(この2人には因縁がある。)
監査役のアクレイオスは事情を把握していた。その上で、セリの感情を優先させる。
「死んだ者に、何を求めている?」
「目の前で生きているから、求婚をしている!」
「そんな昔の事など死んで埋められた。」
今は、セリという冒険者として生きている。『その権力を使わない限り、出自、出世を問わない』自由な冒険者になった。
「おまえさえ居ればっ、全部うまくいくんだ!」
執着、危機的状況に縋りたいんだろうが。私が手を貸すことは無い。
貴族でも、なんでもないんだから。
「そんな未来、私は望まない。」
私の意思は変わっていない。
双方が落ち着いたところを見計らい、アクレイオスが沙汰を下す。
「冒険者の活動を、故意に邪魔したと判断する。」
「そんな事は…」
まだ言うギルド長へ意見書、詳細な報告が上がっている書類の束を見せる。
ここのギルド職員の仕事だった。
セリの味方もいる。
「優秀な冒険者を、不当な待遇に陥れた。私の権限で、ギルド長としての力を凍結する。」
「そんな!」
びくっと声に驚いたセリを抱きしめた人物から、低い声が響いた。
「実際に、凍りたいか?」
“この程度で我慢してやる”と示す。ロードのギラつく視線は威嚇と威圧に十分だった。
(尻尾が丸まりそ~)
その余波に平然としたフリをする、カナンは知っている。この話し合いの場で守られているのは、相手の方だった。
「冒険者ギルドとして、セリへの依頼申請を拒否する」
「そんなっ、ギルドの横暴だ!」
まだ喋れるのが不思議なくらいのところに、立っている。薄い氷の上だ。
(破滅のが、凍って粉々に消えるより良いと思うぜ?)
貴族といえど、消せる男。
その力と権力、何もなかったフリまでできる。そうしないのは、ツガイのセリに嫌われないため。
さっさと終わらせて、2人きりになるため。ツガイの憂いはここで片付けられる。
(だからアクレイオスが、来たんだもんな?)
この予定調和と結末が用意された劇は、セリのための舞台。そして男と女は、ハッピーエンドへ。
「他の端役は消えるのだった。」
「主役の目の届かないところで、ネ。」
もう、その未来は決定だった。
「『いやだ、拒否する。ありえない、皆無。』どの言葉なら納得したの?お蔭で仕事ができなくなった。依頼もね!」
セリが怒っている。ここまで鬱憤をためていたのだ。周囲は様子を見る。
「不安だったし、嫌だった。」
「何故だ!僕を否定するっ」
「私の自由を制限しようとするからだ。」
「薬草採取、薬師として良いと言っている!」
「あの屋敷で、か?」
妻になって、屋敷で暮らせ!と続く。それはもう、私の求める自由ではない。
(この2人には因縁がある。)
監査役のアクレイオスは事情を把握していた。その上で、セリの感情を優先させる。
「死んだ者に、何を求めている?」
「目の前で生きているから、求婚をしている!」
「そんな昔の事など死んで埋められた。」
今は、セリという冒険者として生きている。『その権力を使わない限り、出自、出世を問わない』自由な冒険者になった。
「おまえさえ居ればっ、全部うまくいくんだ!」
執着、危機的状況に縋りたいんだろうが。私が手を貸すことは無い。
貴族でも、なんでもないんだから。
「そんな未来、私は望まない。」
私の意思は変わっていない。
双方が落ち着いたところを見計らい、アクレイオスが沙汰を下す。
「冒険者の活動を、故意に邪魔したと判断する。」
「そんな事は…」
まだ言うギルド長へ意見書、詳細な報告が上がっている書類の束を見せる。
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「優秀な冒険者を、不当な待遇に陥れた。私の権限で、ギルド長としての力を凍結する。」
「そんな!」
びくっと声に驚いたセリを抱きしめた人物から、低い声が響いた。
「実際に、凍りたいか?」
“この程度で我慢してやる”と示す。ロードのギラつく視線は威嚇と威圧に十分だった。
(尻尾が丸まりそ~)
その余波に平然としたフリをする、カナンは知っている。この話し合いの場で守られているのは、相手の方だった。
「冒険者ギルドとして、セリへの依頼申請を拒否する」
「そんなっ、ギルドの横暴だ!」
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(だからアクレイオスが、来たんだもんな?)
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「他の端役は消えるのだった。」
「主役の目の届かないところで、ネ。」
もう、その未来は決定だった。
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